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2009年11月24日

パワーの本棚:『社会とどうかかわるか-公共哲学からのヒント-』

文責:岡本充智(パワー・インタラクティブ 代表取締役)

 『社会とどうかかわるか-公共哲学からのヒント-』
著 :山脇直司
出版:岩波ジュニア新書
価格:777円


経営をしていて、いつも思うことがあります。

個人と会社は、どうかかわるのが好ましいのだろうかと。

私がコンサルティングの世界に入った当時、その道の大先輩に、プロフェッショナルとは答えのない問いを問い続けられることが出来る人だと教えられました。事業経営者となった今は、経営のプロとして、この問いを問い続けなければならないと、日々感じていました。

そんな矢先に、公共哲学の研究者である山脇直司氏の著書に出会いました。

山脇直司氏のプロフィール

この本は、高校生くらいを対象に書かれた哲学論ですが、難解な思想をとても分かりやすく解説してくれていて、日頃、ビジネス書が中心の私にとっても理解が進みました。

と同時に、「社会」を「会社」と置き換えたときに、目からウロコの落ちる場面に何回も遭遇しました。

「社会」は、一人ひとりの「個人」の生き方に強い影響を及ぼしますが、逆に「個人」間のコミュニケーションやルールづくりによって、「社会」のあり方や方向性は変えられるものなのです。

そもそも、社会は天から降ってくるものではありません。社会は人間がつくったものです。ヨーロッパのことわざにもあるように、明日の天気は、人の力で変えられませんが、明日の社会は人びとの努力しだいで変えられます。

この本を、何度も読み返しました。一行一行が、私にとっては、問題提起をされているように感じました。

氏は、論語についても、言及しています。

論語に出てくる正確な言辞(げんじ)は、「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」です。これは、「意見が他の人とちがっている場合、人格が立派な人は、その人と敵対せず、またおもねって同調することもしない。しかし、徳のない人は、表向きは同調しながら、裏では敵対する」という意味です。

同じ古典の春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)の存在もはじめて知りました。

「和」は、いろいろな食材をうまく調和させてスープを作るようなもの、辛(しん)・酸(さん)・甘(かん)・鹹(かん、塩辛い)・苦(く)の五つの味を調えるように、異なるものを混じえて調和させることであるのに対し、「同」は1つの味だけを集めることだと記されています。

言葉の持つ意味はさまざまですが、自分の問題意識と照らし合わせることで、それが1つの道しるべになることを、改めて感じさせてくれた一冊でした。

早速高校生の息子にも、もう一冊買ってプレゼントしておきました。

社会とどうかかわるか――公共哲学からのヒント (岩波ジュニア新書 608)
社会とどうかかわるか――公共哲学からのヒント (岩波ジュニア新書 608)

2009年10月26日

パワーの本棚:『芸術起業論』

文責:岡本充智(パワー・インタラクティブ 代表取締役)

 『芸術起業論』
  著  :村上 隆
  出版:幻冬舎
  価格:1,680円


経営者と芸術家の共通点。それは、「感性」。

京セラの辣腕経営者だった、伊藤謙介さんは、郷里岡山にゆかりのある若手芸術家を支援しておられます。その理由は、豊かな文化が育つ土壌がなければ、ベンチャーも盛んにならないというものです。岡山県が主催する「I氏賞」がそれです。

伊藤さんとは、京都で開催される経営勉強会でよくお会いさせていただきます。経営者の偉大なる大先輩として、伊藤さんの誠実で心意気の溢れたお話をお聴きするとつい、くじけがちになる気持ちにスイッチが入ります。お会いできて、つくづく幸せだと感じます。

話は変わりますが、海外で高い評価を得ている芸術家村上隆はルイヴィトンとコラボをしました。これが、最初に村上隆に興味を持ったきっかけです。

とてつもない私の思い込みですが、優れた芸術家は孤高の天才で、マーケットに敏感に反応するブランドビジネスとは決して相容れないと思っていました。だから、大学を卒業してから十年余りブランドビジネスに関わっていた私にとっては、彼がルイヴィトンの仕事をしたことは、とてもショックでした。そして、辿り着いたのが、この彼の著になる『芸術起業論』です。書き出しから、眼から鱗でした。

少し、抜粋してみます。

「なぜ、これまで、日本人アーティストは、片手で数えるほどしか世界で通用しなかったのでしょうか。単純です。欧米の芸術の世界のルールをふまえていなかったからなのです。」

「ぼくは欧米のアーティストと互角に勝負するために、欧米のアートの構造をしつこく分析しました。仮説と検証の連続から芸術制作マネジメントの技術も磨いてきました。」

「勉強や訓練や分析や検証を重ねてゆき、ルールをふまえた他人との競争の中で最高の芸を見せてゆくのが、アーティストという存在なのです。」

もうお気づきでしょうが、ビジネスのルールをふまえるところも、仮説・検証を繰り返すところも、その過程で最高の価値を顧客に社会に提供するのも経営と同じです。ただ彼は、この繰り返しが、並の努力では何も得られない。徹底的に閾値を越えるまで、やり続けることだとも言ってます。全く持って同感です。

彼は、あとがきに、こう述べています。

「私は『美』のために働いていきたい。そして、日本、世界のどこにおいても、美を創造し、その名の下に喜びを分ち合いたい。そのために土壌造りから始めなければならないなら喜んで泥まみれになる。」

経営も美を追求していきたいと思います。そのためならば決して泥まみれになることは厭いません。まさに、『芸術家起業論』から、学び得るものは無尽蔵に大きいと感じています。

芸術起業論
芸術起業論

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2009年09月11日

パワーの本棚:『フェラーリと鉄瓶― 一本の線から生まれる「価値あるものづくり」』

文責:岡本充智(パワー・インタラクティブ 代表取締役)

 『フェラーリと鉄瓶― 一本の線から生まれる「価値あるものづくり」』
  著 :奥山 清行
  出版:PHP研究所
  価格:1,365円


なぜ美しいデザインが必要なのか。

「美しいものは売れるということ。人間は本来美しいものが好きであるということ。」

フェラーリのデザインを担当しているイタリアのピニンファリーナ社の会長がデザイン工房のスタッフたちに、「美しいモノは正しい。俺たちは正しいことをしているんだ。」と言い続けたことが、スタッフに大いなる励ましになったとのこと。

原理原則に基づいたシンプルな言葉が、チームに勇気を与え、チームの結束力を強くしていくんだと言うことに気づかせられました。

著者の奥山清行氏は、このピニンファリー社のデザインディレクターを努められた方です。デザイン分野は、自動車だけでなく、家具・インテリアやロボット、都市計画など多岐に亘っています。氏のイタリアでのビジネス経験から、日本のデザインとものづくりについて『最高の価値』と言う視点からハッとするような意見が盛り込まれ、矜持を保つことの出来る書です。

ビジネスの世界では、コミュニケーションは大きなウエイトを占めています。
デザインの世界でも、コミュニケーションはデザインの是非を決定付けます。

「デザイン作業の最初の三分の一は、正しい人を探して、正しい情報を引き出すこと。次の三分の一は、その人のためのデザイン作業。最後の三分の一は、出来たものの情報を正しい人に正しく伝えること。この最初と最後の三分の一ずつは、デザイナーのコミュニケーション能力にかかっています。」

相手のことをよく知り、自分たちの強みも把握しておく。それが、コミュニケーションの前提になるんだということを気づかせられます。

私は、日頃よく考えることがあります。

プロとアマの差って一体なんだろうかと。

この書で、そのヒントをつかみました。

「プロと呼ばれる人たちは、アイデア出しにかける時間が長かったり、膨大なバリエーションから選んだりするところが、アマチュアと違っているのだと思います。アマチュアの人に欠けているのは、そのプロセスです」

アイデアを磨く時間と深さが違うということです。
コンサルティング会社にいた時代に、先輩から、「プロとは答えの無い問いを問い続けることが出来る人だ。」ということを教えられたことがあります。

プロとアマは紙一重というならば、それは最後のひと絞りが出来るか出来ないか。
その差ではないかと思います。そのような気持ちで、仕事に臨みたいものです。

あとがきで、奥山氏は、ものづくりの基本について、こう書かれています。

「すべてのものは、人のために作られます。それも、昨日や今日の誰かではなく、明日の人のためにものを作るのです。」

ものづくりだけでなく、すべての行動がそうありたいと考えさせられた一冊です。


フェラーリと鉄瓶―一本の線から生まれる「価値あるものづくり」
フェラーリと鉄瓶―一本の線から生まれる「価値あるものづくり」

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2009年08月03日

『プロカウンセラーの聞く技術』

文責:江口由美(パワー・インタラクティブ 商品企画グループ)

 『プロカウンセラーの聞く技術』
  著 :東山 紘久
  出版:創元社
  価格:1,470円

「ほとんどの人は、聞くより話をするほうが好きです。」という一文から
 始まる本書。たとえ話が苦手と思っている人でも、リラックスして話がで
 きる聞き上手の人に巡り合えたり、そういう場がセッティングされると話
 をされるものなのだそうです。

 筆者は臨床心理士であり、京都大学理事・副学長として教育現場でも長く
 ご活躍されている東山紘久氏。人の話(悩み)を聞くのが仕事である東山
 氏が、『聞く』そして『相手の言いたいことを理解する』というコミュニ
 ケーションの非常に重要な技術について、具体的なノウハウを交えながら
 分かりやすく解説しています。

 プロが語る『聞く』技術は、同時に相手にいかに本音を話しやすい場を
 提供するかという点にも繋がっています。

 この技術はビジネスの場でも非常に重要です。
 お客様に対しての場合、営業やインタビュー等でお客様のニーズや想い
 をヒアリングするつもりが、いつの間にかこちらが話の主導権を握って
 しまい、お客様が相槌を打つような展開になってしまっては意味があり
 ません。

 また社内の会議やコミュニケーションにおいても、上の立場の人が先導
 してしまったり、聞いているつもりがいつの間にか上の者が説教してい
 ては、結局立場が下の者は本当に思ったことが喋りづらい状況になって
 しまいます。

   ・相手の話を「素直に」聞く。
   ・相槌以外は話さない。
   ・評論家にならない。
   ・聞き上手には上下関係はない。
   ・聞き出そうとしない。

 これらのことを念頭に置きながら、本当の意味で『聞く』、そして相手を
 理解することに努めることで、一方通行なコミュニケーションが真の
 双方向コミュニケーションに生まれ変わり、相手との信頼関係を築く
 きっかけを与えてくれることでしょう。

 対人関係の基本であり、ビジネスの基本でもある『聞く』ことを見つめ
 直すと共に、実践方法を具体的に教えてくれる一冊です。 
 
 

4422112570プロカウンセラーの聞く技術
東山 紘久
創元社 2000-09

by G-Tools

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