こつこつマーケティングBLOG
こつこつマーケティングBLOG
Home > こつこつマーケティングBLOG > 北京五輪「スピード社」水着騒動と囚人のジレンマ
[ ここから本文 ]
« 自分で書いたブログのログ分析と仮説 | メイン | 薩摩が生んだ幕末のファーストレディ篤姫 »
2008年05月27日
文責:岡本充智(代表取締役)
北京五輪に向けて、水際の攻防がいよいよ大詰めを迎えてきた。
水泳ニッポンを支える選手たちが、もっともタイムが早く出るという水着を着用することが出来ない。話題になっているのは、英国スピード社が2月に発表した最新競泳水着「レーザーレーサー」だ。この水着は、いままでの水着とは基本構造が全く異なっており、身体を強く締め付け、身体の体積を減らすことで水の抵抗を減少させ、継ぎ目がない素材を使用しているため水をほとんど吸収しない構造になっている。
今年に入り、個人種目で出た長水路(50m)の世界新記録18個のうち、17個がスピード社の水着だ。日本代表合宿でも、試着したところ、軒並みタイムがアップしたという。
コンマ一秒の世界で闘う選手たちにとっては、何が何でも着用して、大会に臨みたいのも当然だろう。
しかし、問題がある。
日本水連はアシックス、ミズノ、デサントの国内三社とオフィシャルサプライヤー契約している。オフィシャルサプライヤー契約は、スポンサー企業が商品・サービスなど様々な支援を行う代わりに、指定された大会での商品の着用・使用を義務付けるものである。
オフィシャルサプライヤー契約は、2017年3月まであり、三社以外の水着を着用すれば、多額の違約金が発生するという。
この話題を追いかけていて、ゲーム理論の「囚人のジレンマ」を思い出した。
囚人のジレンマ
囚人のジレンマは、二人の囚人に黙秘と自白の選択を迫り、一方がもう一人を裏切れば刑が軽減される。双方、裏切りをせず黙秘を続ければ、お互いに刑は受けるが全体としては最適な結果になる。しかし、結末はお互いに裏切りあって、重い刑を受けることになってしまうという。
個々の最適な選択は、全体として最適な選択にならないということを考えさせてくれるゲーム理論の中でも代表例である。
水連は5月末までに、サプライヤー契約三社に対して、スピード社を上回る改良版の提出を指示した。しかし、現実的には、アテネ五輪終了直後から開発を進めている開発陣にとっては、もはや無理難題と言えよう。
私も、10年余りオリンピック種目の競技ウェア開発を担当してきたこともあり、各社の開発陣にとっては、なんとも、改良期間が短すぎて耐え難いものであろうと心中察する。
朗報もある。先日、トライアスロンやオープンウォーター(遠泳)分野では、有名で素材開発力には定評のある山本化学工業が、表面に水の分子を吸い付けたラバー加工を施した究極の素材開発をしており、その素材供給を各社は全面的に受けるようだ。
山本化学工業株式会社
ただ、競技ウェアは、素材とパターンと縫製が噛み合って最良のモノが出来、さらに、競技者が試着テストを繰り返して、本番に臨むことで、記録に反映されるものである。そのためには余りにも時間が短すぎる。
最終的には、6月10日の常務理事会で、スピード社の水着着用の容認の可否について、結論が出るようだ。
さて、囚人のジレンマのケースに当てはめれば、日本水連とオフィシャルサプライヤー各社が、それぞれ、契約履行を優先するか、スピード社水着の着用を容認するかが、問題になろう。
今回のケースは、ここまで、多くの人たちの注目の的になっている以上、契約建前か敢えて容認かの判断が、各社の企業イメージにどう影響するかというところが、経営判断になる。
40年来、スピード社とブランド提携をしてきたミズノにとっては、提携解消をした矢先の出来事だけに、今回の問題は痛恨の極みであろう。しかし、先日、水野社長が、ミズノと個人契約している金メダル候補の北島康介選手のスピード社水着着用について、「ミズノの水着を着用してほしいが、最終的には彼の判断だと思う」として、意向を尊重する発言をしていた。
ほぼ、水際攻防の情勢は見えてきたものの、それぞれのエゴを外して、最終判断をしてほしいところである。
6月6~8日に東京で開催されるジャパンオープンで、各社の新開発水着が試されるようだ。いよいよ、大詰めになってきた。
このページのトラックバックURL:
http://www.powerweb.co.jp/blog/manage/mt-tb.cgi/91