2010年06月09日
パワーの本棚:『偶然のチカラ』
文責: 代表取締役
『偶然のチカラ』
著:植島啓司
出版:集英社新書
価格:714円(税込)
「偶然」が大好きだ。人生で「偶然」に出会うと手放しに嬉しくなってしまう。「偶然」という言葉の響きに、必然以上の何かを感じてしまう。「偶然に」何かが起こった、「偶然に」何かに出会った、というときに、英語では、「~ by chance」と表現する。
毎日、新しい出会いがある。ビジネスの世界では、最初の挨拶に名刺交換をする。私は名刺交換をした方には、必ず御礼のハガキをお送りしている。あらかじめ印刷をしている御礼ハガキに、宛名と二行ほどのメッセージをしたためて投函している。
裏面には、こう印刷している。
『感動する気流』
私たちは、表面的な喜びだけではなく、
ともに歩むプロセスであっ!と
言っていただく感動を
お分けしたいと願っています。
感動は誰の目にもいつも
見えているものではありません。
偶然やってくる、それが感動ではないでしょうか。
あいつと一緒にいて良かった。
そう思っていただく存在を、
模索してまいりたいと思います。
これからも変わらぬご支援をいただけますよう
心よりお願いいたします。
さて、ここで、本題の『偶然のチカラ』である。この本は、いかにして幸運をつかむか、という内容ではなく、偶然の仕組みはどうなっているのか。という疑問に光を当てたものだ。
著者は、
私たちは人生のさまざまな場面でほぼ無意識のうちに限りない選択をしています。そして、そのどれにも実は偶然の要素が大きく作用しているのです。本書は、目の前に立ちはだかる偶然にどう対処すればよいのか、さまざまなエピソードをもとに42の断章の形式で論じたものです。
そのひとつの章に、民俗学の大家である南方熊楠が登場する。後の高野山管長になる土宜法竜への書簡の欄外に、幾本かの筋がめちゃくちゃに書き込まれた意味不明の図を取り上げて、あらゆることには因果関係が存在すると説いている。「因」と「果」の間には一定の必然性が存在する。しかしながら、この「因」と「果」のベクトルが交わることがままある。これを「縁」と考えたのである。
彼の言葉を借りれば、
故に、今日の科学、因果は分かるが(もしくは分かるべき見込みあるが)、縁が分からぬ。この縁を研究するがわれわれの任なり。しかして、縁は因果の錯雑して生ずるものなれば、諸因果総体の一層上の因果を求むるがわれわれの任なり。
どういうことかというと、
そう、どういう原因があってどういう結果が生まれたかはよくわかっている。だが、別々の理が絡み合うともうわからなくなってしまう。それでは科学とはいえない。宇宙はそれら相互の絡みあいなのだから、むしろ、因果そのものよりも、いかにそれらが絡みあっているかを解かなければ何もわかったことにならないのではないか、と南方は言うのである。
コンサルティングの世界で、戦略を整理するときに、バランスト・スコアカードを用いて、財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の各視点から戦略マップを作成することが多い。戦略マップは、各戦略間の因果関係をわかりやすく図示した、言わば戦略の見える化である。
戦略間の因果関係を整理していくことは、小気味良い作業である反面、いつも本当にこれが緊密な原因と結果の関係になっているのかということを自問自答してしまう。逆に言えば、戦略と戦略の関係について、素直に関係があると言い切れない吹っ切れなさを抱え込んでいる。
南方の「縁は因果の錯雑して生ずるものなれば、諸因果総体の一層上の因果を求むるがわれわれの任なり」という件を読むことで、真っ暗闇に一筋の灯火を見出した次第である。










