2006年08月07日
旅行業界は<ビジネス2.0>的動きの縮図だ!
文責: プロデューサー
ここのところ「Web2.0」関連の話題で持ちきりだ。ウェブの世界で新しいパラダイムシフトが起こりつつあるという予感は、ウェブの業界人だけでなく一般の企業人の高い関心もあいまって、加熱している。
弊社が顧客企業から受けるご依頼の中にも、「次世代型のサイトにしたい」「Web2.0を意識した展開を行いたい」といった要望をよくお聞きする。しかし、話を進めていくと、実際にbは「Web2.0」を取り巻くキーワードだけが先行していて、いかにビジネスサイトに活かしていくかといった視点は、持ち得ていないケースが圧倒的だ。
「Web2.0」はビジネスにどのようなインパクトを与えるのか?
このヒントを見つけるには、昨今、ますます激変の途にある「旅行業界」の動きに注目するのがおすすめだ。ここ最近(6~7月)だけでも目をみはるようなニュースがいくつか報じられている。
・ネット旅行予約、黒船襲来 米エクスペディア日本参入へ(2006.6.3.)
・リクルートの「エイビーロード」、ネットに押され休刊(2006.6.23.)
・ 楽天、全日空と提携 宿泊・航空券、ネットで同時予約(2006.7.13.)
「旅行業界」のどこが<ビジネス2.0的>なのか、何に注目すべきなのかについて、あらためて整理してみたい。
1.紙からネットへ~リクルートが海外旅行情報誌「エイビーロード」を休刊
6月下旬、リクルートが海外旅行情報誌「エイビーロード」を10月号を最後に休刊すると発表した。インターネットによる海外旅行の情報検索やオンライン予約サイトの普及により、広告や読者が減少、全盛期の月間38万部から、最近では11万部と発行部数は大幅に落ち込んでいたという。「エイビーロード」の創刊は1984年。リクルートの主要情報誌の1つだった。「エイビーロード」以前の旅行というと、まずは旅行代理店の店頭パンフレット集めからが定番の時代に、様々なパッケージツアー情報を1冊の誌面上に集め、簡単に比較検討を可能にした。本屋の店頭に並ぶ全盛期の「エイビーロード」の分厚さは、いつか行って見たいと思わせるまだ見ぬ世界が広がっていて、眺めているだけで、わくわくした。他方で「エイビーロード」のような旅行情報誌の登場は、中小の旅行会社や、ホールセラーと言われる旅行企画会社にとって、雑誌上でのダイレクト販売を可能にし、それまでの大手旅行代理店中心の流通に風穴を開け、旅行自体のコストダウンにも大きく貢献した。こういった旅行情報誌の登場が、その後のバブル景気とも相まって、日本人にとっての海外旅行をぐっと身近にしたのだ。
リクルートは、今後、海外旅行予約サイト「エイビーロードネット」に一本化をはかるという。リクルートは、2006年3月期に、5年前には85%であった有料誌関連の売上が約40%と、はじめて全体売上の半分を切った。ネット売上は約1350億円とすでに全体売上の3割を占める。情報誌「エイビーロード」の休刊は、リクルートにとって単なる撤退ではなく、新しい時代に向けてのエポックメイキングな出来事だと言えそうだ。
⇒ここに注目:
一情報誌が紙からネットへといった動きの背景にある、リクルート自体のここ数年の事業構造の転換は、<ビジネス2.0>の予兆として注目すべしだ!2.宿泊予約サイトと航空会社が国内旅行でタッグを組む ~楽天とANAが提携、ヤフーと日本航空も?
楽天とANAは、国内旅行で「ダイナミックパッケージ」のサービスを開始すると発表した。折半出資で「楽天ANAトラベルオンライン」を設立し、旅行サイト「楽天トラベル」で10月から、国内の宿泊施設と全日空の国内便を自由に組み合わせてネットで購入できる仕組みにするという。私自身、出張が入ると、ホテル予約は楽天トラベル、航空券はANAサイトで予約が大体のパターンだ。宿泊不要の日帰り出張の場合も、まず楽天トラベルにログインして、楽天経由でANAサイトで予約する。そうすると、楽天ポイントとANAマイレージの両方でポイントが蓄積されるのだ。ANAでたまったマイレージは個人旅行に使い、楽天でたまったポイントはワイン購入に充当するのが、最近のお決まりのネット購買行動だった。
上述のような非常に個人的な消費行動に照らし合わせると、楽天とANAの提携は非常に自然に思えたのだが、旅行業界的に考えると、おそらく旅行会社の存在意義を揺るがしかねない衝撃的な提携だ。
「ダイナミックパッケージ」というサービスをご存知だろうか?「ダイナミックパッケージ」とは、宿泊施設と航空券、レンタカーなどの旅行商品をサイト上で自由に組合せ、同時購入すると、トータルで大幅値下げされたパック料金で購入することを可能にするサービスだ。つまり、このサービスにより、個人が自由に“マイパッケージツアー”をつくることが可能になる。
供給側からすると、従来のパック旅行に比べ、人件費やパンフレット印刷などの経費が省け、コストトダウンを実現することができる。また、航空券代と宿泊費の内訳が明かされないため、閑散期のホテルや航空会社が格安の部屋や席を提供しやすくなるのだという。
日本は欧米と比較して、圧倒的にパック旅行の比率が高いと言われきたが、年々、団体旅行から個人旅行への移行が確実に進んでいる。海外旅行については、90年代後半に団体旅行が約8割だったのに対し、2003年には5割を切った。さらに、国内旅行については、1990年時点で、団体旅行が4割、個人・グループ旅行が4割とほぼ同率だったが、2002年時点で前者22%、後者69%と、全体の約7割を個人・グループ旅行が占めるまでになっている。おそらく今後もこの傾向は続くと思われるが、すでに複数社が参入を表明している「ダイナミックパッケージ」サービスが、パック旅行離れにさらなる拍車をかけそうな勢いなのだ。
⇒ここに注目:
インターネットが登場した当初から、仲介代理業の存在が危ぶまれて来たが、仲介代理業自体がビジネスとして存在しなくなるというわけでは決してない。リアルな仲介代理業がこれまでの業界慣習に縛られているうちに、全く新しいネット専業の仲介代理業が出現し、消費者側によりメリットのある仕組みを構築し、業界地図を一変さすのだ。そしてこの動きに、冒頭で触れた「Web2.0」的なパラダイムが大きく関わって来る。










