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2011年06月13日

パワーの本棚「奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち」

「奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち」
著:伊藤 氏貴
出版社:小学館
価格:1,365円

この本を読みたくて読みたくて堪らなかった前提条件がいくつかある。
  • 父親が熱血教師であり、小さい頃から様々な個性ある教師が自宅に遊びに来たり、泊まったりしていて、いつも「教師」という人たちに囲まれていたこと。
  • 主人公である明治生まれの橋本武先生が99歳の今も土曜講座ではあるが、灘中学の教壇に立っておられることに凄さを感じたこと。
  • 卒業生に各界のリーダーを輩出している灘中学・灘高校の教壇に21歳から71歳まで実に50年間に亘って経ち続けられたこと。時間軸に置き換えれば、昭和9年に灘に赴任して来られてから昭和59年に退職されるまで、大きく変貌する時期の日本で一貫した教育方針で教え続けられたこと。
  • 教科書は一切使わず、三年間、中勘助の『銀の匙』を教材として独自のプリントで授業を進めておられたこと。
  • 現在、私自身がある学校法人の役員をしており、現在の教育に対する危機感とこれからの教育のあり方について強い問題意識を持っていること。

橋本武先生の銀の匙を使った授業はこうだ。

毎回毎回、銀の匙の数ページ、事に依れば1ページに該当するプリントを自作し、そのプリントには質問が書かれており、その質問に自分の意見を記入していくことで授業が進んでいく。

したがって、横道にそれることは当然だし、予定のプリントを消化できない日も何日もある。分野も国語に止まらず、数学・物理・地学・天文・歴史など広範囲に際限なく展開していく。

彼はいみじくも自身の授業について、遅々としてページが進まないことに苛立った生徒にこう諭している。
「スピードが大事なんじゃない。」

「すぐ役立つことはすぐに役立たなくなります。そういうことを私は教えようとは思っていません。なんでもいい、少しでも興味をもったことから気持ちを起こしていって、どんどん自分で掘り下げてほしい。私の授業では君たちがそのヒントを見つけてくれればいい・・・。だからこのプリントには正解を書いてほしいとは思っていないんです。自分がその時、本当に思ったことや言葉を残していけばいい。そうやって自分で見つけたことは君たちの一生の財産になります。そのことはいつかわかりますから。」


この本を読んでから、自分の中に一つの標語が生まれた。

 『横道こそ王道』

そしていつも心している標語である

 『継続は力なり』

いまこの二つが自分の中の二大標語である。


さて、読み終わって、満足感や充実感は芽生えてこなかった。
それよりも、本当の授業というのは、こういうことなんだなと言う実感に近いもの。
だとしたら、いまの教育は一体何なんだろうかと言う、焦燥感が強く残った。

会社通勤の帰路にジュンク堂という大型書店があり、そこに「教師論」という棚がある。
今回感じた焦燥感は、私にその棚の本を片っ端から読破させている。

橋本武先生は、国語の教師である。
彼は、国語という教科をこのように捉えている。
「国語はすべての教科の基本です。学ぶ力の背骨なんです。」


英語も数学も国語力があれば、もっと伸びしろを大きく出来るという話は
ある予備校の教師からも聞いたことがある。

その国語の教師が、検定教科書を使わずに、中勘助『銀の匙』一冊だけで
三年間に亘り授業を続けている。そして、各界のリーダーを輩出している。

俄かには信じがたい。

では、なぜ、『銀の匙』なのか?

首都大学東京で教育学を専攻している西島央准教授はこう指摘する。
「最近の調査で小学生の家庭でたとえば端午の節句にちまきを食べるとか、冬至の日にゆず湯に入るといった日本の歳時記を実践している家庭の子は成績がいいという結果が出ています。

小学生から中学二年生くらいまでの子どもたちにとって気づきのテーマとして年中行事や季節感がとても重要であるということは確かに言えます。」


橋本武先生もこう語っている。
「私が銀の匙に三年かけてみようと思った理由の一つに、戦後忘れられようとしている日本の年中行事や、四季よりも細かく季節の移ろいを感じられる二十四節気を伝える教材として、この小説は非常に優れていると感じたことがあります。」


改めて、日本で生まれ。日本で育ち、日本で生活をしているわれわれにとって、
季節の移ろいに気づくセンスは、仕事を進めていくうえでも大切な視点だと感じた次第である。

では、橋本武先生の銀の匙の授業を受けられなかったわれわれはどうしたらいいのか。
教え子がヒントを与えてくれている。

  • 本そのものをノートにする。
  • 筆者の意見に賛成・反対・納得といった印をつける。
  • 反対の場合はその根拠・理由を書き込む。
  • こうすればもっといいという自分の発想も書いておく。
  • 分かったフリをせず疑問をどんどん書き留める。

実は、もうすでにそうしている。だから橋本武先生の授業に共鳴したのかも知れない。

夏目漱石も、ロンドン時代に留学費用の三分の一にあてるほど大量の本を買い込んでこのような書き込みが余白にびっしりと書き込まれていた。書物との対話を通じて、自らの思想を深めていったのである。

平べったい読後の満足感はないかも知れないが、今のわれわれの仕事に大きな示唆を与えてくれる本である。

ぜひ、一読願いたい。

【投稿者:岡本充智】

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著:伊藤 氏貴
出版社:小学館
価格:1,365円