事例

【前編】株式会社富士通マーケティング お客様からみつけてもらうサイトへの挑戦 公開1年で自然検索経由70%を実現

ビジネス形態
BtoB
業種
IT
部門
マーケティング
規模
5000名以上

株式会社富士通マーケティング ビジネスパートナー本部ビジネス推進統括部
WEBプロモーション推進部 部長 桜井浩 氏

株式会社富士通マーケティング(旧株式会社富士通ビジネスシステム)は、2009年に富士通株式会社の完全子会社となり、2010年10月より株式会社富士通マーケティングに社名変更。コンサルティングからシステム構築、ソフト開発、運用支援、保守、サポート、工事、教育までのトータルソリューションをワンストップで提供しています。富士通マーケティングは、富士通グループの中堅市場向けビジネスを担う中核会社として、全国およそ60拠点、約4,000名の様々なノウハウ・技術を持った社員がお客様をサポート、全国400社を超える販売パートナー企業の支援活動も行っています。

2014年11月にはマーケティング専用サイト「ICTのmikata」をスタート。マーケティングオートメーションツール「Marketo」を導入し、Webを活用した案件創出のしくみづくりに取り組んで1年が経過します。今回は、いかに経営層や他部門の理解・協力を得て、組織の中でデジタルマーケティングを展開し成果を上げているのか、その成功ポイントをご紹介いたします。

株式会社富士通マーケティング ビジネスパートナー本部ビジネス推進統括部 <br/>WEBプロモーション推進部 部長 桜井浩 氏

短期刈取り型サイトから中長期育成型サイトへ方針転換

「ICTのmikata」立上げまでの背景について教えてください。

2014年に「ICTのmikata」を立ち上げるまでは、「経営改革ライブラリー」というクローズドなWebサイトを運営していました。このサイトは、検索エンジンでは敢えて上位表示されないようにし、営業名刺や展示会・セミナー参加者のデータを集約してメルマガを配信、課題解決ページや製品ページの閲覧者、メールを複数人に転送した人を対象にテレアポをとり、営業部門に引き渡していました。
ところが、富士通マーケティング、富士通、パートナー企業とそれぞれの顧客が対象となっているにもかかわらず顧客データ(個人情報)は共有できないため、テレアポのモニタリングに3~4日かけた後、3社それぞれに営業のアテンドをかけ、返事を待ってるうちにメール配信から3週間が経っているという状況でした。営業が訪問した際は、お客様はメールの内容をほとんど覚えていないため引合いにつながらず、営業部門はメールマーケティングに対し懐疑的になっていました。とりあえずアポイントが取れたから訪問するのではモチベーションが上がらないといった不満も出ていました。

そこで、お客様に見つけてもらい、お客様自らお問い合わせをいただく新しいサイトを作ろうという目的で生まれたのが「ICTのmikata」です。「ICTのmikata」の方針は以下の通りです。

・短期刈り取り型サイトから中長期育成型サイトへ
・企業規模や業種、業務などターゲットを絞り込む(捨てる勇気を持つ)
・お客様の業務課題を解決するコンテンツを揃える
・競争が激しくコモディティ化した製品・サービスが勝てるマーケットの抽出
・スピード感をもって短期間で効果が実感でき、持続できる仕組みと体制を確保する

短期刈取り型サイトから中長期育成型サイトへ方針転換

「ICTのmikata」を稼働させるために行った3つの準備

「ICTのmikata」の準備期間中、どのような動きをとられましたか?

「ICTのmikata」立上げに向け、社内調整と、シナリオ作成ならびにシナリオの実行に必要なデータ整備、コンテンツ手配を行いました。以下が主な3点です。

1)経営陣に対し、デジタルマーケティングの可能性をアピール

まずは現状の課題や最近のデジタルマーケティングの可能性、行動履歴や属性を把握して営業アプローチをかけることができること等を説明し、取り組みの理解を得るようにしました。また、受注や売上げだけの話になると達成しなければ終わってしまうので、プロセスごとの課題に対するKPIを細かく段階的に設定し、それぞれ評価するようにしました。例えば、集客でどのくらいのアクセス数を獲得するか、メールアドレスは何件獲得するか、といった目標設定です。投資対効果を毎月デジタルに評価、報告できる環境も作り、当時の本部長から承認を得ることができました。

2)データベースにターゲットが存在するのかを確認

「ICTのmikata」立上げ前に、すでに「経営改革ライブラリー」のメルマガのデータベースとして18,000人の個人情報を保有していました。「ICTのmikata」で接点を取るのはまずはメールであると考え、メルマガデータベースにどんな属性の人がいて、どういうコンテンツを揃えれば成果が出るかのシナリオを描きました。企業規模や業種、部署等いくつかのセグメントで分けてみると、ほんとうに売りたいと思うターゲットがいないことに気づきました。現在、セミナー等で欠落しているセグメントを集めているところです。メルマガデータベースは50,000人くらいになっていますが、まだまだ補強していかなければと考えています。

また、サイトを見て終わりでなく、持ち帰ってもらうものを準備し、替わりにリード情報を入力してもらうしかけを作りました。製品事業部門は競合を意識して詳細な資料の一般公開には消極的でしたので、まずは「就業規則チェックシート」等のお役立ち情報を準備し、ダウンロードコンテンツを徐々に増やしていきました。

3)営業部門を巻き込んだシナリオ作り

営業部門に自分事にしてもらうために、特定の製品をよく売っている営業部門に協力を要請して シナリオ作りに巻き込んでいきました。想定するペルソナの定義や、営業が持っている顧客訪問ツールを棚卸しWeb上でどのように活用できるかを検討しました。 また、テレコール部隊との連携もとりました。元々営業部門からテレコールの依頼を受けて対応している部隊ですが、Web上で反応した人に対し、一旦テレコール部隊でフィルタリングした上で営業に渡す流れを作ることの同意を得ました。

「ICTのmikata」は5つの業務カテゴリで課題解決コンテンツを配置

「ICTのmikata」の概要について教えてください。

「ICTのmikata」は、リアルのイベントとWebを統合、見込み客の集客から商談化まで行う富士通マーケティングのマーケティングプラットフォームであると社内で言い続けています。「人事総務」「会計」「販売」「生産」「システム運用」の5つの業務カテゴリに分け、「コラム」「お役立ち情報」「業務改善例」「導入事例」「賢いシステム選び」をコンテンツの柱に置いています。また、旬な情報としてマイナンバーの特設サイト「おまかせマイナンバー」を設置しています。「ICTのmikata」には、製品に関する情報はほとんどなく、業務に役立つ情報を中心に弊社のソリューションにまだ関心のない、ゆるやかな見込み客から集めています。

11月の立上げ当初は250ページほどでしたが、現在は500ページに倍増しました。5業務ごとに月1本メルマガを配信しているほか、セミナーやソリューションの案内メールも都度配信しています。

「ICTのmikata」は5つの業務カテゴリで課題解決コンテンツを配置

「ICTのmikata」の目標は、認知拡大からMQLの品質向上へ

「ICTのmikata」のKPI目標の達成状況について教えてください。

11月に立上げ、3月までの期間はサイトの認知拡大を優先し、目標値も「セッション数」と「MQL数(お問い合わせ数)」に置いていました。
立上げ後最初の11月から1月の3ヶ月間について役員報告した際は、サイトの実力の報告でもありましたが、セッション数が非常に少なく低迷していたため役員からも心配されたくらいでした。

年明けからは並行して旬なテーマへの取り組みを行うこととし、2月よりマイナンバーの特設サイト「おまかせマイナンバー」を立ち上げました。「おまかせマイナンバー」では、企業のマイナンバー制度の取り組みを啓蒙し、知識習得や準備に関するテーマでWebセミナーを実施していきました。また、セミナー後に参加者から受けた質問をQ&A集としてダウンロードコンテンツにしたり、そのダウンロードフォームでのアンケート結果から、システム対応の動きが遅れている点をコンテンツ化したりするなど、コンテンツの増強を行っていきました。Q&A集のダウンロードからは約7000件のリードを獲得しています。
また、2月・3月は広告を集中的に投入し、3月の訪問数は5万セッションと目標のセッション数をクリア、広告費を使えば集客ができる感触もつかみました。お問い合わせ数も目標の月15件を大きく上回ることができました。

そこで4月からは目標を変更し、自然検索経由の訪問数の割合70%を目標に置き(3月の自然検索経由の割合は11%)、検索上位のコンテンツを制作すること、さらに受注獲得にウェイトをかけていきました。広告費はコンテンツ制作に回し、単に訪問数を増やすのではなく、訪問の質を上げることに目標をシフトしたのです。オンリーワンのコンテンツ制作にも取り組み、自社で約5000件の実績を持つ「フリーコンサルティング」(中長期IT戦略を策定する無償のコンサルティングサービス)を、ホワイトペーパーを通じて問い合わせにつなげる動きもとりました。

4月以降は広告費を押さえたものの、自然検索経由ならびに全体の訪問数も月ごとに伸びを見せ、9月には自然検索経由70%の目標をクリア、受注も獲得し、経営層へもアピールできるようになりました。

インタビュー後編
インタビュー後編では、「ICTのmikata」の受注までの経緯からコンテンツの作成実践例、Marketo導入の課題・効果についてお伺いします。

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