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実践事例

養命酒製造株式会社 マーケティング部<br>参事 渡来 正 氏<br>広告宣伝グループリーダー 今鉾 和宏 氏
インタビュー記事

養命酒製造株式会社 マーケティング部
参事 渡来 正 氏
広告宣伝グループリーダー 今鉾 和宏 氏

2016年9月30日

転換期を迎えた養命酒製造、慎重かつ大胆に老舗ブランドの新たなイメージ構築が進められる

「養命酒」は江戸幕府開府前年の1602年(慶長7年)に信州で誕生した薬酒です。この400年の歴史を誇る養命酒を提供する養命酒製造株式会社が安定的経営を継続してきた背景には、時代の流れを汲み取りながら展開してきた経営戦略があります。そして今、養命酒製造株式会社は養命酒の基盤を維持しながら新規事業を強化し、「養命酒製造」としての新たなブランド構築に取り組んでいます。養命酒製造株式会社がこれからどのような経営戦略、マーケティング戦略に取り組もうとしているのか、お話をうかがってきました。

「養命酒」を軌道に乗せたブランディング戦略

養命酒の販売が軌道に乗ってきたのはいつごろですか?

戦禍を乗り越え、軌道に乗ってきたのは昭和40年代のテレビCM開始後です。
高度成長という時代に滋養強壮、健康の訴求がピタリとはまり、養命酒の良さをしっかり伝えることができました。またテレビに集中してブランディングを進めた結果、薬酒のポジショニングを早期に築けたことも要因の一つです。現在、全国の薬局、ドラッグストアでの店頭普及率はほぼ100%、「養命酒」という名前を知らない人はいないと言えるほど認知も高くなりました。

平成の時代に入り、健康マーケットの拡大とともに規制緩和の波が押し寄せてきます。1999年(平成11年)、栄養ドリンクが新指定医薬部外品として薬局以外のコンビニやスーパーなどの店舗でも取り扱えるようになり、さらに2004年(平成16年)、ビタミン剤などの医薬品が医薬部外品へ指定され、薬局以外での販売が可能となりました。その後の健康ブームで特定保健用食品や栄養機能食品なども登場、競合商品が増える中、養命酒の立ち位置、差別化を明確に図らなければならなくなりました。

滋養強壮系から「未病」への転換

どのように競合商品との差別化を打ち出してたのですか?

「未病」を前面に打ち出しました。未病とは、2000年前に書かれた中国医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』に記されている東洋医学の基本概念です。未病を広告で最初に使ったのが当社であり、今でも東洋医学の先生から未病の認知拡大に貢献してくれたと感謝されています。
未病はまだ病気でない健康な状態と病気の中間で、病院に行ってもお医者さんにどこも悪くないよと言われてしまうような状態です。「疲れやすい」「冷える」「食欲がない」などの自覚症状はあるけれども検査値に異常はない、しかし、放っておくと病気になる可能性がある状態のことです。

「養命酒」は14種類の生薬とアルコールの力で、身体が本来持つ免疫力や自然治癒力を高め、体調・体質を整え、様々な症状(未病)を改善していきます。リピートの高い商品で、20年、30年とお飲みいただいているたくさんのお客様がいらっしゃいます。

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養命酒オンリーから新規事業立ち上げへ

新規事業を立ち上げることになった背景には何があったのですか?

2003年(平成15年)頃から、養命酒の売上にはっきり停滞傾向が見え始めてきました。2005年(平成17年)中期経営計画をスタート、それまでの養命酒中心の経営を見直し、養命酒以外の事業を展開していく経営に方向転換しました。

2015~2017年の第4次中期経営計画の基本方針では、「持続的成長に向けた新規事業領域の確立」であり、経営戦略として以下の三つを掲げています。

  1. 新規事業領域の成長基盤の構築
  2. 薬用養命酒の収益体質の維持
  3. 生活者の視点に立った事業活動を基盤としたCSR経営の推進

2010年に「ハーブの恵み」、2011年に「ハーブプラスHerb+」、2013年に「食べる前のうるる酢」と「フルーツとハーブのお酒」を立て続けに発売、養命酒事業をコアとして、さまざまな事業にトライしています。
「養命酒製造」という会社の活動を知っていただき、ファンになってもらいたいと考えています。養命酒製造の企業姿勢が好き、だから購入したいと思っていただけるようにしたいのです。経営戦略の三番目に「CSR経営の推進」を掲げている意味がそこにあります。

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スピーディーにマーケティング戦略を実行する組織体制

当社は、マーケティングを重視した組織体制をとっています。マーケティング本部の下に営業部とマーケティング部、さらに営業推進部、海外事業部を配置して一元管理し、施策をスピーディーに実施する体制をとっています。(図1参照)
マーケティング部の人員は38名、酒類開発・営業戦略グループ、エイジングケアグループ、広告宣伝グループ、お客様コミュニケーショングループに分かれて活動しています。

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新規獲得と離脱防止を支える4つの施策

マーケティング部の役割について教えてください。

お客様の新規獲得とリピーターの育成が役割となります。テレビ・新聞のマス広告が中心ですが、現在、Webや会報誌など双方向性のあるメディアに注力し、施策を行っています。

  1. キャンペーンサイト
  2. Webマガジン『元気通信』
  3. Web症状ページ、イベントページ
  4. 会報誌『養命酒だより』

1)キャンペーンサイト
  ~見込客に「気づき」を与え、興味関心の喚起

キャンペーンの目的は見込客の流入を図ることです。そのためには、見込客に「気づき」を与え、興味関心を喚起しなければなりません。夏と冬の年2回の強化期間を設けて、大々的にキャンペーンを展開しています。 今年は、7月9日より夏の強化期間に入り、現在2つのキャンペーンを実施しています。1つは養命酒のパッケージをデザインしたスマートフォンバッテリーとタブレットをプレゼントする「夏バテにYomeishuモバイルキャンペーン」です。スタート時から好調で、しかもこれまでにない男性層、ITに関心のある層が集まっており、高い成果が得られています。

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もう1つのキャンペーンは、養命酒の味を疑似体験できる「養命酒って、どんな味 疑似体験プレゼントキャンペーン2016」です。これはスペイン・バルセロナ発祥のアート・キャンディ・ショップ papabubbleとのコラボレーションで開発した養命酒風味のオリジナルキャンディが当たる企画です。養命酒を飲んだことのない方にとって、味がわからないので購入に踏み切れないという方のために、養命酒風味の飴で疑似体験していただくことで購入のハードルを下げようという試みです。

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これまでにも、「ゴルゴ13 とのコラボキャンペーン」、「養命酒史上最大養命酒ジャンボ抱きまくらが当たるおんぽ(温補)de安眠キャンペーン」、「養命酒オリジナルコップのフチ子+温もりのお着替えセットが当たる!フチ子と冷え対策キャンペーン」など、接点がなかった人たちがサイトを訪れてくれるようアイデアを出しキャンペーンやコンテンツを展開してきています。「ゴルゴ13とのコラボキャンペーン」は4回に渡って約9万人の応募、「フチ子と冷え対策キャンペーン」は約7万人の応募がありました。

2)Webマガジン『元気通信』
 『元気通信』で見込客の発掘、新規顧客の獲得

健康情報コミュニケーションとして、月刊Webマガジン『元気通信』を発信しています。時事性・社会性を踏まえ、食や運動、健康、未病(疲れ、冷えなど)など、暮らしに関わるテーマを中心に、自然検索で上位表示されるよう意識しコンテンツを制作しています。毎月下旬、メルマガとして会員に配信していますが、サイトにもアップしていますので、今は誰でも『元気通信』を読むことが出来ます。
『元気通信』のメルマガ会員は約25万人です。以前とったアンケート(回答数約1300人)によると、『元気通信』読者の約60%が一度も養命酒を飲んだことがないという結果でした。『元気通信』を通じて見込客の発掘、新規顧客の獲得に取り組んでいます。

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3) Web症状ページ、イベントページ
  ~養命酒や生薬、未病予防を楽しく理解し、新規顧客の獲得

「養命酒」の本質や症状の理解を促進するため、サイトでは養命酒の正しい飲み方や効能をはじめ、生薬や未病について詳しくご紹介しています。
当社の調査で、お母さんが冷え症だと家族も冷え症が多いことがわかりました。お母さんのライフスタイルが家族の冷えに繋がっているわけです。そういったお母さんを対象に、健康セミナーやイベントを通して啓発活動に取り組んでいます。養命酒のキャラクターを登場させるなど、楽しみながら養命酒の理解を深めていただけるよう意識しています。

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4) 会報誌『養命酒だより』
  養命酒のご愛飲家への感謝

養命酒ご愛飲家とのコミュニケーションとして、会報誌『養命酒だより』(年4回発行・無料)を発行しています。会員の関心の高い、またクチミにも繋がるよう話題性・新規性を意識し、自然、食、健康、歴史、郷土などのテーマでコンテンツを制作しています。『養命酒だより』は、よりコアなファンにお届けしたいと考え、今までに2回ほど会員のブラッシュアップを行いました。現在の会員数は約5万人です。
『養命酒だより』では自社商品のご紹介と販売も行っています。会報誌スタート時、自社商品のご紹介は押し売りイメージに繋がると思い躊躇していましたが、いざご紹介してみると思いのほか反応が良く、今では楽しみにされている会員様が多数いらっしゃいます。

CSR活動を通じた新たな企業イメージの確立へ

今後の課題について教えてください。

企業の評価は、良い商品を出せば、良くなるわけではありません。自然・環境保護、省資源への取り組み、地域との共生など、社会の一員としての企業活動も重要な指標となっています。CSRとして、昨年からステークホルダーに向けて、「未病予防」健康セミナーをご提案してきました。未病のない健康的な生活を過ごすために、どうしたら良いかというイロハをお伝えしています。幸いにもたくさんの団体や自治体に共感していただき、現在数多くの健康セミナー、イベントをさせていただいています。

養命酒製造という企業への好感を高めるには、「楽しい」「新しい」「活動的」といったイメージを高めることが大切です。コミュニケーションのトンマナは、このイメージを意識し、プログラムを考え活動しています。
より多くの方に企業活動を知っていただき、企業イメージ向上に繋げていきたいと考えています。

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インタビュー後記
今夏の養命酒製造の「夏バテにYomeishuモバイルキャンペーン」に目をとめた方も多かったのではないでしょうか。「弱ったスマホの『命』をチャージ!」というコピーには思わずうならされました。薬用養命酒の効果をスマートフォンのバッテリーの充電になぞらえたアピールをはじめ、随所に遊び心が見られる企画となっています。この企画、大手広告代理店からの提案だったのか聞いてみたところ、養命酒製造の社員からの発案だったそうです。養命酒製造では、キャンペーンやコンテンツの企画は自社内で考え、オリジナリティ溢れるユニークな企画がどんどん生み出されているようです。
ただし、企画アイディアを優先するだけではありません。KPI指標を設定し、企画の効果検証がきっちり行われています。キャンペーン企画は申込み数だけでなく、商品ページまで誘導できているか、また、過去のキャンペーンに参加したことのない新しい層と接点がとれているか、という点も評価されます。
アンケート調査やID-POSの分析も随時行われており、新たな取組みは数字の裏付けをとりながら慎重に進められています。養命酒製造の新たなブランド構築も、検証を行いながら着々と進んでいる様子です。この先、私たちは養命酒製造にどんなイメージを持つようになるのか、養命酒製造から目が離せません。
インタビュー実施日:2016年7月13日
(パワー・インタラクティブ 広富)
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