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「KPI」とは一体何なのか?

2012年2月24日(金)

取締役常務執行役員 遠藤美加【文責】

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サマリー

  • アクセス解析の分野で、なぜあえて「KPI」という概念が使われるのか。
  • 昨今、「KPI」は"Webサイトの目的/目標を設定すること"と理解されている節があるが本来はそうではない。
  • 「KPI」の目的は、アクセス解析を実際のビジネスプロセスにいかに位置づけ、かつ難しいツールの使い方をおぼえることなく、組織内で通じる共通言語となることにある。

アクセス解析の分野では、このところ「KPI」が話題に取り上げられることが多い。今なぜ「KPI」なのか? そもそも「KPI」とは何なのか?について考えてみたい。
アクセス解析のコンサルティングをしていて、企業の担当者の「KPI」の捉え方・活用法には、以下の3つのタイプがあると感じる。

  • Webサイトの目的/目標を明確化する
  • 分析業務の効率化・軽減化をはかる
  • 施策の判断を行い、問題を解決する

この中で、最も多いのが、「1」のWebサイトの目的/目標を明確化することに「KPI」を活用するケースだ。
ここで"目的"と"目標"の定義を明確にしておこう。漢字が表す通り、目的は的(まと)、目標は標(しるべ)だ。つまり、目的は最終的に到達すべき 地点であり、目標は目的にたどり着くための「しるし=指標」を指す。指標は目的に対する達成状況を可視化し、判断や評価に使われる。

「KPIを設計(設定)して欲しい」と相談があるのは、おおむねサイト構築後もしくはリニューアル後が多い。その際に、Webサイトの目的や目標を 確認しても、返ってくるのは曖昧な答えという場合が圧倒的だ。「KPIを設計して欲しい」というリクエストは、実はサイトの目的や目標を設定してくれとい うこととイコールだったりする。また「2」の分析業務の効率化・軽減化をはかるために行う場合も、実は、元々の目的や目標が曖昧なため、分析業務に余計な 手間がかかっている、分析のための分析に陥っているというケースが多いのも現実である。
しかし「1」「2」を解決するためであれば、わざわざ「KPI」という言葉を使う必要があるのか?単に「指標」もしくは「Metrix(メトリクス)」(※1)ではなく、なぜ「KPI」という言葉が使われるのだろう。
Webの世界に「KPI」という言葉を取り入れたのは、おそらく『Web解析HACKS』の著者で有名なエリック・T・ピーターソン氏だろう(※ 2)。「KPI」とは元々、ロバート・S・キャプランとデビット・P・ノートンが1992年に米国のマネジメント誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』上 で"新しい経営指標"として発表したバランスト・スコアカード(以下、BSCと略す)に端を発する。『Web解析HACKS』が出版されたのが1995年 ということを考えると、当時、経営マネジメント分野で注目を浴びていたコンセプトをエリック・T・ピーターソン氏がいち早くWeb解析分野に取り入れたと 考えられそうだ。
BSCを端的に表現すると、目的を達成するためのビジネスプロセスの俯瞰化のツールと言えるだろう。BSCではビジョンと戦略を「財務」「顧客」 「業務プロセス」「学習と成長」という財務と非財務の4つ視点で多角的に捉え、目的達成までの道筋を示し、戦略を組織の末端に落とし込み、さらに、実行状 況の把握を行っていく。このBSCで要となるのが「戦略マップ」だ。「戦略マップ」は成功のための仮説(=CSF:重要成功要因)の因果関係を整理した1 枚の図である。BSCにおける「KPI」はこのCSFの実行状況をモニタリングするための評価指標(スコア)である。
BSCはその概念が提唱されて以来、キャプランとノートンにより、その定義や目的自体が進化し続けている。発表当初「業績評価システム」として提唱 されたが、その後90年代半ばから後半にかけては「戦略」にフォーカスされるようになり、2000年代に入ると組織を変革志向にする「戦略マネジメントシ ステム」を構成するツールとして、さらに2008年に出版された5冊目の著書では、戦略と業務をつなげる「統合マネジメントシステム」の要素の1つとして 位置づけられている。

ここであらためて、エリック・T・ピーターソン氏は、なぜあえて「KPI」という言葉をアクセス解析の世界に持ち込んだのだろう。彼はその著書の中 で、「KPIの目的は、組織がアクセス解析データに親近感を持ち、オンラインビジネスの追跡をしたいと思わせること」と述べている。さらに、「アクセス解 析を現在展開しているビジネスにどう適用していくか、というのは価値ある挑戦である。ここに、KPIの存在意義がある。KPIなら新しいツールの使い方を 覚える必要は一切なく、ビジネスのゴールが直接示され、組織内で通じる言葉で表現される」と説明している。(※3)
つまり、「KPI」はWebだけの世界に縮こまらず、ビジネスプロセス全体の中に組み込まれてこそ、本来の「KPI」となる。ビジネスプロセスに組み込むとは、Webの指標とその他のビジネス指標の因果関係を見出していくことでもある。

ここで1つ提案したい。一度、あなたが日々追いかけているWebの「KPI」をWebの世界から取り出して、会社全体、もしくは事業全体の「戦略 マップ」の中でとらえてみよう。様々なデータを紐付けて数値的に相関を算出することも大事だが、その前に一度、アクセス解析と言う小さなコックピットから 出て、自分自身の頭で仮説を生み出す力を取り戻そう。

※1.「メトリクス」については、『マーケティング・メトリクス』神戸大学名誉教授の田村正紀著(日本経済新聞出版社) が興味深い。マーケターが意思決定に使うメトリクスを"行動型"、企業として統合したメトリクスを"組織型"ととらえ、行動型の多様性をどの程度まで許容 し、またどの程度まで統合すべきかが、マーケティング組織のデザインにとって最も重要な問題だと言及している。

※2.Web担当者フォーラムのサイトに、エリック・T・ピーターソンによる『Web解析のためのKPI大全』の翻訳が掲載されているが、この冒頭でKPIがWeb解析に取り入れられた経緯がふれられている。
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/04/05/9720

※3.同じく『Web解析のためのKPI大全』の第5章で述べられている。
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/06/14/9729

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