コラム

新たな収益を生み出すビジネスモデルとは

久しぶりに軽妙で気づきのある本を読んだ。

※関連ナレッジ資料※
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すべてのビジネスは社会に善なるものでなければならないという哲学

渋沢栄一はご存じのように日本実業界の父と言われている。「利潤と道徳を調和させる」という経営哲学を貫いた人でもある。
守屋淳氏の現代語抄訳も軽快である。

会社に出勤するため、いつも通りJRに乗って日経新聞をひらいた。ふと目をやると、社内吊り広告にサッポロビールのうまそうな新製品の宣伝がある。帰りに買って帰ろうと思いながら、お金をおろすのを忘れていたことに気づき、みずほ銀行のATMに寄る。
そういえばもう年末、クリスマスは帝国ホテルで過ごして、初詣は明治神宮にでも行くかなあ。その前に聖路加病院に入院している祖父のお見舞いにも行かなくっちゃ・・・。

ここに出てくる固有名詞全てに渋沢栄一は関わっている。この原本は1916年に出版されている。約100年前である。それでも、ここで述べられている事は陳腐化していない。ビジネスはすべて社会に善なるものでなければならないと説く渋沢栄一に、ビジネスの原点を見る。

最近、よく取り上げられるビジネスモデルとは、「収益を継続的に安定的にあげていく仕組み」のことである。当然、継続的に安定的に収益をあげるためには、多くの顧客からの継続的な支持がなければならない。そのエッセンスがこの書にはあることを気づかされる。

さて、ビジネスモデルを考えてみよう。早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授がイノベーティブなビジネスモデルについて論じている。

近年、台頭してきているイノベーティブなビジネスモデルを類型化したものである。解釈等は若干、手を加えているのでお許しをいただきたい。

アマゾンは知っての通りだが、従来の本屋での顧客行動をオンライン上に集約したものである。
本屋に入る→書棚を探す→本を手に取る→パラパラと読んで数冊取り上げ→レジに持っていく→店員から金額を伝えられる→財布を開ける、お金を払う→釣銭を もらう→本を鞄に入れる→本屋を出るという顧客の行動プロセスを改革したのである。しかし、本の販売というサービス、本の売上という儲けは原則まったく変 わっていないのである。

東進ハイスクールは進学予備校である。従来の予備校はカリスマ講師による大教室での講義であった。よって大都市に校舎を持つ必要があり、必然的に浪 人生が顧客であった。東進ハイスクールは衛星・DVDを利用することにより、地方都市でも、現役生でも顧客にすることが出来た。新たな市場を生み出したの である。
進学指導というサービスは変わった。しかし、授業料という儲けは同じである。

リブセンスは成果報酬型の求人広告ビジネスである。従来はリクルートのような求人誌に広告料を払って広告を掲載する方式であったが、リブセンスは求人が成立した時のみ広告料が発生する手法を取り、頻繁に求人が発生しない企業など多くのファン顧客を集めた。
求人広告というサービスは同じだが、儲けの仕組みは成果報酬に変わった。

タイムズ24は全国に駐車場を運営している。空き地が増えることでその新たな運営の可能性が発生してきた。一方で車を持たない人が増え、カーシェア の動きが進んできた。駐車場とカーシェアを結びつけた会員制カーシェアビジネスをタイムズ24は創造したのである。もちろん当初から目論んでいたわけでは ない。まさに、新しいサービスで、新しい儲けの仕組みを構築している。

これからは、過激な競争の中で、過剰なコストダウンを進め、強烈な価格ダウンを阻止し、血まみれになるレッドオーシャンなビジネスモデルは似合わない。新しいサービスや儲けの仕組みを生み出し、オンリーワンとしてのポジションを維持できるブルーオーシャンなビジネスモデルを希求したいものである。その原点にすべてのビジネスは社会に善なるものでなければならないという哲学があるのではないだろうか。

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