コラム

マルケト×パワー・インタラクティブ、双方の代表が語るマーケティングオートメーションの可能性

10月27日、大阪・北浜にある大阪証券取引所内の北浜フォーラムで『マーケティングオートメーションが切り拓く法人営業の新しい可能性』セミナーを開催しました。

近年、新たなマーケティングのツールとして注目されているマーケティングオートメーション。「マーケティングオートメーション」という言葉が広まる一方で、ツールへの過剰な期待が先行して本質があまり理解されていないように感じることもあります。そこで弊社では「マーケティングオートメーションがなぜ注目され、法人営業をどう変えるのか」をテーマにセミナーを開催し、講演や対談を行いました。

登壇したのは弊社代表の岡本、そしてもう1名は、様々なマーケティングオートメーションツールの中でも特に注目を集めている「Marketo」を提供する株式会社マルケトの代表取締役社長、福田康隆氏です。

2014年3月の日本法人設立以来大阪でも多数の企業が導入していますが、福田氏は今回のセミナーが大阪初登壇となります。
Marketoを自社で運用し、導入のコンサルティングも行うパワー・インタラクティブとベンダーのマルケト、双方の代表による対談が実現した今回のセミナー。残念ながら参加出来なかった方に少しでもマーケティングオートメーションの可能性を感じられるように、セミナーのレポートをお送りいたします。

※関連ナレッジ資料※

第1部:デジタル時代を生き残るための法人営業の新常識

第1部は「デジタル時代を生き残るための法人営業の新常識」について岡本から解説しました。
近年法人の購買はデジタル化・クロスチャネル化により「購買行動が見えない」という課題を抱えています。その課題を解決するためには顧客の購買プロセスを可視化することが近年の大きな動きだと述べました。さらに「購買プロセスの可視化」を実現するための重要なポイントとして「顧客視点の考え方」と「組織的な営業体制」の2点を挙げました。

顧客視点の考え方

顧客視点に立って考える時には商材ごとに異なるタッチポイントについて押さえる必要があります。岡本は、対面営業中心の商材として「デジタル複合機」と、市場として新しくどこに見込み客がいるかわからない「3Dプリンター」を対比しました。3Dプリンターの場合、Webサイトやメルマガで情報収集を行う段階の見込み客の購買行動をアクセスログで把握することが有効です。さらには「誰が」「どのページ」を見ているか、つまりアクセスログと個人情報を紐付けることが重要なステップになります。

次に、法人客の購買行動には複数のステップ・複数の担当者が存在するためそれぞれに対応したコンテンツの必要性についても説明しました。情報収集段階では「関心を持ってもらう」ためのコンテンツ。比較検討段階では「期待してもらう」ためのコンテンツ。最終的な問い合わせ・注文の段階では「信頼してもらう」ためのコンテンツといったように「適切な人に」「適切なコンテンツを」「適切なタイミングで」コンテンツを提供することで購買行動を可視化していくことがこれから必要になる、と解説しました。

組織的な営業体制

もう1点のポイントは「組織的な営業体制」です。これまでの営業スタイルは営業が全工程を担っており、営業が見込み客を発掘して受注まで追いかけていました。そして見込み客がWeb等を活用している場合、Webでの見込み客発掘はネット。反応があれば営業に渡す、というスタイルがとられていますが、マーケティングから営業に引き継ぐタイミングが難しく、機会を失ってしまうこともありました。これからWebで法人営業を組織的に取り組んでいく際に登場するのが「インサイドセールス」そして「スコア」という考え方です。

インサイドセールスとはマーケティングと営業の橋渡しとなる存在として様々な役割を担っています。その中でも重要な役割の1つとして「BANT情報の取得」を挙げました。BANT情報とは「Budget:予算」「Authority:キーマン」「Needs:ニーズ」「Time Frame:時期」を指します。これらは法人営業において購買意志を測る際に不可欠な情報です。しかしBANT情報は現時点での結果情報であり、今までのお客様の行動情報は把握できません。マーケティングオートメーションによりお客様の行動履歴を掴み、その裏付けをインサイドセールスが行います。インサイドセールスはこの情報をスコアリングして営業へ適切なタイミングで案件を渡し、また開発部門等へは市場情報としてフィードバックしていきます。

最後にデジタル時代の法人営業のコンセプトは「One to one マーケティングの実現」「お客様の生涯価値(LTV)を高める」の2つであり、それを実現するためには組織力とデータ分析によるPDCAが重要であると解説し、第1部のまとめとしました。

第2部:"B2B企業の課題を解決" Marketoエンゲージメントマーケティングのご紹介

第2部は株式会社マルケトの代表・福田氏による"B2B企業の課題を解決" Marketoエンゲージメントマーケティングのご紹介でした。

冒頭はマルケトの会社概要に触れました。2007年の創業以来成長を続け、規模・業種に関わらず世界中の企業に選ばれ高い評価を得ていること。そして2014年3月の日本法人設立以降、導入企業は既に150社を超えていることから、その好調ぶりが伺えました。

マーケティングオートメーションとは

マーケティングオートメーションツール「Marketo」の説明に入る前に、福田氏はマーケティングオートメーションとは何か、を説明しました。現在マーケティング部門はROI向上のために高度な最適化を手作業で行っていますが、メールの出し分けやマルチチャネルへの対応、統合的なデータの分析が求められ作業量は日に日に増えています。さらに営業への引き渡しは個々の対応にまかせられており、部門間の連携がうまくいっていないというご相談も多いようです。このように多くのマーケティング部門は「作業量の増加」や「部門間の分断」が課題となっています。それらの課題を解決するのがマーケティングオートメーションの1つの大きな役割だろう、と福田氏は語りました。

Marketoが提供するソリューション

続いてMarketoが課題に対してどのようなソリューションを提供するのかについて解説がありました。今回のテーマでもあるBtoB企業では、Marketoを使うことによってユーザー一人ひとりの見込み度に応じたアプローチや、施策・段階ごとの検証を行いながらPDCAを回すことが可能になります。

BtoB企業でマーケティングオートメーションを活用するポイントは「営業とマーケティングをいかに結びつけるか」であると述べました。営業はすぐに案件や受注に結びつく見込み客を欲しがっていますが、現実はそこまで甘くなく、タイミング悪くアプローチをかけてしまいチャンスを失ってしまいがちです。一方で全ての見込み客にアプローチする時間もありません。そのような営業が抱えるギャップを、マーケティングと連携することでいかに埋めていくかがポイントになります。

もう1つのポイントは「案件にならなかった人をどれだけ見込み客に戻せるか」です。多くの企業は見込み客から案件になる割合に注目しているケースが多いですが、大抵の場合2~3割と数は多くありません。そこからこぼれていった人たち、7~8割の案件にならなかった人が宝の山なのです。「どれだけもう一度見込み客に戻すことが出来るか」この数字を追いかけていくことでマーケティングは有効になり、営業にも案件を共有できるようになりますが、ほとんどの企業では出来ていません。未案件・失中・優良顧客・ご無沙汰顧客をどれだけもう一度見込み客に戻せるか、これがマーケティングオートメーションの非常に大きな役割となります。

Marketoにはこれらのマーケティングオートメーションの役割を果たす機能が揃っています。リードナーチャリングによる「今」でない見込み客のフォロー、セグメンテーションやスコアリングによってタイムリーなフォロー対象を見つけ出す仕組み、各種CRMとの連携など多種多様な機能とその活用例を、ユーザー事例を交えながら解説しました。

最後にまとめとして、「Marketoはリアルタイムなデータ分析」と「高度な最適化+施策スピードによる向上」でマーケターのROI向上を支援すること、そしてMarketoが選ばれる理由として「プラットフォームの革新性・深い専門知識・エコシステム・投資時間・費用」について紹介し、第2部を締めくくりました。

第3部:対談:マルケト福田氏×パワー・インタラクティブ岡本

質問:福田氏がマーケティングオートメーションの世界に入ったきっかけ

対談が始まると、まず岡本が口火を切り、「福田氏がなぜマーケティングオートメーションの世界に入ったのか」という質問を投げかけました。福田氏は自身のキャリアの中で課題にぶつかった時に出会ったソリューションがマーケティングオートメーションだったと語ります。

「前職時代に営業組織を立ち上げました。当時は獲得するリードは全て新規リードですから、すぐにフォローして案件になるかならないかで良いわけですが、年月が経つにつれて新規リードの流入は減り、以前問い合わせしてきたお客様がもう一度問い合わせてきたりする割合が増えてきます。ところがこれらの過去リードをセグメンテーションしようにもインサイドセールスの対話のメモや会社名、役職などの属性情報の一部しかないため、セグメンテーションができませんでした。これでは、結局一括メールを送ったり、営業が電話をかけたりという労働集約型になり、 効率は上がりません。そんな状況の中でMarketoに出会い、デモを見て惚れ込みました。自社に導入できれば同じ人数で生産性を1.5倍から2倍向上できると感じたのがマーケティングオートメーションの世界に入ろうと思ったきっかけです。」

質問:現在対面営業のみ、Web戦略もほとんど無い。そのような状況で何から始めたらいいのか。

「まずはツールを入れてみて、データをとるところから始めるのがおすすめです。」と福田氏は回答しました。福田氏は自身の経験から「事業を初めてすぐは毎月のように新規リードを獲得できフォローし案件化、というサイクルを繰り返せていました。ところが数年経った頃、案件にならなかった膨大なリード情報はあるものの行動やアプローチの履歴が残っておらずデータが生かしきれなかったためとても後悔しました。データをとりはじめるのは早ければ早いほど情報の資産が溜まっていくので今すぐにでもデータは取り始めるべき。」と話します。

岡本は「例えば新規事業を始めるときはデータがなければ戦略を立てられません。まずはお客さんと自分たちの接点を多く作り、そのデータを集めることが戦略構築のベースになります。」と説明を加えました。

質問:Webであまり情報収集が行われず、対面営業がメインの商材でもマーケティングオートメーションは有効活用できるか。

福田氏はあるユーザーの事例を紹介します。「看板施工を取り扱っている企業で営業は対面が中心で飛び込み営業も多かったようです。従来はアポをとるのが営業の仕事でしたが、Marketoの導入後は「メールアドレスの獲得」が目的になりました。メールアドレスの獲得後メールを送り、相手がアクションを起こした時点で営業が電話をかける。というアプローチに変わったのです。またある時はキャンペーンを行っている商材の映像をYoutubeで公開し、閲覧者にはキャンペーン商材のサンプルを郵送しました。送付時のチラシにURLにアクセスするとすぐに営業が電話をかける。というケースもありました。営業のスタイルや商材関係なく、いくらでもアイデア次第で活用できるということを感じた面白い事例ですね。」と紹介しました。

福田氏の回答に対し岡本は「競合は従来の営業を続けている中で、いち早く新たな方法を選択したメーカーは業界の中でもオンリーワンの強みになると思います。従来型の営業を行っている業界こそ有効なのでは。」と投げかけます。

「ルートセールスというスタイルは変わりませんが、行くタイミングが大きく変わったことで営業の効率も上がります。」と福田氏は述べ、活用方法はアイデア次第と繰り返し話しました。

質問:海外ではCMOという役職があるが、日本ではあまり見られない。今後どのように変化していくか。

「日本では確かにCMOという役職はあまりありませんが、その代わり経営企画や営業推進といった部門がマーケティングと営業を繋ごうとしている動きが見られます。」と福田氏は回答。続けて「ただマーケティングやテクノロジーについての知識はまだまだ伝わっておらず、進化も早いのでキャッチアップは難しいですが、マーケティングと営業を全体的にカバーする人は増えてくるのではないでしょうか。」と今後の展望を示しました。

最後に岡本が総括を行う形で「今後のマーケティングを推進していく際に必要な要素は『しっかりとした戦略』『戦略を実行する組織』『全体を繋げていくデータ』の3つですね。」と福田氏と共に確認し合い、対談は終了となりました。

まとめ

かつて営業を仕切る立場として感じた課題が原点となっている福田氏。自身もユーザーとして成功や失敗を積み重ね、キャリアの中で数々のマーケティング・営業現場を見てきた経験がベースになり、マーケティングオートメーションの役割を伝えたいという意志が強く伝わってきました。講演や岡本との対話の中で紡ぐ福田氏の言葉の1つ1つからまさに「マーケティングオートメーションの可能性」を感じられたセミナーでした。

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