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新規事業の成功可能性を考えるための切り口

2017年7月13日(木)

代表取締役 岡本充智【文責】

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 問題です。あなたは製粉会社のマーケティング担当者です。輸入小麦の価格が上昇しており原価率が上昇しています。一方で主力販売先の製麺業界や製パン業界からの受注が伸び悩んでおり売上・利益の減少が避けられません。社長より新規事業として早急にパンを主体にしたカフェレストラン出店を練るように指示されました。さてあなたならこの新規事業についてどのように考えますか。

 ここで考えなければいけないことは、本業である製粉事業と新規事業であるカフェレストラン事業の親和性です。親和性とはどの程度本業のノウハウや経験が、新規事業に活かせるかということです。親和性については、次のいくつかの視点で見るのがいいでしょう。

【流通チャネルの親和性】
製粉会社は小麦を輸入して製粉した小麦粉を食品会社や販売店に販売します。カフェレストランの最終顧客は一般消費者ですが、ショッピングモールや百貨店などの商業施設のデベロッパーが流通チャネルになります。出店交渉や契約形態など大きく異なります。流通チャネルの親和性はほとんどないと言ってよいと思います。

【コスト構造の親和性】
製粉会社のコスト構造は小麦の仕入れ価格によるところが大きく、サイロや工場の減価償却費や維持費、人件費コストがかかります。カフェレストランは食材費、什器備品、店舗運営費、人件費などです。コスト構造で共通している点はほぼ皆無です。コスト構造における親和性はまずありません。

【収益構造の親和性】
製粉会社の収益は小麦粉や加工品の販売量によって決定します。カフェレストランは立地と客単価・来店客数によって収益が左右されます。ここにも親和性はありません。

【組織能力の親和性】
カフェレストランに必要な組織能力は食材の在庫管理、メニューの開発、接客サービス、スタッフ教育、店舗マネジメント、集客ノウハウなどです。製粉会社の組織能力とはあまりにも相違点が大きく、今までの組織能力を活用することは困難です。

【競合の親和性】
米粉専門店、ベーカリーカフェなどを出店している製粉会社もあるようです。それなりに可能性があるのかもしれませんが、果たして収益を上げているのでしょうか。調べてみる必要がありそうです。

【顧客の親和性】
製粉会社の顧客は製麺会社、製パン会社などの食品会社や販売店になります。典型的なBtoBモデルです。一方、カフェレストランは若い女性をはじめ一般の方々です。顧客・市場における親和性はまったくないと言えます。ただ、最近は最終消費者である女性のニーズに対応したミックス粉の商品開発を進めていますのである程度の消費傾向は把握しています。

 ここまで見てきて新規事業であるカフェレストラン事業は少なくとも本業とはまったく別の事業です。しかし、そのような新規事業としての可能性が少ないと思われるカフェレストラン事業ですが、何か突破口はないでしょうか。例えば、ディリーヤマザキを運営している山崎製パンは年間売上高約1兆円の1割近くをディリーヤマザキで売り上げています。「パン」という主力商品を軸にしてフランチャイズシステムは緩やかにして、個人経営のパン屋や酒屋を加盟店として増やしていったことが成功要因です。製パン会社のコンビニエンスストア事業への進出モデルですがヒントはありそうです。製粉会社は店舗が拡大していっても供給能力はふんだんにあります。むしろ供給量を増やすことでコストを低減させて、その間に店舗運営力を蓄積していき親和性のギャップを埋めていくことができそうです。もし製粉会社に単に小麦粉を生産するだけではなく、用途に応じたミックス粉の開発力と小ロット納品力があれば全国のカフェレストランの購買部門にオリジナルミックス粉を供給することができます。カフェレストラン自体の運営は任せ、自社のミックス粉を使用してくれるカフェレストランとの業務提携は考えられないでしょうか。そしてこの製粉会社は統一ブランドをつくりプロモーション活動をしていくことでミックス粉の供給先は増えていき、カフェレストランの事業は選択しなかったが、結果としてミックス粉のカフェレストランへの拡販展開が可能になります。これで新たな新規事業の誕生です。

 新規事業を考えるときには、まずこのように六つの視点から本業との親和性について検討することで、新規事業の入り方が見えてきます。ぜひ活用ください。

以上

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    代表取締役岡本充智
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