コラム

技術市場マトリックスが未来を創る

代表取締役 岡本 充智【文責】

これからの企業のあり方を考えるときに技術市場マトリックスの組み合わせは欠かせない。技術市場マトリックスは技術シーズと市場ニーズを二軸として、企業の技術戦略のあり方を方向付けるものである。製品と市場を二軸に配置したアンゾフの成長マトリックスをベースとした発展型である。

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見えているニーズは、企業がすでにキャッチしており自社の技術課題として挙がっているものである。これからのニーズは顧客がニーズとして感じているが企業が把握できていない潜在ニーズ、あるいは顧客自身もニーズとして自覚していない未知ニーズになる。今回は見えているニーズに対する技術シーズのアプローチ方法について考えてみたい。

見えているニーズに対して、技術シーズは改善や改良を通じて技術を深掘りしていく技術の深耕が必要である。技術の深耕は、大きく三つのアプローチが考えられる。一つ目は経験を重ねるほど作業効率や原料配分などの効率が高まる経験効果により生産性を上げていくことで実現する大幅なコストダウン。二つ目は主としてITの利活用により製造プロセスや営業プロセスあるいは顧客の利便性にかかわるプロセスを飛躍的に高めるプロセスイノベーション。 三つ目は競合品や旧モデルを新製品により置き換えていく既存品のリプレイスがある。大半のビジネスはこの見えているニーズに対して技術を深耕させる活動を行っていると言える。ただし、このゾーンは市場が成長しているときは十分な収益への転換が見られたが、現在の先進国のように長期停滞が起こっている状況では市場が飽和状態もしくは縮小する中、市場パイの奪い合いになり大きなリターンが期待できない。

先進国は長期にわたる生産性の伸び悩みと新たな需要創出の欠如により長期停滞の状況にある。このような中で先進技術国の一翼を担うわが国は新しい市場を創り出す責務がある。視点を変えれば新しい市場は無限に広がっていると考えられる。まず見えているニーズに技術を進化させることで壁を打ち破りたい。新しい市場づくりのキーワードは川下化とファイン化である。

川下化は、原料メーカーなら材料加工を、部品メーカーなら製品加工を、製品メーカーならばシステムやサービスを手掛けるというように加工度を上げていくことで付加価値額を高めていくことである。川下化により市場に接近することになり企業価値も高まる可能性が出てくる。併せて市場と顧客が見えることで顧客が抱える課題に敏感になり、顧客の問題解決を図ることができるようになる。

一方、ファイン化は技術集約度を高めていくことである。技術集約度を高める手段として画期的な高品質、大幅な低コスト、軽く薄く短く小さくする軽薄短小、特殊化を極める、極限技術に挑戦、個性を発揮する、ロングテールな多品種少量などが考えられる。技術集約を進めていくためには自社の強みである技術を明確にしておくべきである。歴史をかけて蓄積されてきた基幹技術は技術集約度を高めていく基礎となるものであろう。ファイン化を成し遂げることで、いままでとは異なる市場にも参入することが可能になる。

企業の技術は、社会の課題を解決していくために積極的に投資されるべきである。時代は第四次産業革命に入っている。IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミーなど技術的なキーワードには事欠かない。地球上には多くの社会課題が存在している。技術先進国の企業は技術の進化に取り組む中でこれらの技術的キーワードと向き合い、社会課題を解決していく存在でありたい。

以上

岡本 充智

代表取締役

岡本 充智

中期ビジョン策定支援

京都⼯芸繊維⼤学繊維学部卒業。株式会社アシックス⼊社。アスレチック部⾨の商品開発・販売促進を担当。新規ブランド⽴ち上げやブランドマネジャーを歴任。その後、住友ビジネスコンサルティング株式会社に転じ、マーケティング分野のコンサルタントとして戦略デザインの構築・実⾏⽀援に数多くの成果を上げる。1997年2⽉、株式会社パワー・インタラクティブ設⽴。代表取締役に就任。現在に⾄る。

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