意外とシンプル? 好事例の手法に学ぶフラットな組織の作り方

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組織変革と聞いてすぐに思い浮かぶのは、自主管理を基本とするフラットな組織です。例えば、ティール組織やホラクシー、アジャイル‥‥‥。
しかし、それらにはそれぞれ基盤となる理論や手法があるばかりでなく、導入に先だって組織メンバーの意識改革をする必要もある。これでは、実現させるのはなかなか難しそうだと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ところが、案外シンプルな手法でそれらのコンセプトに合致するような取り組みをし、成果を挙げている小規模な企業もあります。
それはどのような手法なのでしょうか。
そして、成果として何が実現したのでしょうか。

本記事ではフラットな組織がもたらすメリットを押さえた上で、ユニークな実践事例をご紹介します。

自主管理を基本とするフラットな組織のメリット

そもそも、従来のヒエラルキーを排して、フラットな自主管理型組織への変革を目指すべき理由は何でしょうか。

ここではそのメリットをみていきますが、その前に、フラットな構造がなじまない組織もあるということを押さえておきたいと思います。
また、組織変革をするとしても、ひとつの組織をまるごと新しい組織モデルに変革することが必ずしも適切とは限らない場合もあるでしょう。同じ組織内にも組織変革が必要な場所もあれば、従来の階層構造がふさわしい場所もあり、その峻別が難しいケースもあるかもしれません。

ここでは、そうしたことを前提に、自主管理型のフラットな組織がもたらす主なメリットについてみていきます。

心理的安全性の向上

フラットな組織は心理的安全性が高いといわれます。それはなぜでしょうか*1

心理的安全性とは、「自分が思っていることを自由に言っても過度に批判を受けたり人格的な攻撃を受けない、という安心感」のことです。 心理的安全性が高いチームはハイパフォーマンスだと言われています。 なぜなら、不安や恐怖は学習を妨げるからです。このことは、神経科学的な研究で証明されています。 不安や恐怖が認知リソースを消費してしまうため、作業記憶の管理や新情報を処理する脳領域にリソースが届かなくなり、その結果、分析的思考や創造的考察、問題解決ができなくなってしまうのです。

ヒエラルキー型の組織が心理的安全性を低くしてしまうのは、それが階級的な組織構造であることと関連しています。

ヒエラルキー型組織では、職位に上位と下位が存在しますが、下位メンバーは上位メンバーの存在そのものにストレスを感じ、安全性を感じにくいといわれています。 一方、上位メンバーにとっては下位メンバーのそうした不安を感じ取ることが難しいという側面があります。
例えば、リーダー職とそれより職位の低い所属メンバーの間、あるいはマネジメントをする人とされる人の間には感覚や意識のズレが生じやすい傾向があります。

したがって、メンバー間の力関係をフラットにすることが心理的安全性を高めるのに有益なのです。

意思決定の明確化と簡素化

次は意思決定に関するメリットです。*2

ヒエラルキー型組織だと、肩書と職務、それに上下関係が複雑に入り組んでいるため、誰が何を意思決定したのか判別するのが難しいのが常です。
一方、ホラクシー型組織などフラットな組織モデルでは、それぞれの役割を誰が担っているのか、何に対して責任を負っているのかが一目瞭然です。

何かアイディアがあれば、関係者の元に出向いて話し合えばいいため、意思決定のプロセスや規範も簡素化されます。
その結果、意思疎通が効率的、正確に行われることになります。

ただし、フラットな組織とはいえ、実際には過去の役職や職位、職務などによって影響力を持つ人とその影響力を受ける人がいるのが現実です。
そのため、フラットな組織を目指すためには、かつて上位の職位に就いていた人やマネジメントを担っていた人をはじめ、構成メンバー全員の意識改革が必要です。

期待できるのは生産性向上だけではない

組織改革に期待される生産性向上

自主管理型組織のこれまでの実践によって、その生産性の高さが証明されています。さらに、そうした組織は、複雑性と変化が激しい状況においても生産性向上が見込めます。*3

残念ながら日本は先進国の中で労働生産性が低いという状況があります(図1)。

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図1 主要先進7カ国の時間当たり労働生産性の順位の推移

出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較

労働生産性とは、「労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したもの」です。*4

2020年、日本の1人当たり労働生産性は、78,655ドル(809万円)で、OECD加盟38カ国中28位と、1970年以降最も低い順位でした。*5

ただ、労働生産性は、労働者の能力向上や効率改善に向けた努力、経営効率の改善などによって向上します。*6
それで、組織変革がその突破口になるのではと期待されているのです。

「丸ごとの自分」として働く

ティール組織が大切にしているコンセプトのひとつに「全体性(ホールネス)」があります。*7
ティール組織の提唱者フレデリック・ラル―氏は、歴史的にみて、組織とは人々が「仮面」をつける場所だったと述べています。

私たちは、仕事に行くときには自分らしさの大部分を家に置いていく。しかし、私たちが思い切って自分自身のすべてを職場に持ち込むと、驚くべきことが起こる。「全体性」が得られれば人生は予想以上に充実したものになる。
そして、自主経営組織は、それを可能にするというのがラル―氏の主張です。

ラル―氏は、次のような例を示し、人々は安全で開放的な職場で働いてこそ最も深い人間性が刺激され、他者を思いやることができると述べています。

その例とは、RHD(リソーシズ・フォー・ヒューマン・ディベロップメント)社の取り組みです。RHDは全米14州で精神疾患、発達障がい、麻薬およびアルコール依存症、有罪判決を受けた人々、ホームレスなど支援を求める数万人の人々のためにサービスを提供している組織です。

ティール組織として成功しているRHDは、仕事と人間のあり方を以下のように定義しています。

  1. 人は皆、平等に尊い存在である。
  2. 人は明確にそうでないと証明されない限り、本質的に善良だ。
  3. 組織の問題にはうまく対処する単一の方法はない。

RHDでは仕事や責任の多くは自分で決め、自分で監督することになっています。
「しなければならないこと」「すべきこと」はほとんどなく、ただ他の人たちのために何か建設的なことをするように期待されているとメンバーは感じています。

RHDは創立以来40年以上にわたって成長し続けていますが、その成功を呼び込んでいるのは、RHDが多くの人々に対してあたたかな思いやりを提供しているからだとラル―氏はいいます。

RHDの職員は上述の定義に沿って、自分の裁量で、金曜日の退社直前に生じた突発的な事態にも思いやりをもって柔軟に対応し、厄介な問題にブレークスルーをもたらす。
そうした職員の人間性は、RHDが実現している安全で開放的な環境だからこそ発揮できるというのです。

イングリッシュネームで呼び合う企業

ここで、意外とシンプルな手法でフラットな組織を実現している企業をご紹介しましょう。
日本のDIY文化を牽引する企業です。

社員25名、パート1名、売上高5,452,579,210円(2020年12月度)。*8

この企業では、社長も社員も全員イングリッシュネームで呼び合います。*9
「さん」「くん」「ちゃん」などの敬称もなし。
社長も「ジャック」と呼ばれています。
ちなみに、役職もなし。

きっかけはジャックが商談で赴いた台湾。取引先の企業文化に惹かれたためだといいます。
グローバル企業を目指していたこともあり、早速この呼び方を取り入れることにしました。

ジャックはもともと「社長」「専務」など役職での呼び方が好きではありませんでした。
「部長だとか課長だとか役職で呼ぶのってそもそも名前じゃないし、その時点でヒエラルキーを感じてると思う」
ジャックはフラットな組織を目指しました。
そして、この呼び方を始めて感じたのは、メンバー同士の距離が近くなったということです。

会社のビジョンとスローガンも印象的です。*10
ビジョンは「らしさがあふれる、世界を。」
スローガンは「be you.」です。
これらは先ほどみたティール組織の「全体性」というコンセプトと合致します。

この会社にはCulture Createチームという会社の文化を創るチームがあり、新しいビジョンとスローガンがどうすればメンバーに浸透するかを考えています。

そのひとつが名刺。
表面にはイングリッシュネームが、裏面にはメンバーそれぞれの「らしさ」を表す画像が入っています(図2)。

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図2 ジャックの名刺(裏面は好きな銭湯の写真)

このような名刺にしてから、社内のスタッフ同士での名刺交換が自然に始まりました。
名刺の裏面を見て、相手の思いがけない側面を知り、相手への理解を深め合っています。

イングリッシュネームで呼び合うというシンプルな手法と、ティール組織のコンセプトとも一致するビジョンとスローガン。
そして、それらを浸透させるための工夫がフラットな組織作りにつながり、さまざまな成果をもたらしているのです。

自主管理型のフラットな組織はさまざまなメリットをもたらします。
大がかりな仕掛けではなくても、案外シンプルな手法で実現できることもある―この企業の取り組みは、そんなことを示唆しているのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

横内美保子

博士。元大学教授。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。
Webライターとしては、各種資料の分析やインタビューなどに基づき、主にエコロジー、ビジネス、社会問題に関連したテーマで執筆、関連企業に寄稿している。

*1:大垣伸悟(2021)「【エッセンシャル版】成功するアジャイル開発」株式会社ギガストリート(電子書籍版)pp.146-149

*2:イーサン・バーンスタイン/ジョン・バンチ/ニコ・キャナー/マイケル・リー 著・倉田幸信 訳『ホラクシーの光と影』(「ハーバード・ビジネス・レビュー」)ダイヤモンド社pp.30-31

*3:イーサン・バーンスタイン/ジョン・バンチ/ニコ・キャナー/マイケル・リー 著・倉田幸信 訳『ホラクシーの光と影』(「ハーバード・ビジネス・レビュー」)ダイヤモンド社pp.10-11

*4:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較

*5:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較

*6:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較

*7:フレデリック・ラル―(2019)『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』EPUB版No.4068-4314

*8:株式会社 大都「会社概要

*9:株式会社 大都「ジャックブログ:なんでジャックなの?」(2019.03.25.)

*10:株式会社 大都「ジャックブログ:とんでもないところへ行くただひとつの道。」(2018.10.22.)