DX時代のカギを握る「ゼロパーティデータ」とは?いま重要視されている理由

DX推進にともない、改めて「データ活用」に取り組む企業が増えています。

なかでも、いま重要視されているのが「ゼロパーティデータ」。ゼロパーティデータとは、簡単にいえば「顧客が意図的に企業へ共有する、自分に関するデータ」です。

ゼロパーティデータには、顧客の趣味嗜好や興味関心の情報が含まれ、顧客インサイトの宝庫ともいえます。

本記事では 、ゼロパーティデータの基礎知識と重要性、活用のヒントをご紹介したいと思います。

ゼロパーティデータとは何か?

ゼロパーティデータを理解するには、先に以下3つのデータ区分を知っておく必要があります。

  • ファーストパーティデータ
  • セカンドパーティデータ
  • サードパーティデータ

ファースト・セカンド・サードパーティデータとは?

ファーストパーティデータ

ファーストパーティデータとは、自社が顧客から直接収集したデータです。

会員登録時に顧客が入力した氏名・住所・生年月日・メールアドレスや、購買履歴、Web行動データがファーストパーティデータにあたります。

ファーストパーティデータは、最も信頼のおけるデータです。顧客から直接収集する分、データの正確さと透明性が高いからです。

セカンドパーティデータ

セカンドパーティデータとは、パートナー企業が顧客から直接収集したデータです。

セカンドパーティデータの特性は、ファーストパーティデータと似通っています。セカンドパーティデータとは、言い換えれば「パートナー企業のファーストパーティデータ」だからです。

ただし、データ収集者が自社ではなく他企業であるため、正確さと透明性は下がる可能性があります。

サードパーティデータ

サードパーティデータとは、第三者が収集した外部データです。データ販売サービスを行う企業から購入して利用します。

サードパーティデータの利点は、スケールの大きさです。ファーストパーティデータ・セカンドパーティデータではリーチできない顧客にリーチできる可能性があります。

しかし、データの正確さと透明性は低く、信頼度という意味では最も劣るのがサードパーティデータです。

ゼロパーティデータとは「顧客が意図的に共有する自分に関するデータ」

前置きが長くなりましたが、本題の「ゼロパーティデータ」に話を戻しましょう。

まず押さえたいのは「ゼロパーティデータは、ファーストパーティデータの一部」ということです。自社が顧客から直接収集するデータになります。

ファーストパーティデータのなかでも、とくに「顧客が意図的に企業へ共有する、自分に関してのデータ」を区別して、ゼロパーティデータと呼びます。

ちなみに、ゼロパーティデータの言葉が登場したのは2018年頃のこと。「ファースト/セカンド/サードパーティデータ」の区分だけでは表現し切れない、新たなデータの呼称として開発されました。

Netflixの例

Netflixの例を見てみましょう。

Netflixの新規登録プロセスでは、メールアドレス・料金プラン・支払い方法などを入力したあと、「お好みの作品を3つ選んでください」と動画リストが表示されます。

この「お好みの作品」が、ゼロパーティデータにあたります。

  • ファーストパーティデータ:メールアドレス
  • ゼロパーティデータ:お好みの作品

いまゼロパーティデータが重要視されている2つの理

なぜいま「ゼロパーティデータ」なのか?といえば、2つの理由があります。

  1. セカンド・サードパーティデータの先行きが厳しい
  2. 優れたパーソナライズを実現するために必要である

(1)セカンド・サードパーティデータの先行きが厳しい

1つめの理由は「セカンド・サードパーティデータの先行きが厳しい」からです。

自社保有のファーストパーティデータ以外は、制限が強まっていくと予測されます。個人情報およびプライバシー保護強化の動きが、世界的に高まっているためです。

とくにサードパーティデータに関しては、データ収集に必要なCookieの廃止問題があります。

たとえばApple社は、すでにSafariでサードパーティのCookieをブロックしています。Google社も、今後Chromeでブロックする予定を公表しています。

このような時流にあって私たちがすべきことは、ファーストパーティおよびゼロパーティデータを主軸としたデータ活用へのシフトチェンジです。

(2)優れたパーソナライズを実現するために必要である

2つめの理由は「優れたパーソナライズを実現するために必要」だからです。

パーソナライズとは、顧客に応じて提供するコンテンツやサービスを変える戦略のこと。

顧客データをもとに、一人ひとり異なるニーズや趣味嗜好を予測し、コンテンツやサービスを出し分けるのですが、ここで重要になるのがゼロパーティデータなのです。

従来のファーストパーティデータ(居住地・性別・年齢など)だけでは、優れたパーソナライズは実現できません。

顧客インサイトに直結するゼロパーティデータがあってこそ、パーソナライズが成り立つのです。

※パーソナライズについて詳しくは「パーソナライズとは何か?顧客が抱く3つの感情と実務ポイント」もあわせてご覧ください。

ゼロパーティデータを活用するヒント

ではゼロパーティデータは具体的にどのように活用したらよいのでしょうか。実践のヒントを3つ、ご紹介します。

  1. 有益なデータは“タダ”では集まらない
  2. 「何を・どう聞くか?」の手腕が問われる
  3. 収集したデータを最大限に活かす

(1)有益なデータは“タダ”では集まらない

「ファーストパーティデータ(ゼロパーティデータ)は、自社データだから無料」 といわれることがあります。

たしかに、データの購入費用はかかりません。しかし「顧客に利益を還元しないと、有益なデータは集まらない」点は押さえたいポイントです。

というのは、ゼロパーティデータは、顧客が自分の意志で、企業へ提供するデータです。

情報を入力・送信するには手間がかかりますし、自分の個人情報を渡すリスクも感じるかもしれません。

“顧客が手間やリスクを乗り越えてデータを提供したいと思える分の価値”と「交換」で入手できるのが、ゼロパーティデータなのです。

つまり顧客は、「この情報を渡したら、相応の価値を返してもらえる」と期待して、ゼロパーティデータを提供します。

そういった意味では、タダでは有益なゼロパーティデータは入手できません。

(2)「何を・どう聞くか?」の手腕が問われる

顧客インサイトに直結するゼロパーティデータを、顧客から引き出せるか否か。それは、マーケターが「何を・どう聞くか?」次第といえます。

というのは、単に聞きたいことをストレートに聞くだけでは、必ずしも「真の答え」にたどり着けないからです。

マーケティングリサーチの世界では「顧客は嘘をつく」といわれます。

アンケートやインタビューで、顧客は無意識のうちに自分をよく見せようとしたり、あるいはよくわからないからと適当な選択肢を選んだりするのです。

顧客は嘘をつくことを踏まえて、本音を引き出すためにどうするか。ここを思慮深く、深い洞察力で設計することで、ゼロパーティデータの質が上がります。

(3)収集したデータを最大限に活かす

ゼロパーティデータは、眺めるのではなく「使う」のが最大のポイントです。

収集したあらゆるデータに対し、 「顧客体験を高めるために、どう使えばよいか?」 と検討し、実際のパーソナライズ施策に反映させていきます。

ひとつのゼロパーティデータも無駄にせず、使い倒すつもりで向き合っていく。それが、企業を信頼し、自分のデータを提供してくれた顧客へ“価値”を返すことでもあります。

さいごに

本記事では「ゼロパーティデータ」について解説しました。

ゼロパーティデータは、顧客とブランドが良好な関係を構築するカギといえます。

DX推進の一環としてゼロパーティデータの取り組みをスタートすれば、今後のマーケティング活動の強力な武器となるはずです。

この記事を書いた人

三島つむぎ

ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。