不揃い野菜の売上アップを実現 ルッキズムとマーケティングの関係とは

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不揃いの野菜が廃棄処分されてしまう。 これは、日本に限らない問題のようです。

ただ、この外見の揃っていない野菜に付加価値をつけて売ったところ、好評を得ている事例があります。

外見によって人の行動にバイアスを与える「ルッキズム」はよく話題に上りますが、これを商品の上手なPRに利用するという発想があります。

農産物の事例を紹介し、ルッキズムとマーケティングの関係を覗いてみましょう。

見た目が悪い農産物をより良く売った方法

アメリカでは、毎年150億ドル相当以上の食べられる野菜を小売業者が廃棄しているほか、農家も3分の1近くの作物を、見た目の悪さを理由に廃棄しているといいます*1。 そのような中、ブリティッシュコロンビア大学では「ラベリング戦略」に注目して、このような実験が行われました。

見た目が悪い農産物に「アグリー(ugly)」と明記したところ、消費者に最も購入されやすかったというのです。

この現象ついて、ブリティッシュコロンビア大学のシッタンズ・ムーカージー氏は「『アグリー』のような表示を売り手が誠実に、率直に使うと、より信頼できると思われるかもしれません」と述べています*2

「アグリネス・ペナルティ」という心理

また、別の背景として、「アグリネス・ペナルティ」という心理現象があるとムーカージー氏は説明しています。

人はネガティブな性質を、魅力的ではない外見のせいだと見なす傾向があるのです。私たちの研究でも、食料品を購入する際に、見た目が悪い農産物ほどおいしくない、健康によくないと思い込み、その認識が購入の意思決定を左右することがわかりました。
しかし、農産物の見た目が悪いことを明記すると、外見が唯一の欠点であると強調することによって、視覚的に不完全な食べ物に対するバイアスが断ち切られるのです。

<引用:「ハーバード・ビジネス・レビュー」2022年3月号 p7>

一方で、この「見た目」が抱える障壁を異なる形で売り込みに繋げている事例があります。

不揃い食材だけを販売するサービス

食材宅配サービスの「らでぃっしゅぼーや」が昨年、「不揃いRadish」という新サービスを始めました。
「ラベリング戦略」の観点から見ると興味深いものです。

「不揃いRadish」は不揃いの食材のみを販売する新サービスですが、注目すべきはそのネーミングと販売手法です。

例えば、「鬼花トマト」と名付けられたトマトがあります。

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「不揃いRadish」の「鬼花トマト」

このトマトは、栄養が集中してしまった花から実がなったために変わった形をしています。まさに、他よりも栄養を蓄えた「鬼花」から生まれたトマト、というわけです。そう考えると魅力的なトマトだと感じるのは筆者だけでしょうか。

そして、「青春色づきミニパプリカ」として販売されている商品もあります。

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「青春色づきパプリカ」

また、育ちすぎた春菊のベビーリーフを「チャイルドリーフ」と名付けて販売しています。えぐみが少なく、会社で販売している春菊の2倍近くの売り上げになっているといいます*3

いずれも、愛嬌のあるネーミングや「なぜ不揃いになったのか」を明確に説明していることで好評を得ていると考えられます。
筆者としては野菜の「内面」を見た気になり、感情移入すらしてしまいそうです。

適切な価格設定も重要

また、前出のムーカージー氏は、このようにも語っています。

一つ注目すべき点もわかりました。「アグリー」のラベルと適切な価格設定を組み合わせるのが重要なのです。 魅力のない農産物を大幅に値引きすることはよくありますが、値引きをしすぎると、見た目以上に何か問題があるのではないかというメッセージを帯びてしまいます。

<引用:「ハーバード・ビジネス・レビュー」2022年3月号 p7>

その上で、40%や60%の値引きより、20%という適度な値引きの方が実際に多くの購入に繋がる、としています。

「無印良品」では、都内の80店舗で「不揃いりんご」とネーミングしたリンゴを2020年に一部店舗で発売しました。

こちらはリンゴ販売までの「工程」に注目し、以下の作業を省いた商品だといいます*4

① 赤い色をつけるための作業

  • 反射シートの使用
  • 日光が当たるように果実を回転させる"つる回し"
  • 果実に日光を当てるための"葉採り"

② 外観で選別する作業

  • 傷の有無を選別する作業
  • 色ムラの有無を選別する作業

    ③ サイズを細かく分ける作業

  • 通常7段階でサイズ選別するところを大・中・小の3段階選別に軽減

価格はサイズに応じて1個100円から150円です。
安値で放出している価格ではないでしょう。あえて安値にしていないのです。しかし、前年にも販売したところ好評を得て、2020年は3倍のリンゴを発売しました。

販売に至るまでの思想に共感することで自分は良い行いをしている、そう感じることで「アグリネス・ペナルティ」を相殺し、むしろそれ以上の購買意向に繋がったと考えられます。

暗黙の「イメージ」を解消し、個性に

これらの事例が示すのは、人にどうしても生じてしまう「ネガティブ・チェック」を回避することの重要性です。
売り手が弱気になってしまうと、かえって消費者のネガティブ・チェックを強めてしまうということがわかります。

ところで、ジャズの名曲に「マイ・ファニー・バレンタイン」があります。フランク・シナトラから数々の名アーティストによって歌われ続け、今でも多くのアーティストやジャズファンに愛される曲です。

曲名からバレンタインデー前後には好んで演奏されるようですが、皆さんはその歌詞をご存じでしょうか。実は「Valentine」は人名なのです。

My funny valentine
Sweet comic valentine
You make me smile with my heart
Your looks are laughable
Unphotographable
Yet you’re my favorite work of art

直訳してみると、

私のおかしなバレンタイン
甘い、人を笑わせるバレンタイン
あなたは私を心から笑顔にさせる
あなたの見た目は笑ってしまうようなもの
写真には向いていない
だけど、あなたは私の好きな芸術作品。

といった具合です。

そして、だからといって髪の毛1本変えないで、そのままでいてくれたら毎日がバレンタインデーのように素敵だから、と締められています。
「funny」で「comic」なバレンタインを思って作られたのが、あの美しい名曲です。

いかがでしょうか。
物事を率直にラベリングすることの意義は、往年の名曲にも隠れていそうです。

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この記事を書いた人

清水沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に関連メディアに寄稿。

*1:「ハーバード・ビジネス・レビュー」2022年3月号 p6-p7

*2:「ハーバード・ビジネス・レビュー」2022年3月号 p6-p7

*3:規格外の野菜・果物=安い、は古い?」NHK

*4:全国80店舗の無印良品で展開 『不揃いりんご』発売のお知らせ」良品計画