ソーシャルリスニング(傾聴戦略)とは?デジタル時代に顧客の声を聞く手法

ブランドが顧客の支持を得て成長していくために、今や不可欠ともいえるのがソーシャルメディアの存在です。

一方で、顧客や世間の感情の機微に対して無理解であったために、思わぬ炎上や顧客の失望を引き起こす事例も、少なくありません。

本記事では、そんな現代だからこそ改めて取り組みたい「ソーシャルリスニング」について、お話したいと思います。

ソーシャルリスニングとは何か

まず「そもそもソーシャルリスニングとは何か?」という基本概略から解説します。

ソーシャルを傾聴して機微を知る

ソーシャルリスニングは別名「傾聴戦略」とも呼ばれます。SNS・ブログ・掲示板などのソーシャルメディアで繰り広げられるオンライン会話に耳を傾ける手法です。

重要なポイントとなるのが「リスニング(傾聴)」です。

傾聴とは?

耳を傾けて、熱心に聞くこと。*1

ソーシャルリスニングとよく対比される言葉として「ソーシャルモニタリング」があります。

ソーシャルモニタリングでは、自社ブランドに直接関連する会話をモニタリング(監視)し、その会話に対して適切な対応をします。

一方、ソーシャルリスニングでは、自社ブランドに無関係なことも含め、顧客のあらゆる会話がリスニング(傾聴)の対象です。

包括的な傾聴を何のために行うのかといえば、「機微を知るため」といえます。

機微とは?

表面だけでは知ることのできない、微妙なおもむきや事情。*2

マーケティング用語で表現するなら機微とは「インサイト」です。

ソーシャルメディア上の会話に隠されたインサイトを発見するために、ソーシャルリスニングを行います。

口コミ分析やエゴサーチとの違い

「ソーシャルリスニングって、口コミ分析のことでしょう?」 という指摘もあります。

厳密には異なるのですが、口コミ分析を指すこともあります。ソーシャルリスニングという言葉が、幅広く使われるようになったためです。

ここでは、あえてニュアンスの違いを述べてみましょう。

マーケターが仮説や意図をもって一部の口コミを特定し、分析するのが「口コミ分析」とするなら、ソーシャルリスニングは、はじめから仮説や意図を持ちません。

ソーシャルリスニングのプロセスは大きく2つに分かれていて、1つめのプロセスでは何の先入観ももたず、ただ顧客の会話に耳を傾けます。

2つめのプロセスで、会話の背後にある機微は何なのか、どんなインサイトが隠れているのか、探っていきます。

ソーシャルリスニングにおける2つめのプロセスで口コミ分析を行うことはありますが、両者は同じではないということです。

同じ理由で、ソーシャルリスニングは「エゴサーチ」とも異なるものです。エゴサーチは前述の「ソーシャルモニタリング」に近いアクションといえます。

ソーシャルリスニングが重要な3つの理由

ソーシャルリスニングがブランドにとって重要なのは、なぜでしょうか。

その理由を一言でいうなら「顧客中心に考えることを促進するから」です。

具体的に掘り下げると、3つのポイントが挙げられます。

  • 顧客の会話というファクトを大量入手できる
  • 競合ブランドの様子がよくわかる
  • 炎上リスクを回避できる

ひとつずつ見ていきましょう。

理由1:顧客の会話というファクトを大量に入手できる

まず、“顧客の会話というファクト”を大量に入手できることが挙げられます。

DX時代のマーケティングでよくいわれるのが、 「マーケターの勘や経験に頼らない、データドリブンであることの重要性」 です。

顧客が何を望んでいるのか、何を必要としているのか。ソーシャルリスニングなら、推測ではなく「顧客の口から発せられた会話」という事実を通して、正確にとらえることが可能です。

しかも、その“会話の質の高さ”が着目したい点です。

ユーザーインタビューで意図的に収集した会話や、アンケートで過去の記憶を引き出した会話ではありません。

リアルタイムかつ自然に発せられた“生の会話”を入手できるのです。しかも大量に、です。

生の会話には、顧客に最善な体験を届けるための貴重なヒントが詰まっています。

理由2:競合ブランドの様子がよくわかる

ソーシャルメディアの登場は、競合ブランドと自社ブランドの在り方を変えました。

オンライン上の会話の多くを、誰もが無料で、自由に見ることができます。競合ブランドの動きからユーザーの反応まで、丸見えです。

競合ブランドの動きを把握したうえで、顧客に何を提供すべきか、じっくりと考えることができます。

あるいは、競合ブランドのミステイクを目撃して、自分たちが同じ過ちを繰り返さないよう、学習できます。

理由3:炎上リスクを回避できる

そもそも、日頃からソーシャルリスニングをしていると、ブランドが炎上するようなアクションを起こさなくなります。

その前にチームメンバーの誰かが、かならず間違いに気づくからです。もし間違った行動をとったとしても、炎上前の火種(顧客のネガティブな声)を発見できます。

大きな炎上が起きるのは、顧客が、
「そんなことは、わかってくれていて当然でしょう?」
「ちっとも私たちの気持ちを理解していない」
と感じる間違いをしたうえに、そのことに気づかないときです。

顧客の失望や悲しみが深いほど、大きな怒りとなって表現されます。

注意したいのは、顧客ロイヤルティを高める施策に励み、好感度を高めているブランドほど、顧客の失望も大きくなることです。

顧客ロイヤルティの向上施策と炎上リスクの回避施策は、両輪で実行しなければなりません。

ソーシャルリスニングをどう始めるか

では、私たちはソーシャルリスニングをどのように始めればよいのでしょうか。

教科書的にいえば、まず目的を明確化し、目的に沿って手段(ツール)を比較検討します。ツールを導入したらキーワードを設定し、データ収集および分析を行う、という段取りです。

ですが、ここではもう少し根源的な、取り組み姿勢に近いお話をしたいと思います。

ロジャースの3原則に従ってSNSと向き合う

ソーシャルリスニングにおいて何より重要なのは、「顧客の声に耳を傾ける」という傾聴の姿勢です。

「傾聴とは、具体的にどうすることなのか?」 という問いに対しては、米国の心理学者カール・ロジャーズが提唱した傾聴の3原則が、深い洞察を与えてくれます。

ロジャーズの3原則

1.共感的理解 (empathy, empathic understanding)

相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。

2.無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)

相手の話を善悪の評価、好き嫌いの評価を入れずに聴く。相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴く。そのことによって、話し手は安心して話ができる。

3.自己一致 (congruence)

聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認する。分からないことをそのままにしておくことは、自己一致に反する。

*3

ロジャースの3原則はカウンセリングで用いられるものですが、顧客の会話を聞くうえでも、そのまま当てはめることができます。

たとえばTwitterやInstagramの投稿を読むとき、顧客の立場に立って、顧客の気持ちに共感しながら理解しようとします。

善悪の評価や好き嫌いの評価は入れません。否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、肯定的な関心を持って読みます。

生じた疑問や不明な部分は、わからないまま放置しません。リサーチやデータ分析を通して、答えを探します。

必要に応じてツールを導入する

傾聴の心構えを持ちつつ、より多くの会話を体系的にとらえるためには、ソーシャルリスニングツールの導入が必要となります。

ソーシャルリスニングツールに搭載されているおもな機能は、以下のとおりです。

  • TwitterをはじめとするSNSやブログ・掲示板などのコメントをテキストデータとして収集する
  • 人工知能(AI)・テキストマイニング※ などの技術を使って分析する
  • 分析結果をグラフなど視覚的にわかりやすい形で可視化する

※テキストマイニング:大量のテキストデータを自然言語処理などで分析し、問題点や有益な情報を抽出する手法。

有料のソーシャルリスニングツールがさまざまなベンダーから提供されていますので、検討してみてください。

有料ツールは使わず、無料で簡易的に取り組みたいときに利用できるツールとしては、以下があります。

Google トレンド

あるキーワードがGoogleでどれだけ検索されているかトレンドを確認できる https://trends.google.co.jp/trends/?geo=JP

Google アラート

Google 検索で特定のトピックについて新しい検索結果が見つかったときにメールが届く https://www.google.co.jp/alerts

Yahoo!リアルタイム検索

Twitterに投稿されたツイートを検索できツイート数の推移や感情の割合が表示される https://search.yahoo.co.jp/realtime

ラーニングをもとに戦略を立てる

ソーシャルリスニングを通して得られたラーニングは、すみやかに活用していくことが大切です。

ラーニングをもとに戦略を立て、具体的なアクションに落とし込んで、ブランドの活動に反映していきます。

たとえば、コンテンツの修正、新しい商品の開発、カスタマーケアの応対など、顧客とのタッチポイントを、よりよく変えていきましょう。

顧客は、自分の声をきちんと聞いているブランドはどのブランドなのか、見分けます。ソーシャルリスニングをていねいに積み重ねることこそ、真の顧客ロイヤルティ醸成につながるはずです。

さいごに

本記事では「ソーシャルリスニング」をテーマにお届けしました。

以前は、
「カフェで隣の席から聞こえる女子高生の会話にヒントを得て、ヒット商品を開発した」
といった話を聞くことがありました。

今では、オフィスにいながら、世界中の多様な人たちの会話に触れることができます。

誰もが多くの会話にアクセスできる現代。だからこそ、「聴き方で差が出る」といえるのではないでしょうか。

ソーシャルリスニングを、さらなる顧客理解の手がかりとしていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

三島つむぎ

ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

*1:出所)"けい‐ちょう【傾聴】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-04-16)

*2:出所)"き‐び【機微】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-04-16)

*3:出所)厚生労働省 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「傾聴とは