ヘルス&ビューティ業界では、「展示会」をリード獲得の重要な場としている企業が多いのではないでしょうか。
東京ビッグサイト・幕張メッセ・パシフィコ横浜など、定期的に大きな展示会が開催されています。
コロナ禍では展示会の代替として「ウェビナー(オンラインセミナー)」もブームになりました。
その一方で、実物ありきの美容健康商材を、オンラインでやり取りするのは難しいと実感された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、これからコロナ禍の収束とともに、再び盛り上がると考えられる「展示会での営業活動」について、取り上げたいと思います。
来場者として展示会を見つめてきて
本題に入る前に、筆者の立ち位置を簡単にお伝えします。
筆者は、メーカー(商品の企画開発、マーケティング担当者)の立場から展示会へ来場してきました。
来場者から見ると、
「こちらのブースは、商材はすばらしいのに足を留める人が少なくて、もったいない」
「初めて知った会社だけれど、担当の方の営業ですぐ取引したくなった」
など、さまざまな感想を持つことがあります。
ここでご紹介するのは、そんな経験をもとにしたお話です。
基本の王道というよりは、“ちょっと違った視点からの変則エッセンス”として、参考にしていただければと思います。
良質なリードを獲得するために心掛けたいこと
ではさっそく本題に入ります。
展示会の当日にリードの獲得数を増やすために心掛けたいこととして、3つのポイントをご紹介します。
- 予算配分は「ブース装飾<おみやげ」
- 来場者に刺さりやすい訴求表現
- 来場企業の下調べ
予算配分は「ブース装飾<おみやげ」
一般的に「展示会は“ブースの装飾”によって集客力が決まる」とされ、実際に大手企業は豪華なブースで圧倒的な集客力を誇ります。
ですが、「良質なリード獲得」という目的に絞ると、ヘルス&ビューティの展示会では、ブース装飾での集客は絶対条件ではありません。
もちろん、予算が許すなら作り込んだほうがよいのは事実です。
しかし「限られた予算で最大の効果を出すには?」と考えるなら、ブース装飾の予算はほかに配分したほうが効率的と考えられます。
集客しなくても来場者はブースに来る
その理由は、集客にお金をかけなくても、良質なリードにつながる来場者は、ブースに来るからです。
というのも、中堅メーカーでは、重要展示会の開催期間は終日、担当者が展示会場を訪れています。
すべて見て回るのがその日の仕事なので、「ブースの装飾が目立っているところだけ行く」といったことはありません。
展示会のマップを片手に、端から端までしらみつぶしに全ブースを訪れます。
同じ会社から数人〜数十人が参加していることも珍しくなく、「ブースの装飾に予算をかけないことで取りこぼすリード」の影響は、思った以上に小さいはずです。
ブースが豪華でもおみやげがないと成約につながりにくい
では、どこへ予算配分をするべきかといえば、それが「おみやげ」です。
どんなに豪華なブースでも、来場者が自分のオフィスに帰る頃には、記憶から消えてしまいます。
来場者の視点から見ると、1日で数十〜数百というブースを回って商談するので、頭の中はてんてこ舞いなのです。
そこで「手元に物理的な“モノ”として、おみやげを持ち帰ってもらうこと」がカギとなります。
▼ おみやげの具体例
- 展示会用に製造したサンプル品
- 商品紹介のパンフレット、冊子
(社名の入った手提げ袋にセットして入れる)
このおみやげは、充実しているほど成果に直結します。その日の展示に関係ないものも含めて、てんこ盛りにしてもよいくらいです。
実際に筆者も、当日は慌ただしく名刺交換だけした会社と、後日おみやげをきっかけに取引を開始したことが何度もあります。
オフィスへ持ち帰った“モノ”は社内共有もしやすく、思わぬところから成約になるケースも多々あります。
来場者に刺さりやすい訴求表現
ブースでは、展示品の紹介をパネルなどで訴求するかと思いますが、どんな表現だと目が留まりやすいのか、3つの視点をご紹介します。
(1)違う
1つめは従来品と「違う」ことがわかる表現です。
“シワに効く△△成分”があったとして、
「今までよりもシワ改善効果が150%増」
といわれても、目が留まらずに流れてしまいます。見慣れすぎているためです。
それよりもたとえば、
「成分の原液の色が真っ赤」
といわれたほうが、興味を惹かれます。
一般消費者とは刺さるポイントが異なる点は、意識されるとよいかもしれません。
(2)新しい
2つめは「新しさ」の訴求です。
これはいうまでもないかもしれませんが、やはり展示会では新しい情報を求めている来場者が多くいます。
新しさを具体的に数字で表現するほか、新しい技術や成分の名称を大きく掲げるのも良い手法です。
シンプルに見えますが、
「この名前は知らないけれど、なんだろうか?」
と、中堅以上の担当者のアンテナには引っかかるため、キャッチ力があります。
(3)ストーリー
3つめは「ストーリー」の訴求です。
近年増加しているD2Cブランド(ブランドと顧客が直接つながるECモデルのブランド)が重視しているのが「世界観」で、世界観をつくるためにかかせないのがストーリーです。
たとえば、ひとつの容器でも、“その容器がつくられるまでのストーリー”を、ブランドの世界観に合う文脈で語れることが評価されます。
いま注目度が高いのはSDGsへの取り組みですが、それだけに限定せず、“語れるストーリー”がないか再点検してみてください。
自分たちにとっては普通に感じるエピソードが、じつは魅力的なストーリーであることも少なくありません。
来場企業の下調べ
最後にご提案したいのが、来場企業の下調べです。
展示会では、限られた時間で数多くの名刺交換をしていきます。
その短い時間でも来場者のテンションが上がり、「もう少し深くお話してみたい」と思うのは、相手が自社ブランドや商品について知っていてくれたときです。
誰もが知っている大手企業なら別ですが、展示会ではまだ一般知名度のない中堅メーカーも多数来場しています。
名刺交換のときに、
「あっ、●●のブランドの◎◎社さんですか」
「最近、〜の新商品を出されましたよね」
「Instagramでよく広告をお見かけしていました」
といった会話が出たら、商談もスムーズになります。
そこまでいかなくても、社名を知ってくれているだけ、ブランドのイメージカラーを何となく記憶してくれているだけでも、うれしくなるものです。
自社で取り扱う商品と関連度の高いメーカー・ブランドは、事前にリサーチしておくと、役立つかもしれません。
さいごに
本記事では「美容・健康業界の展示会」をテーマにお届けしました。
今回は獲得リードのナーチャリングまでは触れていませんが、最近はMAツールを活用する企業が増えている影響か、タイミングよく連絡をいただく機会が多いように感じています。
メールマガジンの配信など、オンラインでのフォローアップを充実させている企業も増えています。
記事中でご紹介したなかでは、とくに「ストーリーの訴求」がメールマガジンなどのWebコンテンツと好相性です。
展示会とオンラインをうまく融合させることで、さらなる相乗効果を実現していただければと思います。