ハイブリッドワークの活用で社員のQOLを向上|導入事例やその効果は?

新型コロナウイルス感染症の拡大により、東京23区では4割以上がテレワークを経験し、地方移住やワークライフバランスの充実を求める働き方が広がっています。
場所を問わず、多様な人材が活躍できるので、今まで就労するのが困難であった優秀な人材を確保するチャンスも生まれました。

在宅勤務が通常化することにより、広いオフィスがいらなくなり、オフィス賃料など経営にかかるランニングコストが削減できるのもメリットです。

そこでこの記事では、ハイブリッドワークがもたらす新しい働き方や、必要なITツール・サービス、必要な環境、サテライトオフィスの概要、ハイブリッドワークを導入している企業例などについて解説をします。
ぜひ、新しい働き方の一つとして参考にしてください。

ハイブリッドワークとは

新型コロナウイルス感染拡大の先行きが見えない中、リモートワークを継続するのか、オフィスワークに戻るのかで各企業が考えを巡らしています。 近年では、「ハイブリッドワーク」というワードがよく聞かれるようになりました。

ここでは、ハイブリッドワークとはどんな働き方なのかについて解説をします。

オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方

簡単にいうとハイブリッドワークとは、オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方を指した言葉です。
具体的にはオフィスに出社したり自宅で仕事をしたり、社員が働き方をフレキシブルに選べます。

育児や介護などで毎日の出社が難しい社員はテレワーク、オフィスで働きたい人はオフィスワークなど、仕事の内容や社員の状況に応じて選べるのがメリットです。

新型コロナが猛威をふるっていた時期は会社全体として、「⼀⻫在宅・⼀部出社」がよくみられました。
近年ではこれが、「⼀部出社・⼀部テレワーク」など個人が働く場所を組み合わせる働き方が目立ちます。

近年においてハイブリッドワークは、社員の満足度が高い働き方として注目されています。

ハイブリッドワークに必要なITツール

テレワークはオフィスではない場所で仕事をするため、情報通信システムとしてテレワーク用ツールが必要です。

ITツールには以下のような種類があります。

ITツールの種類 内容・メリット
コミュニケーションツール ・チャット、ビデオ通話、Web会議システムなどでコミュニケーションをする
・コミュニケーション不足を補い、交通費などのコストを削減できる
リモートアクセスツール ・データやソフトウェアに外部からアクセスするツール
・リモートデスクトップ方式、クラウドアプリ方式、VPN方式はリーズナブルな傾向
勤怠管理システム ・リモートでテレワーカーを管理する
・仕事に従事していることを上司に把握してもらえる
ファイル共有ツール ・ほとんどの文書を電子化して、サーバー上の共有フォルダーに置く
・ペーパーレス化に貢献
バーチャルオフィスツール ・同一の仮想空間で個々の作業状況や会話意欲などが見える化する
・仕事の状況が確認しやすく、コミュニケーションにも便利
<図1:参考)厚生労働省「テレワーク用ツール」>

例えばオンライン上で複数人によるビデオ会議ができるZoomなどを使えば、遠隔地にいても会議や商談に参加できます。リモートアクセスツールを利用することにより、機密情報の漏洩を防ぎながら社内の共有ファイルにアクセスすることが可能です。

勤怠管理システムで上司が部下の仕事状況を把握でき、ファイル共有ツールの導入でサーバー上の共有フォルダーにファイルを置いておけば、どこにいても参照できるようになります。

バーチャルオフィスツールでは仮想空間にアバターを設定し、まるで現実のオフィスのようにコミュニケーションできるのがメリットです。

フレキシブルオフィスで「働き方改革とコストカット」を同時に実現

「フレキシブルオフィス」とは、「シェアオフィス」「コワーキングスペース」「レンタルオフィス」などの総称で、一般的な賃貸借契約とは違い、柔軟な契約スタイルを持つオフィスを指しています。

ここでは、テレワークの現状やサテライトオフィスの需要などを踏まえながら、働き方改革とコストカットが同時にできる理由について解説をしましょう。

東京圏のテレワーク経験者の約88%は今後もテレワークを継続したい

新型コロナの感染拡大によりテレワークの導入が進みましたが、テレワーク経験者においては総合的に満足度が高く、全国のテレワーク経験者は、81.5%が今後も実施したいとの意向を示しています。(下図2)

全国に関しては週2・3日の割合でテレワークをしたい人が約2割ずつおり、週5日という人も同程度です。東京圏では約88%の人がテレワークを希望し、週5日の頻度で実施したいという人が最多という結果になりました。

したがって、一度テレワークを体験した人は、将来的にもテレワークで働き続けたいという人が多い状況です。

図2

<出典)国土交通省「新型感染症の感染拡大を契機とした変化」 P18>

東京都では、モデル的に設置・運営するサテライトオフィス「TOKYOテレワーク・モデルオフィス」を実施しており、テレワークを行える環境整備を進めています。

都内に住んでいるまたは都内にある企業等で働く従業員が利用でき(要件を満たしていることが必要)、府中、東久留米、国立の3ヶ所にある施設を無料で利用することが可能です*1

サテライトオフィスなどの需要は高まりつつある

サテライトオフィスとは、企業の本拠地から離れた場所に設置されたオフィスのことです。 従業員が通勤しやすい場所にあり、オフィスにいる場合と同レベルの仕事ができるオフィスという意味合いもあります。部屋の種類は個室型が主流で、サテライトオフィスは設置する場所により「都市型」「地方型」「郊外型」の3つに大別されます。

同じく仕事をする場所としてコワーキングスペースもありますが、こちらは個室ではなくカフェのようなオープンスペースです。同じ場所で作業する人と触れ合う機会が多く、新たなビジネスチャンスが生まれることも期待できます。

国土交通省が都内に勤務するオフィスワーカーを対象に実施したアンケートによると、サテライトオフィスとコワーキングスペースは、それぞれ6割以上の人が「必要である」と回答しています。(下図3)

希望する立地は「最寄り駅の近く」が半数以上となり、次は「ターミナル駅の近く」など、従業員にとって利便性の高い場所が人気です。

多様な働き方を実現できれば従業員の離職対策となり、離職率低減も期待できると共に、優秀な人材を確保できます。

図3

<出典)国土交通省「新型感染症の感染拡大を契機とした変化」 P19>

企業はフレキシブルオフィスの導入でコストカットが可能

レンタルオフィスやコワーキングスペースは、会社の状況に応じてプラン変更や移転が簡単なのが魅力です。業務内容やプロジェクトに合わせてワークスペースを柔軟に確保できます。

例えば、社員が50名の場合、25名用のオフィスを借りて25名をテレワークでのシフトにすれば、今までの半分の広さのオフィスで事足ります。

レンタルオフィスなどではデスクや椅子などのオフィス家具があらかじめ用意されており、通信環境も完備されているので高額な初期費用がかかりません。無駄な費用がかからずコストカットも可能となります。

ただし、オフィスを選ぶ際にはセキュリティーの高いオフィスを選ぶことが重要です。 防犯面はもちろんのこと、情報漏洩を防ぐためにインターネット環境で安全性が高いオフィスを選択します。

ハイブリッドワークを導入している企業例

従業員のワークライフバランスを重視している企業は、すでにハイブリッドワークを導入しています。

ここでは、ハイブリッドワークを実施している企業の例をご紹介しましょう。

株式会社リコー

株式会社リコーでは、2020年10月からリモートワークを標準化しています。

社員は職種や仕事内容に応じて柔軟に働く場所を選び、リモートワークと出社を組み合わせたハイブリッドな働き方を促進中です。

新しい働き方を進めるために、以下の取り組みを実施しています。

  • 2018年度から全社員を対象に在宅勤務を促進
  • 2020年10月からは在宅勤務などのリモートワークを新しい働き方として標準化
  • 職種や仕事内容に合わせて出社とリモートワークを組み合わせたハイブリットワークを実践
  • 職種別の席数比率に基づいたフリーアドレスを全面的に展開
  • 所属部門が認めた場合は転勤や単身赴任の解除も可能
  • 旅行先や帰省先で一時的な業務を行うワ―ケーションもOK

対面・非対面を組み合わせたハイブリッドな働き方を促進しながら、自由度の高い働き方を認めて社員のワークライフバランスの実現を目指しています*2

日本マイクロソフト

日本マイクロソフトは、ハイブリッド ワークで多様性のある働き方を目指しています。

2007年に在宅勤務制度を開始し、2018年には、さらに働き方改革を推進するために「ワークスタイル変革チーム」を発足しました。2019年に取り組んだ「ワーク ライフ チョイス チャレンジ」は、週勤4日週休3日という画期的な取り組みの一つです。

新しい働き方として、以下の取り組みを実施しています。

  • ハイブリッドワークを促進するために品川本社オフィスをリノベーション
  • WEBミーティングや電話に最適なPhoneブースを設置
  • オフィス面積の1%に本物のグリーンを設置
  • お客様も利用できるコワーキングスペースを設置

ハイブリッドワークを促進するためにオフィスの環境を整え、場所に依存しない働き方ができるシステムを構築しました。

リモートワークを順調に行える環境を整備したので自宅でも仕事に取り組めますが、出社したときには快適に作業ができるようにPhoneブースなどを設けています。

気分転換ができるアクティビティールームなども設置して、社員が心身ともに健康で働ける環境づくりを実現しています*3

まとめ

近年ではテレワークだけでなく、ハイブリッドワークでの働き方を導入する企業が増えています。

多様な働き方が実現できる現代においては、社員一人ひとりの状況や仕事に合わせて働く場所を使い分けることができるようになりました。従業員が「幸せ」を感じながら働けるようになると生産性が向上し離職率も減るので、ハイブリッドワークは企業にとってもプラスになる働き方といえます。

この記事を書いた人

矢口美加子

ライター・宅地建物取引士・整理収納アドバイザー。宅建・整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を取得済みです。不動産・リフォーム・不動産投資・転職・整理収納関連の記事を複数のメディアで執筆。ライター業の他に、家族が経営する投資用物件の入居者管理もこなしています。