誰にでも簡単にできる「バズる情報発信の方法」は、実はたった1つしか無い

昔馴染みの友人の一人が、SNSにこんな投稿をしていた。

「このたびnoteを始めました。まずは、フリーになってからこれまでのことを、ざざっと書いてみました。もっと多くの人に自分の活動を知ってもらうため、発信力を高めることが目標です。
これからもよろしくお願いします」

彼女はフリーのデザイナーだ。
HPの制作や印刷物のデザインを手がけるかたわら、自然派食品の商品開発やブランドのプロデュースもしているそうだ。
Webメディアの記者兼で編集長を名乗っていることもあり、今後はメディア運営とPRの仕事に力を入れていきたいと抱負を語っていた。

昔から美人で性格が良く、顔の広い彼女には友人知人が多い。なのでSNSに何か投稿すれば、いつもそれなりの数の「いいね」を集めている。
「noteを始めました」というお知らせの投稿にも、100を超える「いいね」が押されており、好意的なコメントが並んでいた。
そこで私も興味を引かれ、彼女が何を書いているのか読んでみることにした。

リンク先に飛んでみると、すでに5つの記事が用意されている。そこに記されていたのは彼女の半生だ。
学生時代からの夢と挫折。社会に出て働き始めてからの理想と現実。会社をやめてからのフリーター生活。様々な仕事に挑戦しながら、独学で身につけたWebデザインの技術。
そして、フリーランスのデザイナーとして独立してからの苦労。人生の転機となった出来事と地方移住。

時には熱く勢いよく、そして時にはさらさらと流れるような筆致で、思いの丈を吐き出すように文章が綴られていく。

私は指で画面をスクロールしながら、
「うーわ、おもんなっ」
と、かまいたちの濱家がツッコミを入れる声を脳内で聞いた。

「え、何なんこれ?」
脳内には相方の山内も居る。

「長いんじゃあ〜」
そこへ千鳥のノブもたたみかけてきた。あぁ、脳内で「千鳥かまいたちアワー」が始まってしまう。
大悟の出番がないけど、ちょっと待って、本当に。何なんこれ?

仮にもメディアの記者や編集長を名乗る人物が、この全く人を惹きつけない文章を書いているのかと思えば、誰だって脳内で「千鳥かまいたちアワー」が始まるだろう。

彼女は「発信したい」と言いながら、その文章は誰に向けても発信されていなかった。読者を意識していない、ひとりよがりの独白なのである。

私の脳内ノブがツッコミを入れていたように、まず長い。すごく長い。おもんないまま話が長い。
ストーカーでもない限り、読み手にとって一般人の半生なんて「どーでもええがな」としか思われないことが分かっていない。

だから彼女のnoteには、フォロワーがたったの10人しかおらず、それぞれの記事についている「スキ」を表すハートマークも10以下なのである。

「えー、なんで?なんでスキ♡が10以下なん?『note始めました』の投稿に『いいね』押してた100人以上の友達って、みんなどこいったん?」

あぁ、脳内の山内がうるさい。
恐らく彼女の友人たちは、1記事くらいは読んでみたのではないだろうか。しかし、途中で挫折し、最後まで読みきれなかったにちがいない。だから、友達ではあってもnoteのフォロワーにはなれず、面白くないものにスキ♡も押せなかったのだ。

「友達みんな正直やなー」
あぁ、もう。脳内の濱家もうるさいよっ!

ともかく、世間の人にとっては実にどうでもいい一般人の自分語りを最後まで読んでもらうには、

  • 話に大した中身はないけれど、語り口が巧みで面白い
  • 個人的な内容でありながら、誰もが頷いてしまう共感を呼ぶネタである
  • 読んだ人にとって、学びの要素を多く含んだ体験談である

以上のどれかに当てはまる必要がある。何も文豪のような名文を書く必要はないのだが、多少なりとも「面白かった」「為になった」と思ってもらえるものを出さなければ、忙しい現代人に時間を割いてもらうことは難しい。

残念ながら彼女の文章には、思わずクスッとするようなユーモアが全くなかった。
そして、恐らく「誰も傷つけまい」と全方位に気をつかったせいだろう。どこにも棘がない代わりに、当たり障りもなさすぎた。だから「おもんない」のである。

さらに言えば、文章に込める熱量のバランスも、初めから終わりまで間違えっぱなしだ。
彼女は「どーでもええ」ところを熱く長く語り、「そこどうなってんの?」と気になるところはサラッと流してしまう。
どうしても伝えたいと思う箇所に力が入る気持ちは分かるのだが、

「地方には、素晴らしい商品を作っている事業者さんがたくさんいるんです!私はそうした方々が生産に取り組む真摯な姿勢や、商品の素晴らしさを伝えて、より多くの消費者に繋いでいきたい!
もっと伝えたい、繋げたいと思っているのに、発信力がついていかない現実がずっともどかしかった。今は様々なセミナーに参加し、発信力強化の手法を学んでいます。
2023年には、事業者に寄り添った言葉で発信するメディアを本格的に始動させます。

販路拡大に悩む方々のサポートができるよう、新しい広報/PR支援サービスを作ります!」

「あぁ、ごめん。聞いてなかった。ワシちょっと眠とうなってしもうて」
あっ、ここでようやく大悟も出てきましたね。

いや、でもね。こんな一本調子で話をされたら、大悟じゃなくても聞いてません。
これといった才能も実績もない人が語る「私がやりたいこと」なんて、誰も興味がないのですから。
かつて彼女と同じようなことを考えて、盛大に上滑ってた私が言うのだから間違いないです。

ここで一つ、私の個人的な話をしましょう。
10年ほど前になりますが、ハンドメイド作家としてイベント出店をしていた頃、
「世の中にはすごく素敵な作品作りをしているハンドメイド作家さんが、こんなにも沢山いるのだな」
と、素直に感心しておりました。感心し過ぎて、

「みなさん手間ひまかけて素敵な作品を作っているのに、世の中に知られていないなんてもったいない。しかも、ほとんどの作家さんは商売下手で、あまりお金も稼げていない。これはおかしい!もどかしい!
こうなったら、私が新しい販路を作ってしまおう。そして、良い物作りをしている人たちを紹介して、応援するメディアも作ろう!」

と、使命感に燃えてしまったのです。
そして件の友人と同じように、大金をぶち込んだ高額セミナーでいいようにカモられ、じゃなかった目標を実現するための勉強をしました。

セミナーでは、連日のように意識高い仲間たちと共に熱く語り合います。私はセミナー中もランチ中も、終わった後の飲み会でも、バカの一つ覚えみたいに

「私はこれまでに関わってきたハンドメイド作家さんたちのために、定期開催される新しいハンドメイドマルシェを立ち上げたい!発信力も身につけたい。そうやって作家のみなさんを応援したいんです!」

と、気炎を吐いておりました。
4日も一緒にいた人たちに、朝から晩まで同じことをリピートしていたのですから、心優しい仲間たちは分かってくれたと思いますよね?

ところがどっこい、みんな何一つ覚えてやがらないの。
「えーっと、ゆきちゃんのしたいことって何だっけ?」
と、後になって素で聞いてくるのです。

「えっ?寝てた?寝てたの?マジで?私があれだけ熱く語ってたあいだ、みんな目ぇあけたままずっと寝てたわけ?」

唖然としてしまいましたが、寝てたんでしょうね、マジで。私が一人でブチ上がってる最中、それを聞いていた人たちは、どうやら意識をどこか遠くに飛ばしていたみたいです。
分かる!私も他のみんなが熱く語っていたあいだ、同じことしてたから!

ええ、そうなのです。私の方でも、そのときの仲間たちがそれぞれ熱弁していた話の内容を、何にも覚えておりません。意識を遠くに飛ばして、目を開けたまま寝てました。
人間なんてそんなものです。何かしら心に引っかかる話をしてくれない限りは、基本、他人の話は聞いてません。

目の前で話していてもそうなのですから、文章なんてもっとです。
だから伝えたいことがあるなら、楽しく読んでもらうことを意識するのです。

「そう言われても、面白い文章なんて書けない」
という方、大丈夫です。面白さで戦えない場合は、誠実さで勝負をすればいいのですから。

私は高額セミナーに20万円をつぎ込みながら(やらかしネタとして、後に美味しく回収いたしました♡)、そこでは発信力を身につける具体的な方法は教えてもらえませんでした。
けれど、チャンスを探してもがいている中で、ある起業家の男性と知り合い、授業料ゼロ円+豪華食事付きで「一本目の記事からブログが読まれる方法」を教えて頂くことができました。
その方法とは、以下の通りです。

「いいかい、ブログを始める前に、まずは何でもいいからSNSのアカウントを作って、情報発信を始めなさい。君の場合、ハンドメイドに興味がある人を集めたいのだから、ハンドメイド関係の情報を集めて流すといい。

ある程度のフォロワーが集まるまでは、ひたすらお役立ち情報を流すことに徹するんだよ。それをコツコツと継続して、信頼を得ること。いきなりブログを書き始めても誰にも読んでもらえないけれど、あらかじめ君の投稿を見てくれるフォロワーを確保してから書き始めたら、1本目の記事から読んでもらえるからね。
先ずは人の役に立つことをする。自分が本当に伝えたいことを発信するのは、それからだよ」

納得した私は、言われたことを素直に実行しました。FacebookページとTwitterアカウントを新しく作り、毎日コツコツと情報発信して、時間をかけてフォロワーを増やしました。
そしてFacebookのフォロワーが1000人、Twitterのフォロワーが500人を越えたところで、ようやくブログを書き始めたのです。

おかげで私のブログには、1本目の記事から数百人の訪問者がいました。その後、紆余曲折あってハンドメイドからは離れたものの、方向性が変わってもブログの読者は増え続け、最高月間PV40万のブログに育ちました。

私の場合は、たまたま活字を通した情報発信が向いていましたが、写真や動画であっても基本は同じだと思います。
フォロワーを増やす為に必要なのは、
「読んでくれる人、見にきてくれる人を楽しませる精神」
か、もしくは
「顧客に役に立つ情報をコツコツ上げる誠実さ」
です。

さらに重要なのが、「何があろうと心折れずに継続する力」です。

友人の話に戻りますが、彼女は「発信力を上げたい」と言いながら、その後ちっともnoteを更新していません。

「いや、挫折すんの早ない?」
「絶対メディア運営とか無理やん」

おおっと。まだおったんか、脳内かまいたち。

例えどんなに文章力が高くても、始めていきなりバズる記事は書けないし、すぐにはファンもつきません。
発信力を上げる為には、自分に合ったやり方を見つけるまで、ともかく試行錯誤を「続ける」ことです。
時間はかかるけれど、小さな努力の積み重ねが、結果的にファンの獲得につながっていきます。
面白くない結論かもしれませんが、地道な努力を越えるテクニックはないのです。

この記事を書いた人

マダムユキ

最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。