トヨタイムズから学ぶ、好感度を上げるオウンドメディアの作り方とは

近年、企業のオウンドメディアが増えてきています。

自社サイトへの集客やファンづくりなど、さまざまな目的で運営されており、企業情報を読者にとって有益な形で届けています。

オウンドメディアの運営にゴールはなく、常に試行錯誤が繰り返されるのが特徴です。

では、オウンドメディアを成功させるためには、どのような工夫をすればよいのでしょうか。

今回は、トヨタ自動車の事例を参考に、この問いを検証していきます。

オウンドメディアとは

オウンドメディアとは、企業が所有するメディアのことです*1

一般的にはWebサイトやブログなどが挙げられますが、広義にはパンフレットやニュースレター、広報誌など、企業が制作・発信するあらゆるものがオウンドメディアに含まれます。

オウンドメディアは、「トリプルメディア」と呼ばれる3つのメディア形態のうちの1つです。

オウンドメディアの他に、お金を払って広告を掲載する従来の「ペイドメディア」と、SNSのように信用を得るために利用する「アーンドメディア」がトリプルメディアとして存在します。

3つのメディア形態の大きな違いのひとつは、コンテンツの蓄積力です。

ペイドメディアは広告出稿をやめると流入が途絶えますし、アーンドメディアはコンテンツの拡散や共有をコントロールできません。

一方、オウンドメディアは、コラム記事や用語集などをサイトに蓄積して資産化でき、コンテンツ次第では継続的な検索流入が見込めるというメリットがあります。

企業ブランディングのため8割が注力

宣伝会議が実施した「オウンドメディアの運用」に関する調査結果によると、「とても注力している」「注力している」と答えた人が8割を超え、各社ともかなり力を入れていることがわかります*2

また、オウンドメディアに期待する役割として最も多かったのは「企業イメージの向上、企業ブランディング」で、回答企業の約7割が期待していることがわかりました。

■オウンドメディアにどんな役割を期待していますか?(複数回答)

オウンドメディアは、実際に企業イメージやブランディングの向上に効果があるのでしょうか?

東洋経済が発表した「企業好感度の高い企業トップ300社」ランキングを参考に見てみると、上位5社は以下の通りでした*3

1位「セブン-イレブン」(42.8%)
2位「無印良品」(40.9%)
3位「日本マクドナルド」(38.6%)
4位「トヨタ自動車」(35.1%)
5位「ユニクロ」(32.8%)

各社ともオウンドメディアに力を入れていますが、5社のうち、特にトヨタ自動車に注目したいと思います。

高く評価された「トヨタイムズ」への取り組み

日経クロストレンドと日経MJが共同で行った「マーケター実像調査 2021」によると、マーケティング先進企業上位3社として、P&G、グーグル、そしてトヨタ自動車が選出されました*4

同社の「トヨタイムズ」の取り組みが、マーケターから高く評価されたといいます。

■トヨタイムズの特別版雑誌『トヨタイムズmagazine』

「トヨタイムズ」は、トヨタ自動車が2019年より運営するオウンドメディアで、トヨタ自動車の情報をクロスメディアで発信しています*5

特徴は、広告と広報を融合させた新しいスタイルを確立していることです。

社内向けのコミュニケーションをマスメディアも含めて統合することで、社外にトヨタ自動車の応援団を作ることが一つの目標となっています。

オウンドメディアを活用したマーケティングが、トヨタ自動車の企業イメージやブランディングの向上に成功し、好感度ランキングの上位に君臨しているという仮説が成り立つのではないでしょうか。

“想いや体温”をさらけ出していく

なぜ、トヨタイムズはマーケターから高い評価を得たのでしょうか?

トヨタイムズのスタート時に、「モリゾウ」というニックネームを使う豊田社長が、オウンドメディアを始めた理由について次のように書いていますが、これがヒントになりそうです*6

改めて申し上げるまでもありませんが、私たち自動車産業は巨大なチームです。
 業界を超えて、新たな仲間も増えてきています。

 トヨタの中でどんな変化が起きているのか。

 トップは何を考え、何をしようとしているのか。

 ファクトや数値を超えた”想いや体温”のようなものも含めて、
さらけ出していかなければ、一緒に闘う仲間と一枚岩にはなれないと思っています。

<出典:「トヨタイムズはじまる!」【モリゾウのつぶやき】>

トップ自らが”想いや体温”のようなものも含めてさらけ出していくことで、ステークホルダーの共感を得ていきたいという決意が感じられます。

社長自らがオウンドメディアに登場し、トヨタイムズの体現者となり、これまでとは異なる価値訴求を試みているように見受けられます。

もともとステークホルダーも、こういう情報を求めているのではないでしょうか。それが成果につながる正しいアプローチだと、豊田社長が気づいたのでしょう。

トヨタイムズは週1~2本のペースで記事を更新し、月間PVは約110万PV、ユニークユーザー数は約48万UU集めています(収集期間:2021年4月1日~30日)*7

また、トヨタイムズの一連の施策の成功は、YouTube広告の成功事例を高く評価する「YouTube Works Awards Japan 2021」の「Media Orchestration部門」を受賞したことからもうかがえます*8

企業自らが編集し、発信できる一つのメディアを作ることは、持続するために多大なコミットメントと努力が必要です。

オウンドメディアづくりが、企業・トップの想いや覚悟に大きく影響される好例の1つとして、トヨタイムズを参考にしてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

Midori

総合広告代理店のアカウントエグゼクティブを経て、国際結婚を機にイタリアに移住。取材・撮影コーディネーターのほか、フリーランスライターとしてマーケティングに関する記事を執筆しています。