週休3日制でどう変わる?マーケティングの可能性をスープストックトーキョーの事例で学ぼう

近年、働き方改革の一環として「週休3日制」が注目されています。政府も「選択的週休3日制」の導入に向けて動き出しており*1、多くの企業が検討や導入を進め始めるかもしれません。

また、週休3日制は単に労働時間を減らすだけではなく、マーケティングにおいても新たなチャンスやアイデアを生み出す可能性があります。

週休3日制とは

週休3日制とは、1週間あたりの休みを1日増やし、週休3日とする制度です。従来週5日でこなしていた仕事を週4日ですることで、より多様な働き方が可能になります。

週休3日制を導入する企業や団体は、従業員のワークライフバランスや生産性を向上させることを目的としています。日本だけでなく海外でも実験的に導入されているケースが多くあります。

例えば、マイクロソフトジャパンは「ワークライフチョイスチャレンジ」というプロジェクトを実施しました*2

このプロジェクトでは、8月の金曜日を全社員に全休とし、週休3日制を試行しました。その結果、92.1%の社員が週休3日制を高く評価しました。

全社一斉のチャレンジが、業務効率化の新たなモチベーションになること、充実した休みや学びの実現のために、さらなる業務効率化に取り組むようになったのです。

また、ニュージーランドの信託会社パーペチュアル・ガーディアンも、全社員を対象に週休3日制を導入しました*3

この実験では、従業員たちのワークライフバランスが24%改善され、休日を過ごした後は、それぞれがより元気な状態で職場に戻ってきたといいます。

さらに、従業員はより創造的になり、勤務態度も良くなり、時間を守り、早退せず、長い休憩を取らなくなりました。実際の仕事の成果は、週5日勤務の替わりに4日勤務にしても変わりませんでした。

オークランド工科大学の人事学教授ジャロッド・ハーの言葉を借りれば、週休3日制で従業員は時間の無駄を省くようになり、一生懸命に働くのではなく、よりスマートに働くようになるようです。

週休3日制と消費者のニーズ

週休3日制は、従業員のスマートな働き方やワークライフバランスの向上に加え、消費者のライフスタイルやニーズにも変化をもたらす可能性があります。

消費者にとって自由に使える時間が増えるため、趣味や娯楽、旅行などにお金や時間を使う傾向が強まるかもしれません。また、スキルアップや副業などにも関心が高まるかもしれません。

例えば、「社会人のビジネス学習実態調査」で「週休3日制が導入されたら何をしたいか」という質問に対しては、「趣味や好きなこと」が6割強で最も多く、次いで「家族や友人と過ごす」が約4割、「睡眠」が4割弱となりました*4

■週休3日制が採用されたらしたいこと

<出典:GLOBIS 学び放題、「社会人のビジネス学習実態調査」を実施|PR TIMES - 株式会社グロービス>

また、「ビジネス・仕事に関する勉強をしたい」が全体の2割強、「副業をしたい」が3割強となり、キャリア形成への関心や意欲が高まっており、教育業界のニーズが見えてきました。

さらに、前問で「ビジネスや仕事について学びたい」と回答した人に、何を学びたいかを聞いたところ、「マネー・ファイナンス・投資」(約43%)、「PCスキル」(約36%)、「会計・財務」(約33%)が上位に挙げられました。

■ビジネス・仕事に関する学習で学びたいこと

<出典:GLOBIS 学び放題、「社会人のビジネス学習実態調査」を実施|PR TIMES - 株式会社グロービス>

変化の激しいビジネス環境では、時代の変化に対応し、創造的なアイデアを出していくことが必要です。

人生100年時代と言われ、長く現役で活躍することが求められる中、常に学び続けることが重要であり、今回の調査結果は、週休3日制を機にそうしたニーズがあることを浮き彫りにしています。

顧客のニーズや行動の変化への対応

週休3日制の普及にともない、マーケティング戦略の一環として自社の商品・サービスにペルソナを設定している場合は、その見直しが必要です。

ペルソナとは、自社の商品やサービスを利用する顧客の仮想イメージであり、そのニーズや心理に合わせたマーケティングをすることで、効果が高められます。

ペルソナを考える上で参考になるのが、雑誌の「媒体資料」です。雑誌はコンセプトやターゲットを明確にし、他誌との差別化を図ることで売上を伸ばすマーケティングをしています。

出版社が考える読者像は、属性だけでなく、趣味や嗜好、行動など、ペルソナに相当する部分に触れることが多いと言えるでしょう。

例えば、日本のビジネス誌サイト「東洋経済オンライン」の媒体資料では、読者のペルソナを次のように定義しています。

■東洋経済オンラインのペルソナ

<出典:東洋経済オンライン ユーザープロフィール2023年版|東洋経済オンライン p4>

ペルソナを活用したマーケティングでは、あいまいな消費者像ではなく、具体的な消費者像を設定することが重要です。

具体的な消費者像を設定することで、多くの消費者に対して一貫したメッセージや価値観を伝えられ、より良い商品やサービスの提供にもつながる可能性があります。

消費者の多様化に対応するためにペルソナを活用

ペルソナを活用したマーケティングによって大きな成長を遂げた企業や大ヒット商品を生み出した企業は多数あります。

その中でも、スープストックトーキョーという「食べるスープ」をコンセプトにしたレストランチェーンの事例を紹介します。

スープストックトーキョーは、特定の顧客像である「秋野つゆ」という37歳の女性をペルソナとして設定し、彼女を満足させる商品開発・マーケティング戦略を実行しています*5

秋野つゆは、独身か共働きで経済的な余裕があるバリキャリで、社交的で、シンプルさやセンスの良いものを好み、個性的でこだわりがあると同時に、装飾よりも機能を好む人物です。

さらに、「プールに行くといきなりクロールを泳ぐ」など、一見関係なさそうな彼女の個人的な特徴も丁寧に設定されています。

■顧客のライフステージに応じて提供するメニューも変化させていく

スープストックトーキョーは、秋野つゆというペルソナを作り上げることで一貫性のあるマーケティング戦略を確立し、それがブランド構築につながり、創業から20年程で売上高91億円、国内に50店舗という成功を収めました*6

現在では消費者の嗜好や抱える問題が多様化しており、これまでのマスマーケティングやセグメンテーションに基づくマーケティング戦略だけでは、消費者に響く商品やサービスを開発することは困難になっています。

ペルソナ設定は簡単ではありませんが、週休3日制の普及でユーザーニーズがさらに複雑化していく今、ぜひ活用したいところです。

この機会に、自社のマーケティングを見直し、ペルソナを設定してみてはいかがでしょうか。こうした変化に対応し、柔軟にマーケティングを展開することで、新たなビジネスの可能性が切り開けるかもしれません。

この記事を書いた人

Midori

総合広告代理店のアカウントエグゼクティブを経て、国際結婚を機にイタリアに移住。取材・撮影コーディネーターのほか、フリーランスライターとしてマーケティングに関する記事を執筆しています。