拡大するペット関連商品市場 そのトレンドとは?市場規模はどれくらい?

現在はペット関連の多様な商品が展開されています。
ペットの家族化、高齢化にともない、ペット関連商品の市場規模は拡大を続けており、今後さらにその裾野が拡大することが予想されます。 その動向を押さえ、トレンドを探ります。

生活に喜びを与える存在

日本では、15歳未満の子どもの数を、犬と猫の合計数が上回っています。

総務省によると、2022年4月1日における15歳未満のこどもの数は約1,465万人で、1982年から41年連続の減少となり、過去最少を記録しています*1

一方、一般社団法人 ペットフード協会の「令和4年 全国犬猫飼育実態調査」によると、同年の犬の数は約705万3千頭、猫は約883万7千頭で、合わせて約1,589万頭に上ります*2
ただし、同調査によると、犬と猫の飼育頭数はここ10年ほど微減傾向が続いています。

こうした状況の中、ペットは子ども同様に大切な存在となっています。
「生活にもっとも喜びを与えてくれること(存在)」を尋ねたところ、犬のオーナーは1位が家族で2位がペット、猫のオーナーは1位がペットで2位が家族と回答しているほどです*3

ペットにかけるお金

ペットのオーナーは大切なペットにどの程度のお金をかけているのでしょうか。

年間の支出

ペット保険を提供しているアニコム損害保険の「アニコム 家庭動物白書2022」によると、犬、猫ともに一番大きな支出は「ペットフード・おやつ」で、2021年には犬が年間65,924円、猫が約52,797円に上っています(表1)*4

2番目は犬、猫ともに「ケガや病気の治療費」、次いで犬は「シャンプー・カット・トリミング料」、猫は「ペット保険料」となっています。

表1:1年間にペットにかけた費用

<出典:家庭動物白書2022|アニコム p9>

2021年の合計金額は、犬が345,572円、猫が169,247円で、犬は猫の2倍強です。

オーナー自身よりもペットのために多くかけている費用

同白書によると、支出の中には、オーナー自身のためよりペットのための方により多くかけている費用もあります(表2)*5

表2:オーナー自身よりもペットに多くかけている費用の項目

<出典:家庭動物白書2022|アニコム p9>

表2をみると、ペットにより多くの費用をかける事項は多岐にわたっていることがわかります。その中でも美容院、医療費は30%以上のオーナーが、食事は20%以上のオーナーが、自身よりペットにより多くかけると回答しています。

こうした状況は、ペット関連商品の市場にどのような影響を与えているのでしょうか。

ペット関連商品市場

ここからはペット関連商品の市場についてみていきます。

市場規模

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、 2022年12月から2023年3月にかけて、ペット関連商品の国内市場を調査しました(以降、「ペット調査」)*6

この調査では、ペットフード10品目、ペットケア用品10品目、ペット生活用品10品目からペット関連商品市場を捉え、現状を分析し、将来の市場を予想しています(表3)。

表3:調査対象

<出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済 p3>

この調査によると、ペット関連商品の国内市場は順調に拡大しています。(表4)

表4:ペット関連商品の売上推移

<出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済 p1>

2023年は、新型コロナウイルス感染症の流行を背景としてペットブームは落ち着きをみせていますが、市場は前年比4.1%増の5,802億円が見込まれています。

こうした市場拡大の背景には、2022年から続く値上げの影響がありますが、オーナーのペットに対する健康意識の高まりも要因の1つとみられています*7

そうした背景をみてみましょう。

ペットの高齢化と健康意識の高まり

ペットは人間同様、高齢化が進み、それとともにオーナーのペットに対する健康意識が高まっています。

2022年時点での犬の寿命は14.76歳、猫は15.62歳で、2010年に比べて犬が0.89歳、猫が1.26歳、延びています*8

ペットの予防医療の啓発・普及活動に取り組んでいる獣医師団体・一般社団法人 Team HOPEは、2022年12月に「ペットの健康管理に関する実態調査」を実施しました。
その結果、ペットに定期的な健康診断を受けさせるオーナーは年々増加傾向にあり、犬は55%、猫は40%に上ることがわかりました*9

また、お金をかけてもペットの健康のために定期的に健康診断を受けさせたいと考えるオーナーは53%を占めています。

こうしたペットに対する健康意識の高まりがペット関連商品市場の活況を呼んでいるのです。

ペットフードの伸び

図1からもわかるように、ペット関連商品市場では、ペットフードが多くの割合を占めています。
ペットの飼育頭数がペット関連市場に影響を及ぼすことは容易に推測できますが、上述のとおり犬猫の数が15歳未満の子どもの数を上回っているとはいえ、犬と猫の数は頭打ちです。

それにもかかわらず市場が拡大しているのはなぜでしょうか。
上述の「ペット調査」によると、ペットに対する健康意識の高まりやペットの家族化が進展し、特にペットフードのプレミアム志向が強まって、高単価商品のニーズが増えていることが要因の1つだということです*10

一般社団法人 ペットフード協会の「ペットフード流通量調査2013年~2021年」からも、ペットフードが順調に売上を伸ばしていることがわかります*11

<出典:ペットフード流通量調査2013年~2021年|一般社団法人ペットフード協会>

2021の流通量をみると、国産品が55.6%、輸入品が44.4%です。2014年に初めて国産品が輸入品を上回って以来、ここ数年は同様の割合が続いています。

<出典:ペットフード流通量調査2013年~2021年|一般社団法人ペットフード協会>

飼育頭数は、従来は犬の方が多かったのが2014年に逆転し、それ以降、猫の方が多くなっています*12

ペットフードもこの影響を受け、2017年に逆転して以降、現在では猫のペットフードの方が犬のペットフードより流通量が多くなっています*13

<出典:ペットフード流通量調査2013年~2021年|一般社団法人ペットフード協会>

ペットフードの最新動向

ペットの家族化が進行する中で、より健康的で安心・安全な素材を使用した嗜好性の高いフレッシュペットフードの需要が増加しています。 手作り感があり、肉や野菜、魚など素材本来の美味しさを味わうことができるヒューマングレードの商品設計が多く、国産原料の使用や保存料・着色料・香料などの無添加、獣医師共同開発や監修・ 推奨が求められています*14

また、療法食も注目されています。 犬猫が抱える特定の疾患に対して栄養的に対応するため、その特定の症状に合わせて栄養成分が調整され、獣医師の助言に基づいて提供されるものが中心です。

猫用の療法食は、犬に比較して飼育頭数が多く、積極的な新商品発売やリニューアルが進んでいるため、高成長が続いています。
一方、犬の飼育頭数は減少が続いているものの、犬用療法食はアイテム追加や価格改定に加えて、上述のようにペットに対する健康意識の高まりやペットの家族化を背景に、高単価商品の需要が増えています。

今後の動向

ここでは、ペットフード、ペット用品、ペット生活用品それぞれの注目アイテムについて、今後の動向を探ります*15

まず、ペットフードでは、将来的にも療法食の市場拡大が予想されます。
今後、ペットの長寿化・高齢化を背景としたヘルスケアニーズの高まりから、商品ラインアップがさらに拡充することに加え、動物病院へ来院することなく、自宅で療法食を購入できるECサイトが普及しつつあるため、利用者が増えるものと予測されています(表4・上)。

ペット用品では、デンタルケア用品が注目されています。
参入企業がペットの歯磨きの実施率を高める啓発活動を進めているとともに、初心者から上級者までの歯磨きレベルに合わせた商品ラインアップの充実化が図られてきたことから、市場は好調が続いています。
今後は、ラインアップ強化とともに、デンタルケア未実施層に対する啓発活動がさらに強化されることで、需要が増加するとみられています(表4・中)。

ペット生活用品で注目されているのは、食器や給水器です。
食器や給水器はペット飼育のスターターキットであるため、市場は新規飼育頭数の増減の影響を強く受けます。
2022年は猫の新規飼育頭数が減少したほか、消費者の経済的不安の高まりから低価格商品を求めるペットオ ーナーが増加し、市場の伸びは鈍化しました。
しかし、今後は、室内給餌・給水の定着によって、デザイン性が高い商品のニーズが増加するため、高単価商品へのシフトが進み、市場は拡大すると予想されています(表4・下)。

<ペットフード:療法食>

<ペット用品:デンタルケア用品>

<ペット生活用品:食器・給水器>

<出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済 p2>

以上のように、いずれのアイテムも、2025年には2022年比110%以上に市場が拡大すると予想されています。 ペット関連商品全体では、2025年には6,036億円に拡大すると見込まれています*16

トレンドは「ヘルスケア」

以上みてきたように、ペットオーナーの健康意識の高まりを背景に、ペット関連商品市場はヘルスケアに関する商品を中心に着実に拡大を続けています。

ペットを大切な存在と捉える意識が広まる中、こうしたトレンドは今後も継続し、新たなビジネスチャンスやイノベーションの可能性を切り拓いていくことが予測されます。

この記事を書いた人

横内美保子

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。
高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。
パラレルワーカーとして、ウェブライター、編集者、ディレクターとしても働いている。

*1:出典:統計トピックス No.137 我が国のこどもの数- 「こどもの日」にちなんで-|総務省 p2

*2:出典:令和4年 全国犬猫飼育実態調査「Ⅲ.主要指標 サマリー」|一般社団法人ペットフード協会 p18,19

*3:出典:令和3年 全国犬猫飼育実態調査結果「2021年トピックス: ペットと飼い主の関係性」|一般社団法人ペットフード協会 p50

*4:出典:家庭動物白書2022|アニコム p9

*5:出典:家庭動物白書2022|アニコム p9

*6:出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済

*7:出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済 p2

*8:出典:令和4年 全国犬猫飼育実態調査「Ⅲ.主要指標 サマリー」|一般社団法人ペットフード協会 p38

*9:出典:ペットの健康管理に関する実態調査「犬猫の定期健康診断受診率は増加が続く!」|一般社団法人Team HOPE p2

*10:出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済 p2

*11:出典:ペットフード流通量調査2013年~2021年|一般社団法人ペットフード協会

*12:出典:令和4年 全国犬猫飼育実態調査「Ⅲ.主要指標 サマリー」|一般社団法人ペットフード協会 p18,19

*13:出典:ペットフード流通量調査2013年~2021年|一般社団法人ペットフード協会

*14:出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済 p2

*15:出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済 p2

*16:出典:ペット関連商品の国内市場を調査|株式会社富士経済