KALDIの魅力:宝探しのようなショッピング体験

ショッピングモールや駅の近くなどに多くの店舗を構えるKALDI(カルディコーヒーファーム)。なんとなくお店に入って、ついつい買いすぎてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。

KALDIは、ただの輸入食品店ではありません。 店内に足を踏み入れると、コーヒーの香りとともに、世界中から集められた珍しい食品や調味料が目に飛び込んできます。まるで宝探しをしているかのようなワクワク感が広がり、訪れるたびに新しい発見が待っています。

KALDIの人気の秘密は、消費者に「ワクワク感」を提供する独特のショッピング体験にあります。本コラムでは、KALDIがどのようにしてお客様の心を掴み、「思わず立ち寄りたくなる」店舗を作り上げているかを探ります。

KALDIについて

KALDI COFFEE FARM(カルディコーヒーファーム)、通称KALDIは、「株式会社キャメル珈琲」が運営するコーヒーショップ兼輸入食品の販売店です。独自の品揃えとサービスで人気を集め、日本の食品小売業界で確固たる地位を築いています。競合としては成城石井やジュピター、大手スーパー内の輸入食品コーナーなどが挙げられます。

1986年に東京の下高井戸に1号店をオープンして以来、KALDIは着実に成長を遂げ、2018年には台湾に海外初出店を果たしました。*1
カフェやバー、ショコラティエなどの店舗展開も行っており、2024年12月時点で国内では500店舗を超えています。*2

母体となる株式会社キャメル珈琲の従業員数は2024年8月時点で13,700人で、うちパートタイマーが11,200人です。これは、KALDIの店舗数の多さの裏付けとも言えます。近年の売上高は約900億円と言われており、店舗増の影響もあり成長を続けています。*3

KALDI店舗で体験できるのは『宝探し』のような買い物

KALDIの店舗は、「西洋の図書館」をイメージして設計されています。木目調の棚や間接照明を多用し、照度を落とした店内は落ち着いた雰囲気を醸し出しています。この空間設計には、顧客の回遊性を高める工夫が施されています。

通路が入り組んでいるのは、お客様が「お目当ての本を探すような感覚で商品を見つける」楽しさを演出するためです。40〜60坪の店舗内に、約1万点という膨大な数の商品が陳列されています。この商品の豊富さと独特の陳列方法が、顧客の探索欲を刺激し、「宝探し」のような楽しさを提供しています。*4

また、会計を待つ列の左右にも商品が並んでいるので、「こんな商品もあったのか」「試してみようかな」と、思いがけず商品を手に取ってしてしまうことも少なくないでしょう。 私も先日コーヒー豆を買いに行ったつもりが、ついつい買いすぎてしまいました。

新商品戦略

KALDIは常に新しい商品を導入し、顧客の期待感を高めています。世界各国から集められた珍しい食材や、季節限定の商品が次々と店頭に並びます。これらの商品は、その珍しさや面白さから、SNSで頻繁に取り上げられ、口コミによる宣伝効果を生んでいます。

例えば、タイの「トムヤムスープ」やイタリアの「トマト缶」、アメリカの「サラミ」、インドネシアの「ナシゴレンの素」など、国際色豊かな食品が豊富に取り揃えられています。これらの商品は、KALDIでしか手に入らないものも多く、顧客の「次は何が見つかるかな」という期待感を常に高めています。

私が先日購入した「レンジで手羽唐揚」や「チャーシューはレンジで」など、時短料理に使える調味料キットは、忙しい主婦の頼りになる存在です。これらのキットは、手軽に美味しい料理を作ることができるため、とても重宝されています。

また、バッグ付きの限定商品も大変人気です。バッグのデザインがかわいくて目を引くのはもちろん、思わず買いたくなってしまうセットになっているのが特徴です。これらの限定商品は、贈り物や自分へのご褒美としても最適です。

福袋も毎年人気で、抽選販売となっているのも納得です。多くの人々がこの特別な機会を楽しみにしており、福袋の中身は毎年話題になります。

さらに、クリスマスやバレンタイン、新学期や夏休みなど、様々な催事に合わせた商品展開もとても魅力的です。気軽に買える手ごろな価格の商品や、配り菓子として使いやすい商品などが数多く取り揃えられています。これにより、KALDIは季節ごとの楽しみを提供し、顧客のニーズに応えています。

このように、KALDIが人気のある新商品を発売できている背景には、商品開発・仕入れ・輸入・製造・卸売りを行う関係会社を複数持ち、顧客のニーズに合った商品をタイムリーに発売できることがあります。
顧客の声から商品を作って積極的な商品展開をおこなっていることも、高い評価を受ける理由となっています。

KALDIのコーヒーサービスとおもてなし

KALDIの特徴的なサービスの一つが、店頭での無料コーヒーサービスです。このサービスは1992年から始まり、「コーヒーを飲みながらゆっくり店内をご覧ください」という店員の声かけとともに、顧客をリラックスさせる効果があります。*5

このサービスは単なるサービスではなく、戦略的な意味を持っています。コーヒーを飲みながら店内を回ることで、自然と滞在時間が延び、より多くの商品を見る機会が増えます。また、無料でコーヒーを楽しむことで、顧客は「何か買おう」という気持ちが生まれやすくなり、購買意欲が高まります。

KALDIの価格戦略と手軽さ

KALDIの商品は、高級感がありながらも手頃な価格帯に設定されています。これにより、顧客は気軽に新しい商品を試すことができます。例えば、世界各国のワインや珍しいスナック菓子など、通常なら高価になりがちな輸入食品も、比較的リーズナブルな価格で提供されています。

この価格戦略は、顧客の「ちょっと試してみよう」という気持ちを後押しし、結果的に購買につながっています。また、手頃な価格帯であることで、リピート購入も促進されています。

KALDIのSNSとデジタルマーケティング

KALDIは、SNSを活用した情報発信にも力を入れています。Instagram、Twitter、Facebookなどのプラットフォームを通じて、新商品情報や季節限定商品の案内、レシピ提案などを行っています。

特に、インスタ映えする商品パッケージや、話題性のある商品は、顧客自身によってSNSで拡散されることが多く、無料の宣伝効果を生んでいます。例えば、季節限定のチョコレートや、ユニークなデザインのコーヒー缶など、視覚的に魅力的な商品が頻繁に投稿されています。

また、2014年にはオンラインショッピングサイトもオープンし、実店舗とデジタルの両面から顧客にアプローチしています。*6

ワクワク感を追求するKALDIの挑戦

KALDIの成功は、「宝探し」のような楽しいショッピング体験を提供することで、顧客の心をつかんでいる点にあります。店舗デザイン、商品戦略、サービス、立地、価格設定、そしてデジタルマーケティングまで、すべての要素が顧客の「ワクワク感」を引き出すように設計されています。

全国で500店舗と身近な存在であるKALDIは、KALDIならではの店のレイアウトや、常にトレンドをつかんだ新商品や話題性のある商品を多数発売している点で、競合との差別化を図ることに成功しています。

今後も変化する消費者ニーズに合わせて進化を続けることで、KALDIの魅力はさらに高まっていくでしょう。他の小売業者にとっても、KALDIの戦略は、顧客体験を重視したマーケティングの好例として参考になるはずです。

消費者のワクワク感を維持し続けることは容易ではありませんが、KALDIはその難しい課題に挑戦し続けています。新商品の導入、季節限定商品の展開、そして常に変化する店内レイアウトなど、顧客に新鮮な驚きを提供し続けることが、今後も重要な戦略となるでしょう。

この記事を書いた人

齋藤のぞみ

長年、菓子メーカーにてマーケティング(商品企画・宣伝販促)に従事。現在は個人事業主としてMA運用代行および骨格を整えるトレーナーとして活動中。