アメリカのメール・SMSマーケティングに学ぶ、購買につながる顧客接点の作り方

2025年にアメリカのロサンゼルス郊外へ移住し、小学生の娘を育てている筆者が、アメリカで消費者として生活する中で日々受け取っているマーケティング施策と、そこからの購買体験を、マーケター目線で深掘りしながらご紹介していきたいと思います。

本記事では、アメリカで実際に受け取っているメールやSMSの事例をもとに、企業がどのように顧客接点を獲得し、購買行動につなげているのかを整理します。

初回購入クーポン

アメリカのオンラインサイトで購入する際、必ずと言っていいほどあるのが初回購入クーポンです。サイト訪問時にポップアップメッセージ等で10〜15%オフ、または割引クーポンがオファーされることが一般的で、メールマガジンやテキストメッセージ(SMS)のオプトインを条件にクーポンが発行されます。

実際にアメリカのUNIQLOのサイトにアクセスすると、このようなポップアップが表示されます。

実際に筆者が初めて利用するサイトで購入を検討する際は、初回クーポンがあることを前提にします。ポップアップが表示されない場合、検索等で初回購入クーポンを探してみることも多いです。また、店舗で見て気に入った商品があれば、オンラインでクーポンを利用して購入する方も少なくありません。

このように、アメリカのオンラインサイトで必ずと言っていいほど初回購入クーポンが発行されるのは、単なる販売促進ではなく「パーミッションの取得」という大きな目的があります。メールアドレスだけでなく、テキストメッセージ(SMS)送信のために電話番号の登録を求められることもあります。

ここで取得されるのは単なる連絡先ではなく、その後継続的にコミュニケーションを行うための“接点”です。実際、アメリカでは購入前後に複数回のフォローアップが行われることが前提になっており、この初回クーポンはその入口として機能しています。

日本では日常的なコミュニケーションにはLINEが主に使われ、企業のプロモーションもよく行われますが、アメリカではテキストメッセージが主要なコミュニケーション手段の一つであり、SMSでプロモーションメッセージを送信する企業も多く見られます。

日本企業でも、単にクーポンを配布するのではなく、メールアドレスやLINE登録を通じて継続的な接点を作る設計が重要です。初回オファーは「値引き」ではなく、その後の関係構築の入口として考える必要があります。

頻度が高く、直接的なメルマガ

企業は取得したメールアドレス宛てにメールマガジンを送りますが、アメリカではメールマガジンの配信頻度も非常に高く、週に2〜3回は一般的で、毎日配信する企業もあります。メルマガだけでなく、テキストメッセージも頻繁に配信されます。

では内容はどうでしょうか。

セールの案内、新商品の案内、季節ごとのキャンペーンなどが主なプロモーションですが、日本に比べて感じるのは「購買に直結する設計」が強い点です。カート放棄メールや、閲覧履歴に基づいたレコメンドなど、ユーザーの行動に応じたメールが多く配信されている印象があります。

また、購入した商品のレビューを求めるメールも多くの企業が採用しています。アメリカのオンラインサイトは日本に比べレビューが非常に充実していると感じることが多いですが、こうした継続的なレビュー依頼やインセンティブ設計が、その背景にあるのだと実感します。

タイトルには名前が入っていたり、目を引くような絵文字が入っていることも一般的です。また、日本に比べるとテキストが短く、「セールは今日まで」といった直接的な表現が多く使用されています。

配信頻度を上げること自体が正解ではありませんが、顧客にとって明確なメリットがある情報であれば、一定の頻度でも受け入れられる可能性があります。重要なのは、企業都合の配信ではなく、購買検討のタイミングに合った情報提供です。

パーソナライズされたメルマガ

アメリカのオンラインサイトは、日本のオンラインサイトに比べ、Cart Abandonment(カート放棄)だけでなく、Browse Abandonment(閲覧離脱)まで設計されているケースが多く見られます。

実際に閲覧した商品のリマインドに加え、他に好みに合致しそうな商品のレコメンドも送られてきます。特に印象的なのは、「見ていた商品そのもの」がそのままメール内に表示される点で、商品を検討していたことを思い出させるような構成になっています。

こうしたメールは単なる一斉配信ではなく、ユーザーの行動(閲覧・カート追加・購入など)をトリガーに自動的に送られる仕組みになっており、「配信する」というより「反応する」という表現の方が近いかもしれません。

また、1通で完結するのではなく、

  • ・閲覧後すぐのリマインド
  • ・少し時間を置いた再提案
  • ・別商品のレコメンド

といったように、複数回に分けて設計されているケースも多く見られます。閲覧した商品がセールになった際、残り少なくなった際などの通知も細かく設計されていることが多いです。

さらに、こうしたパーソナライズは「名前が入る」といった表面的なものだけでなく、

  • ・過去の購入傾向
  • ・閲覧カテゴリ
  • ・価格帯

などに基づいていると感じる場面も多く、レコメンドの精度が高く、実際にクリックや購買につながりやすいと感じる場面も少なくありません。

受け取り手としては、日本にいた時より圧倒的に多くのプロモーションメールを受け取っている感覚があります。しかし、レコメンドの精度や内容、そしてクーポンや割引など自分への利益に鑑みると、購読を続けてしまう、そしてついメールを開いてクリックしてしまうことが多いのです。

名前の差し込みだけではなく、閲覧・購入・カート投入といった行動データをもとにしたコミュニケーション設計が、今後のメールマーケティングではより重要になります。

セールに対する考え方

こういったキャンペーンの背景には、「セール」に対する捉え方の違いが関係しているように思います。

日本では、セールは在庫処分や特定の時期のみに行われるもの、といった意味合いが強いのに対し、アメリカではもう少し日常的なものとして存在しています。セールは特別なイベントというより、購買体験の一部として組み込まれている印象です。

Black FridayやCyber Monday、Labor Day Saleなどの大型セールに加え、ブランド独自のキャンペーンも多く、BOGO(Buy One Get One)や複数購入割引なども頻繁に見られます。

日本でも有名なアメリカのアパレルブランドである GAP を例に取ると、ほぼ常に何かしらの割引キャンペーンが行われており、定価で購入する機会の方が少ないのではないでしょうか。

このように、日本ではセールに対して「売れ残り」というイメージがある一方で、アメリカでは「うまく買うための機会」として捉えられているように思います。

そのため、セールのリマインドや、直接的に購買を促すような表現も、自然に受け入れられているのではないでしょうか。

まとめ

実際にアメリカで生活しながら感じるのは、メールマーケティングが単なる「お知らせ」ではなく、購買体験そのものの一部として組み込まれているという点です。

初回クーポンで接点を作り、 その後はユーザーの行動に応じて継続的にコミュニケーションが行われ、 適切なタイミングでオファーが提示される。

こうした一連の流れが自然に設計されており、結果として購入につながっていく構造になっています。

日本と比較すると、やや直接的で頻度も高く感じるかもしれませんが、その背景には「売るための仕組み」として設計されているという前提があります。

メールは単なる配信手段ではなく、 顧客との関係を維持しながら購買を促進するための非常に重要なチャネルなのです。

この記事を書いた人

佐藤仁奈

IT企業にてシステムエンジニアとして従事した後独立し、システム開発やデジタルマーケティングに携わる。2025年に家族と共にアメリカロサンゼルスへ移住。