サイトマップ

実践事例

三共精機株式会社<br>代表取締役社長 石川 武 氏
インタビュー記事

三共精機株式会社
代表取締役社長 石川 武 氏

2015年1月21日

商社の仕事は「発信する」こと。10年間蓄えた社員全員ブログは「発信力」の基礎であり、差別化の要となる。

三共精機株式会社様は1948年の設立以降、生産に必要な工具類を供給する機械工具商社として京都や滋賀を中心に日本のものづくりを支えてきました。今回、お話をうかがった石川社長は、リーマンショック直後の2009年5月に就任。売上半減から回復に向かうまでの間、商社としてのあり方を根本的に見直してきました。2014年度は中期経営計画3年目の締めの年。Webも重要な位置づけを占めるようになったこの3年間の取り組みをご紹介します。

「機械工具の販売業」から「ものづくりの課題解決企業」へ

社長に就任されたのがリーマンショック直後、ここまでどのように取り組まれてきたのですか?

1948年に創立して以来、当社はずっと機械工具商としてやってきました。機械工具商の仕事とは飛行機や自動車、タブレット端末など産業系のものづくりの現場に提案し、商品をお届けすることです。 当社がスタートした1948年というのは第二次世界大戦が終わって3年目、世の中にものが無く、圧倒的な需要過多の時代です。そんな時に需要側と供給側の間に立ってものの無いところからものを供給していくことが当社の役割でした。そこから21世紀に至るまでに時代は大きく変化しました。需要が大きく萎み、現在では供給過多に逆転しています。しかし、我々機械工具商が需要側と供給側の真ん中にいるというこの構造自体は昔から変わっていません。

リーマンショック後、売上は2008年より数年でほぼ半分まで急激に落ち込みました。私が社長に就任したのは直後の2009年5月です。バブル崩壊、リーマンショックなどの経験から、どんなに好調な時でもずっと安泰はありえないことは痛感していました。このままの機械工具商の仕事、やり方では未来に生き残っていけないのではないかという強い危惧感がありました。

当社の売り上げの70%は取引先である上位4社が占めています。リーマンショックが起こると、その部分がごっそり輪切りで持って行かれてしまうわけです。その後また売り上げが回復してきても、それはお客様が好調になってきた部分が大きく、お客様の好不況に大きく左右される発注ベースの仕事になってしまっているのです。これではまたリーマンショックのようなことがあった場合、同様の危機に直面します。そういった時も確実に自分たちの力と知識で得た何かで商売ができれば、苦しいときの拠り所になるはずです。どんな状況下でも自分たちにはこれがあると自信を持てる得意分野を作っていくためにも、これまでと同じことを繰り返しているわけにはいきません。機械工具商として、機械工具を売ること以外に自分たちにできることは何かと考えました。

供給過多の時代に入り、自分の要求を活性化させるものがどんどんできてくる中で、ものづくりに纏わる問題もますます複雑化してきています。いい製品を作っていればいいということだけでもなく、安ければいいということでもなく、豊かになったことで人々の価値観が多様化し、作る側も非常に複雑で細かなことを要求されるようになってきています。これからも問題は複層化されていくと予測し、今後ものづくりに浮上してくる問題や課題を我々で先に発見していくことはできないだろうかと考えたのです。その中で我々にできることをやっていくことで、機械工具商としてもっとできることが見えてくるのではないかと思いました。

こうしたアプローチをしていくためには、やっていくこと、やらなくてはならないこともこれまでとは違ってきます。我々はこれまで培ってきた経験を活かした「ものづくりの課題解決企業」を目指そうと決め、現在、全社員一丸となって取り組んでいるのが中期3か年計画の「STEP FORWARD 2014」です。2012年は「言語化」、2013年は「見える化」、2014年は「組織化」をテーマに取組んできました。

石川氏

「目標体系」「組織」を変える

具体的にはどのような取り組みをされているのですか?

2013年の「見える化」、2014年の「組織化」についてお話します。

1)ステップ目標とストーリー案件

2013年の「見える化」では、まず目標体系を変えました。以前であればそれぞれのお客様に担当者がいて、お客様ごとに売上目標額があり、合計すると会社の売上目標というシンプルな構造でした。2年前からこれにプラスして、商品や商品の売り方、やらなければいけないことを社員に着眼させるために数値化した目標を掲げています。商品が売れるまでのプロセスは、以前は売上という結果に内包されて見えませんでした。それを見えるようにしたわけです。社内ではそれを「ステップ目標」と呼んでいます。従来の「営業目標」+「ステップ目標」が会社の数値目標になっています。 現在、ステップ目標は、歯切り工具、貿易で売れたもの、新商流開拓など7つあります。Webサイトでの販売もその一つです

もう一つ、「ストーリー案件」というものも2年前からやっています。社内で意外にお互いの仕事をよく知らなくて、成功例があったとしても一時的に噂になり翌年には忘れられてしまうという状態でした。それを所定のシートに、お客様、商品、仕入先、金額、利益、担当先、連携者、きっかけをはじめ、課題解決業という視点で、お客様の課題はどういったものであり、その商品でその課題はどう解決したのかということを記入します。毎月1度、課長が部下からシートを集めて社内共有し、成功例を累積させていくことで、我々が目指すものづくりの解決業とはどのようなものなのかを模索しています

2)営業部はマーケティングを、営業企画室はイノベーションを目指す

今年になって目標だけで無く、組織も本格的に変えました。営業企画室を立ち上げ、営業部から営業企画室に人員を回したのです。営業企画室の人員は11名、営業部は現在25名ですから1/3くらいを営業企画室に異動したかたちですね。営業企画室はそれぞれ特定の得意分野を持つ人の集まりで、原則担当先を持ちません。今年の春から全員にモバイル端末を配布し外からでも見られるようにしました。社内、社外用とパソコンを2台持ちしなくてすむことで、デスクに縛られることも無くしました。

営業企画室を立ち上げたことでどんなメリットがありましたか?

営業企画室を作る前の営業部の取組みでは、自分が抱えている仕事を優先するので、プラスとして加わったステップ目標は余分な仕事として受け止められ、動くまでに時間がかかりました。しかし、営業企画室はそれが自分たちの仕事ですからすぐに動けます。どういう仕事になるのかも、どういった展開になるのかもわからない案件、ステップ目標に取り組むのが営業企画室の仕事です。

よく私が言うのは、「営業部はマーケティングを、営業企画室はイノベーションをしてください」ということです。 営業部は現在世の中がどういう流れになっていて、顧客が何を必要としているかという生のマーケティング情報に最も接しているわけですから、それを積極的に集める。営業企画室は、顧客が欲しいと思うであろうものを予測を立てて商品を開拓したり、展示会や勉強会などを計画的に実行する。Webサイトも営業企画室が担当しています。

組織図

Webサイトは「発信する」商社三共精機の具現化

Webサイトの役割をどのようにお考えですか?

2005年にWebサイトをリニューアルした際にブログ形式にしました。会社の経営理念に「発信する」を掲げていまして、その具現化を試みたのです。社員の1人1人が発信しているのだということを見せるために、Webサイトをブログ化しました。当時はそういったWebサイトはほとんどなく、京都商工会議所からホームページ大賞を頂きました。その後、環境活動やインターンシップなどWebサイトに掲載できるコンテンツが増えていきました。そこでツールとしての扱いやすさを考慮し、マーケティングの要素も組み込む形で2012年にリニューアルしました。これまでコツコツと積み重ねてきたブログや色々なコンテンツが2012年のリニューアル後、「三共ジャーナル」というコーナーに集約されました。社員が発信するWebマガジンという他社ではなかなか見られない特色豊かなコンテンツに成長を遂げたのです。

三共ジャーナル

Webの強みは世界中の人から見られること。きちんとやっていけばチャンスは無限に広がっていくはずです。「三共ジャーナル」では、私達がこれまでやってきたことを嘘なく飾り立てることなく、そのまま等身大にコンテンツとして発信しています。「三共ジャーナル」を愚直に続けていれば、何か検索でヒットした時、過去に遡って見てくれる可能性が出てくると思っています。例えば音楽を聴いて興味をもった時、自分にとっては初めての出会いでも、そのアーティストは昔から活動していたとすれば、検索して過去作品を見つけてそれを気に入れば今更ながらに買ったり、新しくファンになったりしますよね。Webにはそういうチャンスが無限に転がっているわけです。会社の看板というだけのWebサイトでは過去に遡れませんが、これまで積み重ねてきた「三共ジャーナル」のおかげで10年くらいは遡って見てもらうことができます。その時、私達がどのように考え、どのように進んできたか、当時の生の声をそのまま等身大でお客様に知ってもらうことができます。何かがお客様の琴線に触れ、こういう考え方をする会社となら一緒にやれそうだとか、こういう進み方をしてきた会社と組んで何かをするのは面白い、と思ってくださるかもしれません。

今の時代、見る人によってはどんなジャンルにも価値が出てくる可能性があります。ブログを毎日更新することは些細なことかもしれませんが、他社との差別化はその些細なことを続けることができるかできないかだと思っています。サービス業の差別化は薄皮一枚。その内容がブラックボックスである必要はありません。大事なのはその些細なことが実行できるかどうか、継続できるかどうかです。単発でできるものでもありません。それがサービス業の本質だと思うのです。実行と継続がしっかりとした背骨となり信頼につながるのです。

社員ブログの投稿は、「発信」するための基礎体力作り

最近は社員の皆さんが代わる代わるほぼ毎日更新をされていますが、更新が継続できる秘訣はなんでしょうか?

商社の仕事は「発信する」ことです。現場で商品や提案を発信していくのが仕事です。ブログを書くことは言わば野球選手のランニングみたいなものだと言っています。発信のための基礎体力をつけるためのトレーニングツール。自分の思いであるとか自分の考え、気づいたことや何か良かったことなどを一つの文章にまとめあげていくことを続けていけば、発信するという力が鍛えられるはずです。自分ではわかっているつもりのことも、いざ文章にするのは難しい。だからブログを書くことでどんどん練習して欲しいと常日頃から言っています。

採用時もブログを読んで会社の雰囲気がよくわかって志望したという話が頻繁に出てくるのですが、その際に「入社をすれば今度は君がこれを発信することになるが、その覚悟はあるのか」と確認します。こうして入社してきた人たちは、何か書かなくてはという意識を最初から持っているわけです。以前は投稿が少なく、私の投稿ばかりが目立っていたのですが、新入社員に引っ張られて他の社員も投稿してくれるようになりました。インセンティブや週に1本を必須にするといった条件は一切ありません。週に1本を必須条件とすると、それ以上は投稿しなくなるので我慢を続けました。

お客様の中にもブログを読んで下さっている方がいらっしゃって、訪問時の話のきっかけとしても役立っています。私が同行して初めてお会いする方でも、ブログを読んでくださっているので会話がはずみます。それだけでブログの価値はあると見ています。

今後の課題は草の根まで届くWebをどう使いこなすか

今後のWebの展開についてお聞かせください。

2005年に「発信」といってブログをはじめた頃から随分変わったと思うのは、今はWebサイトは企業の人が見るもので、一般の人はFacebookやLineなどのSNSを見ますし、レスポンスもSNSが圧倒的に早いです。この夏のインターンシップでWebサイトのPV数を2週間で倍にするという取り組みをしたのですが、学生たちはFacebookやYouTubeを駆使して見事に達成しました。正直な話をすれば私はWeb世代ではないので、未だにWebを使うことに対しての抵抗感はどこか根底に残っています。しかし、現実をみれば、いいか悪いかではなく、今一番見られていて草の根まで声が届くこのツールを使いこなさない手はありません。採用も含め多様な人とのつながりをつくっていきたいです。

また、今年のWebサイト改修で、販売ツールとしてかたちになってきたので、もっと営業数字につなげていきたいと考えています。SEO対策もブログで強化したいですし、展示会の情報をWebで発信し、Webとリアルの連携をつくっていきたいと思います。

石川氏

プロフィール
石川 武 氏
三共精機株式会社 代表取締役社長
大手信託銀行勤務後、三共精機株式会社入社。2009年5月より代表取締役社長に就任。地元と行政、佛教大学と協力して里山の再生に取り組む「モデルフォレスト」等の環境保全や、インターンシップ、シニア、障碍者、外国人等の垣根なしの採用、在宅勤務等のワーク・ライフバランスにも積極的に取り組む。京都商工会議所や大学等の外部講師活動も多数。
モデルフォレスト活動
インタビュー後記
石川社長のブログは、ほぼ毎日更新されています。元々書くことが好きだったのかと思いきや、実は苦手だったそうで、ブログを始めたころは、毎日必ず1本アップすることを敢えて自らに課せられたそうです。どんなに忙しくても、飲み会が入っていても、早朝でも夜遅くでも必ず書くことを徹底されたとのこと。様々なテーマ を取り上げられているので読む側はおもしろいのですが、時間もそれなりにかかっているようです。全社員ブログが定着した背景には、こうした社長の姿勢を社員に示されていることも大きな要因になっていると思います。「サービス業の差別化は薄皮一枚。大事なのはその些細なことが実行できるかどうか、継続できるかどうかです。」響く言葉でした。
インタビュー実施日:2014年11月17日
(パワー・インタラクティブ 広富)

    デジタルマーケティングの成功体験をサポート