会員制ビジネスを進化させるMA(マーケティングオートメーション)活用法

パワー・インタラクティブ セミナー事務局【文責】

近年、デジタルテクノロジーの急速な進化によって、ビジネスの世界に大きな変化が生まれています。原因は、クラウドやモバイルが浸透したことで、企業の活用できる『データ』が爆発的に増加したためです。膨大なデータを効果的に活用できなければ、これからの時代を勝ち残ることはできないでしょう。2019年7月16日に都内で開催したセミナー「会員制ビジネスを加速させるデータドリブンマーケティングの進め方」では、マーケティングにおけるデータ活用の重要性と成功するためのポイントについて2名の講師が解説しました。今回は、その第一部となる『会員制ビジネスを進化させるMA(マーケティングオートメーション)活用法』の内容を紹介します。講演者は、パワー・インタラクティブ マーケティングコンサルタント 山下智です。

サブスクリプションの普及とともに再注目される「会員制ビジネス」

今回の講演では、会員制ビジネスの現状と、MAとデータ(+コンテンツ)を有効活用した会員制ビジネスを進化させる方法についての解説がありました。

まずは会員制ビジネスの現状について整理していきます。これまでの会員制ビジネスでは、テレビ広告や交通広告といったマス広告を利用してキャンペーンを展開し、新規会員を獲得する方法が主流でした。全員に同じ情報を配信して、商品やサービスを購入/利用してもらうというものです。ところがインターネットの普及により、従来のやり方が通用しなくなっています。例えばテレビ広告でキャンペーンを配信して興味を持ったとしても、一旦自分でキャンペーンについて調べ、自分に合うか合わないか判断するユーザーが増えてきているのです。もし自分に合わないと判断すると、もうマス広告に反応することはありません。このように、企業側からの一方通行な情報提供では通用しなくなっているのが現状です。

「では今後、会員制ビジネスをどう進化させていくのか?」についてですが、施策の目的を見直すべきデータも紹介されました。

公益財団法人新国立劇場運営財団専門員 堀田治氏のレポート『超高関与消費のマーケットインパクト―関与と知識による多段階の発展モデル』です。レポートを見てみると、会員制ビジネスでは全体の3.3%となる「超高関与」会員(=コアなファン会員)と、10.0%の「高関与」会員(=ファン会員)だけで売り上げの2/3を占めているケースもあるという調査結果が出ています。

従来のやり方は「新規会員を数多く獲得する」ことを目的としていましたが、それが通用しなくなった今。"会員を熱狂させる"、つまり『コアなファン会員を増やす』ことを目的とした施策が重要となってくるでしょう。

会員の中でもコアなファンが重要

こうした状況に拍車をかけるように、会員制ビジネスでは、継続的にサービスを利用してもらう"サブスクリプション型"のモデルが台頭してきています。サブスクリプションモデルで継続して契約してもらうためには、長期的に良好な関係を維持していかなければなりません。会員のLTV(Life Time Value)を向上させ、"ファン化"するための施策が重要となります。

さらにサブスクリプションの台頭

そこで注目されているのが"カスタマーサクセス"というコンセプトです。カスタマーサクセスは顧客の成功が第一。顧客の成功を実現するために自ら顧客の成功を設計し、積極的に働きかけ、顧客をより良い状態へと導きます。「アップセル、クロスセルして顧客単価を上げよう」「離脱防止のために手厚いサポートをしよう」といった、"自社"の成功のために顧客をサポートするという考え方では'ありません。 名前は似ていますが、顧客からの要望に対してサポートを行う受動的なカスタマーサポートとも異なります。

カスタマーサクセスは会員を理解し、それぞれの顧客がどのような状況にあるのか、どのように自社のサービスを利用しているのかをデータで把握し、会員が継続的に利用してくれる状況を作り出すのです。その結果、会員のファン化へと繋がっていくでしょう。

カスタマーサクセスの活躍

そして今、カスタマーサクセスを実現し、既存または新規の会員を"ファン会員"に育成するためのツールとして、「MA」が注目されています。しかし、どのようにMAを活用すれば良いのか分からない人もいるでしょう。山下は、MA/データ/コンテンツを組み合わせて新たなコミュニケーション手段を構築していくことが答えだと言います。次の項目で詳しく解説していきましょう。

会員制ビジネスにMAを活用する際のポイントとは

以前のマーケティングでは、電話番号、住所、メールアドレス等のデータベースにある少ないデータを元に、限られたチャネル(電話/DM/Eメールなど)から一括で情報提供を行っていました。しかし今では、MAを活用することで見込み客の情報や購買履歴、ウェブアクセス、メールログといったデータが蓄積され、Eメール、Webサイト、モバイル、オフラインと複数のチャネル活用できるようになっています。 "One to One"とまではいかなくても、セグメントを区切った情報提供ができるようになりました。

一方で、顧客データや購買履歴、CSVデータなどをMAに集約していくと、バッチ処理などが増え、リアルタイム性が損なわれてしまう危険もあります。そのため、APIを利用したシームレスな連携方法を開発する必要が出てきます。

マーケティング業務のデジタル化によって増大する問題

例えば、マルケト社のMAプラットフォーム「Marketo」の場合、行動履歴などのデータ保持期間は3か月と言われています。データを分析する立場としては当然、半年前、1年前、3年前と行動履歴を比較してどうだったかを検証したくなるはずです。そのため、すべてのデータを保管しておく"場所"を、別途用意しておく必要があります。特に、顧客データや購買履歴、広告配信ログ、位置/天気情報など扱うデータが多いB to Cのビジネスでは、データを統合/保管する仕組みの構築は喫緊の課題です。こうした流れの中で、最近ではDWH(データウェアハウス)を用いて、すべてのデータが時系列ごとに統合された"保管場所"を作る企業も増えてきています。

膨大なデータの集約は簡単なことではありません。データソースを把握して散在するデータを「集め」、一カ所にまとめて活用するため適切な形式に「加工」し、DWHなどの保管場所に「集計・蓄積」。そこからさらにデータを「可視化」するまでの仕組みを構築しなければならないのです。膨大なコストや時間がかかるため、MAを活用した会員制ビジネスの改善に取り組む担当者にとって最難関のタスクとなるでしょう。それでも、多種多様なデータを収集してDWHで管理し、MAのチャネルで各種施策に活用するといった仕組みが実現できれば、極めて大きな効果が期待できます。DWHに蓄積されたデータはMAだけでなく、BI(ビジネスインテリジェンス)、DMP(データマネジメントプラットフォーム)、Dataminingなどに活用の幅を広げられる点も大きなメリットです。

注意点:データを活用必要不可欠なスタック

最適な施策設計を支援する「ライフサイクルステージ」

データの統合/保管する環境が構築できたら、当然ながら集約したデータを活用して、会員それぞれに合ったチャネルへコンテンツを配信していくこととなります。その際、ただのファン会員ではなく"熱狂的"なファン会員へ育成したいならば、購買プロセスを元にステージを構築してユーザーの位置付けを行う、「ライフサイクルステージ」を掛け合わせることが重要です。

ステージを構築すると、現在のステージから次のステージにいくための遷移条件(例えば「会員登録」から「初回購入会員」)が把握できます。そこへデータとMAのチャネルを組み合わせることで、「条件を満たすためのシナリオ」を作成でき、結果として会員に遷移を促すことができるのです。ライフサイクルステージを構築すれば、データやMAを活用した施策を考案し、優先順位を付けるための道標となるでしょう。

購買プロセスを元にステージを構築

まとめ:これからの会員制ビジネスに必要なもの

最後に、今回の講演で解説のあった「データとMAを使った施策の考え方とまとめ方」について整理していきましょう。

まずやるべきことは、データの統合です。そのデータを基に、使えるチャネルとコンテンツを確認してステージを作成し、施策を設計/実装します。続いて、実行した結果を『分析』して有効な施策を把握。必要なコンテンツやチャネルを用意し、また新たな施策を設計/実装していきます。もちろん、新たなデータが発生した場合は、随時保管場所で統合しなければいけません。

以上の流れは一度ではなく、PDCA的なサイクルとして継続していく必要があります。

購買プロセスを元にステージを構築

こうした取り組みを実行するには「施策管理表」を作ることが効果的です。「優先順位」や「施策の目的」「対象ステージ」「使用チャネル」「使用コンテンツ」「使用セグメント」「施策内容」などを整理して、進捗状況のわかる表を作成していきます。

そして、施策を実行した結果となる数値を確認し、どのコンテンツがどのステージで効果的であったかといった傾向を分析。分析結果を基により効果的な施策を打ち出していくことで、最大限の効果が得られるようになるでしょう。

冒頭で山下から、「会員制ビジネスを進化させるためには"会員を熱狂させる"ことが重要」との解説がありましたが、会員を楽しませるためには、まずは自分やチーム自身が楽しむことが大切なのではないでしょうか。"楽しい"を意識しながら会員制ビジネスのマーケティングに取り組めば、きっと確かな結果が表れてくるはずです。


    
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