東急スポーツオアシスが進めるCRM×BIによるデータ活用の最前線

近年、デジタルテクノロジーの急速な進化によって、ビジネスの世界に大きな変化が生まれています。原因は、クラウドやモバイルが浸透したことで、企業が活用できる『データ』が爆発的に増加したためです。膨大なデータを効果的に活用できなければ、これからの時代を勝ち残ることはできないでしょう。2019年7月16日に都内で開催したセミナー「会員制ビジネスを加速させるデータドリブンマーケティングの進め方」では、マーケティングにおけるデータ活用の重要性と成功するためのポイントについて2名の講師が語ってくれました。今回は、その第二部となる『東急スポーツオアシスが進めるCRM×BIによるデータ活用の最前線』の内容を紹介します。ご講演いただいたのは、株式会社東急スポーツオアシス Bees Connect事業部 ゼネラルマネージャー 武重 慶士氏です。

INDEX

  1. 東急スポーツオアシスがデータ活用ツールを導入した目的は課題解決のため
  2. 会員制フィットネスの業務は"データ"が要。だからこそ課題が生まれた。
  3. BIツールを導入するまで、東急スポーツオアシスが抱えていた課題とは
  4. CRMとBIツールを中心に大容量データの可視化を実現
  5. 東急スポーツオアシスがCRM×BIを駆使して得られた3つの成果とは
  6. 東急スポーツオアシスが抱える現状の課題とその解決方法とは
  7. 大切なのは"使う人のため"にシステムを構築すること

東急スポーツオアシスがデータ活用ツールを導入した目的は課題解決のため

東急スポーツオアシスは2016年にBIツール「MotionBoard(モーションボード)」を導入し、CRMと組み合わせた社内データの可視化に取り組みはじめました。その成果が他のフィットネスクラブからの注目を集めたこともあり、2018年からBees Connect(ビーズ コネクト)としてパッケージ化し、外販を開始。現在は人材育成プログラムの提供もスタートしているそうです。

しかし一体なぜ、会員制フィットネスクラブがデータ活用ツールを導入したのでしょうか。背景には、会員制フィットネスクラブだからこそ抱える、さまざまな"課題"がありました。

会員制フィットネスの業務は"データ"が要。だからこそ課題が生まれた。

どのような課題を抱えていたのか説明する前に、会員制フィットネスクラブの業務には一般的にどういったものがあるのか、そしてなぜデータを活用する必要があるのかについて解説します。

フィットネスクラブの仕事内容

フィットネスクラブは「店舗」と「本部」に分かれていて、それぞれ業務内容・役割が異なります。「店舗」は、見学体験案内(セールス)をはじめ、各種手続き業務や運動指導などが主な業務です。一方、「本部」にはさまざまな部署があり、経営を管理したり販促・マーケティングを行ったり、法人へ営業を行ったり、プログラムを開発したりと、さまざまな形で現場(店舗)をサポートしています。

「店舗」と「本部」は離れた場所にあるため、お互いの様子を随時確認することはできません。そんなお互いの様子が分からないにもかかわらず協力し合わなければならない店舗と本社を繋ぐのは、"データ"です。例えば入退会者の情報や見学・体験者によるアンケート結果などを店舗が本部へ報告します。そしてそのデータを本部が分析し、店舗へ伝えることで店舗のセールスに生かしてもらったりするのです。このように、会員制フィットネスクラブ運用には"データ"が必要不可欠。...なのですが、東急スポーツオアシスでは会員情報やアプリデータなど、取り扱うデータが多すぎてさまざまな課題が発生していたとのことでした。

BIツールを導入するまで、東急スポーツオアシスが抱えていた課題とは

BIツールを導入する前の東急スポーツオアシスは、会員の情報をはじめとする膨大なデータが、さまざまなシステムに散在したそうです。そのため、各店舗における現在の進捗情報が把握できないだけでなく、本部が店舗をサポートしたくても分析に時間と労力がかかりすぎていたのだとか。スタッフが資料を作成するのにも時間がかかってしまい、お客様対応が疎かになってしまったり、セールススタッフのモチベーションをなかなか上げられず、入会者数増加に繋げられなかったり...、データ活用"以前"の課題が山積みだったのです。

現在のデータ活用に至る前の課題

具体的にどのような状況だったのかについても、入会時のデータや見学・体験者のアンケート結果の管理方法を例に挙げて説明していただきました。

東急スポーツオアシスの入会方法には2パターンあります。ネットから入会する方法と、店舗で紙の申込書に必要事項を記入して入会する方法です。以前はこの入会申込後の手続きに時間がかかっていました。

なぜならネット入会の場合、入会者のデータをCSVで出力し、それを確認しながら店舗スタッフが基幹システム(会員管理システム)に入力。店舗で申込書に必要事項を記入してもらった場合は、記入内容を店舗スタッフが基幹システムへ手入力していたためです。

見学・体験者のアンケートも"紙"のアンケート用紙に記入してもらうため、スタッフが確認しながら手入力しなければいけません。さらにアンケートの場合は、2箇所入力する必要がありました。1つは見学・体験者へのフォローセールスのためCRMへ、そしてもう1つは本社への報告を目的としたExcel入力です。Excelに関しては店舗成績に反映されるため入力が必須でしたが、前者のCRMに関しては見学・体験者フォロー目的となるため重要度が低く、入力漏れが数多く発生している状況でした。

現在のデータ活用に至る前の各システム

こういった課題解決に向けて東急スポーツオアシスが着手したのは、『大量データの可視化』です。さまざまなデータをリアルタイムに可視化できるBIツール、「MotionBoard」を2016年に導入しました。

CRMとBIツールを中心に大容量データの可視化を実現

BIツール「MotionBoard」の導入に伴いデータを可視化し、データ活用を実現するために東急スポーツオアシスが構築したシステムは、どういったものだったのでしょうか。

東急スポーツオアシスでは、「まず店舗スタッフの入力業務を減らすことからはじめた」と武重氏は話します。ネット入会のデータはAPIを使ってCRMと自動連携させ、店舗スタッフによる入力業務をなくしました。同時にタブレット端末を店舗に導入し、入会申込書や見学・体験者用のアンケートを電子化。タブレット端末に入力された入会者データやアンケート結果は自動的にCRMへ登録されるため、結果としてスタッフの「紙から入力」する手間を省くことになったそうです。

さらに、効率的にCRMに登録されるようになったデータは、「MotionBoard」で可視化できるようにしました。現在は、入会後に発生する退会や会員種別変更に基づく各種届け出用紙もすべて「MotionBoard」を使って電子化し、タブレット端末から処理できるようになっています。

もうひとつの課題である『データの散在』に関しても、東急スポーツオアシスはBIツールで解決されました。集計・分析プラットフォームを使って「DWH(データウェアハウス)」を構築し、そこにすべてのデータが保管されるシステムを作っていったのです。東急スポーツオアシスが提供しているさまざまなアプリのデータも集約されます。予算データなど他の基幹業務システムに保管されているデータも、CSVなどを使ってCRMに流し込み、DWHで集約・管理できるようになっています。

現在のデータ活用をするために組んだ仕組み

1年ほどかけてシステム構築を進めていった結果、抱えていた課題をほぼ解決できたと話す東急スポーツオアシスの武重氏。驚くことに、東急スポーツオアシスではAPIの活用など一部のみベンダーのサポートを受けただけで、BIツールの導入やDWHとの連携などはすべて自社スタッフで行ったのだそうです。導入期間の短縮や導入コストの削減を実現した上で、画期的なシステムを構築された東急スポーツオアシスに、他のフィットネスクラブが注目している理由を垣間見ることができました。

東急スポーツオアシスがCRM×BIを駆使して得られた3つの成果とは

続いて武重氏からお話があったのは、CRMとBIを駆使してどのような成果が得られたのかという点です。大きな3つの成果をご紹介します。

セールス獲得状況の可視化を実現

以前から社内にて「セールスの成績をリアルタイムに可視化することで、早いタイミングでの見学・体験者のフォローに繋げたい」というニーズがあった、東急スポーツオアシス。そこで先ほどもあったように、紙のアンケート用紙を廃止しタブレット端末でアンケートを実施されました。CRMとリアルタイムで連動する仕組みを構築し、CRMに保存されたアンケート取得情報と基幹システムをAPI連携することで、セールス獲得状況のリアルタイムな可視化を実現。セールス成績をリアルタイムに可視化できたことで、店舗スタッフのモチベーションとなり、迅速なフォローへと繋がっています。下図は電子化した書類の一例です。

どんなデータ活用をしたのか① 電子化書類の一例

店舗ごとのデータを可視化し、マーケット調査も簡易化できた

「自店舗の入会者数や退会者数といった会員状況を早めに把握し、次の一手を打ちたい」というニーズに対しても、東急スポーツオアシスは速やかに施策を打ったとのこと。以前は、さまざまなシステムに保存されているデータを集めるのにそもそもの時間がかかり、効果的な分析・対策を行えなかったそうです。そこで、会員から得た情報をそのまま可視化できる仕組みを作りました。具体的には、過去2年の状況を整理した上で、一昨年・昨年並みに入会が獲得できたら今期の目標を達成できるのかどうか、入会進捗を色分けして表示。自店舗の立ち位置が毎日確認できるようなシステムを構築したのです。

振り返り用のデータを可視化し、店舗スタッフの生産性がUP

「振り返りをするための資料作成に手間がかかるため、振り返りをせずに日々進行してしまう」という課題に対しては、ルーティンワークで入力したデータと他のデータを組み合わせて可視化されました。そのまま振り返りの資料として活用できるようにすることで、店舗スタッフはより生産性の高い業務に専念できるようになったそうです。CRMとBIツールを組み合わせることで、こういったデータ活用を容易に行える環境を構築していくことが可能となると武重氏は話します。

東急スポーツオアシスが抱える現状の課題とその解決方法とは

BIツールの導入によりさまざまな課題を解決されてきた東急スポーツオアシスですが、まだ課題が残っていると言います。それは、効果的なデータ活用ができていないこと。BIツールにより会員個人のデータを集約することはできたものの、見学・体験者のフォローについては店舗スタッフ個人の能力に頼っている状態なのだそうです。そこで将来的に考えているのは、MA(マーケティングオートメーション)の活用なのだとか。フォローの成功パターンを構築し、MAを使ってすべての会員にアプローチできる仕組みを用意したいと話していました。さらにロイヤルカスタマー(ファン会員)を育成するツールとしてもMAを活用する予定だそうです。

大切なのは"使う人のため"にシステムを構築すること

「東急スポーツオアシスはサービス業を展開している企業であり、根本的な部分には『"人"ファースト』という考え方がある」と武重氏は話します。BIツールを導入する際も『どんな先進的なシステムでも、そのシステムを使う人の「ため」になっていなければならない』という考えが常に頭にあったそうです。デジタル技術の進化が著しい現代では、まずシステムを入れることを先に考えてしまうケースが多いのですが、そうではなく、そのシステムが"使う人のため"になるのかを考えていくことが大切なのかもしれません。

最後に

東急スポーツオアシスにおけるCRM×BI導入のリアルをお聞きすることができた本セミナー。概念的ではなく実践に基づいた内容で、「MotionBoard」など実際の画面を見ながらのデモンストレーションも活用イメージが沸くものでした。

ただ一方で、ツールを使うことがゴールではなく「"人"ファースト」という考え方の軸があるからこそ、BIツールを活用した課題解決が可能となったのでしょう。活用事例だけでなく、武重氏の想いにも触れられるセミナーでした。


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