セミナーレポート

Marketoユーザー向けリードステージを引き上げるための施策再設計講座 第5回 トークセッション「施策再設計を考える」

パワー・インタラクティブ セミナー事務局【文責】

Marketoユーザー向け5回シリーズ「リードステージを引き上げるための施策再設計講座」もいよいよ最終回を迎えました。2名のゲストにご参加いただき、具体的な取り組み内容や苦労している点などを伺いながら、施策再設計について考えたいと思います。

アデコ株式会社 舘 様

株式会社 堀場エステック 明石 様

※関連ナレッジ資料※
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ステージ

弊社の広富が司会を務め、「ステージ」「コンテンツ」「スコア」の3つのテーマで舘様、明石様とともに議論を展開。各テーマにおけるボトルネックとその解決策を、弊社マーケティングコンサルタントの久道と共に話し合いました。

異なる商材でも共通項を見つけ出してステージの遷移条件を調整

アデコ 舘 様:
商材が複数あるため、どの商材のステージ設計を行うか調整ができなかったことが、最初の段階のボトルネックでした。事業部が分かれているだけでなく、昨年まではマーケティングの組織もブランドに沿って分かれていました。このためどのサービスブランドを軸にMarketoの収益ステージを設計すればよいか調整が難しく、カスタマージャーニーもそれぞれ作成しておりどれに合わせるべきかが難しかったです。

現在は、「Adecco(アデコ)」(人財派遣)、「Spring(スプリング)」(人財紹介)、「modis(モディス)」(ITエンジニアに特化)の3つのブランドでMarketoを活用しています。今年に入りマーケティングチームがサービスブランド別ではなく1つに統合され、収益サイクルモデラをきっちり作ろうということなり、現在設計しているところです。各ブランドで多少の違いはあるにせよ、ターゲットや営業は大きく変わらないため、共通項を見つけて、あまり細かくしすぎずに設計をしています。

パワー・インタラクティブ 久道:
Marketoでは収益サイクルモデラは標準で1つという制約があり、複数商材をどう扱うのかは多くのお客様で抱えている問題です。ステージは購買プロセスを視える化したものです。企業としてはその購買プロセスが変わったタイミングでアプローチする必要があります。ステージを設計する際には、一度どんなアプローチをしているかを棚卸するとよいと思います。「マーケティング側ではこういうシナリオを走らせる」「インサイドまたは営業側ではこういうアクションをする」ということを見ていくと、そんなに複雑なステージにはなりません。ステージの共通項を導きながら、遷移条件を商材ごとに変えることがポイントです。

新規or既存を狙うのか、ビジネスモデルとしてどこをゴールにするのかを明確にして、それに合わせたステージ設計を

堀場エステック 明石 様:
弊社ではデジタルマーケティングチームだけでなく、直接お客様にお会いする営業のほうがコロナの影響を受けており、受注をどう伸ばしていくかが課題です。元々は営業とデジタルマーケティングチームが分かれていましたが、コロナ禍で双方の理解が進み、一緒になってプログラムを作っています。

久道:
リードステージでは「受注」をゴールにすることが多いですが、既存客を対象にした時はゴールをどうするか再設計したほうが良いです。受注した後、別の商材を売っていくにあたってステージを始めに戻すという考え方もあれば、逆にリピートというステージを作っておき、受注後のステータスを管理していくやり方もあります。お客様のビジネス部門、ビジネスモデルに対してステージをどう設計するか見直しが必要です。

ステージのまとめ

© Power Interactive Corp.

コンテンツ

コンテンツを一から作るのではなく、今あるコンテンツを使って仕掛けをつくる

舘 様:
コンテンツについては、「読み物系」「お役立ち系」に注力していこうという戦略のもと、専門の担当者が量産している体制を作っています。サービスの特性もあり、お客様にニーズが発生してから受注に至るまでの期間が短いことから、「何かあったらアデコを思い浮かべていただく」ことを戦略にしています。コロナ禍で新規リードはもちろん、受注が取りにくい状況で、営業部門からはより一層MQLや受注が欲しいという要望が強いのですが、そこに繋げるためのコンテンツがなかなかできていません。

そこで、これまで作っていたサービス系のコンテンツをフック化。資料をダウンロードしてもらう仕組みを作ったり、例えば、人財派遣で「希望の派遣人財を獲得する11のポイント」という、クライアントが気にすべきポイントをチェックシートにしたものを資料として置いたりしました。営業部がお客様に持って行っている提案資料など社内に眠っている情報を集めて、そこからコンテンツ化を進めています。

久道:
アデコさんはコンテンツをたくさんお持ちですが、How-To系が多く、サービスにどう繋げるかが難しかったです。多種多様なコンテンツをプロセスに応じて細分化、分類化するとサービスに繋げやすいコンテンツが見つかったので、それをシナリオとして繋げました。

ニーズを把握するコンテンツを準備して、営業へ引き渡す

明石 様:
半導体業界であれば堀場エステックの認知度は高いのですが、違う業界・分野では社名すら知られていないお客様もいます。そういうお客様にどういったことを仕掛けていけばよいか、苦労しています。営業からは「製品情報を流したら受注できるのでは」と言われますが、なかなかそう簡単にはいきません。

久道:
営業から求められるのは「製品への引き上げ」という直球的なニーズで、マーケティング側はそこを埋める必要があります。コンテンツにも繋がる話ですが、企業と企業とのストーリーがあって、製品を紹介するタイミングがパチッと合うものなので、前段階での関係性を作ることが必要です。アデコさんのチェックシートは1つのいい例。「製品をいる、いらない」ではなくて、「どのあたりが問題でしたか?」と、ニーズを把握して営業へパスするようにすれば、次のコミュニケーションに繋げることができます。

コンテンツのまとめ

© Power Interactive Corp.

スコア

今、ニーズのあるお客様を獲得するために、一定期間でスコアをゼロにリフレッシュ

舘 様:
弊社のサービスの場合、クライアント側でニーズが発生してから受注までの期間が短いという特性があります。お役立ち系、読み物系コンテンツを作ってMarketoで配信していますが、何を読んでもスコアが加算され続けています。このため、一体いつニーズが高まっているのかがわかりにくいのがボトルネックです。

そこで、これからはスコアの項目をいくつに分けようとしています。お役立ち系は省いて、サービスに関心ありそうな方が分かるような項目を商材別に作っていきます。ニーズ発生から受注までの期間が短く、ずっと加算され続けるといつニーズが高まったかが分からないので、お客様の検討期間に合わせて一定の期間でスコアをゼロにしてリフレッシュする、というやり方を検討しています。人財派遣のようなサービスはニーズ発生から受注まで短いので短めに設定する一方で、アウトソーシングサービスは比較的検討期間も長くなるため、リフレッシュする期間も長めにするなど商材によって期間を変えています。

久道:
アデコさんに限らず、累積でスコアがたまっているケースが多いです。第4回でも話しましたが、いくら興味があってもBtoBの場合買う意思があるかどうかは別なので、興味スコアと検討スコアは別に考えるべきです。

スコアの基準は勝ちパターンから分析

パワー・インタラクティブ 広富:
「スコアがどういう状況になれば営業に連携するのか、基準はどのように設定していますか?例えば過去に受注できたリードのスコアを分析して基準を設定しているのですか?」という視聴者からのご質問がありました。

舘 様:
最初は実際に問い合わせに至ったリードがどのぐらいのスコアだったのかを参考にして営業に渡す閾値を考えていました。その後は、営業が実際に「何ポイントの人にアプローチしたら受注に至ったか」をデータで拾い、受注に至りやすいポイントをデータの専門部門と連携しながら見ていきました。

経験の少ない分野では現状分析しながらスコアに反映

明石 様:
スコアが高いホットなリードとして上がってきたものに対して、インサイドセールスが電話をかけると、その状態で「製品が欲しい」という方もいれば、「興味がある」という人もいます。リードの方の役職、所属されている会社の規模、どういうことをやっているのか、という
属性のスコアをきっちり見ていないと受注に繋がりにくいと思います。

いちばんのボトルネックは、スコアの中心が行動になっていることです。コンテンツと密接な関係になると思いますが、「どういうことをしたらスコアを付けるのか」は難しいです。特に経験の少ない分野はどう進めれば良いのか課題ですね。

久道:
それには2つの方法があると思っています。経験分野が少ないというのは、お客様のニーズがどこにあるのかが把握できていない分野だと思います。営業との協力関係がないと難しいと思いますが、1つは
スコアの閾値が低くても一旦営業にパスするとか、営業がコミットした上で、実際のリードの肌感を確認しながら運用していくことではないでしょうか。

もう1つの方法としては、
Googleアナリティクスなどで今のコンテンツの閲覧状況を把握することです。新しい分野で少なからず成果があるのなら、現状分析しながらスコアに反映していくことも1つの方法です。

スコアのまとめ

© Power Interactive Corp.

久道:
営業への引き渡しをMQLとした場合、MQLの件数が適正なのか少ないのかを見ていきます。適正なら確度がマッチしているのか、高いのか低いのかを見ていきます。MQLが少ない場合、スコアの分布に偏りがあれば、配点対象に偏りがある可能性があり、打ち手やスコアの見直しが必要となります。偏りがないなら今現在高いスコアと実際の目標との紐付きを調べ、どうチューニングしていくのかを検討していくと良いです。そもそもスコアが少ないことにはこういったことができませんので、一旦、スコアを付けて回してみて、運用の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

© Power Interactive Corp.

今回の講座の総括(久道)

「ステージ」「コンテンツ」「スコア」を含めてシナリオ作りです。見込み客とどういうシナリオを使っていくのか、これは一方通行の会話ではなくて対話だと思います。

・見込み客が求めている情報は何かをとらえる
ターゲットが変われば当然求めている情報は変わります。また同じターゲットでもプロセスが変われば求めている情報は変わります。このために、

・見込み客の状態(購買プロセス)を整理する
裏返すとMarketoのステージとなりますが、ここを整理しておきましょう。そしてステージを引き上げるためのポイントとしては、

・次へのコミュニケーションの取り方を考える
お客様の課題をちゃんとくみ取って、次どうしていくのかというステップを踏んだコミュニケーションの取り方を考えていただくとよいと思います。

Q&Aコーナー

スコアの基準作りについて

久道:
スコアは付けてみないと判断できないところがあります。よく頂くご相談で、「営業さんにMQLを初めて引き渡す時の閾値を高くすべきか?低くすべきか?」というのがありますが、
ポイントは「営業さんとどれだけ協力関係が構築できているかどうか」だと思います。協力関係が構築できていないのに、閾値の低いMQLをパスしても、「マーケティングから来る案件はダメだな」となってしまいます。営業さんが協力的であれぱ、リードの質が低くてもアプローチしてみて、その結果をフィードバックし、MQLの質を高めていくという仕組み作りができます。

「興味スコア」と「確度スコア」の使い方について

久道:
スコアの使い方は、どういう施策に繋げるかです。「確度スコア」は例えば、「検討段階に入っている」、「商材の価格情報を見ている」、メーカーの場合「CADデータをダウンロードした」など、購買の検討をしているところにスコアを付与していきます。

「興味スコア」は初期の段階で、お客様に自分ごととなるようなコンテンツを送っていく、そのシナリオに使ってほしいと思います。そうしてコミュニケーションを取っていく中で、たまに商材に繋がるお役立ちのチェックシートを送ると、そこをトリガーにしながら「確度スコア」を付けるように持っていくことができます。あくまで興味と検討を示す確度は別で設計した方が良いです。

Marketoの活用には、リードを定義し、視える化する環境を整えるとともに、最適なシナリオが必要となります。しかしそのシナリオは、一度作ればよいものではなく、市場の変化や、販売戦略の変化に柔軟に対応し変化させていくことが必要です。

パワー・インタラクティブでは今後も、Marketoユーザー向けの施策再設計講座を予定しておりますので、ぜひご参加ください。

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