セミナーレポート

Marketoカスタマーサクセス×PIコンサルが語る、Marketo活用のための3つの条件

パワー・インタラクティブ セミナー事務局【文責】

Marketoユーザー向け5回シリーズ「リードステージを引き上げるための施策再設計講座」の最終回、第5回のトークセッションの模様をお届けします。これまでの4回は講義形式でしたが、今回はアドビ社でMarketoのカスタマーサクセスを担当されている北川様をゲストに迎え、施策再設計について考えたいと思います。

弊社の広富が司会を務め、北川様とこれまでの講座で講師を務めたコンサルタント久道がトークセッション。Marketoを活用できているユーザーとできていないユーザーの違いから活用のポイントを深めました。

アドビ社では現在、「Creative Cloud」「Document Cloud」「Experience Cloud」の3事業を手掛けています。その中でMarketoは「Experience Cloud」配下に位置付けられています。

※関連ナレッジ資料※
MOps(マーケティングオペレーションズ)に関する実態調査 をダウンロード

アドビ社カスタマーサクセスから見たMarketoユーザーの現状

北川様:
MarketoはBtoBのイメージが強いと思いますが、BtoCも40%あり少なくはないです。BtoCの中でも高単価で検討期間の長い商材、自動車、不動産などはMarketoのコンセプトとする「中長期のエンゲージメント」と非常にマッチしています。

活用度については、約7割が活用している、もしくはある程度活用している段階だと感じています。それぞれの段階について端的に言えば、
活用している=成果を可視化できている
ある程度活用している=MAとしてご活用いただいているものの、成果を可視化できていない
活用に悩んでいる=メール配信ツールと近しいオペレーションをしている
という状態だと認識しています。

広富:
「活用している」ユーザーは、利用年数では「3年以上」が多いのでしょうか。

北川様:
比率としては多いと思いますが、戦略と人的リソースがあれば、初年度から成果を出されているケースもあります。3年以上使わないと成果が出ないというわけではありません。

広富:
利用年数によって課題は変わるのでしょうか?

北川様:
利用年数によって課題の傾向は見られます。

北川様:
1年未満=マーケティング部が主導してMarketoを導入することが多いと思うのですが、DXの取り組みはマーケティング部だけでは完結せず、上層部ないしは横のつながり、例えばBtoBの場合は営業との連携をいかにするかが課題です。

1年~2年未満=1年目はテスト期間として導入することが多いのですが、2年目からは成果が求められます。

2年~3年未満=担当者の退職や異動のケースも出始め、それをいかにカバーするかが重要です。

3年以上=同じことをしていても同じ成果を出すことが難しい。つまり、市場・お客様・競合の変化に応じてマーケティング施策を変えていく必要があると思います。

Marketoを活用できているユーザーの特徴

北川様とパワー・インタラクティブの久道は、Marketoを活用したデジタルマーケティングを推進するための条件として、
①事業方針との整合性
②顧客理解とプロセス設計
③データ管理
の3点を挙げました。

北川様:
Marketoの取り組みは全社的なものなので、前提として①は重要です。「マーケティング」という言葉通り、市場に目を向け、1to1コミュニケーションのシナリオを設計すること、つまり②も大切です。そして、マーケティング施策の効果検証のためのデータをそろえること。1to1施策のシナリオを実装する際にもデータが必要となります。

久道:
今回の5回シリーズの講座では、②を中心にお話をさせていただきました。Marketoで成果を出すためにはステージをどう引き上げるかが重要で、ステージ自体がビジネスゴールを見据えた設計になっていないといけないので、①とも関わります。そして効果の検証、施策の検証を行うためには③のデータ管理が重要になります。

①事業方針との整合性
広富:
Marketoの利用歴が1年未満のユーザーの課題の傾向として「営業といかに連携するか」が挙がっていました。

久道:
営業との連携のポイントは、「営業担当者との協力体制にどこまでコミットができるか」。マーケティング部門が主導してMarketoを入れる中で、全社的に営業と連携することは難しいかもしれませんが、デジタルマーケティングと相性のいい事業部の営業との成功事例を積み重ねることがポイントです。

北川様:
マーケティング部門はお忙しい方が多いと思いますが、「社内マーケティング」も結構大事だと思っています。営業担当者の気持ちを理解して、望むタイミングで適切なコンテンツをお届けする。対市場でやっていることと同じことを社内にもやっていらっしゃって、うまく協力体制を築かれているケースが多いようです。
例えば、(営業担当者に対してMarketoから)不要なアラートがポンポン飛んできたら、営業担当者は迷惑がり、デジタルマーケティングを信頼できなくなってしまうことが多いので、意味あるアラートを届けること。そのためには営業担当者の日々の行動を理解することが重要です。

「事業方針との整合性」のポイント

久道:
事業方針との整合性では、以下の3点がポイントです。

久道:
営業や上層部にとって大事なのは「新規の売上」「既存の売上」「LTV」などいろいろあると思いますが、これらの事業目標に向けてMarketoがどう貢献するか、どこに貢献しているかを可視化することが一番大切です。

リードの量が欲しいのか、量ではなく質が欲しいのか、営業課題が何で、それをどう解決するかをマーケティング側で考えて施策を推進していく。これによりビジネスゴールに向けたマーケティングの役割が明確になり、共通の指標をもって営業や上層部と話ができる形になってくるので、マーケティング部門としての役割が確立できます。

北川様:
3番目の「営業、上層部とは数字をもって会話する」についてですが、マーケティング部門の方がよく見ているメール開封・クリックではなく、営業に向けてはホットリードを何件送客できたか、上層部に向けては事業貢献を数字としてお話をされることが多いようです。

②顧客理解とプロセス設計
久道:
Marketoでの施策を考える時、運営者目線で「こういうコンテンツを入れたい」と考えてしまいがちですが、顧客の理解をした上で、最適なコンテンツをシナリオに沿って当てはめていくことが重要です。

「顧客理解とプロセス設計」には、2つの視点があります。まずは企業側の営業やマーケティングのプロセスです。そしてお客様側の購買プロセス。購買プロセスに対していかに企業側のプロセスが紐付くか、購買プロセスをきちんと整理・理解しているかどうかが重要です。

広富:
購買プロセスを理解する方法を教えてください。

北川様:
BtoBの場合マーケティング部門の方はマーケティングプロセスしかご存知ないことが多いと思うのですが、インサイドセールスや営業担当者など購買プロセスの分かる方に聞いたり、生のお客様の声を聞いたり、といったことが重要です。

久道:
マーケティング部門の方が購買プロセスを把握できているかというと、意外と把握できていません。営業に聞くこと、お客様の声を聞くこと以外の方法としては、過去の契約客のプロセスや傾向を把握することも購買プロセスを理解するのに役立ちます。

広富:
ウェビナー視聴者からのご質問が入りました。
「全て販売代理店経由で、直営業してないため、顧客の購買プロセスがなかなか把握できていません。把握するためのよい方法はないでしょうか?」
とのことです。

久道:
例えばメーカーの場合、技術担当の方が意外と商社に同行している場合がありますので、技術担当の方にヒアリングをすること。あるいは商社とコミュニケーションを取ることも良いと思います。メーカーによっては、一定額以上の案件が発生する場合には、エンドのお客様に顧客登録してもらう場合もあります。

北川様:
Marketoを使って、セールスナレッジを販売代理店向けにご提供する(パートナーイネーブルメント)ケースもあります。

久道:
改めて、「顧客理解とプロセス設計」のポイントを押さえておきます。

「顧客理解とプロセス設計」のポイント

久道:
プロセス設計には2つの観点があります。

1つ目は「顧客理解」。お客様をセグメントやニーズによってどう分けるかの見極めが必要です。そしてターゲットがどのような状態かを把握すること=「購買プロセス」ということになります。

2つ目の「プロセス設計」。お客様の状態が把握でき、購買プロセスがきちんとMarketoに落とし込めている状態があり、一方で、「業務プロセス」=マーケティングや営業がどういうアクションをとっていくのか、そことの紐付けができているなら、お客様と適切なタイミングでコミュニケーションが取れる状態になっているといえます。

横軸に「購買プロセス」を置いた図の例です。購買プロセスについて、プロセスごとの課題が何で、解決するためにどのような情報を探していて、お客様はどういう行動を取るのか、取った結果どうなったらよいのか(=プロセスが進んだ状態)を、こういうシートを作って理解します。

図の下のオレンジ色の部分は、企業側から顧客に対して、どういう状態の時にどういうコンテンツを出していくのかを示しています。受け皿がないと、お客様の購買プロセスが進んだ時の視える化ができないので、ここをちゃんと作っていくことが大切です。受け皿コンテンツをどのように届けるかが仕掛けにあたり、これが業務プロセスとなります。営業からコミュニケーションを取るのか、マーケティングからコミュニケーションを取るのか、といったことを考えます。

昨今コロナの影響で、購買プロセス自体が変わっている可能性があります。もう一度お客様を理解し直して、Marketoのシナリオを再構築していく良いタイミングかも知れませんね。

北川様:
ステージ設計は非常に重要です。まずは何か施策をやってみようと思いがちですが、急がば回れで、まずは全体の設計図を作ることが重要。そうすることで各施策の目的と、何を成功指標にするのかが明確になります。

ステージを設計した上で、今あるコンテンツや施策をマッピングしてみると過不足が明確になるので、今後の施策設計にも役立ちます。

広富:
ここでまたウェビナー視聴者の方からのご質問です。
「いろいろ施策を展開してもステージの遷移にあまり影響がないのですが、会社に対してどのようにアピールしていけばよいでしょうか。」

久道:
ステージの遷移をどう見せていくかは、ステージがビジネスゴールと紐付いているという点で、肝になる部分だと思います。

セグメントをきちんと切って、誰に対しての施策なのか、例えば何万件ではなく3,000件に対して施策を打った時にどうなのか、その遷移率を見ていくと、「MQL(有望リード)の創出がこれぐらい増えています」というのが明確になるケースが多いです。

まずはセグメントを切ってみて、どういうコミュニケーションを取るのかを明確にした上でその後の施策を打っていくと、その後の検証も会社にアピールしやすい結果が出てくると思います。

③データ管理
広富:
Marketo活用されているお客様で、うまくデータ管理をされているのはどんなパターンでしょうか?

北川様:
BtoBに特化すると、Marketoで持つデータ以外にも、CRM連携して営業が持つデータを収集したり、FORCASやランドスケイプのデータを使って企業情報を付与することで解像度を上げていく取り組みをされているケースがあるようです。

CRM連携させるといっても、Marketo側にマーケティングで必要なデータが適切に取り込めているか、CRM側に営業担当者が日々データをインプットしているのか、が重要です。データ連携させるのはワンクリックですぐできるのですが、意味あるデータが意味ある形でつながっているかが重要です。

久道: マーケティングで活用するデータをどの段階で取るのかは重要です。これをオンライン、オフライン含めて設計していきます。

「データ管理」のポイント

久道: Marketoはオンラインが中心になりがちですが、名刺管理ツールなども連携できればデータ化できます。オフラインの情報を取り込むことは重要です。
また、どういうデータを取り込むのか、どういうフィールド項目を取り込むのか、後々のマーケティング施策にどう活用するかを見据えてデータ収集する必要があります。

さらに、Marketoには「収益サイクルモデラ」という機能がありますが、その精度をあげること、施策を検証していくために、データ管理は重要です。

北川様: 施策を打つ上で、お客様のことを知らないと1to1のコミュニケーションはできません。Marketoを活用されている企業は、データをよく収集されているなと感じています。そして、クロージングした商談がいくらで、いつ受注したのかをMarketoに返してあげて、Marketoの貢献をきちんと可視化することが大切です。

さらにデータ活用の発展形として、商談に至るまでの過程、各マーケティング段階でMarketoのどの施策がどの受注に結び付いたかのアトリビューション分析までできると、かなりデータを使いこなしているケースだと言えます。

コロナによる市場の変化

最後に、ここ1年大きな影響を及ぼしているコロナによる変化について確認しました。

久道: コロナによる変化について、北川様が感じられていることはありますか?

北川様: 今までDXの取組みを行っていなかった企業がMarketoの導入を検討するケースが増えました。また、導入済のお客様からは、「ウェビナー施策をどうMarketoで回していくか」という相談が増えました。

久道: 営業の在り方を変えていかなければならないという危機感を持つ企業が増え、そこに向けてマーケティング側からの協力が要望として増えているのでは思います。


Marketoの活用には、リードを定義し、視える化する環境を整えるとともに、最適なシナリオが必要となります。しかしそのシナリオは、一度作ればよいものではなく、市場の変化や、販売戦略の変化に柔軟に対応し変化させていくことが必要です。

パワー・インタラクティブでは、今後も、Marketoユーザー向けの施策再設計講座を予定しておりますので、ぜひご参加ください。

TOP