コロナ禍も経常利益率30%超 研修業界を席巻する経営トップが実践したデータ活用法

年間研修実施回数2万回超、年間研修受講者数53万人、企業研修業界で圧倒的な実績を持つ、株式会社インソース。競合の多くは研修の内容を外部から招いた講師に一任しているが、インソースは研修で何をどう話すのかを講師ではなく、インソースのスタッフが研修の内容を設計・開発。講師とコンテンツ開発を分離する体制をとることで、お客様のニーズや時代の変化に合わせた良質なコンテンツの提供を行っている。

コロナ禍でも増収増益を続けるインソースの舟橋孝之社長に、DXが注目される前から、データで事業をトランスフォームしてきた実践論を、弊社ウェビナーで語ってもらった(2021/12/2開催)。

舟橋孝之氏

株式会社インソース 代表取締役執行役員社長

神戸大学経営学部商学科(流通システム論専攻)卒業後、三和銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。支店配属後、システム開発部門に異動し、管理会計システムや顧客分析システム、テレマーケティングシステム等の開発を担当。ネットバンクの仕組等で特許を取得。2003年に教育研修コンサルティング会社である株式会社インソースを起業。2016年には東証マザーズ、2017年には東証一部上場。2022年4月東証プライム移行。





第1部 Liveインタビュー

■ 1.「データ」とは減らない財

パワー・インタラクティブ 広富:
インソースはデータ経営の塊ということで、今日はデータに焦点を当てながら進めていきたいと思います。まず最初に、舟橋様が考える、「データ」とは何でしょうか?

舟橋様:
「データとは減らない財」です。いろいろな財がありますが、データ以外の財は使うと減る。データという財は使い倒すことが大事なのです。

銀行では1,600万人の取引データを解析する仕事をしていました。電気代が上がったら家が広くなったのかなとか、いろいろな解析をしましたが、データ解析では良い結果は得られませんでした。後で分かったことですが、銀行に自動的に集まってくるデータでは意味がなかったのです。金融行動を決めるのは、フローの収入と総金融資産の情報です。これはお客様に聞かないと分かりません。結局のところ、そもそも必要なデータがなかったわけです。

データベースマーケティングの前には、価値あるデータとは何かを早期に峻別して、徹底的に集めることが大事です。当社のウェブサイトは2万ページほどありますが、それぞれのヒット数はほとんど見ていません。総PV数と、問い合わせ数だけを活用しています。どこにフォーカスするかも大事なのです。

広富:
確かに、昨今はDX流行もあって、大量のデータをとにかく集めるかに注目がいっている気がします。大量のデータが集まっても本当に使えるデータはどこ?みたいな話をよく聞きます。けれど、舟橋様が指摘する「価値あるデータを早期に峻別する」というのはなかなか難しいと感じます。

舟橋様:
価値あるデータを見つけ出すのは「直感」です。マーケッターの方も営業に出てみて、自分の直感を養うのが良いと思います。直感とは、経験と学習と情報でできています。判断できないとすると、そのうちの何かが足りないわけです。
あとは実際に売っている人に聞くことです。成績を上げている10人ぐらいに「何が一番大事なデータですか」と聞いてみると分かります。「たいていのデータは要らない」という話になったりします。

■ 2. 6回架電すれば会える、150通メール送ればお問い合わせが来る

広富:
インソースを立ち上げた当初、ご自分で営業もされていたのですよね。その時の経験も今のデータ活用に活かされているということですね。

舟橋様:
インソースを始めた当初は、実績がないためまず売れませんでした。話すら聞いてもらえません。しかしながら週に400本ほど電話を掛けるうちに統計的なことが分かってきました。同じ会社に半年間に6回ぐらい電話をすると会ってもらえます。またメール営業では、150通ぐらい送れば問い合わせがくるということも分かりました。営業はテクニック論ではなく、統計学だと思います。今でも当社の営業はノルマがなく、接待も禁止。それでも業績は上がっています。

電話を掛けることで、断られたとしても社名を検索してもらえるので、Googleでの検索ランクが上がることも分かりました。



図表1:営業は「数」であり「量」



広富:
「6回架電すれば会える、150通メール送ればお問い合わせが来る」これはすごいですね。テレアポでWeb閲覧が上がるというのもすごいです。

舟橋様:
過去20年間で30~40億円ほどを自社のシステム開発に費やしました。今ではあらゆる業務がシステムに乗っていて、大量の仕事をミスなくできるようになりました。



図表2:Plants12



こちら(図表2:Plants12)は営業担当者が顧客情報を残す画面で、交渉経緯を記録しています。実際のところ「お客様は何を言っているか」さえ記録があれば物は売れるので、その情報を残すようにしています。

広富:
いわゆるSFA(Sales Forcus Automation)ですよね。SFAというと、営業に入力してもらうために、選択方式にして、できるだけ文字入力を少なくすることが多いですが、あえて文字中心にしたんですね。すごいな。

舟橋様:
そうです。入力項目は少ないほうが良いので、プルダウンでいちいち選ばせるのではなく、思い付いたことを自由に入力できるようにしました。
一方で、このようなシステムでは「商談の終了時刻」を入れさせることがあります。しかし、営業の立場からするとさぼっていないかを確認するような機能なので気分は良くありません。このような管理項目はほとんど入れないことが大事です。

またマーケティングデータを集める時に、「これは会社の方針だから義務です」というのは良くありません。何か「おいしいもの」がないと人は動きません。何か楽しいこと、楽になることとセットにするとマーケティングはスムーズにいきます。当社の場合、営業担当者がデータ入力をすると封筒の宛名を自動的に印刷できる機能を付けました。そうすることでシステムが使われるようになりました。

データが貯まってくることで、精度の高い営業メールが出せますし、過去どんなことを話していたのかも、営業担当者が変わっても分かります。

広富:
SFAに蓄積されたデータはどのように生かしているのですか?

舟橋様:
当社では、営業プロセスで発生したデータをITで吸い上げて活用しています。年間1,000万通程メールを送り、2万ページのウェブサイトから年間5,000件ほどお問い合わせが届きます。そうすると180名いる営業担当がいち早く訪問します。そこで無料の会員組織に入ってもらい何らかのサービスをご提供するという流れです。

その中から、新しいニーズができるとひたすら研修サービスを作ります。費用対効果はあまり考えずお客様のニーズがあればとにかく作ります。そうすると97%の商品は赤字になります。売れ続けるのは残りの3%ほど。でも研修などのサービスは在庫コストがかからないため、どんどんウェブサイトに載せて売れる時を待ちます。過去から継続して売れている商品が今を支えてくれているというわけです。例えば「女性活躍」の研修は10年前に作ったもので、最初は売れませんでした。ところが普及期が来たら最大シェアが取れ、その時には開発が終わっていたので全てが利益となりました。



図表3:人とITを活用した営業展開



■ 3. 勇気を持って内部データを出すと顧客誘引力が高くなる

広富:
さきほど「データとは減らない財だ。データという財は使い倒すことが大事」と言われていました。「データを使い倒す」とは、具体的にどういうことなのか、もう少し掘り下げて教えてください。

舟橋様:
まず、コミュニケーションは「コスト」なんですね。社内で議論したり、説得したりというのは時間の無駄。ベクトルを合わせるためにお客様の声を迅速に社内に流通させています。そうすることで迅速なモノづくりができます。また、通常は社内データとされているものを積極的に社外に公開しています。内部情報を外部化するのが最高のマーケティングだと思っています。

広富:
コミュニケーションはコストという考え方はすごいですね。昨今のリモートワークだから雑談が減って生産性が悪くなったといった文脈の話なんかはふっとびますね笑。例えば、どのような情報を社外に公開していますか?

舟橋様:
約10年前から研修に対するお客様の評価を公開しています。本当は評価のデータはあまり出したくないのですが、お客様が意思決定される時に、研修の評価は知りたいだろうと思うためです。評価が良かったかどうかの割合と、総受講者数も出しました。あまり良くない結果の研修でも数字を出すことで売れるようになりました。勇気を持ってデータを出すことでお客様が評価してくれます。つまり顧客誘引力が高くなるということです。ウェブサイトには研修の値段やカリキュラムの中身なども詳細に書いてあります。これにより説明しなくて良くなるので、営業コストが下がります。



図表4:社内データの活用



■ 4. 従来の研修業から変革「コンテンツの開発」と「ナレッジの蓄積」に注力

広富:
これだけのデータを活用するには、社内の人材育成も大変なのではと思いますが、いかがですか?

舟橋様:
2年前よりデジタル人材育成プロジェクトを実施しています。新入社員にはPythonの研修を実施し、機械学習ができるようにしています。先輩達が知らない知識を手に入れることで頼られる機会が増え、自信にも繋がっているようです。またプログラミングを学ぶことで、手順を考えながら仕事を進める力も付いています。



図表5:社内のデジタル人材



舟橋様:
弊社では「スマイルカーブ経営」を標榜しています。製造業で使う言葉で、簡単に言うと付加価値の高いところに力を入れましょうという考え方です。当社は「コンテンツの開発」と「ナレッジの蓄積」に力を入れています。従来の研修業は講師の派遣業であり、社内でコンテンツの開発やナレッジの蓄積をやっていませんでした。当社はそこに力を入れ、残りのところはシステム化したということですね。

広富:
スマイルカーブのグラフを見ると川下にナレッジの蓄積・活用とありますが、インソース社のナレッジとはどういったものなのでしょうか?

舟橋様:
営業の仕組みなど全てマニュアル化しています。営業活動で出てくるログは創業3年目以降全て残っています。営業担当は過去の経緯を見ながら営業できますし、担当が変わっても全て分かります。これが当社のナレッジです。



図表6:インソース流スマイルカーブ経営



広富:
最後に、今後の課題を教えてください。

舟橋様:
いかにデータ活用の精度を上げていくかが課題です。必要なデータも変わっていくので追加もしなければなりません。最近はオンライン商談も出てきていますが、いまだにパソコンが1人1台ない会社もあります。その場合オンライン研修はできないので、他の手段を考える必要があります。その時その時に必要な情報を記録していく仕組みを作らなければなりません。

セミナー事務局より

「データとは減らない財」。その考えを持って必要なデータを集め、流通させ、お客様のニーズに答えるサイクルを作り上げられていることが分かりました。またサイト上で研修の評価などを公開することで、信頼の獲得と営業コスト減に繋げていることが非常に印象的でした。そういう面でもデータを使い倒す仕組みが出来上がっているのだと思います。


    
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