SDGs×DXから学ぶアウトサイドイン発想の新規事業創出

2021年4月23日(金)

代表取締役 岡本 充智【文責】

パワー・インタラクティブでは、4月、10月に二日間かけて東京オフィスと大阪オフィスの全社員が集まる恒例の行事がある。オールミーティングという半期のキックオフを兼ねた勉強会である。今年は昨年に続いてオンラインで開催した。一日目はSDGs×DXで新規事業を考えるゲーム形式の「SDGs アウトサイドイン」。二日目はボードゲームの「マーケティングタウン」を行った。二日間とも大いに盛り上がった。一年余りにわたり思うようにリアルに接する事の出来ない中で、オンラインといえども相互のつながりを深めることが出来た。


さてSDGsが急速に企業現場に浸透してきている。SDGsは2015年の国連サミットで満場一致で採択された。その内容は、国連加盟193ヵ国が2016年から2030年までの15年間で達成すべき持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)を設定し合意したものである。

図表:SDGsの17の目標

SDGsと同じようにメディアに頻出している用語にESGとCSRがある。ESGは環境・社会・ガバナンスの取組みを重視したものである。CSRは企業の社会的責任であり、日本の企業では組織にも組み入れられ、社内外に浸透しているものである。これらの相互の関係を以下に整理してみた。

図表:SDGsとの比較

  SDGs ESG CSR
意味 持続可能な開発目標
(Sustainable Development Goals)
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)への取組み 企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)
目的 2030年までに持続可能な開発目標を達成していきよりよい世界を実現する ESGに積極的に取り組む企業を増やし、地球規模で環境問題・社会問題を解決する 株主や顧客・従業員といったステークホルダー(利害関係者)の企業への信頼を高める
相互の関係 対象はESGよりも範囲が広く国や自治体も含み、ESGも開発目標達成のための一つである 対象は企業や投資家が中心で、SDGsの達成に向けたプロセスの一つである 対象は企業・団体で、ESGのような投資家側の視点は含まれない

私たち企業人は、これからの時代はESGやCSRの概念を理解した上で、SDGsに取組んでいく義務がある。産業勃興期のわが国における名著である渋沢栄一の「論語と算盤」は、利潤と道徳を調和させるという経済人がなすべき道を説いている。「論語と算盤」では、当時の時代背景からさほど環境問題には触れていないが、「まっとうな富は、正しい活動によって手に入れるべきである」という一文がある。時代が変わり価値観が変容していっても、企業が目指すところは変わらないものである。

さて、今回行った「SDGs アウトサイドイン」は、参加者に配られた資金や資源を活かして、新規事業を創造し拡大していくゲームである。ゲームが進展するにつれて面白さは倍増した。このゲームで目指すべき新規事業は社会課題を解決できるものであり、一方で利益を最大化していくことである。

なぜアウトサイドインなのか。従来のプロダクトアウトやマーケットインと比較して以下に整理したものがある。アウトサイドインは、企業と顧客/市場との関係だけではなく、社会との関係に着目している。社会に潜んでいる課題を解決していくことで新規事業を考えていく。プロダクトアウト&マーケットインが顧客/市場のニーズへの対応を起点とした新規事業の創出に対して、アウトサイドインは社会課題の解決を起点とした新規事業の創出を考えようというものである。

図表:アウトサイドインと新規事業創出

新規事業を考えるアプローチには様々なケースがあるが、まず自社に何ができるかを考えるだろう。これがプロダクトアウトになる。そして市場にどのようなニーズあるのか。そのニーズを満たす事業を考える。これがマーケットインになる。この交わるところであるプロダクトアウト&マーケットインの領域で成長性や収益性のポートフォリオを描きながら新規事業の可能性を検討する。しかしながら現在の国内市場においては切実なニーズは少なく、そう簡単に新規事業アイデアが出てくるものではない。

今回のゲームを通じて、このアウトサイドインの発想はもつれていた糸をほぐす補助線の役割に似ていると感じた。新規事業を考える際に「顧客ニーズ」に縛られると、まず顧客は誰かという根源的な課題から入らなくてはならない。その顧客ニーズは解決するに値するだけの価値があるものかということも問われるだろう。DXによる変革に着手する以前に、まず解決すべき課題整理に多くの時間が割かれて、労多くして報われないことになる。このようにどんどんと糸が絡まり先が見えない状態になることは、幾度も経験している。

ところがアウトサイドインの発想は、顧客ニーズを社会課題に置き換えるだけで良いのだ。社会課題のヒントも、SDGsの17の目標が与えてくれている。どの社会課題を取り上げても、自社のコアコンピタンスを応用できる可能性は考えられる。そこにスイスのエリック・ストルターマン教授が提唱したDXの概念である「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ことを取り入れれば大きなビジネスモデル変革を興し、新たな市場を創出することが可能になる。

アマゾンがブックストアのECを始めたころ、すでにアメリカには200余りのブックストアのECサイトがあったという。競って先発優位の利権を得たい彼らは、ECのメリットである在庫を持たないことを武器に顧客に使いやすいサイト構築を目指した。しかし、流通がそれを許さなかった。たった一冊の書籍に迅速に対応してくれるはずがない。その様子を眺めていたジェフ・ベゾスは、いかにストレスなく顧客に注文を届けるかが真の顧客ニーズであると見抜いた。そこで自前で倉庫を持ちフルフィルメントを自社でやり切ることに全力を集中した。そのため長きにわたって赤字が続いたが、そこでステークホルダーを説得し協力を得ることで膨大な資金調達を可能にした。それが今に繋がっている。DXの概念を理解するのにこれほど分かりやすい教材はない。小売業がオンラインショップに取組むことがDXではなく、お客様が注文してから手元に商品が届くまでの流れをデジタル技術の潜在力を活かして実現することそのものがデジタルトランスフォーメーションなのである。

そこで新規事業である。売上や利益が最初に頭に浮かぶようだと、顧客をどうする、市場はどこが良いかという呪縛から離れられないだろう。社会に横たわっている課題は何か。その社会課題を解決することが企業の使命であると考えれば、そこにデジタル技術を組み込むことで、今まで成しえなかった変革を興せる期待は高まる。まさに、社会課題に焦点を当てたアウトサイドインの発想は、新規事業を考える補助線の役割そのものである。

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