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思考バイアスの壁

2017年8月24日(木)

代表取締役 岡本充智【文責】

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新規事業の担当者が一番困っていること。それは社内の理解を得ることが、とてつもなく困難であることです。新規事業に取り組む背景には、長い歴史の中で積み上げてきた「本業」が必ず存在します。そこには多くの社員がそれぞれの役割を担っています。多くの社員は新規事業に対して期待をしているというよりは、自分たちとは無縁の世界として見ています。また社内の役員はほとんどが本業を通して目標を達成し貢献してきた人たちです。その様な人たちの理解を得ることがいかに困難か想像に難くありません。

同じように新しい仕組みを取り入れることも、一つの新規事業と考えられます。例えば、営業活動におけるマーケティングの位置づけです。マーケティングは営業と協力して相乗効果を発揮していくものです。マーケティングで潜在客を掘り起こし、時間をかけて顧客育成し、そして営業にクロージングを委ねる。というシナリオがほしいわけですが、なかなかそうはいきません。営業はいままで自らの力でこのシナリオをすべてやってきたわけですから、そう簡単にマーケティングに前段階を渡す決断ができないのもうなずけます。

これを「思考バイアス」を通して考えてみたいと思います。思考バイアスはいわゆる「思い込み」だと考えていただいていいと思います。思考バイアスには様々なタイプがあります。大きく分けて三つあります。

思考バイアスの壁

第一の思考バイアスは、何かが起こったときにその意外性に騙されてしまうことです。例えば、極めてまれなケースを一般化してしまう「代表性バイアス」、大地震が発生した後の地震保険の加入者が増えるのはこのケースです。偶然に起こった事に法則性を求めてしまう「偶然性バイアス」、展示会などで初日の来場者がたまたま多く来られたので、明日もこのくらいは来るなどと分析などせずに二日目を迎えるのはこのケースです。起こる確率が低いのに過剰に評価してしまう「過剰評価バイアス」、大きなプロジェクトをほぼ受注寸前までいって最後に失注した時に、また同じことが繰り返されるのではないかと戦意喪失するケースなどがそうです。

第二の思考バイアスは、ある情報や意見に対して安易に迎合してしまうことです。例えば、活用できる情報を過大評価してしまう「利用可能性バイアス」、ある特定顧客の意見や評価を全体の意見や評価と勘違いしてしまうケースです。多数派の意見が正しいと思ってしまう「多数派同調バイアス」、会議などで最初の意見は共感していたのに、次々と反論が出てくるとそうかなと思ってしまうケースです。一貫性のあるストーリーを聞くと信じてしまう「一貫性バイアス」、原因と結果を結び付けられて理論的に話されるとなるほどとうなずいてしまうケースです。

第三の思考バイアスは、自分の都合に無意識に合わせてしまうことです。例えば、自分の仮説に沿った情報が目についてしまう「確証バイアス」、何とか企画書を通したいという思いが強いと企画内容を支持する情報やデータばかりを集め反証する情報やデータは集めないか無視するケースです。成功した時は自分の手柄にする「責任バイアス」、仕事がうまくいったときは自分の貢献度が大きく、失敗した時は不可抗力か自分の責任ではないと思い込むケースです。後付けで理屈をつけて正当化してしまう「後知恵バイアス」、物事が起きてしまってから予測可能だったと思ってしまうケースです。

私たちにはこのような思考バイアスが常に存在しています。思考バイアスは無意識に起きますから避けることはできませんが、少なくともこのようなバイアス=思い込みがあるということをあらかじめ認識しておくことは、事態の悪化を避けるためにも大切です。

新規事業の企画や新しい取り組みを社内で理解してもらう際に、この思考バイアスを逆手にとって話を進めていくこともできます。例えば、代表性バイアスを利用して、メディアに取り上げられてSNSに多くのいいね!が集まった時に市場の支持を受けていることを強くアピールするなどで社内の世論を動かすことは可能です。また一貫性バイアスを利用して、新規事業の戦略ストーリーを成功物語にして社内広報誌や社内SNSに投稿するなどして注目を惹きつけることも可能です。また確証バイアスを利用して、トップが常に話している方針に沿った内容が事業の中にいっぱい含まれていることを文面化して会議の席で提示することで経営トップの支持を得ることも可能です。思考バイアスを利用して協力者を得ていくこともイノベーションを興すきっかけになります。

以上

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    代表取締役岡本充智
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