コラム

Brazeは何がすごいのか?”施策単位”ではなく”ユーザー単位”で考えるCRM

こんにちは。パワー・インタラクティブの奥村です。

マーケティングの世界で「CRM」や「MA」という言葉は、すでにお馴染みのものになりました。しかし、日々の業務を振り返ってみたとき、本来の目的である顧客との関係づくりがしっかりできていると自信を持って言える方は、どれくらいいるでしょうか。
多くの現場では、「今週のメルマガを何通送るか」「キャンペーンのプッシュ通知をいつ予約するか」といった、目の前の施策をこなすことに精一杯になっているのが実情かもしれません。リストを作って、設定をして、配信ボタンを押す。こうした作業がルーチン化するほど、皮肉にもその先にいるユーザー一人ひとりの顔は見えにくくなっていきます。

以前の記事(Brazeとは?カスタマーエンゲージメントプラットフォームの基本)でも少し触れましたが、Brazeは単なる配信ツールではありません。実際に触ってみて感じるのは、これがマーケターの思考を「施策中心」から「ユーザー中心」へとアップデートしてくれるということです。本稿では、なぜ今Brazeのような考え方が注目されているのか、現場目線で紐解いていきます。

「MAやCRMを導入したものの、結局一斉配信のメルマガツールになってしまっている」とお悩みの方や、「配信作業に追われず、もっと顧客一人ひとりの今の行動に寄り添ったコミュニケーションを実現したい」とお考えの方に、本稿が少しでもヒントになれば幸いです。

「一斉配信」から「個客対応」へのパラダイムシフト

Brazeが従来のツールと決定的に違うポイントを挙げるとすれば、それは「データの鮮度」「反応スピード」、そしてそれらを統合した「マルチチャネルでの実行力」の3点ではないかと思います。

これまでの多くのツールは、昨日のデータを夜間に集計し、今日の配信リストを作るバッチ処理が基本でした。しかし、今のユーザーの熱量はもっと速いスピードで変化しています。1時間前に欲しいと思っていたものが、今はもう興味がなくなっている。そんなことは日常茶飯事ですよね。

従来の過去のデータに基づく運用は、いわば少し前のユーザーの影を追いかけているようなものでした。これに対し、Brazeは今、この瞬間のユーザーの動きをリアルタイムに捉えることが可能です。

さらに強力なのが、その「今」の情報を、アプリ・Web・メール・LINEといった複数のチャネル(マルチチャネル)で、一貫したストーリーとして届けられる点です。

これがどういうことなのか、ECサイトでよくある「カート落ちリマインド」を例に、その違いを見てみましょう。

【従来型】
・カートに商品を入れたまま離脱したユーザーに対し、翌日の12時に一斉に「買い忘れはありませんか?」とメールを送る。
・課題:すでに他店で購入済みかもしれないし、12時には仕事中で見られないかもしれない。

【Brazeによる行動ベース】
・トリガー: ユーザーがカートに商品を入れてから「1時間後」に、まだ購入が完了していない場合。
・アクション: そのユーザーが直近で最もアプリを開いている時間帯をAIが予測(インテリジェントタイミング機能)し、アプリ内メッセージまたはプッシュ通知で「カートの商品が残りわずかです」と通知。
・ポイント: 「カート投入」という具体的行動を起点に、一人ひとりのライフスタイルに合わせた時間軸でアプローチします。

こうしてBrazeの強味を組み合わせることで、メッセージが邪魔な広告から、ユーザーにとってちょうど欲しかった便利な案内へと変えることが可能です。

「属性」で縛らず「熱量」で捉える

これまでのCRMでは、「30代・女性・東京在住」といった属性でユーザーをグループ分けするのが一般的でした。しかし、ライフスタイルが多様化した今、同じ属性の人たちが同じものを欲しがると考えるのは少し無理がありますよね。

重要なのは、その人が「誰か(属性)」よりも、今「何をしているか(行動)」に移り変わってきていると思います。

Brazeでは、属性以上に「カスタムイベント」と呼ばれる行動データを重視します。その人が昨日、どのページを見て、どのボタンを押して、何分間アプリに滞在したか。こうした一つひとつのアクションを積み重ねていくことで、そのユーザーの今の熱量が見えてきます。

従来のCRMとBrazeにおけるデータの捉え方の違いを整理すると、以下のようになります。静的な属性ではなく、動的な行動を軸にすることで、ユーザーの今の興味を正確に捉えられる点が大きな違いです。

データの種類 従来のCRM(属性メイン) Braze(行動メイン)
主なデータ 年齢、性別、住所、会員ランク 閲覧履歴、検索、お気に入り、滞在時間
捉え方 静的(一度決まると変わらない) 動的(行動によって常に変化する)
メリット グループ分けがしやすい 「今」の興味関心が正確にわかる

例えばメディアサイトなら、「過去30日間で10回以上記事を読んだが、SNSシェアは一度もしていない人」というセグメントを作れます。これは単なる読者という括りではなく、「ファンになりかけているけれど、あと一押しが必要な人」という、ユーザーの状態をピンポイントで指し示しています。

こうしたユーザーの熱量に合わせたコミュニケーションができるようになると、マーケティングの精度は格段に上がります。

日本企業は本来、実店舗などにおいて顧客一人ひとりの顔色や行動を汲み取るおもてなしを非常に得意としています。しかし、いざデジタルのマーケティング領域になると、途端に属性データによる画一的な一斉配信に陥りがちです。Brazeが提唱する行動ベースのアプローチは、決して目新しい海外の概念というわけではなく、日本企業が実世界で大切にしてきたきめ細やかな接客を、デジタル空間で再現するための仕組みと言えるかもしれません。

「壁当て」から「キャッチボール」のコミュニケーションへ

よくコミュニケーションの例えとして「キャッチボール」が使われますが、これまでのマーケティング現場で行われてきたそれは、本来のキャッチボールとは少し異なるものでした。

実は、ユーザーはこれまでもずっと、サイトを見たりボタンを押したりすることで「サイン(ボール)」を投げてくれていたんです。しかし、企業側の受け止める準備ができていないケースが多くありました。ユーザーがボールを投げてくれた瞬間ではなく、翌日の朝など「企業の都合の良いタイミング」で、相手が捕れるかどうかも気にせずボールを投げ返す。これではキャッチボールではなく、ただの壁当てになってしまいますよね。

Brazeはこの関係をガラッと変えます。
・ユーザーのサインをキャッチする:ユーザーが今アプリを開いた、商品ページを見ながら購入を迷っている、といったサインをリアルタイムで確実に受け取ります。
・相手が捕れるところに投げ返す:そのサインに対して、Brazeは「今この人はスマホを手に持っている」「今はメールよりプッシュ通知の方が捕りやすいな」と判断し、相手のグローブにぴったり収まるタイミングでボール(メッセージ)を返します。

このようにユーザーが受け取れる状態にあるかをシステムが判断し、最適な対話を実現できるのがBrazeの大きな強みです。 そして、この一連の流れを視覚的に設計できるのが「Canvas(キャンバス)」という機能です。

Canvasを使えば「Aというアクションをしたら、まずはアプリ内で声をかける。反応がなければ、一番反応が良い時間帯にメールを送る」といったように、ユーザーとの対話を視覚的に組み立てられます。ここではメッセージを送ることがゴールではなく、それをきっかけにユーザーとどうエンゲージメントを続けていくかが設計の主役になります。

マーケターの仕事は「配信」から「体験の演出」へ

Brazeを導入することで、マーケティングチームに起こる一番大きな変化。それは、日々の考え方が変わる点ではないでしょうか。

これまでは「今月は何回配信するか」「どうやって開封率を1%上げるか」という、送る側の効率ばかりを考えていたチームが、Brazeを使い始めると自然と「ユーザーはどう動いているか」を議論するようになります。

「なぜこのステップで離脱してしまうんだろう?」

「このタイミングでこんな声をかけたら、もっと便利だと思ってもらえるんじゃないか?」

このように、思考の起点が施策からユーザーに移っていきます。配信の設定やタイミングの最適化といった細かい作業はBrazeというシステムに任せ、人間は「どんな体験を提供すれば、ユーザーはもっとブランドを好きになってくれるか」という、より本質的な戦略に時間を割けるようになります。

デジタル化が進めば進むほど、ユーザーは「自分の状況をわかってほしい」という感覚を強く持つようになります。一方的な大量配信ではなく、一人ひとりの今の状況に寄り添ったコミュニケーション。これこそが、今の時代に求められているCRMの姿ではないでしょうか。

まとめ:顧客体験を「再定義」するために

「Brazeは何がすごいのか?」という問いに対し、私は単に高機能な配信ツールではないと答えます。Brazeは、マーケターが「ユーザー一人ひとりと向き合うためのプラットフォーム」です。

・施策の数ではなく、ユーザーの体験を追う。
・過去のリストではなく、今の行動に反応する。
・一方的な告知ではなく、相手が捕りやすいタイミングで対話する。

この視点の切り替えは、最初は少し大変に感じるかもしれません。自社のデータがどうなっているかを見直し、ユーザーがどんな体験を望んでいるかを想像し直す必要があるからです。しかし、その先には数字としてのユーザーではなく、信頼でつながった一人の顧客との関係性が待っています。

もし今、日々の施策運用に限界を感じているなら、一度「ユーザー起点」でCRMを考え直してみませんか。Brazeというツールは、そのための強力な助けになってくれるはずです。

顧客にとって、あなたのブランドとの出会いがもっと素敵な体験になるように。まずは、ユーザーが投げている「サイン」に気づくことから始めてみてはいかがでしょうか。

パワー・インタラクティブでは、Brazeの導入支援はもちろんのこと、こうした「ユーザー起点のコミュニケーション設計」や「行動データを活用するためのシナリオ構築」から伴走して支援しています。自社のCRM戦略を一段階引き上げたい、Brazeのポテンシャルを最大限に引き出したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
Braze活用支援サービス

奥村 いづみ

マーケティングコンサルタント

奥村 いづみ

Braze活用支援

東南アジアやヨーロッパでの海外就労経験を持ち、前職ではtoC向けのWebサイト運用、コンテンツ作成、メールマーケティングの実務に広く従事。特にカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Braze」を実際のオペレーションで使用していた現場経験を持つ。現在はこれまでの実務経験を活かし、お客様と同じ運用者目線に立ったMA活用や運用定着のサポートに注力している。

TOP