予測不能な変化が続く現代のビジネス環境において、従来の「徹底した市場調査と綿密な計画(コーゼーション)」に基づくマーケティング手法だけでは立ち行かない場面が増えています。こうした不確実性の時代において、今注目を集めているのが優れた起業家の思考・行動様式を体系化した理論「エフェクチュエーション」です。手元にある資源や関係性を起点に小さく行動し、得られた反応や新しい出会いを次の意思決定につなげていきます。
創業30周年を迎えたパワー・インタラクティブでは、次の30年に向けて、予測が通用しない時代のマーケティングをどう考えるべきかを改めて見つめ直したいと考えました。そこで、『エフェクチュアル・シフト』『エフェクチュアルな組織をつくる』(いずれも千倉書房)などの著書で、エフェクチュエーションをマーケティングや組織づくりの視点から論じてきた神戸大学大学院経営学研究科の栗木契教授にお話をうかがいました。エフェクチュエーションの基本概念から、従来の戦略計画との違い、具体的な事例を通じたマーケティングへの示唆、大企業における実践方法など、詳しく解説いただきました。
01「計画ありき」を覆す!起業家の実践知を体系化
まず、
栗木氏:エフェクチュエーションとは、一言で言えば「不確実で予測の立たない環境下で、優れた起業家(エキスパート・アントレプレナー)たちがどのように思考し、行動しているか」を解き明かした理論です。サラス・サラスバシー教授(米国バージニア大学ダーデン・スクール・オブ・ビジネス名誉教授)の研究によって体系化されました。
通常の心理学や経営学の研究は、一般の人々の意思決定や行動を対象にすることが多いのですが、サラスバシー教授の研究は、チェスや音楽の名人の思考を調べる「エキスパート研究」の手法を起業家に応用したものです。「MBAで扱うようなケーススタディの教材を渡されたとき、卓越した起業家は一般の人や管理者とどう違う意思決定を下すのか」を分析した結果、見出されました。
彼らは、事前のリサーチや精緻な予測に基づく事業計画に頼るのではなく、「今ある手持ちの手段からまず行動を起こし、その過程で得られた環境や顧客の反応を振り返りながら、コントロール可能な範囲で新たな未来や目的を作り出していく」という実践的なアプローチをとります。
従来の
栗木氏:伝統的な経営学やマーケティングの主流であった「コーゼーション」は、フィリップ・コトラーのSTPマーケティングやマイケル・ポーターの競争戦略に代表されるように、科学的アプローチを経営に取り入れようとするものです。データを徹底的に集めて分析し、予測を立てて精緻な戦略計画と手段を選択して実行することを前提としています。
ものづくりの世界に例えてみましょう。コーゼーションは事前の計算やシミュレーションに基づいて設計図を完成させるアプローチです。近年では自動車エンジンの開発などでも膨大なデータをシミュレーターに投入すれば、かなりの精度で出力や燃費の結果が出てくるようになっています。しかし、どれほどシミュレーションが進化しても、現場の技術者たちは「最後は必ず金型を作って実物で検証しなければ商品化はできない」と口を揃えます。
人間社会や市場を相手にするマーケティングにおいては、どれほど事前リサーチを行っても、最終的にはこの「金型(プロトタイプ)を作って検証する」ことなしに確かなことは言えません。エフェクチュエーションは、この「金型を作って試す」実践のプロセスに当たる起業家の行為にスポットを当てた理論と言えます。(図表1参照)
| コーゼーション | エフェクチュエーション |
|---|---|
| 目的をあらかじめ定め、データを集めて分析し、予測を立て、最適な計画と手段を選択して実行する。 | 手持ちにある手段でコントロール可能な行動をまず起こし、環境や顧客との相互作用によって目的そのものを柔軟に変化させていく |
栗木先生ご自身が、
栗木氏:私が若いころは、イノベーション研究と起業家研究が盛んな時代でした。どんな事業をつくるかがイノベーション研究で、誰がそれを推進するかが起業家研究です。しかし、この流れとは別に、私自身は当時はやりの広告の記号論分析から入り、その後はマーケティング・コミュニケーション、ブランド論を研究していました。
エフェクチュエーションの考え方がすんなりと腑に落ちたのは、私の指導教員であった石井淳蔵先生(神戸大学名誉教授、流通科学大学元学長)の著書『マーケティングの神話』や、親しくさせていただいている内田和成先生(早稲田大学名誉教授、東京女子大学特別客員教授)の著書『仮説思考』などとの共通性を感じたことが契機となりました。サラスバシー教授の主張は、これらの日本における先達、そして私が広告やブランドの領域で進めてきた研究と深いところで通底するものがあり、同じ問題を見ているのだと感じたのです。特に、内田先生の理論はより実践的で、組織の中で周囲をどう説得するかといった、エフェクチュエーションでは明確になっていない問題の解決に大きなヒントを与えてくれます。
人間の行動や社会には二面性があり、すべてがエフェクチュアルである必要はありません。一方で、エフェクチュアルな行動は昔からの人間の行動のベースにあるわけです。サラスバシー教授が理論化したことで、物事の見え方が大きく変わりましたが、彼女に教わらなくても熟達した起業家はそういう行動をしていたわけです。日本でも、営業や研究開発の現場で、エフェクチュアルに成果を上げている方はたくさんいらっしゃいます。理論が開発されたことで、こうした行動の意義や合理性を広く理解してもらえるようになったということなのです。

02エフェクチュエーション「5つの原則」
エフェクチュエーションの
栗木氏:エフェクチュエーションという理論が実務家に支持されるのは、その具体的な実践の原則が明確に示されているためでしょう。この「5つの原則」は、国内外の多くの事例研究を通じて妥当性の高いものであることが確認されてきました。(図表2・3参照)
最初が「①手中の鳥の原則」です。エフェクチュエーションの重要な力点は、予測の立たない未来の中でも、「わからないから動かない」ではなく、自身の手持ちのリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)を活用して、行動に移すことにあります。AIの影響や少子高齢化で今後5年・10年がどうなるか予測できないからといって、行動を諦めてしまえば生まれるはずの未来も生まれません。
ただし、注意が必要なのは、そこで起こす行動には成功が保証されているわけではない点です。ですから、大きな投資をしたり、手元にないものを焦ってかき集めたりしようとするのではなく、手持ちの資源を使うようにすべきです。会社であれば社内の施設、機器、人材、そして重要なのが既存の取引先やお客様とのネットワークです。これを使えば小さく実験ができます。たとえば、取引先の小売店すべてに一斉に新商品を導入するのではなく、懇意にしている1軒のお店で試してみる、といった具合です。
これと同時に機能させるべきなのが「②許容可能な損失の原則」です。この原則にしたがうことで、仮にうまくいかなかったとしても痛手は小さな範囲にとどまります。週のうち1日(業務時間の5分の1程度)を、自分や仲間と新しい挑戦にあてる時間に割くことを制度化している会社もあります。それくらいなら業務全体に大きな支障は出ませんし、仮にうまくいかなくても新しい経験や学びが得られ、そのプロセス自体も楽しめます。このように「失敗してもやってよかった」と思える範囲で動きはじめることをエフェクチュエーションは推奨します。大事な点は、エフェクチュエーションはイノベーティブな成功が生まれる確率を高めますが、この成功は確実ではないということです。確実ではないが楽しく、有益なプロセスへの参加なのであれば、このトライアルは許容可能な損失の範囲に留めるべきでしょう。
こうした行動を続けていくときに不可欠なのが「③飛行中のパイロットの原則」です。AIや自動運転の進化が続く時代であっても、人が注視することなくすべて任せることはできません。飛行機のパイロットも計器を見ながら、いざというときに必要となる人の介入に備えます。同じように起業家も、行動を起こした後の振り返りを絶やさないことが大切です。この振り返りを行うことなく、次々に新しい行動をはじめても、それらは糸の切れた凧のように、迷走してしまう恐れが高いわけです。
4つ目が「④レモネードの原則」です。英語でレモンは酸っぱさから「災難・失敗」を意味しますが、「Life gives you lemons, make lemonade(試練が来たらレモネードを作れ)」の通り、想定外の遭遇から新たな価値を引き出せばいいという捉え方です。やってみることで新しく分かることがあり、それを活かして振り返ることで、次の手段が見えてきます。
最後の「⑤クレイジーキルトの原則」は、サラスバシー教授がよく使う比喩です。ジグソーパズルなら、船の絵を作っているうちに花の絵ができることはありません。しかし、布をパッチワークで縫い合わせるキルティングなら起こり得ます。行動をはじめた当初の目的に縛られることなく、パートナーや顧客との相互作用によって新たな未来へと形を変化させていくことです。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 「手中の鳥」の原則 | 自身の手持ちのリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)や人的ネットワークを活用して、行動に移す。 |
| 「許容可能な損失」の原則 | うまくいかなかったとしても業務全体に大きな影響は及ぼさない、損失が大きくない範囲で動く。 |
| 「飛行中のパイロット」の原則 | 飛行機の操縦が計器を見ながら、何かあれば人が介入するように、行動を起こしたら振り返りを絶やさない。 |
| 「レモネード」の原則 | 英語でレモンは失敗を意味するが、失敗してもそこから新たな価値(レモネード)を引き出せばよい、という意味。やってみることで新しくわかることがあり、それを使ってさらに振り返ると、まだできることが見えてくる。 |
| 「クレイジーキルト」の原則 | 布をパッチワークで貼り合わせるうちに当初の目的とは別のものができる可能性があるように、行動をはじめた当初の目的に縛られることなく、未来へと歩みをつなげていく。 |

03株式会社プラグに見る「偶然を価値に変える」サービス開発
5つの
栗木氏:私の著書『エフェクチュアルな組織をつくる』で取り上げた株式会社プラグ(以下、プラグ)は、そのわかりやすい事例のひとつでしょう。プラグは、食品や生活用品などのパッケージのデザイン制作と市場調査を手がける会社です。同社は「CrepoパッケージデザインAI」という先進的なAIによるパッケージデザイン制作サービスを提供していますが、最初から今の形を目指して開発を始めたわけではありませんでした。
そもそものきっかけは、プラグが、その年に話題になった商品のパッケージなどへの消費者の評価についての自主的なアンケート調査を行い、データを蓄積し始めたことでした。このような調査は外注すると高額になりますが、プラグは自社内で完結できます。そこで用途は決めないまま、「よいパッケージとは何かがわかるデータを自分たちの手で蓄積したい」と調査をはじめました(「手中の鳥」「許容可能な損失」の原則)。
とはいえ、データの蓄積だけを進めていても、経営やマーケティング上の成果は生まれません。プラグが最初に試みたのは、蓄積データをもとにした「パッケージ好感度ランキング」の作成です。プレスリリースとして発信したところ、日経MJに取り上げられ、社内の評価が一変しました(「レモネード」の原則)。翌年からは記事の執筆を広報担当の若手社員に任せたところ、自分の書いた文章が日経MJに載ることでモチベーション向上につながりました。
そうこうするうちにディープラーニング技術が台頭し、プラグが蓄積していたデータを活用したAI開発の可能性が生まれます。プラグは、この機会を見逃さず(飛行中のパイロットの原則)、自前で開発を進めましたが、途中で精度の向上に行き詰まってしまいます。
そこでプラグは、この分野の第一人者のある有名大学の先生の研究室に、より精度の高いAIの開発を発注することを考えます。しかし予算が足りません。そこで思い切って、この先生のもとに教えを請いに行ったところ、熱意が伝わり「作ったものを持ってきなさい。宿題を出すから、その先は自分でやりなさい」と、無料で繰り返し指導を受けながら開発を進めることになりました(レモネードの原則)。そこで学んだAI開発の知見を、次に台頭してきた生成AIの活用にも展開していくことで、「CrepoパッケージデザインAI」が生まれていきます(「クレイジーキルト」の原則)。
このようにしてプラグは、「手中の鳥」と「許容可能な損失」から始め、「飛行中のパイロット」として振り返りを絶やさず、偶然の出会いを「レモネード」のように活かし、「クレイジーキルト」を作り上げていきます。新しい行動を絶やさないことで、当初の予想とは全く異なる画期的なサービスへと結実した典型例です。

04大企業で機能させる鍵は適切な「制約」
起業家研究から
栗木氏:大企業においても十分に適用可能です。ただし、組織全体のすべての業務をエフェクチュアルに行う必要はありません。電車の運転士のように、安全安心を最優先すべき業務の日常に、エフェクチュエーションを持ち込むのは危険です。エフェクチュエーションが適しているのは、「新事業開発」「マーケティング」「研究開発」といった、不確実性と対峙する部門やプロジェクトです。
大企業のような組織でエフェクチュエーションを機能させる鍵は、適切な「制約」にあります。自由にやらせすぎると、研究者や開発者が市場性がなくなったテーマに何年も没頭してしまう「暴走」が生じたりします。この問題については、著書『エフェクチュアルな組織をつくる』で紹介している積水化学工業株式会社(以下、積水化学工業)の事例が参考になります。
同社では、1年程度で達成可能な製品開発ではなく、数年を要する開発に挑む際にはエース人材を集めて高い自由度のもとに研究開発を進めるようにしています。短期間での達成の目処がたたない不確実な開発については、エフェクチュアルに行動を進めていくしかないからです。
しかし同時に、近年になり同社は「K値」という、3カ月ごとの評価のためのフレームワークを導入し、進捗チェックを行うようになっています。K値とは「開発の方向性の再検討や、停止に踏み切るかの判断に用いる値」という意味です。K値による評価では、「技術の強み」を縦軸、「顧客の評価」を横軸とするマトリクスに、開発中のテーマをプロットしていきます。縦軸の技術の強みを「攻略軸」、横軸の顧客の評価を「市場・顧客軸」と名づけ、自社が市場で直面する需要と競争への対応力があるかをマトリクスで評価し、いずれの軸においても高いテーマを「開発領域」として位置づけています。(『エフェクチュアルな組織をつくる』より引用)(図表4参照)
「K値」の導入の背景には、国際的な開発競争の激化があります。そのなかで、当初は市場性があるとの判断からスタートしたはずの開発テーマの多くが、競合企業による新製品の市場投入が相次ぐなかで、仮に製品化に成功しても市場性はすでに喪失しているテーマとなっていきます。この熾烈な競争のなかで積水化学工業は、「K値」にもとづく進捗チェックを行うことで、市場性を失いつつあるテーマの開発のハンドルを切り替えたり、ブレーキを踏んだりするようになっています。

「K値」のもとでは、市場性が見込めないと判断されたテーマ(開発領域以外のテーマ)は、原則「打ち切り」となります。このテーマの内容を少しシフトさせることで、市場性のある新たな開発が見込まれる場合は、チームを解散せず、この新しい方向性のもとでの開発を続けます。一方、こうしたシフトの可能性が見いだせない場合は、開発チームは解散し、そのメンバーは他の有望なテーマの開発に移籍します。
大企業などの組織でエフェクチュアルな可能性を健全に活性化しようとする際には、分業の仕組みを活用できます。個々のメンバーやチームが自由に動ける範囲を担保しつつ、ある程度制約をかけて暴走させないためのストップ機構を合わせ持つようにすることが効果的です。
グローバル展開に
栗木氏:ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)のタンザニアでの取り組みも『エフェクチュアルな組織をつくる』で紹介していますが、非常に示唆に富んでいます。ダイキン工業のグローバル・マーケティングは現地に合わせてゼロからビジネスモデルを構築しており、中国、インド、アメリカ、ヨーロッパと、各国地域での成功を生み出しているのは全く異なるビジネスモデルです。他国での成功体験をそのまま持ち込まないのです。
タンザニアでは、苦戦していたエアコン販売に対して「仮説思考」的な問題解決を実現しました。問題発見の仮説として、「製品」「価格」「販売方法」を要因にとりあげ検証した結果、問題は製品や価格ではなく「販売方法が現地事情に合っていない」ことを認識しました。そこで、まとまった初期費用を用意できず、信頼できる修理サービスを利用できないユーザーに合った販売方法を確立しようと、サブスクリプションによる初期費用負担の軽減と、充実した修理サービスの提供という解決策を導き出しました。(『エフェクチュアルな組織をつくる』より引用)(図表5参照)。
組織のエフェクチュエーションにおける仮説思考の利点は、組織内で必要となる上司や周囲の説得を、無駄な時間をかけずに実現することができることです。見込みの高そうな仮の答えを素早く見つけ、エフェクチュエーションに必要な方向転換(ハンドルの切り替え)を繰り返しながら前進していくアプローチに仮説思考は役立ちます。

05激変する時代を生き抜く「中期経営計画策定」から「ビジョンドリブン」への転換
AIの
栗木氏:AIの急速な進展や世界情勢の混迷、社会の分断や少子高齢化の加速など、前提条件が年々変化していく現代において、5年・10年にわたる精緻な計画を立ててその通りに実行することは極めて困難です。欧米企業では、中長期的計画を作成する文化はすでに薄れつつあると聞きます。日本企業でも、サイボウズ株式会社や伊藤忠商事株式会社、味の素株式会社などが中期経営計画を策定していない企業としてあげられます。
今後の企業の意思決定は、「分厚く精緻な計画書」から「簡素なパーパスやビジョン、ウィッシュリスト」へのシフトが進むと考えられます。以前、私も委員として関わった神戸市の中期計画策定では、計画を作り込むというよりも大切な方針を提示することに重点を置き、本編とは別にビジュアルな冊子を作りました。
「自分たちはどうありたいか」という魅力的でシンプルな未来像(ビジョン)を示しつつ、実際の運用は短いサイクルで柔軟に振り返りながら進む形がますます広がっていくでしょう。
不確実な世界においては、未来は「予測するもの」ではなく「行動によってつくるもの」となります。単なる株主至上主義的な短期利益追求ではなく、自社のアイデンティティや社会的使命を軸に据える企業こそが、不確実な環境下でも迷わずにエフェクチュアルな探索を継続できます。組織にとってのパーパスやビジョンは依然として重要なのですが、それは予測にもとづく分厚い計画ではなくなっていくはずです。
06明日からできる!5つの原則をセットで回転
経営者や
栗木氏:まずは、経営者、マネージャー、従業員など、それぞれの立場における「許容可能な損失の範囲」で行動を起こすことです。たとえば、一週間のうち業務時間の10%〜20%(半日〜1日)を「新しい試みや仲間づくりの時間」にあててみる、可能性のある取引先1社との新しいプロジェクトを試してみる、といった小さな実験から着手してみてください。
社内に蓄積されたまま使われていないデータ、社内外の人脈、過去の顧客からの要望、使い切れていない設備など、「手中の鳥(手持ちの手段)」を一度リストアップしてみるのもおすすめです。
すでにデータ分析やアンケートを実施している場合は、それを「目標未達の反省」だけに終わらせず、「想定外に好評だった部分はどこか」「予期せぬ副産物(社員のモチベーション向上や新たな顧客層など)はなかったか」というポジティブな変化を見落とさずに拾い上げ、さらに新たな行動やビジネスモデルの可能性を見出していく、前向きの振り返りを行ってください。
「手中の鳥」で行動を始め、「許容可能な損失」でリスクを抑え、「クレイジーキルト」で社内外の仲間を巻き込み、「レモネード」で偶然を味方にし、「飛行中のパイロット」として絶えず振り返る。エフェクチュエーションは、順番は固定されませんが、5つの原則セットで取り組まなければ意味がありません。セットで打ち出したところが画期的なのです。マーケティングの4Pと同様、どれか1つだけを重視するのではなく、5つの原則を常にセットで回転させ続けることが、自律的で活気のある「楽しくチャレンジできる組織」を作る鍵となります。

PROFILE
栗木 契 氏くりき けい
神戸大学大学院 経営学研究科 教授
1997年、神戸大学大学院博士課程修了。
岡山大学経済学部講師、助教授を経て、神戸大学大学院経営学研究科准教授、2012年より教授。近年は企業家マーケティング、新規事業創造、ビジネスモデル、マーケティング戦略等の研究・教育に取り組んでいる。
学外においては、日本消費者行動研究学会会長、現代経営学研究所理事長、日本商業学会関西部会代表理事、日本マーケティング学会理事、日本エフェクチュエーション協会理事などをつとめてきた。
インタビュー実施日:2026年9月28日

