コラム

IA(インフォメーションアーキテクト)の目

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Web業界でよく耳にする「IA(情報アーキテクチャ/インフォメーションアーキテクト)」という言葉。情報を整理し明確に伝えるための仕組み、あるいはその仕組みを設計する人を指します。膨大で複雑な情報をわかりやすくする。探しやすくする。ユーザーを迷わせない。そのために情報を整理・整頓しスッキリした状態にするのがインフォメーションアーキテクトの役割です。

リアルな世界のIA、WebにおけるIA

IAはWeb特有のものではなく、新聞や本などのレイアウトデザイン、日々目にする標識や案内板などのサインシステムにもその仕組みを見ることができます。特に空港、駅、大型ショッピングセンター、病院といった人が多く集まり情報が氾濫するところでは人を迷子にさせない工夫がされています。

しかし、このようなリアルな世界では代替手段も多く存在するのも事実で、たとえわかりやすい案内板がなくても目的地にたどり着くことは可能でしょう。遠くに目的の建物を見つければ行くべきルートがわかります。建物までの距離から到達までの所要時間を予測することもできます。このように考えるとリアルな世界での情報アーキテクチャは、無いと不便だけど無くてもなんとかなる補助的ツールとも言えます。

一方Webの世界では頼れるのは1枚の画面に含まれるテキストとイメージだけ。何のWebサイトなのか。どんな情報がどれくらいあるのか。何ができるのか。どこへつながっているのか。ユーザーは1枚の画面から読み取らなければなりません。リンクボタンのラベルとリンク先の内容が合致しなければがっかりするでしょう。情報提供側から見れば当然と思われるカテゴリー分類も、ユーザーにはわかりにくい場合があります。情報量の多いWebサイトでは一度訪れたページにどうやってもたどり着けない、ということもあるかもしれません。

IA設計が適切でないWebサイトに入り込むと、ユーザーは迷路を行ったりきたりして不満やイライラが蓄積されるばかり。これはWebサイトオーナーにとってもユーザーにとっても好ましくない状況です。そういった点からもWebにおけるIAは重要視されてきました。

IAは誰の役割?

さて、Webには欠かせないIAですが、Webサイト構築のプロジェクトチームにインフォメーションアーキテクトが存在しないケースは少なくありません。とはいえ、プロジェクトの体制図にIAという職種が明記されていなくても誰かがその役割を担っているのは確かです。

情報アーキテクチャの具体的な要素に、サイト構造、ナビゲーション、ラベルがあります。これらの設計はディレクションの範疇と考えると、プロジェクトリーダー/プロジェクトディレクターがインフォメーションアーキテクトを兼務するのが自然でしょう。

でも、果たしてそうなのでしょうか?

IA視点

サイト構造設計、ナビゲーション設計、ラベル設計を適切に行い生かすためには、前工程と後工程の情報整理・設計が必要不可欠です。

マーケッターによるユーザー分析はサイト構造/ナビゲーション/ラベルの設計の方向を決定づけます。組織化・分類された情報を画面に落としこみ視覚化するためにはグラフィックデザインの知識と技術が必要です。Webページへと作り上げる実装段階では、HTMLとCSSがいかに構造化され設計されているかがWebサイトの品質を左右します。

各工程は専門分野に分かれていますが、どの分野も情報の組織化・分類・設計の上に成り立っています。取り組み方や成果物は違っていても根幹は同じなのです。

つまり、どの分野においてもIA視点で考えることは重要です。言うまでもなくIA視点の根底にはユーザー視点、ユーザーへの思いやりがあることを忘れていはいけません。

カテゴリー分類に悩んだとき、レイアウトがしっくりいかないと感じるとき、IAの目をしっかり開いて見直してみましょう。

筆者より

IAについて知ったのは2003年のとあるセミナーでのこと。そのときに書いたメモを読み返すと「プロデューサー、ディレクターとデザイナーの間にインフォメーション・アーキテクトという存在が重要になってくる」とありました。

・IAはディレクターの要素とデザイナーの要素を併せ持っている
・ディレクターもデザイナーもIAの要素がなくてはならない

かねてからWebデザイナーはただなんとなく部品をきれいに配置し装飾を施しているわけではなく、情報を整理し、分類し、重みづけをして画面に落とし込んでいるものだと考えていました。このときのセミナーで明快な答えをもらい、気分がスッキリしたことを覚えています。

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