コラム

Cookieレス時代のデジタルマーケティングとは

世界的なCookie規制の動きは、デジタルマーケティングに大きな影響を与えている。すでに従来の手法が通用しなくなってきたことを実感している企業も少なくないだろう。

2023年7月31日、当社は株式会社インティメート・マージャーとともに「デジタルマーケティングの未来:Cookieレス時代の戦略とデータドリブンアプローチ」と題した2部制のセミナーを開催した。

第1部ではCookieレス時代の課題を解決に導くヒントとして、株式会社インティメート・マージャー 代表取締役の簗島亮次氏と、当社マーケティングコンサルコンサルタントの久道がそれぞれ自社の取り組み内容を紹介した。続く第2部では、セミナータイトルに関連する3つのテーマに沿ったパネルディスカッションがおこなわれた。本コラムでは、当セミナーの内容をまとめている。

※関連ナレッジ資料※
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【第1部】企業紹介

第1部では簗島氏と久道が、それぞれの立場からCookie規制の背景や影響、課題解決のために提供している自社サービスの内容について紹介した。

株式会社インティメート・マージャー 代表取締役 簗島亮次氏

株式会社インティメート・マージャーは、国内最大級のデータプラットフォーム「IM-DMP」を提供している。アドテクノロジー分野におけるデータ活用の知見を活かしながら、セールステックやフィンテックなど、様々な領域で業務効率化・最適化をサポートした実績を持つ。

■Cookie規制とポストCookie対応
従来、リターゲティング広告の配信やWeb広告の効果測定に活用されていた3rd Party Cookie。しかし、各国で個人情報保護の観点からCookieの使用を制限する動きが見られるようになった。

Googleは、3rd Party Cookieを2024年に廃止することを発表。日本国内では、2019年にAppleがSafariにおけるITPのCookie規制を開始し、2021年にはMicrosoft Edgeで3rd Party Cookieの取得ができなくなった。

主要なブラウザで3rd Party Cookieが使用できない事態となった今、我々はCookieに依存しない別のマーケティング手法の模索を余儀なくされている。

■Cookie規制による影響
iOSやWindowsの利用者比率が高い日本では、2020年以降、3rd Party Cookieの取得率が段階的に低下している。2023年現在、その取得率は40%程度。残りの60%のユーザーについては、属性や行動履歴が可視化されづらい状況となっている。これにより、すでに大きな影響を受けている企業も少なくない。

■インティメート・マージャーを活用することで広がるリーチ
インティメート・マージャーでは、3rd Party Cookieを取得できないユーザーの属性を可視化し、施策改善に向けた提案をおこなっている。

リターゲティング広告の配信やオーディエンスターゲティングをCookieレスで実行するための総合的なソリューションを活用すれば、機会損失を限りなく減らしながらリーチを広げていくことも可能だ。

株式会社パワー・インタラクティブ マーケティングコンサルタント 久道 真之介

パワー・インタラクティブでは、「マーケティング戦略と実行をつなぐオペレーションモデルの確立」を目指す伴走型のコンサルティングによって、マーケティングの生産性向上を支援している。

■滞りないマーケティングオペレーションを実現するために
たゆまぬ変化が求められる時代においても組織が成果を出し続けていくためには、以下4つのポイントを強化することが重要だ。

・膨大なデータを適切に処理するための「データマネジメント」
・施策を推進するための「オペレーション」
・データを評価する「アナリティクス」
・属人的なオペレーションに頼らないマーケティング体制を築くための「ナレッジマネジメント」

これらをバランスよく推進することで、競争優位性をつくるマーケティングオペレーションを実現できるだろう。

■パワー・インタラクティブが支援できること
パワー・インタラクティブでは、マーケティングコンサルタントが企業のマーケティング活動を支援する。具体的なサービスは大きく以下4つにわけられる。

1. マーケティングデータ基盤整備
例:マーケティングオートメーション(以下、MA)導入・定着、マーケティングデータ連携、マーケティングダッシュボード実装の支援 など

2. マーケティングオペレーション支援
例:キャンペーンマネジメント運用、マーケティングオートメーション運用、コンテンツマーケティング運用、Webサイト構築/運用の支援 など

3. マーケティングコンサルティング
例:マーケティング戦略立案、リードジェネレーション、カスタマージャーニーマップ作成、KPI設計のコンサルティング など

4. マーケティングデータアナリティクス支援
例:Googleアナリティクス4導入・活用、マーケティングリサーチ、顧客データ分析の支援 など

デジタルテクノロジーを活用した戦略立案から施策実行までのサポートにより、投資対効果の最大化を実現する。

第2部【パネルディスカッション】

第2部では、セミナーのタイトルである「デジタルマーケティングの未来 Cookieレス時代の戦略とデータドリブンマーケティング」にちなんだ3つのディスカッションテーマについて、簗島氏と久道がそれぞれ意見を交わした。モデレーターを務めたのはエッジテクノロジー株式会社 五十嵐政貴氏。ここからはその内容を一部抜粋して紹介する。

1. Cookieレス時代、マーケティング戦略にどのような影響があるのか?

五十嵐氏:そもそも「Cookieレス時代」って、いつからのことを指しているのでしょうか。

簗島氏:何か1つの大きな出来事をきっかけに状況が一変したというよりも、ここ3~4年の間でCookie規制に関する様々な変化が起きて、その影響が今に至るまで続いている感じです。具体的な時期を定義付けるのは、すごく難しいと思います。ただ、一般的にはChromeやSafariのCookie規制が始まったあたりから「Cookieレス時代がきた」と認識されている方が多いのではないでしょうか。

五十嵐氏:Cookieレスの影響により、実際にパフォーマンスが下がってきているといった内容のご相談は増えているのでしょうか?

久道:はい。ただし、一概にパフォーマンスの低下がCookie規制によるものであるとは判断しづらいケースもありますね。色々な施策のマンネリ化によるものもあるかと思います。

簗島氏:Cookieが使えなくなったこと以外にも、コロナ禍で急速にデジタル化が進行したことなど、外的要因が関係している場合もありますよね。例えば、国内のモバイル端末数は変わっていないのに広告出稿する事業者が増加したことにより、結果的に広告効率が悪くなるということはあります。ただ、ツールさえ使えば結果が出る状況から、Cookie規制によって「頭を使わないと効果が出づらい状況」に変化してきていることは確かです。

五十嵐氏:マーケターが気にしなければいけないことが増えた印象がありますよね。Cookieレス対策に悩んでいる方も多いと思いますが、企業としては今後どのような情報を取っていくべきでしょうか?

久道:ファーストパーティデータをいかに活用できる状態にしていくのかが1つの大きなテーマだと思っています。オンライン・オフラインを問わず、情報の獲得ソースをしっかりと整理し、ユーザーのニーズを可視化するようなフォームを設計することは欠かせません。ユーザーの情報が徐々に欠損していくなかで、必要な情報をどのように取得していくのかを考える必要があると思います。

2. MA施策はマンネリ化?注力すべき改善策とは

簗島氏:MAを使いこなせている企業は全体の何割くらいなのでしょうか。

久道:最終的な収益に至るまでのデータ検証がしっかりとできている状態をゴールとして設定した場合、ほとんどの企業がそこまで使いこなせていないんじゃないかなと思います。

五十嵐氏:企業のMA活用について、具体的にどのようなところに課題を感じていますか?

久道:MAで実施した施策単位で分析および評価をすると、マーケティング部門内だけの話になってしまいます。しかし、MAの利用目的を売上貢献、ビジネス貢献に定義するのであれば、マーケティング部門だけではなく組織全体を巻き込んでいく必要があると思います。組織全体を巻き込んでMA活用をしていくことを考えると、営業部門で利用しているSFAや会計システムなど、様々なデータを取り込むことになります。そういったことをせず、今ある環境のなかで運用し続けていると、マンネリ化してしまうのかもしれません。

組織的にデジタルマーケティングを推進していくのであれば、インサイドセールスを試してみたり営業連携を強化したり、データ連携を強化したりといった取り組みをするのが良いかと思います。
テクノロジーは日々進化しているので、現状に満足せず新しい取り組みを続けていくことが大事ですね。

五十嵐氏:MAの成果を評価するうえで、どのデータを重視するべきだと思いますか?

久道:ケースバイケースですが、MAとSFAを連携できている企業であれば、施策単位のROIやMQLの受注貢献度を重視して見ていくべきだと思います。また、そのプロセスにおいて、どれだけMQLを創出できているのかを中間指標にするのも良いでしょう。まずは、注力すべき商材や領域などのテーマを決めて、その分野でMQLが創出できているのかに注目してみるのはどうでしょうか。

3. 今後、マーケティング戦略はどのように変化していくのか?

簗島氏:3rd Party Cookieが取れなくなることによって、従来のOne to Oneマーケティングは難しくなりました。その一方で、AIを活用したクリエイティブ制作は今後ますます増えていくと見込んでいます。

例えば、メルマガを配信する際、ユーザーの属性ごとにそれぞれ別の文面を人力で作るのは大変ですし、費用対効果が低いですよね。しかし、生成AI技術の進化によって、性別や年齢などの属性がある程度わかるユーザー群に対して、最適化された文面を自動生成できる状況になりました。
そのため今後は「設定したターゲットに対して何を訴求していくのか」というターゲティング戦略がより重要になると予測しています。

久道:Cookieレス時代においても、やはり顧客理解は欠かせないと思います。顧客のニーズを読み解き、そこに対して自社の強みがどう合致するのかを整理できていなければ、最終的なビジネス貢献には繋がらないんですよね。

パワー・インタラクティブではお客様に対して、まずは顧客ニーズの解像度を高めた上でしっかりとシナリオを描き、使えるチャネルを駆使して施策を実践していきましょうとアドバイスしています。

セミナー事務局より

Cookie規制により、顧客データの取り扱いについては注意が必要になった。これまでおこなってきたマーケティング施策を見直さなければならないこともあるだろう。

しかし、Cookie規制によって環境が変化しても、顧客理解が重要であることに変わりはない。その人がどのようなものに関心を抱き、何に悩んでいるかを深く理解することで、求められるコンテンツを届けることができる。そうして良質なコミュニケーションを続けることが、ゆくゆくビジネス成果へと表れてくるだろう。

環境の変化が激しい今こそ、変化に惑わされず、顧客について深く考え続けることが現代のマーケターに求められている。

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