インタビュー

MOpsの役割は、施策実行者が迷いなく判断と行動ができる環境を作ること

株式会社スマートドライブ マーケティング部 マーケティングオペレーション 岡 桃子 氏

株式会社スマートドライブ マーケティング部 マーケティングオペレーション 岡 桃子 氏

株式会社スマートドライブは、モビリティデータを活用したサービスを提供しているスタートアップ企業です。「移動の進化を後押しする」をビジョンに掲げ、移動体にまつわる様々なセンサーデータの収集や解析をおこなっています。メーカーや系列関係なくオープンにつながるプラットフォームをグローバルに展開しています。

本稿では、株式会社スマートドライブ マーケティング部 マーケティングオペレーション(MOps)の岡 桃子氏に、MOpsとしての役割や活動内容についてうかがいました。

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専門知識がなくてもマーケティング業務を遂行できるオペレーションを整備

御社のマーケティング組織体制についてお聞かせください。

現在、マーケティング部にはマネージャーを含めて7名が所属しています。マネージャー以下は、大きくリードジェネレーションとリードナーチャリング、PRと担当が分かれています。各担当が数字に責任をもち予算申請から実行まで担っていますが、新規の施策やプロモーションに関しては領域を広げてチーム全体で取り組む、という体制をとっています。

私が2018年に入社した時点では、マーケティング部はありませんでした。当時は営業サポートやカスタマーサポートなど、様々な職種のメンバーがある意味片手間でマーケティング業務を回しているという状況でした。入社して半年後くらいに現在のCRO(Chief Revenue Officer) の弘中が入社し、「THE MODEL型」の組織が構築されていきました。マーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスといった担当領域と目標が明確な組織ができました。

合わせて、マーケティングオートメーション(MA)ツールとしてAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)、SFAにSalesforceを導入したのです。

私がMOpsとして業務を本格的にスタートしたのは、今から約1年前に、MAの構造や定義を大きく見直したときです。会社の事業フェーズが変わっていく中で、徐々にフィールドセールスやインサイドセールス、マーケティングの各部門で言葉の定義や数字認識に微妙な齟齬が発生し、目線が揃わない場面がふえていたのです。例えば、SQLの定義についても、マーケティング部の見ている数字と、インサイドセールス部の見ている数字が異なっており、一貫性をもった会話が難しくなっていました。部門によってGoogleアナリティクスのデータ、MAのデータ、Salesforceのデータと、それぞれ異なったツールのデータを見て、毎回数字がズレていることについて議論していたのです。こうした事態を避けるため、言葉の定義を部門間で揃えると同時に、見るデータをクレンジングして、どの数字を見るのかを整理しました。

これをきっかけにツールの使い方やルールをマネジメントする役割が必要になり、私がその役割を担うマーケティングオペレーション(MOps)の担当になりました。MOps専門のチームがあるわけではなく、リードナーチャリングとの兼務です。マーケティング部ができた初期のころからMarketoを触っていたので、自然とMOpsの担当になりました。

私がマーケティング部に着任した際は、何も専門知識がなかったので、当時の上司に鍛えてもらいました。現在はMOpsとして、専門知識を持っていないメンバーであっても、すぐにマーケティング業務を遂行できるよう、オペレーションを整えています。

Marketoに分析が必要なデータを集約して施策検証を実施

MOpsの業務内容について詳しく教えてください。

MOpsの業務は、Marketoのルール設計の構築と運用、教育が主となります。新たなツールの導入は、MOpsだけではなくBusinessOpsや経営企画部の担当者と一緒に検討して決めています。マーケティング部門に導入されたツールのトレーニングはMOpsが担当し、セールス部門に導入されたツールのトレーニングはBusinessOpsが担当することが多いです。

マーケティング部でメインに使用しているツールはMarketoです。そのほか、広告計測ツール、名刺管理ツール、企業データベースなど多数のテクノロジーを使用していますが、マーケティング部で施策評価をするときは、MarketoとSaleforceをベースにおこなっています。分析に必要なデータはこれらに集約しているので、広告計測ツールを直接触り数値報告することはほぼありません。そうすることで、異なる部門間でも同じ土俵で同じ数字を見ながら会話することができます。例えばインサイドセールス部とは、週1回の定例ミーティングを実施し、Salesforceのデータをもとに、供給とリソースのバランスを確認しながら、施策を検討しています。

マニュアルやA/Bテストの結果、展示会オペレーションは「Confluence」で共有

社内全体でマーケティングツールの使い方やルールのドキュメントは、どのように管理されているのですか?

ツールの使い方やルールはマニュアル化を推奨していて、社内で使用している情報共有ツール「Confluence(コンフルエンス)」にまとめています。ルールは頻繁に変わるので、柔軟性とのバランスが大事です。

1つのマーケティング施策に対して多くのテストを繰り返しているので、その結果についてもドキュメントにまとめています。例えば、Web施策なら多くのA/Bテストをおこなっていますし、展示会ならオペレーションを毎回変えています。

A/Bテストの結果や展示会のオペレーションは、スライドを作ってだれもが見えるConfluenceの決まった場所にアップするという運用をおこなっています。

リード情報のモニタリングは毎日実施

データの活用はどのようにおこなっていますか?

当たり前のデータを活用しているだけで、極めてシンプルです。例えば、Web施策なら、どの広告やチャネルから流入しているのか、展示会ならどこの展示会でどのような企業と名刺交換し、どのくらいの温度感なのか、アンケート結果はどうなのか、などです。出来る限りシンプルなデータ環境で運用することを前提に考えています。

先ほど少し触れた広告測定ツールなどの各マーケティングテクノロジーに入っている「点」のデータから、重要なデータを「指標」にしてMarketoに集約・分析して活用しています。こうしたデータやリード情報のモニタリングとメンテナンスをするのは、MOpsの役割です。決められたルールから逸脱しないよう、基本的には毎日モニタリングをしています。新しい施策やツールを追加する場合は、どのようなデータがどこになぜ必要なのか、担当者と何度も会話しながら整理していきます。

例えば、「このようなツールがほしい」と連絡をもらうことがあります。その場合は「本当にツールが必要なのか」という問いかけから、導入を検討する場合は、どの程度使いこなせるのかまでを整理した上で決めていきます。

シンプルなデータでやりたいことは実現できる

多くのデータがあると、そこから「何かすごいことが分かりそう」と思いがちです。私も以前はそう思っていました。ですが実際は多くのデータがあってもすべてを有効に活用することは至難の業ですし、意外とシンプルなデータでも同様のことが出来たりします。これは、弊社の事業からもヒントをもらっています。

弊社は、フリートマネージメントサービス「SmartDrive Fleet」を業種業界を問わず様々な企業様に提供しています。このサービスは車にデバイスを付けて、そこからGPSデータを取得し、車の情報を可視化・分析し、生産性向上や安全運転の推進に役立てていただくものです。GPS以外にも、センサーやシステムによって、より高度で詳細な情報を取ること自体は可能ですが、「安全運転や効率的な管理」を目的と考えたときに、GPSによるシンプルなデータで実は十分なのではないか、という思想が弊社にはありますし、実際にそうだと思います。

マーケティングに関しても、シンプルなデータでやりたいことは実現できるはずです。やりたいことが増えると、どうしてもメンバーから複雑なデータ取得の相談が来ます。それをそのまま受け入れてしまうと、いずれそのデータの意味や仕組みが理解できなくなったり、判断軸がブレてしまったりするリスクがあります。そこはMOpsがうまく対応しなければなりません。ルールと柔軟性のバランスが大事です。

そのためには、日頃から自部門のメンバーや他部門のメンバーとコミュニケーションを取り、会話や情報収集をする必要があります。会話を面倒に思わず、ミーティング以外でも普段から会話するようにしています。

適切な施策評価を行う土台を築く

MOpsのやりがいを教えてください。

MOpsの仕事は小さなことの繰り返しですが、何よりも「人のため」になっていることはやりがいの1つです。MOpsがいることで、適切なオペレーションの土台が作られ、見える化されます。それによって、マーケターやインサイドセールスがおこなう施策が適切に評価されるようになるのです。

インサイドセールスから「本来の業務に集中できるようになって助かった」と言ってもらえたときはうれしいですし、実際に数字がよくなると達成感を得られます。施策を実行する人が、迷いなく判断と行動ができる環境を作ることがMOpsの役割だと思って仕事をしています。

私個人としては知識不足なところがまだあるので、さらに引き出しを増やしていきたいです。そうすれば、困っている人がいるときに経験値をもとにアドバイスできるようになります。

社外の人との交流も増やしていきたいです。自分たちがまだ使っていないツールのベストプラクティスも気になります。コロナ禍の影響で、なかなかイベントに顔を出す機会も減ってしまいましたが、今後はイベントにも顔を出して、社外のMOps担当者のお話も聞いてみたいです。

プロフィール

岡 桃子 氏
株式会社スマートドライブ マーケティング部
マーケティングオペレーション

株式会社村田製作所に入社し、セールスアシスタント・アロケーション管理などを担当。その後、株式会社スマートドライブにてオペレーション業務全般を担当し、組織拡大に伴いマーケティング部へ。オフライン・オンラインのイベント企画運営・コンテンツ制作などを幅広く経験し、現在はリードナーチャリングとMOps業務に従事。

インタビュー後記

「シンプルなデータでやりたいことは実現できる」というスマートドライブ社の企業思想がマーケティング活動にも反映され、それを実行しているのがMOpsの役割を担う岡氏です。各担当のやりたいことが増えるのはよいが、好き勝手に見たいデータを増やしていくと全体を見失ってしまうことを懸念し、ルールと柔軟性のバランスがとられています。岡氏は、マーケターやインサイドセールスが業務に集中でき、適切な評価を受けることにやりがいを感じています。MOpsの役割は、マーケティング活動を支える「縁の下の力持ち」でもあることに気づかされました。

インタビュー実施日:2023年8月25日

取締役/執⾏役員
広富 克子

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