コラム

ビジネスゲームで見つけたマーケティング外部環境分析の新しい概念

マーケティング外部環境分析の新しい概念

代表取締役 岡本 充智【文責】

パワー・インタラクティブでは社内の全社員に対する研修を定期的に企画し実施している。コンサルティングファームの一員である私たちには絶え間ない研鑽が求められている。各自が求められる専門的な分野のスキルアップもさることながら、経営全般を俯瞰するスキルやマインドもコンサルティングプロジェクトを推進していく上で欠かせない。例年は大阪オフィスと東京オフィスメンバーが一堂に会していた。研修後の懇親会や休憩時間の雑談の中で、それぞれの仕事上の悩みや経験を共有することで気づくことが多々あると考えている。しかしさすがに昨今の状況では、全員が集合することは差し控えなければならなくなった。しかし学びを止めることはできない。すぐさまオンラインによる全社研修に切り替えることにした。オンラインで経営視点を持てて、長時間でも集中力を保ち続けることが出来る研修を探していたところ、「マーケティングタウン」という経営視点を体感で学ぶことのできるビジネスゲーム研修に出会った。まだ創業2年余りの飛田恭平さんが経営する株式会社NEXERAが開発し提供している。

経営視点を体感で学ぶビジネスゲーム企業体験「マーケティングタウン」とは

ゲームは、プレイヤー5名で会社を設立し、仮想の街で小売店を経営する。プレーヤーは市場調査、出店、仕入、販売、広告宣伝の各マネジャーとして共同経営する。二年間経営して営業利益の最も多いチームが優勝するというもの。二年間のキャッシュフローは毎月算出されることで戦略の優劣を競うものである。作戦タイムの際に相談をするが、基本的には各マネジャーの意思決定に委ねられている。

たっぷり一日かけて全社員で「マーケティングタウン」に取り組んだ。ゲームは株式会社NEXERAのコーディネータの方の的確なサポートもあり白熱した。終了後、全員に、①マーケティング・財務・会社経営などに関してどのような学びがあったか。②自分自身でどのような発見や気づきがあったか。③日常業務において具体的に変化・工夫しようと思うことをは何か。というような振り返りアンケートを取ることで、研修の目的の定着を図った。各自、様々な気づきがあり一日をかけて実施したことで何かしらの手ごたえは感じた。因みに私自身もこれらの質問に対して次のようなコメントをした。

①マーケティング・財務・会社経営などに関してどのような学びがあったか。
 ●仕入のタイミングや在庫の持ち方と市場調査/プロモーション/販売活動を連携させる
 ●マネジャーが自身の役割を果たし、リーダーシップを取る
 ●メンバーに対して戦略の方向性や具体的なアドバイスをする
 ●財務状況を常に注視しながら、次の四半期を見据えた取組みを提示する

②自分自身でどのような発見や気づきがあったか。
 ●リアルタイムでの情報共有の大切さ
 ●戦略的なチームワークの取り方
 ●仕入と販売のリードタイムの短縮が収益に貢献する
 ●状況に応じての部門外のマネジャーの参画も必要である

③日常業務において具体的に変化・工夫しようと思うことは何か。
 ●プロジェクト間の情報共有とチームワーク及び役割のカバー
 ●財務状況のわかりやすい見える化
 ●横断的な組織編成の円滑化

この研修だけで終わるのではなく、「マーケティングタウン」からの気づきをさらに深めたいと考えた。研修に参加した各グループの戦略を見ていくと、それぞれある方向性を持っていることに気づく。これを競争優位を築くためのM.E.ポーターの3つの競争の基本戦略であるコストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略に当てはめてみた。

図表1 ※著者作成

コストリーダーシップ戦略は、出店を積極的に行い販売エリアを広げ、安く仕入れて販売していくチーム。差別化戦略は、販売エリアを広くして、独自の戦略を模索しているチーム。集中戦略は、エリアを絞り込んで低コスト商品の仕入に特化したり、広告宣伝を特定エリアに集中していくチーム。結果として基本戦略に類似した内容になったが、最初の戦略策定の段階で、一年目は基本戦略のどれを採択するか、二年目は継続するか変更するかというように作戦会議で意思決定しておけば、ゲームの進め方は更に興味深くなったのではないだろうか。

そして戦略策定に必要なのが環境分析である。外部環境における顧客分析(Customer)と競合分析(Competitor)、そして内部環境である自社分析(Company)をまとめて3C分析と呼ばれているものがある。これは、1982年にマッキンゼーのコンサルタントであった大前研一氏がアメリカで出版した「The Mind of Strategist」で紹介したのが最初である。もう40年近くも利用されている秀逸なビジネスフレームである。

図表2 ※著者作成

今回のビジネスゲーム研修を通じて、外部環境分析は顧客と競合の現状分析だけではなく、顧客と競合の変化にも着目することでより戦略策定を腹落ちさせることが出来ると感じた。また外部環境の変化に応じて、内部環境も当然その影響を受ける。ゲームは四半期ごとにキャッシュフローを集計していくのだが、当然のことながら、とてもスピーディーに進んでいく。私たちのビジネスの世界も、ゲームと同様に情報技術の進化やグローバル化の進展に伴って、変化のスピードと度合いは激変している。このような環境下で経営陣の思い込みや突発的な環境変化に煽られた拙速な経営判断は、企業経営に大きな損失を与えかねない。そこでこれから考えるべき外部環境分析のアイデアとして以下の新たな3Cの概念を提示したい。

図表3 ※著者作成

ここで変化(Change)は、市場・顧客データや競合データ及び自社データの変化を分析することを主眼としている。これからは経験や勘に頼らず、ビッグデータやアルゴリズムにより処理された分析結果をもとに経営の意思決定を行うデータドリブンがより注目されていくことは衆目の一致するところである。パワー・インタラクティブもその一端を個性あふれる集団で着実に担いつつ、クライアントの成長を支援していくことを強く誓ったビジネスゲーム研修であった。

以上

岡本 充智

代表取締役

岡本 充智

中期ビジョン策定支援

京都⼯芸繊維⼤学繊維学部卒業。株式会社アシックス⼊社。アスレチック部⾨の商品開発・販売促進を担当。新規ブランド⽴ち上げやブランドマネジャーを歴任。その後、住友ビジネスコンサルティング株式会社に転じ、マーケティング分野のコンサルタントとして戦略デザインの構築・実⾏⽀援に数多くの成果を上げる。1997年2⽉、株式会社パワー・インタラクティブ設⽴。代表取締役に就任。現在に⾄る。

TOP