コラム

Excelを使ってリードから見込み客を発掘する方法

概要

自社で保有しているリードに対して見込みが高いか判断するためには、過去に商談化した・受注した案件に関与した顧客と似た属性や行動をしているかどうかで判断する。
当コラムでは、専門的な統計解析は使わず、Excelを使って既存顧客と近い属性や行動のリードを有望見込み客として分析抽出する方法について解説する。

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利用するデータ

マーケティングや営業活動などで得ることができるデータには、大きく分けて属性と行動の2種類がある。利用する対象データの例を示す。

例)属性データと行動データ

属性データとは、対象者が所属している企業や組織の情報や個人に関する情報などが該当する。
行動データとは、自社サイトでの行動や商談した回数や受注した回数など対象者自身の行動が対象となる。
既存顧客で受注となった場合、受注金額や受注商材などは、行動自体ではないため属性データに分類する。

データ整備とコード(CD)の付与

展示会やセミナー、営業の名刺交換、Webサイトなどで取得したリードは、数値やテキストなど様々な情報を含むため集計して比較ができるようにデータ整備とデータに対しコードの付与を行う。
データは、大きく分けて定性的データと定量的データがある。定量データは、金額や訪問回数など数値で表せるデータ。定性的データは、役職や職種、閲覧したページなどが該当する。
役職や職種などもコードを付与して数値で表すことができるが、こういった数値をすべて同じように取り扱うことはできない。なぜなら同じ数値でも持つ意味が異なるからである。例えば、見込み客に関する情報は、4つの尺度で分類することができる。

1.名義尺度
性別や所属部署など情報の内容を分類する。例えば、性別は男性が1女性が2、所属部署は営業が1、営業企画が2、マーケティングが3など。そのため、数値の大小に意味はない。
2.順序尺度
内容に順序関係がある場合を表現したもの。セミナー参加のアンケート回答で満足度を取得した場合、満足を1、どちらでもないが2、不満が3など。数値の大小関係に意味がある。
3.間隔尺度
数値で量的に把握できる。リードの獲得日付、受注日付など。
4.比例尺度
数値で量的に把握できる。企業の従業員数や売上金額、サイトの閲覧PV数など。データ間の比較や比などに意味がある。
ここでは、全てのデータを0と1の数値に変換する。

例)文字列を数値へ置き換え

例)実数を数値へ置き換え

このように、文字列や実数の値などを0と1の数値に変換を行う。ここでは、見込み客や既存顧客のすべての属性データや行動データに対して変換を行っていく。例えば、業種が10種類ある場合は、10個のデータ項目、サイトのカテゴリが20種類ある場合は20個のデータ項目になる。複数のページを見ている場合は、それぞれのデータ項目に対して1を入れる。それぞれの会社で取得している情報数は異なるが、属性データと行動データを合わせるとデータ項目数は百以上になる。
また、情報の欠損や不明がある場合は、不明という項目を作成して1を入れる。金額などでわからない場合に0が入っていることがよくあるが、0円でない限り不明として処理する。

商談や受注した案件に関与した顧客の特徴把握

データ整備とコード付与が終わったら、次に商談や受注した案件に関与した顧客データを用意する。人に対し作成したデータ項目が横に並んだ形式になっている。各項目を縦に合計すると、どの項目が多いのか・少ないのか把握することができる。これを商材別や商談・受注別などで個数をカウントすることで、商材Aであれば、Xの項目が多いなど傾向を把握することができる。

例)顧客データの項目を縦に合計

リード情報から有望見込み客を抽出

次に、商談や受注した案件に関与した顧客と似た属性や行動をしている見込み客を抽出する。用意するリード件数は、何件でも構わないが、少なすぎると抽出できないこともあるため、その場合は件数を増やす。直近で動きのあったリード1千人や過去2年内に獲得したリード10万人など見込み客が多く含まれると思える抽出条件でデータを用意するとよい。
リードが用意できたら、商談や受注した案件に関与した顧客と比較して各データ項目がどの程度一致しているか確認する。顧客の一人目が山田さんとすると、この山田さんと直近で動きのあったリード1千人などと比較する。各データ項目で一致していれば〇、不一致ならば×と入力をして、各リードに対して一致している〇をカウントする。〇の数が多いほど、有望見込み客と判断する。

例)山田さんとリード1との比較

リード1との比較が終わると、リード2との比較を繰り返す。これを用意したリード人数分行い、〇の数が多い見込み客を抽出する。リードが千人であれば、千人と比較する。
何人かの有望見込み客リストができた段階で、インサイドセールスなどに渡し、電話で感触を見てもらおう。感触がよさそうであれば抽出がうまくいっていると思われるため抽出数を増やしていく。

データのメンテナンス

既存顧客のデータは、新しい情報が確認されれば追加・更新されやすいが、リード情報は件数も多く定期的に更新することが難しい。そのため、社名変更や移転や統合などで住所や連絡先などの情報が古くなっていることがある。
この対策の1つとして法人番号を使って情報を最新にしておく方法がある。国税庁法人番号公表サイトや経済産業省のgBizINFOサイトなどでは法人番号に紐づく企業情報を取得することができる。そのため、これらサイトから定期的に情報を取得することで、法人番号に紐づく企業の情報を最新にすることができる。gBizINFOサイトでは、上場企業の財務や決算情報なども取得することができる。そのため売上高や資本金、経常利益又は経常損失、業種、事業概要、従業員数などといった情報なども取得することが可能だ。また両サイト共にAPIが提供されているため、リードの件数が多くなっても問題とならない。

・国税庁法人番号公表サイト:https://www.houjin-bangou.nta.go.jp
・経済産業省gBizINFO:https://info.gbiz.go.jp/index.html

まとめとポイント

データ整備とコード(CD)の付与

見込み客や既存顧客の情報に対してコードを付与する。コードは、全てのデータを0と1に変換。ここで注意が必要なのは、従業員数など数値の場合、どこから区切るのが適切なのかといった問題である。単に数値のキリが良い1千人や1万人などで区切ると問題がある場合がある。例えば、自社商材Aは、従業員数○○人~○○人で受注されることが多いなどの傾向がわかっている場合は、その○○人を区切りとした方がよい。そのため、マーケティング部門だけで決めず営業部門と相談しながら進めるとよい。

商談や受注した案件に関与した顧客の特徴把握

顧客データのデータ項目を合計して傾向を把握する。データ項目を合計したとき、顧客の特徴が把握できるか確認する。既存顧客の特徴は、営業部門と確認して認識にズレがないか確認するようにしよう。

リード情報から有望見込み客を抽出

商談や受注した案件に関与した顧客と似た属性や行動をしている見込み客を抽出する。見込み客のデータ件数が数十万位までは、エクセルで関数やマクロなどを使い一致した項目をカウントするのが簡単である。リード件数が大量にある場合は、データベースにデータを保管しSQLなどで集計処理することでデータ抽出の負担を減らすことができる。 また、抽出した見込み客リストに、どの項目が一致しているのかわかる情報や一致した数、一致率なども付加して渡すことで、営業部門側の納得感も得やすく、営業戦略も立てやすくなる。
データ化する情報項目やその情報のコード付与、コード区切りなどを慎重に検討することで、既存顧客の特徴をうまく数値化することができれば、リードからの有望見込み客の抽出精度も高まる。そのためには、営業部門ともうまく連携・協力しながら進めていくことが重要となる。

おわりに

今回紹介した有望見込み客リストの作成は、データの合計や個数のカウントなどシンプルな方法で行うことができるが、データの整備やコードの付与にはある程度の時間と労力がかかる。この点を解決する方法に、有料で提供されている法人データベースを活用することが考えられる。 例えば、株式会社ランドスケイプでは、820万拠点の法人データベースを保有しており、自社で入力した企業名に対して企業の属性情報を自動で付加することができる。こういったサービスなどもうまく活用することで情報価値の高いリードを保有・維持することが可能となる。

近年、社内で様々なデータの取得・蓄積が進みつつあるが、十分に活用されていないケースもよく見かける。当コラムが、マーケティング部門と営業部門がともに情報連携しながらデータの利活用が浸透していくための参考となれば幸いである。

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