インタビュー

株式会社ランドスケイプ BtoBマーケティングの成否はデータマネジメントにあり

株式会社ランドスケイプ <br/>サポート本部 事業開発グループ 執行役員 吉川 大基 氏  <br/>サポート本部 事業開発グループ サブマネージャー 小林 千也 氏

株式会社ランドスケイプ
サポート本部 事業開発グループ 執行役員 吉川 大基 氏
サポート本部 事業開発グループ サブマネージャー 小林 千也 氏

株式会社ランドスケイプは、データソリューションカンパニーとして、多くの企業のデータベースマーケティングをご支援してきました。 近年は各種データ事業者と連携して、DX推進に欠かせないデータ基盤構築をサポートしています。 今回は、ランドスケイプ社の事業開発グループ執行役員の吉川様とサブマネージャーの小林様へ、 同社の培ってきたデータ統合の技術やDX推進に導くための考え方、さらに今後の展開についてうかがいました。

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ランドスケイプの企業理念と目指す姿

-ランドスケイプ様は、法人企業データベースを構築しているというユニークな会社のイメージを持っているのですが、どのようなお考えの下で活動されているのですか?

弊社は、「固有名詞の一元化により、社会に効率と安全とプライバシーを提供する」を企業理念に掲げています。データベースは、適切に運用すれば効率を上げることが可能な便利なものです。しかし、適切にデータベースを利用するには多くのノウハウが必要となります。ランドスケイプでは、企業の持つ様々な情報を一元管理することが、ひとつの解決法だと考えています。必要に応じて適切な情報を安全に活用できる環境をお客様に提供すること。それが私たちの目指す姿です。

法人企業データベース(LBC)と顧客データの付き合わせで、攻める市場を見える化

-ランドスケイプ様というとなんといっても日本最大の企業データベースLBCですが、具体的な事業活動について教えてください。

弊社の事業は、法人企業データベースのLBC(Linkage Business Code)が根幹にあります。LBCをマスターデータとし、各種サービスを展開しています。 LBCは9.3億件のソースデータを名寄せして820万拠点(国内拠点網羅率99.7%)の法人データを構築しています。弊社では、これらの元データを毎日チェックし、新規や名前が変更になったものを個々に更新しています(図表1参照)。

図表1:ランドスケイプが2019年1年間に実施したデータメンテナンスの件数

820万という数ですが、商業登記簿が450万件、法人マイナンバーが495万件ですので、倍近い数です。
商業登記簿や法人マイナンバーは目的が異なるため、本社単位に付与されているものになります。一方でLBCは本社だけでなく支店や事業所(工場等)も含めて構築しているため数値の違いが出ています。

法人マイナンバーで取引を管理している場合、支店や事業所単位で名寄せすることはできません。
LBCは各企業の本社に支店や事業所を紐づけて、法人マイナンバーを付けて管理しています。そのため、企業の系列の名寄せができます。例えば、ソフトバンクには、子会社があり、孫会社がある、さらに各事業所があり、それぞれの名寄せを行います。

-企業系列のデータが整備されていると、どのようなデータ活用が可能になるのでしょうか?

弊社の企業データベースでは、グループトップの親会社から子会社、孫会社、さらには事業所まで確認いただけるわけですが、これにお客様が持っている顧客データを付き合わせると、未開拓の企業や事業所が把握できます(図表2参照)。

図表2では、ピンク色はお客様の取引先、白色は未開拓の企業です。系列の情報はお客様側ではわかりませんが、図表2ではきれいにマッピングされ、近い関係値にある企業を把握できます。電話番号もついており、弊社ではこのマップを「グループ攻略」と呼んでいます。

図表2:グループ攻略マップ

LBCで死蔵データを生き返らせる

-マーケティング部門の担当者から、過去に蓄積されたデータが大量にあるけど、ほとんど活用できていない、というお話をよく聞きますが対処方法はあるのでしょうか?

企業が蓄積しているデータは3種類あります。

①クリーンデータ:ビジネスにおいて、有効と判断され活用できるデータ
②ダークデータ:有用な情報であったとしても、その価値を認識しておらず、死蔵されている(休眠)データ
③ROTデータ:古かったり、重複が多かったりと利用価値のないデータ(Redundant、Obsolete、Trivial=冗長、陳腐、無駄)

顧客データは時間が経過するごとに統廃合や事業所移転、倒産などで陳腐化し、ダークデータやROTデータになりやすいです。こうしたデータをそのままにすると、保存にかかるストレージのコストや、漏洩によるブランド力の低下リスクなどのマイナス要因となります。

ダークデータやROTデータでも、ランドスケイプのLBCと突き合わせれば、クリーンデータに生き返らせることができます。LBCが倒産前の企業や移転前の企業データも持っているので、正確な企業データに変換し、名寄せが可能です。

DX推進のベースとなる「NICE」というコンセプト

-ここ数年DXが注目され、データ統合の重要性への意識も高まっていますが、ランドスケイプ様では、こうした動きをどのように捉えられていますか?

データ統合はDX推進の第一歩だと思います。ただし、データ統合はそう簡単にできるものではありません。DXがうまくいっていない会社は、データ統合の段階でつまずいています。DXでデータを使える状態にするには、データの粒度をそろえる「標準化(Normalize)」、システムに共通コードを付ける「一元化(Integrate)」、データの欠落を補完、更新する「補正(Correct)」、正しい属性情報を付加する「属性付与(Enhance)」の4プロセスが欠かせません。この頭文字をとって弊社では「NICE」と呼んでいます(図表3参照)。弊社ではこの考えをベースにデータ統合が実現できるよう各サービスの設計を行っています。

図表3:NICEの考え方

DX推進に必要なのは、「DXはデータから」という意識を持つことです。DXというと人材やシステムに注目されがちですが、DXの実現には「データ」への意識が不可欠です。データトランスフォーメーションがなければ、デジタルトランスフォーメーションもないという意識を持ってデータ統合に取り組む必要があります。

外部ツールとの連携で、データベースマーケティング支援を強化

-ランドスケイプ様では、LBCのほかに様々なサービスをリリースされてきていますね。具体的に教えてください。

LBCを活用してデータ統合を実現するクラウドサービス化したものが「ユーソナー(uSonar)」です。
「サイドソナー(sideSonar) 」はSalesforceなど各種SFA、CRM、MAツールとLBCを連携させ、LBCをベースに、Webサイトの来訪者のアクセス、業種、企業特性、ニュース情報など様々な情報を掛け合わせてターゲティングすることが可能です。
また、昨年2020年11月には「Rating2.0」という法人間での商談成立の見込み度を測るスコアリングエンジンの提供を開始しました(図表4参照)。

図表4:ランドスケイプ社の沿革

弊社の強みは独自構築したデータベースをもとにサービスを提供しているので、データの網羅性を追求できることと、個別要望に対しても柔軟に対応できることです。また、各サービスは外部のCRM・SFAやMAツールとAPIを活用してシームレスな連携が可能です。連携により自動的に名寄せ(データクレンジング)、企業規模・業界区分などの企業データ付与ができます。今後も外部サービスとの連携は積極的に行っていく予定です。

今後はオンラインとオフラインのデータを統合し、機械学習を活用したスコアリングへ

-データ統合が実現できれば、有効なマーケティング活動が展開できますね。ランドスケイプ様は、今後どこに重点を置いた取り組みをされるのですか?

今後オンラインのマーケティングが進んでいくので、オフライン、オンラインをデータ統合して、予測するのが望ましいと考えています。考え方は昔と変わっていないのですが、これまでLBCは、取引先データを統合し、その取引先の傾向を見てホワイトリストの抽出や、取引先データの属性を包括的に把握するのが主な使い方でしたが、昨年開発した「Rating2.0」では、オンライン、オフライン問わず情報を統合させて、機械学習を活用してターゲット企業の最新動向を把握できるようになりました。

「Rating2.0」は、個人を特定せずに様々なオフライン・オンラインの企業属性を統合して高精度に見込み企業をスコアで判定します。具体的には、LBCが保有する企業属性(業種、売上規模、従業員数、企業系列など)や、ツール導入状況、建物属性、部署属性、企業の特徴、オンライン上の企業の行動属性(企業別のWeb閲覧履歴や反応履歴、興味関心)などです。
他社の企業スコアは、決算情報など一部の企業情報を活用した判定のため、あまり変動しないことが考えられます。「Rating2.0」は、オフライン・オンライン問わず企業に関わる変数を統合する技術で、見込み度の高い企業リストを高頻度で自動更新できます。 企業スコアは、日々の企業活動の変化に応じて変動するものです。ランドスケイプも自社向けの「Rating2.0」を用いて、高スコア企業を日々可視化し、営業やマーケティングに活かしております。

また、それだけでなく、「Rating2.0」はGoogle広告やFacebook広告、DSP広告など各種WEB広告と自動連携することにより、ターゲットを特定した効果的なデジタルマーケティングを実現します。マーケティングオートメーションともデータ連携が可能です。

弊社のソリューションを通じて、よりBtoBマーケティングが進めやすくなり、営業時間を商談に集中してもらえるようにもっていけたらと思います。

プロフィール

吉川大基 氏
株式会社ランドスケイプ 事業開発グループ 執行役員
小林千也 氏
株式会社ランドスケイプ 事業開発グループ サブマネージャー

吉川大基 氏(写真左)

2000年に株式会社ランドスケイプ入社。法人・消費者DBを活用したデジタルマーケティング支援及びパートナーアライアンス業務に従事。子会社の代表取締役を兼務。一度ランドスケイプから離れ、他企業を経験し2009年に再入社。2014年7月より事業開発グループ執行役員に就任。



小林千也 氏(写真右)

2018年に株式会社ランドスケイプ入社。BtoB企業に特化した広告プランニングの営業兼コンサルタントを経て、技術営業及びパートナーアライアンス業務を行う。現在は、日本最大の企業属性データを用いて、オフライン・オンラインの企業属性を統合し分析する、法人見込み度AIスコアリングエンジン「Rating2.0」の企画開発やデジタルマーケティング支援業務に従事。

インタビュー後記

今回うかがった「NICE」の考え方は大変腹落ちするものでした。リード獲得から育成後、有望リードを受注につなげるには企業データとの紐付けが欠かせません。しかし、企業には動きがあり いつの間にか社名や住所、グループ・組織体制等が変わっているケースは多々あります。顧客データベースを何万件も持っていても、営業に活かせるデータは2~3割程度になっているかもしれません。データの「標準化」→「一元化」→「補正」→「属性付与」の4プロセスを意識したデータ管理を行う必要があると肝に銘じました。「DXはデータから」です。

広富 克子

取締役/執⾏役員

広富 克子

コンテンツマーケティング支援

神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。

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