事例

東洋リントフリー株式会社 Web組織営業の実現は、定期メルマガ廃止の決断から始まった

東洋リントフリー株式会社 商品開発部 部長 山田裕治氏

東洋リントフリー株式会社様は、1970年設立より、エレクトロニクス、製薬、食品業界に向けたクリーンルーム用高機能防塵服の開発、販売を行ってきた製造メーカーです。2003年に手作りで自社のWebサイトを立ち上げて以来、試行錯誤を続けながらWebによる新規顧客開拓を進めてきました。Webの活用を中心となって推進してきた商品開発部部長の山田裕治氏にお話をうかがってきました。

月40件のカタログダウンロードが定着

ホームページ立ち上げから約10年、どのような変化がありましたか?

2003年に手作りで自社サイトを立ち上げましたが、会社紹介のみにとどまってしまい営業に活用できるほどのものではありませんでした。これからはインターネットを通じて外部に見られる意識を持たなくてはいけないと考え、2005年にリニューアルを行いました。リニューアル後、すぐにカタログ請求が何件かあり、とても驚いた記憶があります。

弊社の事業は、エレクトロニクス、製薬、食品などの清浄度の高い製造環境に向けたクリーンルーム用防塵服というニッチな市場で展開しており、新規のお客様と出会う機会が最も多いのは展示会です。リニューアル後は、展示会にWebをうまく連動させたいと考え、展示会で名刺交換した方に再度展示会に来ていただけるよう定期的にメルマガを配信し、随時展示会の案内も送っていました。Web広告は打っていませんが、立ち上げ当初のアクセスは月3,000~4,000PVだったのが今では10,000PVくらいに増え、カタログのダウンロードはリニューアル以来コンスタントに月40件ほどあります。

月40件のカタログダウンロードが定着

定期メルマガから自動フォローメールへの切り替えで、営業部門主体のWeb体制へ

定期メルマガは私が1人で担当していました。最初は何を書こうか悩みながらも毎月配信していましたが、日常の業務に追われ徐々に配信数が減っていき、展示会の案内を配信するのがやっと、最後はそれすらも配信しない状態となってしまいました。
Web経由ではカタログダウンロードはコンスタントに月40件あがっているものの見込み度は低いと思われるため特に営業フォローはなし。営業フォローしているのは月5~6件の問い合わせのみという状態でした。

せっかくカタログダウンロードでリードはとれているものの、定期メルマガが止まっているため放置状態だったわけです。そこでいっそのこと定期メルマガを辞めて、メールの活用はカタログダウンロード者へのフォローメールに切り替えることにしたのです。また、これを機に営業部にフォローメールの運用をお願いしました。商品開発部で営業担当者の行動を把握したりコントロールすることはできないので、フォローメールを準備するからあとは営業部で対応してくださいという具合に全部任せてしまったのです。

カタログダウンロード申込み後に送信されるフォローメールは、ダウンロード直後に1回、さらに1週間後にもう1回配信されます。メールの文面は営業担当者個人名で私信形式のライティングとし、ご要望があればカタログ商品の事例を営業担当者よりご紹介する点や、問い合わせ先の電話番号を記載するなどして、問い合わせを促す内容としました。営業担当者個人からのメールとして受け取ってもらえ、当初の想定以上に返信がありました。フォローメールに返信する形での問い合わせは月3~4件くらい発生、問い合わせフォーム経由の問い合わせとほとんど変わらないくらいの問い合わせ件数が獲得できるようになりました。(図1参照)

定期メルマガから自動フォローメールへの切り替えで、営業部門主体のWeb体制へ

定期メルマガでは毎月原稿を書く必要がありましたが、フォローメールは1回作って設定すれば、あとは自動配信されるので気持ちも作業も楽になりました

運用を営業部にお願いして、営業部から抵抗はありませんでしたか?

Webをリニューアルして早い段階でWebから受注に繋がったケースがあったので、Webは営業に活用できると営業部も認識しており、フォローメールの運用もスムーズに受け入れてもらえました。

営業部は東京本社内にある販売1課と販売2課、そして各営業拠点に分かれています。販売1課と営業拠点は既存のお客様のフォローとテリトリー内の新規開拓を担当、全て外勤メンバーで構成しています。販売2課はテリトリーの枠をまたがるお客様への対応や、新規の顧客開拓を担当していまして、内勤、外勤、数名のメンバーがいます。Webは販売2課のメンバーが担当し、内勤者がメールを受信、外勤の数名のメンバーが必要に応じてフォローするという体制です。また、地域的に遠方の場合には、大阪、東北、九州など各営業拠点の担当者がフォローしていきます。

営業部のWebの問い合わせへのフォローはスムーズに運用されているのですか?

営業部内でルールを作って対応しています。 例えば、

・メールに返信があれば営業部の複数の担当者で受信できるようにし、いつでも誰かが対応できるようにする。
・お客様よりメールを受けたらその日のうちにカタログを送る
・問い合わせが来たらその日のうちに回答する

といった具合です。

また、いつカタログがダウンロードされて、訪問し、販売に繋がったかなどの活動や成果を逐一記録するようにしています。営業担当者には、展示会でフォローする習慣がついているので、Webからの問い合わせをフォローすることもその延長線上でできているようです。それによって営業担当者もWebの存在意義を認め、自分たちがどのようにWebを活用できているか意識するようになりました。営業の進捗数字は全社員がオープンに見ることができます。

私がWebの運用の手を離したことで、1担当者の取り組みだったものが組織の取り組みになり、大変良かったと思います。

全社的に営業を支援する組織体制を確立

商品開発部と営業部のコミュニケーションはどのようにとられているのですか?

毎週月曜日に営業のミーティングがあるので、商品開発部の課長が出席し、そこで情報交換をしています。また、商品開発部はアフターフォロー対応を通じて絶えず営業部とコミュニケーションをとっています。衣服としてのアパレル的な品質管理は生産技術部が管理し、商品開発部では商品や素材の開発、販売した商品の性能確認や販売する商品のデータ作りを担い、クリーンルームで、日々フル稼働で試験をしています。 営業担当者は顧客から性能に関する数値データを求められることが多いので、そのたびに商品開発部とコンタクトをとらざるを得ません。我々も顧客からどのような数値データを求められたかを聞くことで、ユーザーニーズを掴むことができ、商品開発のヒントに繋がります。(図2参照)

全社的に営業を支援する組織体制を確立

また、弊社は営業部の職位者になったら他部門に異動し、営業を支援する立場になるパターンが多いので、各部門が営業の気持ちをよく理解しています。私自身も営業部にいた頃、報告書作成や情報処理の作業に大きく時間を割かなくてはならないことに疑問を感じていました。日常的な業務の流れの中でそういった作業をいかに軽減できるかが大きなポイントだと思い、イントラにグループウェアを導入することで、報告書作成の時間を削減できるようにしました。

WebはFace to Faceの営業につなげるきっかけに

今後のWebの活用はどのようにお考えですか?

弊社の強みは営業の活動力です。営業ががんばってくれてこそ全てがうまくいくと思っています。商品はファッション服のようなデザイン性はありませんし、細かく言えば仕様の違いや特徴はありますが、見た目で選ばれるものではありません。ブランドイメージといったところで競い合っても勝負できませんし、勝負しません。

営業は商品がどのような性能を持っているかお客様にPRする必要があります。商品の価格交渉をするだけでなく、商品が技術的にどういうレベルのものかということを説明するのが営業の仕事です。それは電話やメールではできないことです。営業が直接出向いてお客様に説明して理解していただき、商談をまとめる。実際にWebに問い合わせがあって、少額の注文であったにもかかわらず、営業が訪問して話を聞き出していくうちに新規の大型販売につながったケースが何回かあります。
また、営業がお客様と技術的な話もできるようにするため自主的に勉強会も行っており、私が講師を務めたこともあります。

弊社ではWebと営業の連携を図っていますので、Webでは情報を絞り込み、あえて情報量を少なくすることで、もう一歩踏み込んで問い合わせてみようかという気にさせることを意識的に行っています。実はカタログにも載せていない情報や商品がたくさんあります。カタログをダウンロードしたところでお客様に満足してもらいたくないんです。それではうちの営業の出る幕がなくなってしまいますから。Webもカタログも営業がお客様へ出向いてFace to Faceでお話させていただくためのきっかけ作りのツールだと考えていますし、今後も変わることはありません。

WebはFace to Faceの営業につなげるきっかけに

プロフィール

山田 裕治氏
東洋リントフリー株式会社 商品開発部 部長

1987年に東洋リントフリー株式会社入社。営業、マーケティングの両部門を経験しながら現在は商品開発部部長に従事する。約10年前より展示会とWebをベースにした新規顧客開拓のしくみづくりに取組んでおり、マーケティング部門と営業部門の連携をとるキーマンである。
→ 東洋リントフリー株式会社 http://www.lintfree.co.jp/

プロフィール

インタビュー後記

東洋リントフリー様では、顧客対応の流れ、人事面において、営業部門と商品開発部門の連携が必然的にとられるしくみとなっています。商品開発部が商品の性能データ抽出を通じて顧客のアフターフォローも対応している点、営業部門の職位者が他部門に異動して営業を理解・支援する体制がとられている点等、参考になる点は多々あります。
Webが営業部門にスムーズに受け入れられたのは、成果が早く出たことはもちろんですが、定例ミーティング以外の日常の部門間のコミュニケーションがベースにあってのことかと思います。山田様は若手営業マンの自主勉強会の講師を務めることもあるとのこと。山田様とともにWebも営業の応援部隊の一員として増々活躍してほしいものです。

広富 克子

取締役/執⾏役員

広富 克子

コンテンツマーケティング支援

神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。

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