セミナーレポート

マーケティング組織をDXで変えていくには

パワー・インタラクティブ セミナー事務局【文責】

パワー・インタラクティブは2021年3月末に著書『営業を変えるマーケティング組織のつくりかた』を上梓した株式会社Nexal 代表取締役 上島千鶴様をお招きし、2021年6月15日、講演+Liveインタビュー形式のオンラインセミナーを開催しました。『営業を変えるマーケティング組織のつくりかた』は、上島様が過去13年間にわたり大手200事業体を超えるマーケティング戦略プロジェクトの生の現場を通じて、組織の成長を「マーケティング組織5世代モデル®」として体系化したものです。
当レポートは、上島様の講演後、視聴者からの質問を交えながら、パワー・インタラクティブ広富(以降、PI広富と記載)による上島様とのLiveインタビューを中心にお届けします。

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MAツールを入れて刈り取りだけで終わる会社が多い現実

PI広富:
コロナ禍でリモートワークが進み、MA等のツールの導入が進んでいるようですが、マーケティング領域のDXの動きとしては何が顕著でしょうか?

上島様:
マーケティング組織がある会社では、現場の営業がリアルで動けない分、マーケティング担当者が忙しくなっているところが多いです。展示会ができないのでオンラインでセミナーをするなど、いろいろな事業部から依頼が押し寄せている状況です。

一方でマーケティング組織がない会社も、オンラインでの営業活動をせざるを得なくなりました。そこでMAツールを導入して、オンライン協賛セミナーなどでリードを獲得しますが、マネジメントプロセスが不在のまま取り組んでしまうと、「集めたリードに対してその後どうするの?」となっているところが多くあります。

セミナー後に参加者全員に電話をかけたり、一斉メール配信を行ったりしている会社がありますが、リード属性を精査せずに一律にこのような取り組みをするのは失敗予備軍です。電話は繋がらず、メールは開封されない状況でしょう。第1世代に多い傾向ですが、リードマネジメントといった発想がないまま、「今すぐ客」だけ集めてOKでは、一時の成果で長続きしません。

PI広富:
マーケティング機能集約型の第2世代になると、このあたりの理解はだいぶ違ってくるでしょうか?

上島様:
第2世代の中でも、マーケティング組織を急いで作った会社ほど、ツール導入で終わることが多いです。マーケティング戦略やお客様の意思決定に応じたコンテンツをどう揃えるのかという議論がないまま、ランディングページを作って広告で「今すぐ客」だけ刈り取る"狩猟型"になります。

商材単価が比較的安くてリードタイムも3ヶ月以内の商材であればよいのですが、商材や案件単価が数千万円で、リードタイムが長かったり、意思決定が組織を横断したりする場合には、刈り取り施策だけでは難しいです。リードを獲得した後、商材提案に行くまでどうやって関係をつないでいくか、"農耕型"が重要だからです。

マーケティング組織を次の世代へ引き上げるポイントは部長の理解と我慢

PI広富:
ここからはセミナー視聴者からの質問も交えながらお聞きしていきます。第1・2世代としては、第3世代である「マーケティング戦略があり、一連のプロセスとして結果と紐づけて把握できている」段階がまずは目標となってくると思いますが、第3世代へ引き上げるポイントはどのあたりになるでしょうか?

上島様:
第3世代に引き上げるポイントは、簡単に言えば「部長がどれだけ理解しているか。確実な成果が出るまで3年間我慢できるかどうか」です。"デジタルマーケティング=刈り取り"で、今すぐ案件が見付けられるという発想だと、長い目で見ていくという農耕型のマーケティングにはなりにくいです。

まずは、営業接点やチャネルが確立されていない新しい戦略商材で、小さなPDCAを回して社内成功事例を1つでも作っていくことが大切です。実際に営業にパスできる案件を作ることができたら、部長も理解してくれて「他の商材にも広げていこう」という話になります。やったことないものを信用してくれない古い体質の会社はまだまだありますので、このような地道な活動を通じて、部長クラスの賛同者を増やす、協働してくれる事業部との関係を築くことが成功のポイントです。

PI広富:
今日の講演は第4・5世代に焦点を当てて頂きましたが、この段階へと引き上げていくポイントはどのあたりになりますか?

上島様:
デジタルマーケティングを、マーケティング部だけの活動にせず、事業部の方を交えて課題感を共有することです。

事業部長クラスと課題感や方針について合意できないと成果も出ません。また社内ワークショップを行うなどして、例えばデジタル接点を強化することでどのような良いことがあるのか、対面でやっていることがどうデジタルに置き換わるのか、全体リソースをどうやって最適化していくのかなど、営業の方も交えて議論することが大切です。

ABMは営業がキャッチアップ出来ていない情報の付与を意識する

PI広富:
第4世代は、新規案件創出だけでなく、既存深堀・深耕のためにデジタル接点を活用できている状態、いわゆるABM(アカウントベースドマーケティング)を行っている段階と定義されています。ABMでは具体的にどのようにデジタルマーケティングを活用しているのでしょうか?

上島様:
デジタルセンサーとして活用します。例えばウェブサイトのコンテンツを増やして、デジタル接点を増やすと、これまで接点のなかった顧客や部門の足跡履歴も残りますね。これを営業担当者の嗅覚(センサー)として活用します。デジタルマーケティングによって営業が要らなくなるのではなく、営業がキャッチアップできていない情報を付与することで、営業の動き方が変わっていきます。

上島様:
既存のお客様がオンライン上でどのような足跡を辿ったのか、アカウント営業が見る社内ポータルのダッシュボートに表示して営業活動に利用する方法は、早い会社だと10年以上前から取り組んでいます。いつ、どの動画や商材を見にきたのか、同じアカウント企業から同時にアクセスした傾向はあるのかなどから、今このテーマや分野に興味や関心がありそうだという仮説を、企業単位、組織単位、個人単位でダッシュボード化して提供します。

またこのようなデータが貯まることで、お客様の動きを予測することができます。例えば3月決算のお客様で秋にこのコンテンツを見た場合、そろそろ動きがありそうなのでフォローしたほうが良いというアラートを営業に飛ばすことができます。

まずはリード情報資産の棚卸とウェブサイトのアクセス履歴の深掘りから

PI広富:
BtoBマーケティング領域でのDXのファーストステップとして、どのようなデータを活用すると、進めやすいでしょうか。

上島様:
リード情報の無形資産の棚卸は最低限行いたいことです。また自社ウェブサイトのアクセス履歴を徹底的に分析していただきたいです。過去2年間のアクセスログを全部分析して、お問い合わせをする人としない人とで行動パターンはどう違うのか、企業規模や職種などでパターン分析すると、「商談まで繋がるお客様は、その数ヶ月前には同企業同組織で2人以上、必ずこのコンテンツを閲覧している」といったことが見えてきます。コンバージョンだけを見ていると、パッと来てパッと問い合わせをしているように見えますが、データを遡って見ると、意外と予算計画時期に見に来ていたといった傾向がわかります。

PI広富:
アクセスログを単に増えた減ったで見るのではなく、有望リードの行動パターンの把握に活用するべきですね。今日はデジタルマーケティングが先行している第4世代、第5世代のお話を中心にうかがってきましたが、改めてデジタル接点をいかに活用するべきか多くの気づきがありました。ありがとうございました。

セミナー事務局より

DXの機運が高まる中、マーケティングの役割や業務の全社的な理解促進を図るためには、上島様考案のゲーム型研修サービス「リードビジネスゲーム®」がおすすめです。
「リードビジネスゲーム®」は、「ある企業のマーケティング部長に就任した」という想定のもと、2年間の部門運営をシミュレーションゲームにて体験するプログラムです。有望リード創出のために限られた人・予算を投下して施策を打ち、成果を評価する、という一連の体験を通じて、マーケティング業務の要諦や勘所をつかむことができるようになっています。
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