コラム

『”考えること”を楽しんでほしい』23回目の創立記念日に聞く

2020年2月3日、パワー・インタラクティブは23回目の創立記念日を迎えました。岡本によると正確には2月1日が創立記念日なのだそうですが、初年度は1日が土曜日だったため、会社として動き始めたのが2月3日(月)だったとのこと。今年も同じく、1・2日が土日で月曜日に創立記念日を迎え、当時を思い出すような曜日サイクルに岡本は感慨深げな表情を浮かべます。今回はそんな岡本に、創立記念日を迎えた気持ちや普段から口にしている「10年で定年」のコトバに込められた想いなどをインタビューしました。

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23回目の創立記念日を迎えた心境は、『来たな』と。

今年も無事に創立記念日を迎えることができました。岡本さんはどのような気持ちで創立記念日を迎えましたか?

2月1日に会社を立ち上げたのは、すでに立ち上げていた会社の決算が3月31日でしたので、出来ればそれに合わせたく2ヶ月間くらいのインターバル期間が必要だと思った大きな理由でした。

ただ2月1日には個人的にも思い入れがあります。実は、私の父の祥月命日が2月1日です。体育教師をしていた父は、前年12月の終業式が終わった日に体調が悪くなり、病院に検査に行ったところ即日入院となってしまいました。その3日後には意識がなくなり、1ヶ月後には亡くなってしまいました。この時、人生はなんと短いものか思いましたね。当時、私はまだ23歳でした。一人っ子でしたので相談相手もおらず、奈良国体を前に家は建て替えたばかり。会社勤めをしていましたが、これをきっかけに、私は自立心が芽生えたと記憶しています。

だからこそ、創立記念日を迎えると毎年『来たな』と、身が引き締まる想いで迎えています。

社員へ向けた『10年で定年』というコトバの真意

岡本さんは昔から「パワー・インタラクティブは『経営者を育てる学校』だ。10年で卒業していけ」と言っていましたよね。その言葉にはどういった考えが込められていますか?

最初は、「パワー・インタラクティブが孵化器になって新しい経営者がどんどん生まれてくれたらいいな」と思っていました。デジタルマーケティングの分野を選んだのもその一つです。でも、経営者になることだけが道ではありません。パワー・インタラクティブで培った専門性を、別のフィールドで磨くのも選択肢のひとつでしょう。たとえ大きな組織でも、専門性の高いメンバーは意外とそんなに多くいないものです。働き方や立場はどうであれ、自分で意思決定して道を切り拓いていくのが"経営者"だと私は考えています。

事あるごとに口にしている『10年で定年』という言葉には、さまざまな想いを込めています。人生は一度きりです。その一度きりを一つの会社で終わっていいのかと、社員にはいつも問いかけています。それに世界は自分が思っているよりも広い。井の中の蛙のようになって、自分の持っている可能性を閉じ込めてしまっているならもったいないでしょう。会社や組織のピラミッドの中で生き続けるのは、せっかくの与えられた人間らしさを引き出せられないと思います。

もちろん、どんどん転職しなさいという意味ではありません。1つのフィールドで形を作った後、その環境に甘んじず、次のフィールドでまた新たな形を築いていくべきだと思います。ぜひ、多くの社員に未知の世界に羽ばたいていってほしいです。

『教育総研』の立ち上げに至った背景と今後の展望とは

教育総研には岡本さんの「経営者を育てたい」という想いだったり、エッセンスだったりが込められている印象がありますが、実際はどのような想いで教育総研を立ち上げられたのですか? (※教育総研は岡本が立ち上げたイノベーション人材育成の専門会社。)

教育者であった父の影響もあり、もともと日本の教育に関わりたいとは思っていました。PTA会長もやっていましたし、教育委員会の仕事に携わっていたこともありました。その中で感じていたのは、先生方は本当に一所懸命やっていらっしゃるのだけれど、時代の変化に順応した"やり方"を十分に取り入れられていないことへの懸念です。現場での教育に関してだけでなく、保護者との対話も改善が必要だと思いました。でも今の教育スタイルはこれまで100年以上の年月をかけて積み上げられてきたものなので、そう簡単に変えることはできません。何かできることはないかと先生向けの研修をやったこともありましたが、やはり意識や仕組みを変えていくのは生易しいものではないと改めて感じさせられましたね。

そこで少し角度を変え、外国から日本にアプローチできればと考えるようになりました。それが教育総研です。外国人留学生と日本人との接点を上手く繋ぎ合わせながら、同じ空間で学べる環境を作れたら少しは改革に繋がるのではないかと思っています。大学や大学院ではすでに学生の半分以上が留学生という環境ができているところもありますが、小学校の初等教育、中学高校の中等教育の現場ではまだそこに至っていない印象です。これからは選択肢のひとつとなるよう、学びの環境を整えていきたいですね。

なぜ、日本人と外国人が同じ環境で学ぶことが日本の教育現場へインパクトを与え、しいては経営者を育てることに繋がるのでしょうか。

今の日本は、社会に馴染めなかったり学校の勉強についていけなかったりする子の受け皿が足りていません。でも私は、そういった子の方が日本社会の矛盾や課題を肌で感じられているのではないかと思うのです。例えばKADOKAWAのN高等学校は、不登校の人数が全国で17万人を超えている日本の現状を受け止め、『不登校であることと人間の才能は無関係』という考えの元、2016年に新しいネットの高等学校として設立されました。様々な新しい常識を覆すような取り組みの結果、東大に合格しても自分の希望を満たせる海外の大学へ進学するような優秀な人材を多く輩出しています。

不登校ではなくても、他者へ何らかの劣等感を抱きながら過ごしている学生も多いでしょう。日本には、学校自体が社会に受け入れられていなかったり、偏差値が伸び悩んでいたりする学校が多くあります。その中には日本人同士だと劣等感で上手くコミュニケーションを取れなくても、外国人へは心を開けるケースが出てくるかもしれません。外国人の同世代とのコミュニケーションを取る方法の一つに、例えば、海外のトップ大学のサテライト教室を同じ校舎内に設けて、同じ内容の授業を受けられるようにするのも選択肢の一つだと思っています。

ビジョンやミッションは、企業のパワーとなるかどうかが大切

パワー・インタラクティブは理念や行動指針を言語化していません。あえてこれまで、掲げてこなかったといえるかもしれません。これから社内社外、国内国外、老若男女さまざまな人と仕事をしていく上で、何らかわかりやすいメッセージが必要になっていると思います。事あるごとに社内で議論を重ねてはいるもののなかなか言語化になかなか至っていません。岡本さんの見解はいかがですか。

経営理念とかミッションとかがあると、対外的に見たときに分かりやすいですよね。でも大切なことは、実際にそれが企業の推進力になるかどうかです。普段から自分たちの中で体質化されている言葉が入っていれば良いと思います。掲げたビジョンは、時代に合わせて変わっていくでしょう。1度決めたからと言って、時代に合わなくなっているのに、無理矢理それを掲げ続ける必要もありません。でももしその理念やビジョンが社員たちにとって"心の拠り所"になっているのであれば、それはそれで良いと思います。

社員には"考えること"を楽しんでほしい。

最後に、社員へメッセージをお願いします。

若い人から経験豊富な人まで同じ会社にいる中で、毎日いろいろな課題にぶち当たりながら働いていると思います。考えが違う者同士の議論は労力がかかりますが、『しんどいこと』じゃなくて、考えることが喜びだと感じてくれたらうれしいと思います。『今はしんどいけれど、もう少し考え続けたら何か見えるぞ』と。もちろん、難しさを感じることは多々あるでしょうけど、その道を通らないと絶対に良いものは生まれません。パワー・インタラクティブのメンバーがそういった壁を乗り越える道を切り拓くことを高めていけたら、時代の変化に惑わされない、強い会社になれると思います。

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