インタビュー

【前編】株式会社マイナビ 新規事業に必要な人材は、事業の意図を咀嚼してステークホルダーに伝えられるかが重要

株式会社マイナビ
西 達矢氏

株式会社マイナビ様は、進学情報から求人情報、ニュース情報など、多彩な情報提供を商品・サービス化されています。今回取材した西氏は、ここ10年間、新規事業となる複数のペイドメディアを立ち上げられてきました。これまで手掛けたメディアは6つ。そのうち2つは、メディアコミュニケーション事業本部から独立して事業部となっています。
今回は、Webメディアの"立ち上げ人"である西氏へ、新規事業を成功へ導く秘訣をおうかがいしました。

マイナビ新規事業の狙いは"就職後もユーザと継続的な関係を維持すること"

マイナビ様の新規事業の位置づけを教えてください。

過去のマイナビは、新卒、転職を中心とする人材系ビジネスと、出版ビジネスがメインでした。私がこの10年間携わってきたのは、これらのメイン事業とは異なる分野のメディアです。具体的には「就活スタイル」「フレッシャーズ」(現在は「マイナビスチューデント」に包括)「「マイナビニュース」「マイナビウーマン」「マイナビ賃貸」「マイナビウエディング」の6メディアになります。
新規事業では、就職情報サイトで接点を持った学生の皆さんに、その前後も含めて役に立つ情報・コンテンツを提供することで、関係を継続していくことを狙いとしています。

新規事業は少人数のメンバーでキックオフされる

新規事業立ち上げ時の流れを教えてください。

まず、ウエディングや賃貸など人材系以外の新しい事業ドメインに進出する意思決定は、社長がタイミングや全体収益などをみて行います。その段階で私がプロジェクトリーダーとなり、営業、システム、編集など数人のメンバーでスタートします。
「マイナビ賃貸」の場合は、事業立ち上げ前の準備段階では私を入れて4名。私がリーダーで営業、編集、システムが1名ずつでした。新規事業の立ち上げ段階のメンバーは、他の事業で実績を残してきたメンバーで構成されます。

サイトの要件定義に入る前に、まずは当事業分野にどのように参入していくのかを見定めるための定量・定性のユーザ調査、クライアントサイドの市場調 査から始めます。次に、弊社の強みが作れるのはどんなポイントかを固め、システム開発の狙いを要件に落とし込み、サイト構築のコンペを行います。同時に、 事業成長のスピードに合わせた組織編成とメンバー数、その他にどのようなサポートセクションが必要かといった事業の青写真を作り、それに必要な推進メン バーの条件を決定し採用を行っていきます。

中途採用基準は混乱期を乗り越えられる"気概"

新規事業を推進するメンバーの採用基準を教えてください。

営業、編集、システムの全職種を通して言えるのは、新規事業の立ち上げ期はいろんな意味で混乱することが多いので、"新規事業を何がなんでも立ち上 げてやるぞ"という気概と夢がないとやっていけません。そのテンションが絶対に必要です。3回の中途面接の中で、私は最終面接を担当しますが、本質的な気 概があるかどうかはすぐにわかります。キャリアとして評価が高くても、他のメンバーに比べてテンションが低い場合は、「そのテンションでは駄目だ。どれだ けしんどいところに来るのかを考えた上で、それでも事業の青写真が固まった後、どのように推進していくかですが、既存の各事業分野の業績が伸びており拡張路線にあるので、必然的に社外から人材を集めることになります。「マイナビ賃貸」の場合、中途採用が6割、新卒が3割、残り1割が社内部署から異動してきたスタッフです。

本当にやりたいのだったら覚悟を決めてもう一度来てくれ。」と言い、内定保留の形にして、再度面談を行 います。
しっかりとした決意がないと、来たら苦労するだろうなと思うので言うのです。採用する気がない人にはもちろん言いません。

「マイナビ賃貸」と「マイナビウエディング」では営業の種類が違う

これまでの経験は重視されるのですか?

「マイナビ賃貸」の営業の採用では、競合メディアの経験者も受けに来てくれますが、業界経験者かどうかはあまり重視しません。出来上がったメディアを売るのが 得意な人と、出来上がっていないメディアを売れる人は時に違うと思います。新しいメディアでは新規参入する意図をしっかり咀嚼してステークホルダーに伝え られる能力があるかが重要です。

「マイナビ賃貸」と「マイナビウエディング」を比較すると、営業の"基礎行動量"が異なります。「マイナビウエディング」が3件/日のアポイントが 平均とすると、「マイナビ賃貸」は10件/日くらい必要です。アポイントごとの時間が短く、飛び込みもやりながら広告を取りに行きます。1回のアポイント が10~15分というケースもあり、その中で「マイナビ賃貸」の特徴について説明し次回の打ち合わせに繋げなければいけません。中途採用者は、前職での行 動パターンが習慣化している場合がありますので、"基礎行動量"がまずあるかを確認します。

一 方、「マイナビウエディング」は2時間くらいのアポイント時間で、数字の分析を丁寧に行っていきます。例えばフォトギャラリーの写真クリップ数とか様々な ログ分析数値、情報ごとのPV・UU・離脱率、画面の遷移傾向などのあらゆるファクターを分析し、この写真を変えましょう、というような改善提案を行って います。コンサルティングの必要度は、営業形態やサービス形態によって違ってくるのです。

「マイナビウエディング」や「マイナビ賃貸」「マイナビニュース」は、人材系サービスと異なり、企業収益に直結するWebマーケティングメディアな ので、Webマーケティングのエッセンスが分かっているかどうかも重要です。例えば、CPA(顧客獲得単価)という言葉を知っているかどうか。不動産業界 だとCPAとは言いませんが、反響単価という言い方はします。反響単価の前には来店率があって、いわゆるコンバージョンの前の中間コンバージョン的な何が しかの指標があり、その業界独特の言い方をします。4Pなどの一般的マーケティング知識ではなく、顧客を獲得するためのWebプロモーションのセンスと基礎知識が必要です。

プロフィール

西 達矢氏
株式会社マイナビ 執行役員メディアコミュニケーション事業本部 事業本部長

横浜国立大学卒。93年に毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)入社。大阪支社、就職情報事業本部にて、10年間、多数の企業を訪ねて採用のコンサルタントを行う。その後、03年からは東京本社 社会人情報事業部にて、就職前の学生向け「マイナビスチューデント(旧「マイコミフレッシャーズ」)、20代の働く女性向け「マイナビウーマン(旧「escala(エスカーラ)」)などの新メディアの立ち上げを行う。現在はメディアコミュニケーション事業本部長として、「マイナビ賃貸」「マイナビウエディング」といった新しい分野のメディアを続々と展開している。

インタビュー後編
後編へ続く(後編:組織がブレると、リーダー自らが現場でタスク整理)
後編は、新規事業の成功要因や事業の評価方法についてお聞きしています。

広富 克子

取締役/執⾏役員

広富 克子

コンテンツマーケティング支援

神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。

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