インタビュー

アドビ株式会社 MOpsとフィールドマーケティングが連携し、マーケティングの生産性向上

アドビ株式会社<br/>DXインターナショナルマーケティング本部<br/>フィールドマーケティングマネージャー 松井 真理子 氏

アドビ株式会社
DXインターナショナルマーケティング本部
フィールドマーケティングマネージャー 松井 真理子 氏

「世界を動かすデジタル体験を」をミッションに掲げているアドビ株式会社(以下、アドビ)。米Adobe Inc.の日本法人として、1992年に設立されました。グローバル全体で売上は176億,1000万ドル(2022年度)、従業員数は約29,000名にも及びます。

本稿では、アドビでフィールドマーケティングマネージャーを務める松井 真理子 氏に、アドビのマーケティング組織や仕組みについてうかがいました。

MOpsとフィールドマーケティング、CoEが連携して施策推進

御社のマーケティング組織について教えてください。

私はDXインターナショナルマーケティング本部で、フィールドマーケティングマネージャーをしています。アドビには、「Creative Cloud」「Document Cloud」「Experience Cloud」という3つのクラウドサービスがあります。その中で私の担当しているExperience Cloudは、Adobe Marketo EngageやAdobe Analyticsなどのマーケティングソリューションを扱っています。

アドビの組織はアメリカズとインターナショナルに分かれていて、アメリカ以外の国はインターナショナルに属します。私の直属の上司は日本人ですが、その上司はオーストラリア、さらにその上司はヨーロッパにいます。

マーケティング組織は、アドビには私のようなフィールドマーケティングとMOps(マーケティングオペレーションズ)チームがあります。フィールドマーケティングはリージョンごとに配置され、MOpsはグローバルの中で、全世界を横串で見ています。日本のようなリージョンにいるわけではありません。

MOpsがフィールドマーケティング活動をシステム最適化で支援

フィールドマーケティングとMOps、それぞれの役割を教えてください。

フィールドマーケティングの役割は、営業組織の売上最大化のためにパイプラインを作っていくこと、商談が前に進むためにどんな施策を展開するかを考えることです。いかに営業が効果的にクローズしやすくなるかを考え、商談を作ることから取り組みます。

また、Center of Excellence(CoE)というマーケティングチームがあり、チャネルごとに役割を細かく分けて施策を実行しています。例えば、メール担当やイベント担当、レポート担当、コンテンツ担当がつき、フィールドマーケティングがCoEと一緒に施策を前に進めています。

MOpsの役割は、フィールドマーケティングがうまく活動できるようにシステムを最適化することです。MOpsは、現場のマーケティング施策や動きを理解したうえで、どうすれば最大の効果を発揮できるかを考えてオペレーションモデルを構築します。レポーティングも役割の1つです。現場のマーケターだけではなく、エグゼクティブの見たい情報もすぐに見られるように構築します。

明確なルールのもと、フィールドマーケティングとMOpsがスムーズに連携

MOpsが日本にいなくてもフィールドマーケティングとの連携はうまくとれているのですか?

連携はうまくいってます。私は前職でMOpsを担当しており、Adobe Marketo Engageも利用していたので、MOpsがどのような動きをしているか理解していることもありますが、アドビにはしっかりとした規則があります。

基本的にMOpsとは、Adobe Workfront上でチケットを発行してやりとりしています。例えば、Adobe Marketo Engage内のデータベースはフィールドマーケティングが触ることができないので、想定外のことが起きた際はMOpsに連絡を入れて確認します。Adobe Marketo Engage に1000件リードデータをインポートしたのに800件しかデータが確認できなかった場合、データのルーティングに問題があると想定してMOpsに確認を求めます。

フィールドマーケティングが日本のツールを導入したいと思っても、特殊なケースを除いて導入することはできません。多言語対応しているツールであれば検討の余地があるかもしれませんが、リージョン単独で使用するツールを入れることはありません。そうしなければ、いろいろなリージョンの担当者からリクエストが来て、調整できなくなってしまいます。私たちは自由に導入することは諦めているのですが、諦めさせるのもMOpsの力です。

導入したツールを活用できるようにトレーニングを提供するのもMOpsの役割です。アドビで使用しているマーケティングツールのはっきりとした数は分かりませんが、30以上はあるはずです。フィールドマーケティングでよく使うツールとしては、自社ツールのAdobe Marketo Engageをはじめ、自社ツール以外でも、ON24、FORCAS、Airtable、Bevy、Microsoft Power BIなどがあります。
トレーニングは、ライブでおこなうものやアーカイブ動画を見るものがあります。毎週、何かしらのトレーニングを提供していて、多いときは、1時間のコースを週に3回実施しています。全体的なトレーニングもあれば、ウェビナーなどのキャンペーン単位でのトレーニングもあります。

これだけしっかりとトレーニングをおこなうのは、グローバル企業だからこそです。世界各国にいろいろな考え方の社員がいるなかで、ルールを決めないと統制が取れなくなります。MOpsとしては、役割を果たすためにもトレーニングに力を入れているのです。

アドビのMOpsは素晴らしいと思います。MOpsがいるから、フィールドマーケティングは生産性高く動けます。日本ではMOpsとフィールドマーケティングの兼務の組織が多いですが、マーケティング部門のメンバーが10名を超えてきたらMOps専任担当者を置いたほうが効率的と感じています。

8つのステージで収益プロセス管理

フィールドマーケティングが推進する収益プロセスモデルはどのような設定ですか?

以下の7つのステージに、リサイクルを加えた8つのステージで管理しています。(図表1参照)

図表1:Adobe DX Marketingチームにおける収益プロセスモデル

Newは新規リードで、能動的なエンゲージはまだない状態です。何かしらの能動的なアクションが起きたらResponseになり、行動スコアと属性スコアの掛け合わせで基準を超えるとAQLにステータスが変わります。AQLになるとインサイドセールスがアサインされ、インサイドがフォローを始めたら手動でMALに変更します。AQLのまま残っていたら、インサイドセールスが何もしていないということです。MALのうち、アポイントを取れたものがMQOになります。

MQOからSQOになるまでに、3段階の営業ステージがあります。MQOがstage1で、インサイドセールスと営業の間で、ステージ変更についてやりとりが発生したものがstage2です。そしてSQOがstage3で、営業がクローズに向けて動くと決めたものになります。こうしたプロセスは、すべてドキュメントで整備されています。

ダッシュボードでステージの進捗チェック

ステージの進捗管理はどのように進められていますか?

MOpsが用意してくれたPower BIによるダッシュボードを使っています。毎週の定例ミーティングでダッシュボードを見て、ステージの進捗が予定通り進んでいなければ何か手を打たなければなりません。収益サイクルステージの数字に加え、パイプラインの金額も見ています。

アドビの施策は予算含めて四半期単位で取り組んでおり、次の3カ月の施策はその前の月までに固めています。新しい期が始まって、予定されているリード数に足りていなければ、不足分のリードが獲得できる施策を考えます。AQLが足りないときはメール施策などでカバーできるように、定期的なメールに追加のメールを送ります。こうした施策をCoEやインサイドセールスと一緒に進めています。

課題は日本の顧客に適したコンテンツの量産と営業収益貢献

今後のマーケティングの課題について教えてください。

日本のお客様に合ったコンテンツをどのように量産していくか、これが課題であり、チャレンジになります。

アドビはグローバル企業なので、海外のコンテンツがたくさんあります。ただし、海外のドキュメントやブログを日本語に翻訳したコンテンツを届けても、日本の顧客には理解が追いつかないものもあります。やはり、日本のビジネス背景を踏まえたコンテンツ(ブログや資料)のほうが親しみを持ってもらいやすいです。海外市場と日本市場の状況も違いますし、お客様の理解も違う中で、同じコンテンツをそのまま使えないこともあります。

イベントは国内独自で実施できるので、イベントをうまく活かして動画やブログなどのコンテンツづくりをおこなっています。コンテンツをお客様に届けるには、さまざまなアセットタイプを作っていくことが必要です。ウェビナーを好む人もいれば、ブログを好む人もいます。ホワイトペーパーのようにまとまっている資料を好む人もいれば、対面イベントのほうが理解が深まる人もいます。1つ作ったコンテンツをさまざまなアセットタイプにして、多くの人に届けることが今後のチャレンジです。

また、いかに営業の収益に貢献していくかも課題です。マーケティングが創出するパイプラインの目標金額を達成しても、ゴールは受注です。営業との連携が必須となります。加えて、カスタマーサクセスチームとの連携もできれば、アップセルやクロスセルにも広がると考えています。

各部署の連携を高めるうえで、先日開催したユーザーコミュニティイベントの「MUG Day」(Adobe Marketo Engage ユーザー総会)はとても効果的な取り組みです。MUG Dayを通じてマーケティング、セールス、カスタマーサクセスの各社員が、お客様の成長を直接見ることで、自分たちの取り組みの成果を実感できます。2023年7月には、オフラインでMUG Dayを開催しました。新型コロナウイルスの影響で、ここ3年間はオンライン開催でしたが、2022年12月からオフラインで開催しています。やはり、オンラインとオフラインでは感じ方が違います。アドビの社員も50-60人が参加しました。MUG Dayのようなコミュニティイベントを中心に、各部門が一枚岩になれたらと思います。

プロフィール

松井 真理子 氏
アドビ株式会社 DXインターナショナルマーケティング本部
フィールドマーケティングマネージャー

B2Bマーケティング一筋で約20年ほど従事。2013年にMAと出会い、施策の最適化を積み重ねることでB2Bマーケティングの重要性と影響力を示す。2020年3月よりアドビに入社。デマンドジェネレーションからカスタマーマーケティングまで、Adobe Experience Cloud のマーケティング全般を担当。入社以来ユーザーコミュニティ活動に注力。

インタビュー後記

フィールドマーケティングの役割は、営業組織の売上最大化のためにパイプラインを作っていくこと、商談が前に進むためにどんな施策を展開するかを考えること。MOpsの役割は、フィールドマーケティングがうまく活動できるようにシステムを最適化すること。松井氏へそれぞれの役割を問うたところ、明確な回答が返ってきました。役割や活動範囲が明示されているからこそフィールドマーケティングとMOpsが連携し、組織的なオペレーションが確立されています。現場で活動する部署と、それを横串で見る部署が連携していかに生産性を高めていくか、組織運用のポイントが見えてきました。

インタビュー実施日:2023年7月25日

取締役/執⾏役員
広富 克子

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