セミナーレポート

【ヘルスケア業界向け】Adobe Marketo Engageで実現する 有望見込み客の見つけ方と営業送客

「Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)を利用してマーケティングしているものの、パスしたリードに対して営業・MRが動かない」

こんな悩みを抱えているマーケティング担当者は多い。どんな企業でも部門間連携の課題はあるが、ヘルスケア企業は特に苦労している傾向がある。

受注に繋がりやすい有望見込み客を抽出し、営業部に渡すことができれば、両者の溝は次第に埋まっていくだろう。そのためには、Marketoのスコアリング機能を活用することが必要不可欠である。

2023年2月15日、ヘルスケア業界向けにMarketoでの有望顧客の見つけ方と営業送客をテーマにセミナーを開催した。講師はマーケティングコンサルタントの山下。本コラムでは、当セミナーの内容をまとめている。

※関連ナレッジ資料※
MOps(マーケティングオペレーションズ)に関する実態調査 をダウンロード

有望見込み客の定義

BtoBマーケティングを推進するうえで、有望見込み客を定義することは重要だ。ヘルスケア業界で起こるマーケティング部門と営業・MR部門の間に生じる亀裂は、有望見込み客の定義によって解消できるといっても過言ではない。

有望見込み客とは

有望見込み客とは、ニーズや課題があり、製品を購入する可能性が高い見込み客のことを指す。有望見込み客は、以下2つの観点から定義する。

 ●見込み客属性と施設・企業属性
 ●見込み客の行動情報

営業・MRに動いてもらうには、営業・MRが動きたいと思うリードを送客する必要がある。ターゲットとなる人や施設・企業の属性はどのようなものか、事業部門や営業部門と擦り合わせて定義する。

また、リードの行動から興味関心の度合いを図ることもできる。特定のページを閲覧したり、展示会や学会に参加したりといった情報をもとに関心度の高いリードを抽出する。

有望見込み客を定義するときは、営業・MR部門の意見を取り入れること、月ごと、四半期ごとの送客目標数を定めることが肝心である。マーケティング部門内だけで定義してしまうと、営業・MR部門からの理解を得られず、組織間の溝は埋まらない。部門を跨いで有望見込み客を定義し、実装することが重要だ。

Marketo上での遷移条件の設計

Marketoには「収益サイクルモデラ」という、顧客の購買プロセスをステージとして定義できる機能が搭載されている。この機能を使うことで、有望見込み客を創出するまでのリード育成プロセスを管理できる。

参考:収益モデルについて|Adobe Marketo Engage

図表1:ステージ設計と収益サイクルモデラ

Marketoの収益サイクルモデラにステージを落とし込む前に、各ステージの状態と遷移条件を定義しておくと良い。例えば、有望リードについては以下のように定義できる。

 ●状態:インサイドセールス・オンラインMRへ送客できる状態
 ●遷移条件:属性スコアと行動スコアの合計値がしきい値の100点を突破する

このように、各ステージの状態と遷移条件をあらかじめ定義しておくと、Marketoへの実装をスムーズに進めやすくなるだろう。

有望見込み客を見つけて繋ぐ組織体制

Marketoを活用して有望見込み客を抽出しても、営業・MRに直接受け渡して訪問してもらうことは難しい。見込みの有無に確証がない段階で訪問してしまうと、訪問にかかる多くの時間をふいにしてしまう懸念があるからだ。

このような懸念を払拭するために、インサイドセールスやオンラインMRの部門を新たに設立する企業が多い。訪問せずオンラインでフォローすることで、少ない工数で見込み度合いを判別できる。また、本当に見込み度が高いリードのみを営業・MRに引き渡せるため、営業・MRの負担軽減にも繋がる。

インサイドセールスやオンラインMRが対応する範囲は、製品によって分けると良い。例えば、MRが対応する必要のない定番製品はインサイドセールスやオンラインMRで対応することで、営業活動を効率化させることができる。

図表2:インサイドセールス・オンラインMRの対応範囲

ヘルスケアに特化したスコアリングの活用

Marketoで有望見込み客を抽出し、営業・MRに送客するには、スコアリング機能を活用すると良い。

スコアリングの前提知識

Marketoでの「リードスコア」は、「属性スコア」と「行動スコア」を足して算出される。

図表3:Marketoのスコアリング機能

リードスコアは属性スコアと行動スコアの合計で算出されるが、別途興味・関心スコアを付与することもできる。各スコアの概要は以下の通り。

属性スコア:購入し得るターゲットかどうかを点数付けするもの
行動スコア:購入し得る即時性があるかどうかを点数付けするもの
興味・関心スコア:どの製品・サービスに興味を持っているか、
属性スコアと行動スコアはリードスコアの算出に関わるため、必ず設定する必要がある。興味・関心スコアは任意とされているものの、多くのヘルスケア企業は取り入れている。製品が多岐に渡るヘルスケア企業では、興味・関心スコアをもとに医療従事者へのアプローチ内容を決めていることもある。

属性スコア活用のコツ

有望見込み客を発掘するうえで属性情報は極めて重要だが、データの蓄積に長い年月を要する。Marketoを導入してすぐに活用したいと考えるのであれば、外部データを購入してデータを付与することも検討してみてほしい。

医療従事者データベースや企業情報データベースを契約してMarketoに連携することで、有望リードの抽出に役立てられる。

行動スコア活用のコツ

行動スコアを取得するには、Cookieの紐づけが重要だ。Cookieを紐づけられていないと、Web上での行動履歴をデータとして取得できない。フォーム入力や配信メールのクリック、API連携をすると、Cookieを紐づけられる。

医療従事者向けの会員サイトを持っている場合、MarketoとAPI連携しておくとログイン時に自動でCookieを紐づけられる。これらの施策を実行し、Cookieを紐づけることで行動スコア取得の準備が整う。

行動スコアは細かな粒度で設定すると良い。ウェビナーの申込だけでなく、出席したのか、何分間視聴していたのか、アンケートでどのような回答をしたのかなど、細かなデータをMarketoに蓄積すると、行動スコアの精度を高められる。

興味・関心スコアの実装

興味・関心スコアは製品ごとに設定する。特定の製品ページの閲覧や資料ダウンロードなどをもとにスコアを付与することで、各製品への関心度合いを数値化することができる。

興味・関心スコアを設定するときは、スコアが蓄積していくフィールドと、一定期間でリセットするフィールドの2つを設定してみてほしい。

図表4:興味・関心スコアの設計

一定期間でリセットされるスコアを設定することで、直近興味を示している製品はどれなのかを判別できる。関心が高まっている製品を売り込む方が、営業・MRの成約率は高まるだろう。

スコアのしきい値調整の考え方

前提として、スコアのしきい値は一度決めたら変えないというものではない。営業・MRからのフィードバックをもとに、調整し続けて運用する。

そのため、初期はMarketo標準のテンプレートで実装し、仮でしきい値を設定する。その後、営業・MRからのフィードバックをもとにしきい値を調整していく。

しきい値調整が安定してきたら、営業・MRの稼働状況を見て微調整をする。稼働が少ないときはしきい値を下げて送客数を増やす。稼働が多いときはしきい値を上げて見込み度の高いリードに絞る、追加条件を設定するといった調整をすると良いだろう。

営業・MRへの送客における工夫

有望見込み客を定義し、スコアリングを設定したからといって、営業・MRが動いてくれるとは限らない。送客した有望見込み客に対してアプローチしてもらうには、送客方法や中身の工夫も必要だ。

3つの送客方法

営業・MRへの送客には3つの方法がある。

 ●CRM・SFA経由のアラート通知
 ●Marketoのアラートメール送信
 ●Marketoのスマートリスト配信

VeevaやSalesforceなど、CRM・SFAツールとMarketoを連携しているのであれば、CRM・SFAからアラート通知することで送客できる。マーケティングツールであるMarketoに対して営業・MRが苦手意識を持っている場合、使い慣れているCRM・SFAからアラートを送信すると受け取ってもらいやすくなるだろう。

Marketoからは、リードごとにアラートメールを送信する方法と、スマートリストを配信する方法がある。即時性が求められるものはアラートメールで、そうでないものはスマートリストで配信するのが良い。

図表5:Marketoから営業・MRに配信するリストの例

営業・MRがストレスなく受け取り、アクションを起こしやすい形で送客する方法を模索することが重要だ。

有効な送客を実現するための3つの工夫

Marketoから営業・MRへ送客し、アクションを起こしてくれるようになったとしても、有効なアプローチができなければ次第に信頼を失ってしまう。信頼関係を構築するために、以下3つの工夫を凝らして送客すると良いだろう。

 ●行動履歴や興味スコアなども同時に共有する
 ●営業・MRの反応がない場合の対処も考える
 ●送客した有望見込み客に対してフィードバックしやすい環境を整える

マーケティング活動のなかで得た行動履歴や興味関心は、営業・MRがアプローチ方法を考えるうえで役立つ。しかし、Marketoを開いて見なければわからないのであれば、データが活用されなくなってしまう懸念がある。行動履歴や興味スコアなど、アプローチに役立つ情報はアラートメールのなかに記載しておくのがおすすめだ。

営業・MRとの信頼関係を醸成できていても、稼働状況次第でどうしてもフォローし切れない場合もある。一定期間フォローされていない場合、再度アラートを通知するなどといった処置をあらかじめ決めておくと良いだろう。

定例会議で有望見込み客に関するフィードバックはもらうものの、日々感じたことをすべて会議の場で伝えてもらえるわけではない。アラートメールのなかに「このアラートは役に経ちましたか?」といった選択項目を設け、フォームに誘導することで営業・MRの生の声を集めるという方法もある。

図表6:送客した有望見込み客へのフィードバックをもらう工夫

Marketo支援サービスの紹介

パワー・インタラクティブはヘルスケア業界向けに、Marketo活用支援サービスを提供しています。

図表7:パワー・インタラクティブのMarketo支援サービス

Marketo導入/活用のコンサルティング、データの集約&可視化、運用代行など様々な形でサポートしています。Marketo運用でお悩みの方は、パワー・インタラクティブまでご相談ください。

※50枚を超えるスライドで解説※
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山下 智

マーケティングコンサルタント

山下 智

マーケティング戦略策定

Webコーダー/Webデザイナーからキャリアをスタート。その後、Webディレクターとして数多くの企業サイトの企画~設計~制作を手掛ける。
2014年に自社へのMarketo導入の推進をきっかけに、マーケティングオートメーションを専門とするコンサルタントへキャリアチェンジ。
現在は、事業会社のマーケティングDXの支援や、データマネジメントの仕組みや組織体制づくり、人材育成まで、データを活用したマーケティングの幅広い伴走コンサルティングを得意とする。特に、製薬および医療機器メーカーの支援に強みを持つ。
無類のクラフトビール好き。 No Beer! No Life!

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