セミナーレポート

【製薬業界向け】Marketoで実現できるデジタルマーケティング推進

MRの病院訪問による情報提供は年々難しくなっており、コロナ禍においてその流れは加速した。厳しい状況を打開するために、多くの製薬会社がデジタルマーケティングに取り組んでいる。
Web講演会や会員サイトなどのマーケティング活動を通じて、顧客データの蓄積は進んできた。しかし、集めたデータを活用する段階までは届いていないのが現状である。

製薬会社は業界特有の事情により、多機能のマーケティングオートメーション(以下、MA)を求める傾向がある。そのため、アドビ社が提供する「Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)」を利用することが多い。

2022年9月28日、「MRをサポートするデジタルマーケティングの手引き」をテーマにアドビ社と共催でウェビナーを開催した。アドビ社の大田氏が担当した第2部講義の内容を本コラムで紹介する。

※第1部講義のレポートはこちら※

大田 幸嗣 氏

登壇者

大田 幸嗣 氏

アドビ株式会社

※関連ナレッジ資料※

製薬業界におけるMarketoの提供機能

Marketoの機能は以下6つのカテゴリに分けられる。

●マーケティングデータ基盤
●訴求するコンテンツのパーソナライズ
●オンラインとオフラインを横断した関係構築
●顧客育成の自動化
●MRとの連携
●マーケティング効果測定

マーケティングデータ基盤

Marketoはマーケティングデータ基盤を有しており、顧客属性や行動履歴などをもとに、セグメントして施策を実行できる。

製薬会社では、主に以下5つの機能を利用することが多い。

 ●Lead & Account Database:リードおよび企業のデータを保持
 ●Audience Segmentation & Targeting:施策を実施する対象をセグメントする
 ●Predictive Audiences(オプション):AIと機械学習で効果的なオーディエンスを抽出
 ●Native Veeva CRM Integration(オプション):Veeva CRMとの自動連携
 ●Sandbox(オプション):本番環境とは分離したテスト環境

MAを活用して成果を上げるには、顧客ニーズに合わせてコンテンツを届けることが必要不可欠。不要な情報を届ける会社だと思われてしまうのか、必要な情報を届けてくれる会社だと思ってもらえるのかはセグメントにかかっている。Marketoでは、データ基盤を参照して自在にセグメントできる。

また、Marketoは多くの製薬会社で用いられている『Veeva CRM』と自動で連携できる。MRとの連携がカギとなる製薬会社のデジタルマーケティングを推進するうえで、重要なポイントだろう。

訴求するコンテンツのパーソナライズ

Marketoは訴求するコンテンツをパーソナライズする機能を有している。
医師の興味関心に合わせて、適切なコンテンツを適切なタイミングで配信することができる。

製薬会社では、主に以下4つの機能を利用することが多い。

 ●Advanced Dynamic Content:訪問者に合わせてランディングページやメールをパーソナライズする機能
 ●Advanced Personalization:一人ひとりに合わせてコンテンツの表示をパーソナライズする機能
 ●Website Personalization(オプション):ウェブサイトの表示をパーソナライズする機能
 ●Predictive Content(オプション):AIが表示コンテンツを自動で最適化する機能

「メールを送っているだけ」と思われがちなマーケティング担当者だが、実際に取り組まなければならない業務は多岐に渡る。やるべきだが手が回っていないということの方が多いだろう。

デジタルでの施策は「1対n」になり、一人ひとりの関心や状況に合わせられないことも多い。しかし、より多くの顧客を効率よくナーチャリングしていくのであれば、デジタルでも「1対1」のパーソナライズされたコミュニケーションを取っていくのが良い。

Marketoに搭載されているパーソナライズ機能を活用することで、一人ひとりの関心や状況に合わせたコンテンツの訴求が可能になる。パーソナライズの自由度は、デジタルマーケティングの成果創出に大きく関わるだろう。

オンラインとオフラインを横断した関係構築

Marketoでは、メールやWeb、講演会のフォローなど、様々なチャネルを通じてコミュニケーションを図る。
製薬会社では、主に以下2つの機能を利用することが多い。

 ●Email Marketing:メール配信機能
 ●Event & Webinar Marketing:オフラインイベントおよびウェビナーを管理する機能

多くの製薬会社はリアルでの講演会やWeb講演会を軸にマーケティング活動を展開している。しかし、すぐに商談化する医師とは接点を取れているものの、その時点では見込み度が高くない医師のフォローがおろそかになっていることが多い。

Marketoを活用すると、MRがフォローしきれない、まだ見込み度が高まっていない医師を継続的にフォローすることができる。こうした取りこぼしをできる限り減らすことがMRの生産性向上につながっていく。

顧客育成の自動化

マーケティング担当者が取り組むべき業務は多岐に渡る。リソースの許す範囲でできる施策を実施しているが、やりたい施策をすべて実施できているわけではない企業が大半だろう。やりたい施策を多く実施するためにも、マーケティング業務はできる限り自動化しておきたい。

顧客育成を自動化するために、製薬会社では以下3つの機能を利用することが多い。

 ●Campaign & Journey Automation:Marketo施策を自動化する機能(スマートキャンペーン)
 ●Intelligent Cross-channel Nurturing:マルチチャネルで顧客にアプローチする機能
 ●Landing Pages & Forms:ランディングページおよびフォーム作成機能

Marketo活用が進めば進むほど、保有リードの件数は増大する。日々増えていくリードに対して、手動で施策を打ち続けるのは至難の業だろう。 Marketoでは自由に条件を設定し、自動的にアプローチすることが可能だ。

例えば、会員サイトを訪問した医師に対して医薬品の情報を届けたり、特定の診療科の医師に対して適切なコンテンツを届けたりすることができる。

このように、顧客の属性や行動に合わせたアプローチを自動化することで、工数をかけることなく多くの医師と継続的にコミュニケーションを取れるようになる。

MRとの連携

デジタルマーケティングはマーケティング部だけで進めるものではない。MRと連携できてはじめて機能する。

MRが求めているのは、処方につながりやすい医師との面談の機会だろう。有望医師を抽出するために、製薬会社はMarketoの以下の機能を活用している。

 ●Scoring, Routing & Alerts:スコアリングし、有望リードをお知らせする機能

組織や職種、権限などといった属性情報と、Web上での行動情報をもとにスコアを付与し、有望医師を発掘している会社が一般的である。ただ、なかにはスコアリングをせず、有望医師が取りがちな行動をした時点でMRに通知するといった企業もある。

Marketoでは、各社の事情に合わせて有望な医師を発掘する方法をカスタマイズできる。

マーケティング効果測定

データを収集できることが持ち味とされるデジタルマーケティングでは、施策を実施するたびに効果測定をすることになるだろう。

製薬会社では、主に以下3つの機能を利用してマーケティング施策の効果を測定することが多い。

 ●Campaign Reporting & Insights:各種施策の効果を測定する機能
 ●Attribution & ROi Dashboards:マーケティング施策が商談にどれだけ貢献したかを可視化する機能
 ●Advanced Journey Analytis(オプション):カスタマージャーニーに沿って顧客がどれだけ行動しているかを確認できる機能

忙しいなかで様々な施策を実施しているにも関わらず、成果の証明が難しく、他部門から誤解されやすいのがマーケティング部の辛いところだろう。
マーケティング施策の貢献度を可視化することは、マーケティング部の立場をつくり、関連部署の協力を得るためにも重要である。

製薬業界のMarketo活用の現状課題

多くの製薬会社は会員サイトを持っており、会員サイトとMarketoを連携させていることが多い。メールで医師とのコミュニケーションを図り、会員サイトを訪問した医師をMRに通知してMRをサポートしている。
ただ、現段階ではMarketo活用を全社展開している企業は少ない。特定のプロダクトでメールマーケティングをおこない、他プロダクトへ横展開している。

『THE MODEL』に代表される、インサイドセールスとフィールドセールスを分業する組織づくりは製薬会社に合わないケースが多い。見込み度の高い重点ターゲットにはMRが訪問し、ターゲット外の場合はオンラインで対応するという体制が一般的だろう。

現時点での最も大きな課題は、MA施策がどれだけ収益に貢献しているかを測定しづらいこと。処方までを成果とすると測定が困難になるため、中間指標や先行指標をKPIとしている。

医薬品の適正使用を推進するMarketo活用

MA施策の収益貢献を可視化したり、オンラインとオフラインを横断したマーケティングを実現するためにも、今後はMarketoとCRMの連携を推進していきたい。

MRが医師との面談を通じて得た情報をMarketoに共有できるようになると、実現できるセグメントの幅が大幅に広がる。すると、よりパーソナライズされたコンテンツ訴求ができるようになり、コミュニケーションの活性化につながる。

また、アカウントベースドマーケティング(以下、ABM)も推進していきたい。
日本国内の製薬会社は「医師」をターゲットとしてマーケティングしているが、海外では「アカウント企業」を定めてマーケティングしているケースもある。

例えば、MRが担当している医師はあまり反応していないが、同じ病院の別の医師が活発にWebサイトを訪問しているということがある。このような場合は活発にWebサイトを訪問している医師と接触し、病院単位での処方の最大化につなげるのが良いだろう。
このように、MarketoのABMダッシュボードでは、MRが担当の医師と接しているだけでは気付けなかった有望な医師を発掘することができる。

Marketo導入支援コンサルティングの紹介

パワー・インタラクティブは、Marketoの導入支援サービスを提供しています。

製薬業界は専門領域の話が絡みやすいため、コンサルティング会社を選ぶ際に製薬会社の支援実績を重要視する傾向があります。
パワー・インタラクティブはこれまで多くの製薬会社様のMarketo導入およびデジタルマーケティング推進をご支援してきました。業界特有の事情に合わせたコンサルティングに定評があります。

Marketo導入を検討している製薬会社のご担当者はお気軽にご相談ください。弊社コンサルタントがサポートします。

岩野 航平

コンテンツ編集長

岩野 航平

コンテンツ戦略策定

新卒で株式会社ネオキャリアに入社し、新規オウンドメディアの立ち上げに従事。ネオキャリアを退職し、数カ月間飲食店で働いた後、パワー・インタラクティブに入社。マーケティング、インサイドセールスを担当したのち、コンテンツ編集長に就任。パワー・インタラクティブで発信するコンテンツ全般の企画やコンテンツ計画策定などをおこなう。

TOP