近年ヘルスケア業界でのAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)導入が増えているが、改めてMarketoを導入する目的を整理する必要がある。
「営業へ有望リードを渡す」という意見をよく耳にするが、Marketo活用の目的はそれだけではない。「顧客(医師)へより良い体験を提供する」というのが真に有意義なMarketoの活用方法といえるだろう。
良い体験を提供するには、顧客の課題やニーズに寄り添い、パーソナライズした情報を届けることが重要だ。そうすることで有望顧客を発見でき、次の施策に活かすことができる。
しかし、こうした施策をすぐに考えることは簡単ではない。まずは「データ」をMarketoに集約し、「ターゲット」に対して柔軟に施策を実行する。繰り返し施策を実行することで、リードに関する未知の情報を獲得できる。
1月18日、Marketoを使いこなすためのデータ管理とシナリオ設計をテーマとしたウェビナーを開催した。講師はマーケティングコンサルタントの山下。当日のセミナー内容を本コラムで紹介する。
※関連ナレッジ資料※
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データ環境を整備するには、データ管理の流れを理解すること、理想的なデータ環境とはどのようなものかを知ることが重要だ。
ヘルスケアデータの管理を円滑に行うためには、下記2つのステップで進めると良い。
●ステップ①:データの棚卸
●ステップ②:データの集約
■ステップ①:データの棚卸
データの棚卸は、自社のデータの種類、格納先を把握することから始まる。
Webサイトのデータ、名刺情報、ハウスリスト、医療従事者向けサイトの会員情報、外部医療従事者データ、商談情報、商談データなどがどこに蓄積されているか。今後必要になりそうなデータはないか。
そういった視点で自社のデータを洗い出し、整理することが重要である。
■ステップ②:データの集約
Marketo導入の初期段階から、必要なデータは出来るだけMarketoに集約し、一元管理するのがよい。自社で所有しているマーケティングデータやリードデータ、製品データに加え、外部から連携している企業データや医師データをMarketoに連携することが重要である。 はじめは手動になる部分が生じる場合もあるが、順次自動連携させていくと工数を削減できる。
また、データの集約と合わせてCookieの紐づけ方法についても検討しておく必要がある。MAの強みを活かすためには、リードをCookieで紐づけ、行動履歴を取得することが求められる。
MarketoでのCookie紐づけには、「Marketoで作成したフォームへの入力」「Marketoから配信されたメールのクリック」「API連携」の3つの方法がある。医療従事者向け会員サイトがある場合、ログインした時点でAPI連携でCookieが紐づくようにするのが理想的だろう。
ツールやデータウェアハウスが乱立し、連携が複雑化する。それによってデータ環境がブラックボックス化する例をよく耳にする。
また、複数のベンダーが別々にデータを管理している場合もある。そうなると、社内や外部との協力体制を保ちにくくなってしまう。
各種データは1つのCDPにまとめるのが理想的だ。社内制約なども考慮しつつ、可能な限りデータはシンプルに管理する。そうすることで、レポーティングやレコメンド、分析、DX活用といったマーケティングの域を超えた活用ができるようになる。
Marketoで施策を実行し、リードの追加情報を取得することで、更なる有望リードの発見につなげることができる。
ここではMarketoでデータを取得する5つの方法と、データ取得を活性化させる2つの施策を紹介する。
Marketoで追加データを取得するには、5つの方法がある。
1. 行動履歴+スコア機能
製品詳細ページや関連する動画の視聴時間などの製品に関する動きや、料金や見積り依頼ページなどなど商談に近いページを指定し、行動履歴情報を取得する。また、製品毎にスコアを設定し興味を測る。
2. 資料ダウンロードなどのフォーム
資料ダウンロードフォームに取得したい情報に関する質問項目を設置する。
3. ウェビナー参加後のアンケート
ウェビナー終了後のアンケートで製品やサービスについての興味度を確認する。
4. インサイド(デジタル営業)のコール
直接電話をかけることで、行動履歴からは分からない情報を取得する。
5. 展示会などのオフラインへの誘導
オフラインで接点をつくることで、様々な追加情報を獲得する。
データはただ闇雲に取得すれば良いわけではない。Marketoでは「使いやすい形式」でデータを取得することが重要である。
フォーム入力は自由記入ではなく選択式にすると、Marketoでの施策に活用しやすくなる。抽出しやすくなる。設計時にあらかじめルールを決めておくのが望ましい。
追加のデータ取得を活性化させる施策として、以下の2つがおすすめだ。
1. Marketoのプログレッシブ・プロファイリング機能を活用する。
Marketoには、フォームを入力するたびに新たな項目を表示させ、追加情報を獲得するプログレッシブ・プロファイリング機能が備わっている。
あるリードが3回資料をダウンロードした場合、1回目で部署の情報を、2回目で役職の情報を、3回目で抱えている課題の情報を取得する。
既に情報を持っている項目は表示させず、代わりに情報を持っていない項目を表示させることで追加のデータを取得できる。
参考:フォームのプログレッシブプロファイリングの設定
2. 会員サイトの構築
製薬業界では医療従事者向け会員サイトを構築している企業が多くみられる。会員サイトがあると、前段であったCookieの紐付けが行いやすくなり、サイト訪問者を1人1人区別できるようになる。また、Marketoと連携して統合ID、会員情報、動画視聴などのデータを付与することで、よりパーソナライズされた施策を実行できる。
最後に、取得したデータを活用したシナリオ設計について解説した。
シナリオを考えるうえで、リードがどのようなプロセスを経て検討を進めるのか、何を解決したいのかを深掘りすることが重要である。
Marketoには、リードの購買プロセスをステージに落とし込み、各リードがどのステージにいるかを把握する機能が備わっている。この機能を活用すると、ステージを押し進めるための施策を思案しやすくなる。
ライフサイクルステージは分析するうえで便利な機能だが、使われなければ意味をなさない。ライフサイクルステージを軸として分析する文化を浸透させるために、社内で浸透しやすいステージ名にするといった工夫が求められる。
ただ、MarketoとCRMを連携できていない場合はアポイント獲得以降の数値を追えなくなってしまう。連携できていなければ定期的に営業にヒアリングし、アポイント獲得以降の数値をMarketoに追加することで、営業への貢献を見える化しておくとよいだろう。
当然、各ステージに所属するリードの課題は人それぞれである。抱えている課題に対して提供するコンテンツを棚卸しておくことも、施策設計につなげるうえで重要だ。
Marketoに蓄積したデータを用いてセグメントし、シナリオを細分化して棚卸したコンテンツを届ける。その積み重ねによって、パーソナライズされたコミュニケーションを実現できるようになる。
ライフサイクルステージを構築すると、ボトルネックを把握し、ステージを押し進める施策を思案できるようになる。ここでは6つの施策例を紹介する。
1. 自動タギングメール
MarketoにインポートされたリードのなかでCookieが紐づいていないリードを対象に、1週間ごとに異なるメールを配信し続ける。配信されたメール内リンクをクリックすることで、Cookieを紐づけられる。リードを獲得段階から育成にもっていくための施策として取り入れられることが多い。
2. メールマガジンのセグメントメール化
メールマガジンもセグメントすることで、興味関心に合ったコンテンツを配信できるようになる。それによってメールのクリック率向上、配信停止の抑制につなげられる。
3. ウェビナー後のフォローメール
ウェビナー参加者の契約状態と回答データを組み合わせて、担当営業へ即送客したり、手厚いフォローメールを送ったりできる。スピード感を持って営業に連携し、見込み度が高まりきっていない顧客もこぼさずフォローすることでウェビナーを通じた成果向上につなげられる。
4. 商談失注リードへのフォローメール
商談が失注した場合でもSFA経由で失注理由を連携することで、その理由に合わせたフォローメールを送ることができる。一定期間を置いて再度育成することで、過去失注客まで商談獲得の機会を広げられる。
5. 会員登録/契約後のオンボーディングメール
契約や会員登録などの定着が重要となる場面でフォローメールを配信する。反応がない場合は営業やカスタマーサクセスに通知させ、フォロー漏れ防止につなげられる。
6. 行動直後のフォローメール
有望リード化した際に追撃で資料などを送る。インサイドセールスが電話をかけやすい状況をつくることができる。
弊社はヘルスケア業界向けに、Marketo活用支援サービスを提供しています。
Marketo導入/活用のコンサルティング、データの集約&可視化、運用代行など様々な形でサポートしています。Marketo運用でお悩みの方は、パワー・インタラクティブまでご相談ください。
マーケティングコンサルタント
山下 智
マーケティング戦略策定
Webコーダー/Webデザイナーからキャリアをスタート。その後、Webディレクターとして数多くの企業サイトの企画~設計~制作を手掛ける。
2014年に自社へのMarketo導入の推進をきっかけに、マーケティングオートメーションを専門とするコンサルタントへキャリアチェンジ。
現在は、事業会社のマーケティングDXの支援や、データマネジメントの仕組みや組織体制づくり、人材育成まで、データを活用したマーケティングの幅広い伴走コンサルティングを得意とする。特に、製薬および医療機器メーカーの支援に強みを持つ。
無類のクラフトビール好き。 No Beer! No Life!
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