MA導入の失敗を取り戻す5つのコツ
「一度マーケティングオートメーション(以下、MA)ツールを導入したけれど、上手く活用しきれていない」
「MAツールが単なるメール配信ツールになってしまっている」
このような悩みをよく耳にするが、MA導入に失敗する要因は各社とも似通っている。
MA導入を成功させるには、MAを活用することで実現したい目標や運用体制などを事前に整理しておくことが重要だ。パワー・インタラクティブはAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)の導入支援コンサルティングサービスを提供するなかで、これらの課題解決をサポートしてきた。
2023年3月15日、Marketoへのリプレイスを検討している方に向けて、Marketo導入を成功させるためのポイントを解説するセミナーを開催した。講師はマーケティングコンサルタントの山田。本コラムでは、当セミナーの内容をまとめている。
MAを有効活用できない4つの原因
多くの企業がMAを有効活用できていないと悩んでいるが、その原因は大きく4つに分けられる。
●原因1:コミュニケーションシナリオがない
●原因2:コンテンツがない
●原因3:人的リソースがない
●原因4:MAとCRMが連携していない
原因1:コミュニケーションシナリオがない
読み物コンテンツの作成やセミナー開催、メール配信など、マーケティング担当者が取り組む施策は多岐に渡る。しかしMAを有効活用するには、まずコミュニケーションシナリオを描く必要がある。
シナリオがなければ顧客の興味関心段階を無視した施策が実施されることになる。結果的に、顧客の興味関心を段階的に引き上げられなくなってしまう。
MA導入で失敗しないためには、施策を実施する前にシナリオを描くことが重要だ。
原因2:コンテンツがない
コンテンツ不足も深刻な問題だ。設計したコミュニケーションシナリオを実現するだけのコンテンツがなく、Webサイトにある製品情報を届け続ける。興味関心を醸成できないゆえ成果も上がらず、配信停止が増えていくといった悪循環に繋がる。
コンテンツがなければMAは活用できない。各プロセスに合ったコンテンツを生産する体制を整備することも、MAを有効活用するうえで欠かせない。
原因3:人的リソースがない
人的リソース不足にも悩まされる。MAはマーケティング施策を自動化させるツールだが、業務全体の工数が削減されるわけではない。メール配信やセミナー運用などといった業務は効率化されるが、継続的なコンテンツ制作や他部門連携、上層部への成果説明など、新たに発生する業務もある。
MAを活用するうえで、ツール操作以外の業務にどれだけ時間を割けるかが肝になる。
原因4:MAとCRMが連携していない
MAは顧客を育成して営業に連携し、商談創出に貢献するために利用するツールである。
MAとCRMを連携すると、MQLとして引き渡して以降の商談内容をMAに連携できる。商談で得たデータを活用することで、実行できる施策の幅が広がる。また、MQLリードの商談状況から、マーケティング部の商談創出貢献、受注貢献を確認できる。
MAとCRMを連携していなければ商談創出への貢献度を把握できなくなってしまう。そうなると会社に対してMA活用の成果をアピールできず、MAプロジェクト自体が頓挫してしまうことがある。
Marketo導入前にやるべきこと
Marketoへのリプレイスをする前に、着手するべきことが5つある。
●Marketo導入プロジェクトの目標設定
●お客様とのコミュニケーションシナリオを設計
●施策に必要なコンテンツを用意
●運用体制を整える
●施策に必要なデータの整理
失敗できないリプレイスを円滑に進めるために、上記5つの準備を入念におこなうと良いだろう。
Marketo導入プロジェクトの目標設定
Marketoに限らず、MAは決して安価なツールではない。会社として高額な投資をしている分、小まめに成果報告を求められることもある。しかし、約3カ月にわたるMarketo導入プロジェクトはセットアップが中心になるため、商談創出への貢献に直結するような成果を上げることはほとんど不可能。Marketoのセットアップが中心となる。
Marketo導入プロジェクトに集中するためにも、短期的な目標と長期的な目標を設定しておくのがおすすめだ。短期的な目標には、Marketo導入期間中に実行できるアクションを設定する。長期的な目標には、営業送客数や商談獲得への貢献など、会社が期待している数字を設定する。
短期的、長期的な目標を設定したら、必ず上層部の承認を取るようにしてほしい。上層部との合意形成はMarketo導入プロジェクトの進めやすさに直結するからだ。
お客様とのコミュニケーションシナリオを設計
コミュニケーションシナリオがないと、MAを有効活用できなくなってしまう。Marketo導入プロジェクトを成功させるために、あらかじめコミュニケーションシナリオを設計しておくと良い。
コミュニケーションシナリオを設計すると、必要なコンテンツが浮かび上がるのはもちろん、それに準じて発生する業務も整理できる。発生する業務をあらかじめ整理しておくと、スケジュールの遅れを最小限に押さえられるだろう。
施策に必要なコンテンツを用意
コンテンツがなければ、設計したコミュニケーションシナリオを実現できない。該当するようなコンテンツが自社にあれば良いが、なければ制作を手配する必要がある。
コンテンツ制作はマーケティング業務のなかでも大きな負荷になる業務だ。社内に眠るコンテンツを棚卸し、効率的に制作を進めると良い。社内に眠るコンテンツとして、以下のようなものが挙げられる。
●営業部が商談時に使っている製品紹介資料
●サポートデスクや商談時に寄せられた質問と回答
●セミナーで用いた講演スライド
●セミナー講演動画
●セミナー事後アンケートの集計レポート
社内に眠るコンテンツを見つけても、リソース不足や専門知識不足により、マーケティング部だけでコンテンツを制作できないこともある。他部署や外部パートナーも巻き込んで、安定的にコンテンツを制作できる体制を整えておこう。
運用体制を整える
マーケティング施策を設計する人とMarketoを操作する人は必ず分けてほしい。そして、Marketoを操作する人は複数名アサインするのが望ましい。
施策を設計する人がMarketoの運用にまで入ってしまうと、運用で手いっぱいになり新しい施策に着手できなくなってしまう。そうしている合間にも時間は過ぎ、上層部から成果を求められ、マーケティング推進をしづらくなってしまうことがある。
また、Marketo運用担当が1人しかいないと、メンバーの体調不良や退職でMarketo運用が止まってしまうことがある。突発的に人が抜けても運用を維持できるよう、必ず複数名で運用する体制を整えて欲しい。
施策に必要なデータの整理
設計したコミュニケーションシナリオを実行するには、使える形でデータが溜まっている必要がある。必要なデータがあるかどうかを確認し、ない場合はデータを取得するための方法を考えよう。データを取得するには、大きく分けて以下3つの方法がある。
●フォームで取得
●CRMの情報を連携
●外部データベース取り込み
データがあったとしても、セグメントに使える状態でなければ施策を実行できない。例えば、役職でセグメントして施策を実行したいにも関わらず、役職の入力がフリーテキストになっていては活用できない。施策を実行するときに困らないよう、データの形式も考えておくべきだ。
Marketoの5つの特徴
Marketoは他MAよりも優れている5つの特徴がある。
●特徴1:顧客との長期的な関係構築に適している
●特徴2:様々なツールと連携できる
●特徴3:細かな要望に応えられる
●特徴4:施策の収益貢献がわかる
●特徴5:サポートコンテンツが充実している
特徴1:顧客との長期的な関係構築に適している
Marketoには収益サイクルモデラというリードステージを管理する機能や、エンゲージメントプログラムというステージに合わせたコンテンツを訴求する機能が搭載されている。
これらの機能を活用することで、すぐに案件化するわけではない見込み客と長期的な関係構築ができる。
検討プロセスが長期化しやすいBtoBや、高単価で意思決定に時間がかかるBtoCにおいて、長期的な視野で関係を構築することは重要である。そういった観点で、本格的なデジタルマーケティング推進に適したツールであると考えている。
特徴2:様々なツールと連携できる
MarketoはSalesforceやsansan、Zoomなど、様々なツールとノーコードで連携できる。連携することでMarketo上に多くのデータが蓄積され、マーケティング活動を活発化させられる。
例えば、CRMツールであるSalesforceと連携すると、以下のようなメリットを得られる。
●リードの商談状況をMarketo上で把握できる
●マーケティング部の収益貢献を把握できる
●営業担当者へのタスク作成をMarketo側から実行できる
Marketo上でこれらをできることで、マーケティング部主導でマーケティング・セールスのプロセス管理とその推進がしやすくなる。部門間連携で悩むことが多いマーケティング担当者にとって大事な要素だろう。
特徴3:細かな要望に応えられる
Marketoは処理の粒度が細かく、様々な要望に応えられると言われている。「誰に」「何をするか」の処理が無数にあり、柔軟に施策を設計できる。やろうとした施策をMarketoで実行できなかったという経験はほとんどない。
逆に言えば、やりたいことが明確な方にとっては使いやすいが、明確でない方にとっては活用に迷いが出やすいツールとも言える。そのため、他MAツール以上に導入前の準備が重要だ。
特徴4:施策の収益貢献がわかる
パフォーマンスインサイトという機能を使うと、各マーケティング施策の収益貢献を可視化できる。
マーケティング担当者は数多くの施策を実行するが、どの施策がどれだけ収益に貢献しているかを正しく把握することは至難の業だろう。多くの場合、複数の施策を通じて徐々に関係構築が進み、やがて商談化することになる。すると、どの施策がどれだけ貢献したかを算出するのは難しい。
パフォーマンスインサイトでは、商談発生までにリードが反応したマーケティング施策に受注金額を按分することで、各施策の貢献度合いを算出している。この機能を使うことで、どの施策に注力すべきかを判断できるようになり、マーケティング成果の最大化に繫げられるだろう。
特徴5:サポートコンテンツが充実している
Marketoは活用するのにある程度の経験が求められるツールだが、サポートは非常に手厚い。
MUG Dayと呼ばれるユーザー総会やオンラインコミュニティ、ユーザー分科会、Adobe提供トレーニングなど、様々な形でMarketo活用を促進している。他社のMarketoユーザーと交流することで得られる情報は、自社のMarketo活用に大きな影響を与えるだろう。
Marketo導入支援コンサルティングサービスの紹介
パワー・インタラクティブは、『基本設計』『導入セッション』『Q&Aサポート』『フォローアップ』の4つを組み合わせてMarketo導入をサポートしています。
Marketo導入を成功させるには、導入前の周到な準備が不可欠です。Marketo導入を検討されている方は、パワー・インタラクティブまでご相談ください。
マーケティングコンサルタント
山田 俊也
マーケティング戦略策定
BtoB企業を中心に、マーケティング戦略設計から施策の実行までサポート。Marketo Engageを使ったコンサルティングの実績を多く持つ。
社外に向けた無料・有料セミナーの企画、講師も担当。のべ50回以上の登壇実績。Adobe社が提供するMarketo Core Concepts Ⅱの講師を勤める。
育児のための長期休暇を取得、仕事復帰後は子育て奮闘中。