12月5日に開催されたAdobe社主催のオフラインユーザー会『MUG DAY』に参加した。
これまで、新型コロナの影響でリアルでの開催が遠慮されていたが、今回とうとう満を持してオフラインで開催された。私自身『MUG DAY』への参加は初めてだが、300名以上が集まった会場は活気とやる気に満ち溢れていた。
本コラムでは当日の『MUG DAY』の様子と、そしてその中でどのような話題で盛り上がっていたのかについて紹介する。
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MUG DAYとは、Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)のユーザーが集まり、情報共有をしたり意見を交わしたりしながら、継続的に助け合う仲間との繋がりを持つ場である。
近年はコロナの影響でオンラインでの開催に変更されていたが、今回は3年ぶりのオフライン開催で、東京浜松町駅の近くにある東京ポートシティ竹芝にて催された。ネットの申込枠は300名だったが、当日は330名が集まるという大盛況ぶり。ユーザーが『MUG DAY』のリアル開催を心待ちにしていたことがわかる。
13:15 開場
14:00 ユーザー代表挨拶 三菱電機株式会社 泊氏
14:05 オープニングセッション アドビ株式会社 祖谷氏
14:15 プロダクトアップデート アドビ株式会社 澤田氏
14:30 自己紹介タイム&チーム名決め
15:00 活用事例1 Chatwork株式会社 北側峻氏
15:30 ディスカッション
15:50 ディスカッション内容発表
16:05 活用事例2 SmartHR株式会社 伊藤氏・原氏・中川氏
16:35 ディスカッション
16:55 ディスカッション内容発表
17:05 ネットワーキング
18:00 中締め
6名1グループの座席構成で、グループ内でのディスカッションのための自己紹介タイムも設けられていたのが印象的だった。チーム名を決める時間もあり、チーム「インドア派」やチーム「酒」などのユニークなネーミングが会場を沸かせていた。
最初の活用事例は、国内最大級のビジネスチャット「Chatwork」を中心に複数サービスを展開しているChatwork株式会社の北川氏から。
同社では、事業成長の加速度を向上させるため、
3つのモデル体制への変更
KPIの共通化・可視化
に注力した、と北川氏はいう。
中でも、3つのモデル体制については、レベニュープロセスを「未使用向け(SLGモデル)」「フリープラン向け(PLSモデル)」「有料プラン向け(CSQLモデル)」とターゲットを分けつつ、ファネルはほぼ共通管理するという、まさに弊社がマーケティングコンサルティングの一貫として取り入れているマーケティングオペレーションモデルの構築(MOM構築)が体現されており、感銘を受けた。
さらに、元営業畑出身の私としては、KPIの共通化には驚いた。
KPIは個人・チーム・事業部がそれぞれ持つことはあっても、部署で横断してKPIを持つという経験がなかったからだ。確かに、KPIを共通化すると、「各自の目標のみ達成すれば良い」という考え方がなくなり、フィールドセールスに商談化しにくいリードが行きにくくなる。
弊社では、「商談化しにくいリードがフィールドセールスに渡る」という問題について「各部署同士で合意」をすることで対策するようお勧めしている。リードからMQLに進めていいのは、どういう企業属性や行動属性を持ったリードかを予め、マーケティング部・インサイドセールス部・営業部で共通認識を持ち、具現化する(Marketo内でスコアリングモデルを決めておく)ことで、MQL=営業がアプローチしたくなるリードが次のステップへ進めるよう設定する。
今回、北川氏の話を受け、KPIを共有することで「商談に繋がる数字を詰む」ことが社内に浸透しているんだなと感じた。
北川氏の事例説明後のディスカッションで、私のグループでは主に「KPI設定」について多く語られていた。
The Model型のKPIを採用している企業もいれば、マーケティング部から営業へのパス数ではなく営業が次のステップへ進められたかをKPIとする企業、引き続きKPI設定に頭を悩ませている企業もいた。
全体を通じて、レベニュープロセスを整理し関連部署が共通認識を持てるよう可視化しておくこと、KPI=パス数ではうまくいかない、という2点については皆強く同意していた。試行錯誤を重ねて最適な状態を模索している様子が伺え、とても興味深かった。
次の事例は、労務管理クラウド4年連続シェアNo.1を誇る、株式会社SmartHRのナーチャリングリードユニットの伊藤氏・原氏・中川氏から。
テーマとして挙がっていたのは、
体制づくり
1つの人格としての”SmartHR”を目指す
の2点だった。
同社では、長期にわたり「ナーチャリング組織の変遷」に取り組んでおり、2022年にはナーチャリング関連ユニットのメンバー数が20名の大きなマーケティング組織を築き上げたと聞き、驚いた。どの企業でも、マーケティング組織の拡大は課題にはなるものの、人的リソースの問題や上層部への説得面で難しい、という意見が多く上がる。それを全社的に踏み込んでいるというのは、デジタルマーケティングへの意識の高さが伺える。
そして、人数をただ増やすのではなく、属人化しないようマニュアルやオンボーディングの整備やインシデント対応フローとケースの共有、プログラムのテンプレート化や定期的な情報共有など、育成やオペレーションの標準化にも力を入れている、とのことだった。
合わせて、”SmartHRらしさ”についてもこだわっている。
例えば、複数で運用するとずれがちな「人格」の部分を”SmartHRらしさ”を共有・追求していき、さらにトンマナやデザイン、言い回しなどパーソナリティを定義し「1つの人格」としての”SmartHR”を目指している、とのこと。
また、複数組織が参加する「顧客体験向上委員会」を開催し、分業体制だから生まれやすい齟齬の修正や、横断的な施策を可視化することで、顧客へのコミュニケーションの差をなくすよう工夫している、というのもすぐに導入できそうな取り組みだ思った。
私のグループでは、「最高の顧客体験」は覚えていないが「最悪の顧客体験」については鮮明に覚えている、という意見を皮切りにスタートした。最悪だと印象付けてしまうとそれが顧客に強く残ってしまうため、そうならないような顧客体験を提供する必要というのが大前提ということだ。
顧客側の視点に立った時に、メルマガや営業メールがきても、必要な情報でない場合は見ない、必要な情報かどうかはメールの件名次第、という意見に一同深く頷く場面もあり、パーソナライズされた情報提供の大切さが再確認された時間だった。
弊社、株式会社パワーインタラクティブはパートナーとしてブースを出展した。
お立ち寄りいただいた皆様、ありがとうございました!
合間の時間でユーザーの皆様に協力いただき、「MA活用のお悩み」についてアンケートを実施した。その結果、
1. 活動の見える化…10人
2. リソース不足…20人
3. SFAとの連携…10人
という結果だった。
②のリソース不足が顕著だが、Marketoを導入してどれぐらいか?によって課題が異なった。話を聞いていると、活動の見える化やリソース不足を感じているユーザーは、活用拡大フェーズの方が多く、SFAとの連携が課題と応えるユーザーは最近Marketoを始めた方が多かった。
今回の『MUGDAY』では、実際のMarketoユーザーによる活用事例の紹介とそれに対するグループ内のディスカッションをすることで、ユーザー間の情報共有や繋がりを持つことができた。最後は名刺交換などをして交流を深めるネットワーキングの時間も設けられ、グループ以外の方ともコミュニケーションが取れた。参加した方々それぞれが充実した時間を過ごせたのではないか。
Marketo活用の共有や課題の解決方法を模索している方はぜひこういったユーザー会に参加し、ネットワークを広げ情報を得るのもひとつの方法だと思う。
そして、グループディスカッションやアンケートを通じて、Marketoの活用段階に応じてそれぞれ悩みを抱えている、ということが顕著になった。Marketo導入初期はデータ連携やMarketo活用ルールなどについて、Marketo導入して3年ほど経っていると部署間の連携や顧客体験などについての課題があり、それらは製品の特徴や組織構造に密接に関わっていた。ユーザー会で活用事例や他社との情報共有をしてもらいながら、さらにディープな課題については弊社のようなコンサルティング会社が寄り添って課題解決していけたらいいなと思う。
マーケティングコンサルタント
鍋山 百香
マーケティングオートメーション活用支援
営業と管理者の2軸で、人材・教育・旅行・広告・コールセンター・保険とさまざまな業界を経験。うち、楽天・リクルートなど大手企業での業務経験もあり。東南アジアでの海外就労経験も有し、様々な経験と柔軟な対応でお客様へのコンサルティングを行っている。
社内第一号の「キャリアと子育てを両立するママ」を目指す。
2024.09.09
2024.08.26
2024.07.30